「前文」原案大幅変更の意味
十月二十八日、自民党は十一月二十二日の「結党五十年記念党大会」で正式発表される「自民党新憲法草案」を決定した。より詳細な分析と批判は次号以後に掲載するが、ここでは簡潔にその特徴についてふれたい。
第一に「前文」である。それは、十月七日の新憲法起草委員会「前文」小委員会(委員長・中曾根康弘)で提示された原案(産経新聞10月8日に掲載)と比較すると大きく変わっている。
原案では「日本国民はアジアの東、太平洋と日本海の波洗う美しい島々に、天皇を国民統合の象徴として戴き、和を尊び、多様な思想や生活信条をおおらかに認め合いつつ、独自の伝統と文化を作り伝え、多くの試練を乗り越えて発展してきた」とか「日本国民は大日本帝国憲法及び日本国憲法の果たした歴史的意味を認識し……」などの文章が認められる。すなわち日本の「伝統と文化」が天皇に象徴されるものであること、あるいは「大日本帝国憲法及び日本国憲法」との連続性において「新憲法」を制定するものであることが、明確にうたわれていたのである。中曾根康弘自らが筆をとったとされるこの「前文」原案は、戦前回帰とも言える「国体」的天皇主義、伝統的共同体主義の色彩がきわめて濃厚なものであった。
ところが発表された「前文」では、そうした「伝統と文化」についての表現をすべて削除し、「天皇」についても「象徴天皇制はこれを維持する」としているだけである。ここでは明らかに「象徴天皇制」の維持を、伝統的共同体主義との関連において主張する立場を前面から消し去っている。
その理由は何だろうか。公明党や民主党に受け入れられるような形で改憲を本当に実現するためには、あまりに「復古調」だと見られる文章ではまずいという判断が働いたのだろう、とする意見が多い。だがそれだけではない。おそらく自民党内部の力関係において「復古的共同体主義」の影響力が今回の総選挙を通じて大きく後退し、グローバル資本主義に対応した新自由主義的「改革」派が主導する党への様がわりが進んでいることと関係しているのではないだろうか。
しかし言うまでもなく、当初の予想よりも「マイルド」であるというマスメディアなどの主張は誤りである。なぜなら、それは現行憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの平和と安全を保持しようと決意した」という平和主義の核心を解体し、それに代えて「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し……」と「愛国心」や「国を守る気概」を強調しているからである。これは普遍的平和主義に代わる新たな国家主義の宣言である。
さらに現憲法の「前文」にはなかった「象徴天皇制の維持」を敢えて新憲法案前文に入れた意味も大きい。これによって、日本国の存立と「象徴天皇制」が切り離しえないことが明記されたのであり、この無規定の「象徴天皇制」は、どのような形にも使われる可能性を有しているからである。
「戦争放棄」は放棄された
第二は、憲法九条である。まず「第二章 戦争の放棄」という表題が「第二章 安全保障」に変更された。これは「戦争の放棄」を「放棄」することである。その上で九条一項については変えず、第二項について「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため……自衛軍を保持する」と定めた。この「自衛軍」は「平和と独立」「国及び国民の安全を保持する」ためだけではなく、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行う」としている。
つまり「国際社会の安全と平和」という名目で、世界中どこにでも派兵され、参戦することが原理的に可能となったのである。アメリカ帝国主義のグローバル戦争の一翼を担う「海外で戦争する侵略国家」――これこそが九条二項改悪の端的な意味である。
「集団的自衛権」には敢えて言及していないものの、自民党の主張では「自衛軍」の活動として「集団的自衛権」の発動は当然含まれるものとなる。この軍事を内包した国家への転換を司法面で担保するものとして、「軍事に関する裁判を行うため、法律の定めるところにより下級裁判所として軍事裁判所を設置する」(第七十六条三項)という規定が導入された。軍法会議の設置である。
「国家」が「公共」性を独占
第三は、「第三章 国民の権利及び義務」である。ここでは現行憲法の「公共の福祉」という言葉がすべて「公益及び公の秩序」に置き換えられた。ここで言う「公益及び公の秩序」は端的に「国益及び国家秩序」の意味として使用されている。「公」とはすなわち「国家」である。
第十二条には「国民の責務」という副題が付けられた。そして「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う」とされたことは、「自由及び権利」が「国益」「国家秩序」を口実に制限されることを、憲法上承認したものにほかならない。ここでは主体が「国民」ではなく「国家」であるという転倒が企てられている。
そして第二十条「信教の自由」の第三項のいわゆる「政教分離」については、現行憲法の「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」という規定が、以下のように変更されている。「国及び公共団体は、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教的活動であって、宗教的意義を有し、特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるようなものを行ってはならない」。
すなわち九月三十日の大阪高裁判決のように、首相の靖国参拝などを「宗教的活動」として違憲とした判断を排し、「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲」という概念を導入することで国家と宗教(神道)の結合を承認し、「政教分離」を事実上ないがしろにするものとなっている。これは言うまでもなく首相の靖国参拝を認めるためのものである。これと関連した第八十九条の「宗教上の組織の使用若しくは団体の使用」に「公金及びその他の公の財産」を支出してはならない、という規定も緩和されることになった。
そして最後に、改憲条件の緩和である。現行憲法では改憲発議のためには「各議員の三分の二以上の賛成」が必要とされていたのが、自民党案では「各議員の総議員の過半数の賛成」に変更された。「過半数」の賛成があれば、いつでも改憲を議決して「国民投票」に付すことができるようになったのである。
自民党はいみじくも「憲法改正案」ではなく「新憲法案」として打ち出された。現行憲法の「国民主権と民主主義、自由主義と基本的人権の尊重及び平和主義と国際協調主義の基本原則」を「不変の価値として継承する」とうたっているものの、これはその理念の根本的改変であることは明らかだ。新憲法案は国家権力を「縛り、制限する」ものとしての立憲主義の原則を換骨奪胎し、国家権力の行使にとって都合のよいものにしようとする考え方に貫かれている。
憲法改悪阻止の決定的闘いに向けた布陣を確立していこうではないか。
(10月30日 平井純一)
管制塔元被告団は勝利を宣言します
一滴が大河を作り国家の不当を押し流した!
今日まで損害賠償強制執行を自らのこととしてカンパをくださったお一人お一人の方々、Webで毎日「基金カンパ」を呼びかけてくださった方々、地域・労働組合・職場でカンパを集めてくださった皆さん、管制塔基金カンパグッズを作って販売してくださった皆さん、元被告たちとともに3・26管制塔占拠を闘った党派の方々、元被告(債務者)を職場で守ってくださった多くの方々、9月18日の闘志溢れる集会を組織してくださった皆さん、そしてこの国家の非道に憤りを感じ私たちを応援してくださった方々、本当にありがとうございます。国家の意図はついに打ち砕かれました。今日、不可能と思われた1億円の基金満額達成のめどが付いたことが明らかになりました。
私たちは勝利したのです。
カンパの一円一円が皆さんの流した一滴の涙であり血であり心です。
皆さんの一滴の涙が、血が、大河となって国家の不当を押し流したのです。
この勝利は皆さんの勝利にほかなりません。
この勝利は、3・26管制塔占拠がそうだったようにこころある人々が、その心をひとつにすればどんな不当にも勝てることを教えてくれました。この教訓を生きているうちに2度も経験できた私たち管制塔元被告は本当に幸せです。私たちは十数年の獄中生活が報われたと、今心から思います。皆さん本当にありがとうございました。
私たちは感動的な数ヶ月を過ごしました。
全国各地で新しい3・26が闘われたからです。78年3・26管制塔占拠は100数十人の起訴者を含めて数千人の人々がかかわって成し遂げた闘いでした。そしてここ数カ月の損害賠償をはねかえす闘いは2000人を超える人たちが自分の闘いとしてやり遂げ勝利したのです。
78年3・26管制塔占拠の闘いは、今2000人を越える人々に引き継がれました。
今年3月下旬、損害賠償の強制執行をかけられたとき、私たち元被告はまるで鉛色の空に覆われたような気分でした。しかし、「基金カンパ」の呼びかけに応えてくださった方々、各地でカンパを呼びかけてくださった方々の勢いは私たちに真っ青な青空を見せてくれました。あの日、27年前の3・26当日、マンホールから飛び出した私たちが目にした、すがすがしさと勝利の確信を予感させる真っ青な青空を見せてくれたのです。
「基金カンパ」運動に応えてくださった2000人を超える人たちは、3・26の勝利を守りぬきました。今2000余人の人たちが管制塔に駆け上がったのです。3・26管制塔占拠は今も多くの人々に受け継がれ守りぬかれていることを私たちは目の当たりにしました。
元被告たちを「解放」してくださった皆さんの闘いを、私たちは一生忘れることはありません。27年目にして再度勝利をもたらした闘いを忘れることはありません。本当にありがとうございました。
今、私たちは皆さんとともに声高らかに勝利を宣言します。
しかし、この勝利は皆さんの勝利です。
私たち管制塔元被告団は10月31日をもって「基金カンパ」の要請を打ち切りたいと思います。また共に闘いましょう。
2005年10月27日
11月11日に、さあ受けとってみよ!行動を
b叩きつける実行日は11月11日
集合場所 和田倉噴水公園
最寄り駅 東京駅(JRほか)、二重橋前駅(千代田線)、大手町駅(都営三田線)
集合時間 10時30分
その際 以下の横断幕を掲げる。
「さあ受け取ってみよ!1億300の熱い魂だ!」
「我々は、再び不可能を可能にした!」
3・26三里塚管制塔元被告団
b夜の管制塔元被告連帯基金 大勝利報告集会の概要
11月11日、午後6時から
場所 全水道会館(JR水道橋駅東口下車徒歩2分)
主催 被告団、声明の会、連帯サイト
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