| ノ・ムヒョンの「連合政府」発言の真意 かけはし2005.10.17号 |
連日マスコミをにぎわす
最近、各種の新聞紙上やニュース記事が連日、ノ・ムヒョン大統領の「連政(連合政府)」をめぐる事柄によって2倍になったと言っても過言ではない。それこそ「連政」は政界の最大のイシューだ。野党ハンナラ党は陰謀論を提起し反対しており、与党・開かれたウリ党は「連政」を擁護する立場と否定的に解釈する立場とが共存している。民主労働党も、しばしの騒動の後、「不可論」で立場を整理したようだ。
最近、大統領がハンナラ党パク・クネと会って以後、当分の間は連政の論議はしないだろうと語ったけれども、「連政」をめぐるブルジョア政治諸勢力の騒乱と「連政」に対する運動陣営の診断や解釈は継続されるものと見られる。以下では「連政」をめぐる、これまでの論争の過程や、その政治的意味を診断して見よう、と思う。
最初の発言と民労党の混乱
6月24日、ソウル・サムチョン洞の総理公館で開かれた、党・政・庁の与党首脳部の集まりである「11人会議」に出席したノ・ムヒョン大統領が「与小野大の状況で法案が通らない。わが政府は内閣責任制的要素があるのだから、国会の多数派に総理指名権や組閣権を与えれば国政が安定するのではないだろうか」と発言したのを皮切りに、「連立政府論」がふくらみ始めた。
これに対して民主労働党は、事案別の提携は可能だが連政は不可能だと語り、民主党は党のアイデンティティーを無視した連政よりは超党的な国政運営が優先されるべきだ、と主張した。
ところで、民主労働党内では連政について異なった立場も提出された。ノ・フェチャン議員の発言が、それだ。ノ・フェチャンは「長官のいす分配のような権力分配型の連政ならば受け入れることはできないが、民主労働党の重要な政策が受け入れられるのであれば交渉も可能だ」と語った。こうなるやいなや民主労働党内では「連政論争」が提起された。
イ・グワンホ「進歩政治」前編集長は「民主労働党の現職高位幹部が『来たる07年の大統領選挙で連政を実現することが民主労働党の目標だ』と語った」「党のアイデンティティを否認し、党の分裂をもたらすこのような危険な思考が党の核心幹部の間に存在するということは、党の致命的弱点として働く可能性が大きい」と主張した。
反面、民主労働党のホーム・ページには「党が今、必要なのは現実を改革することのできる実力」であって「むしろ連政に参加して大韓民国の一部分を自ら動かしてみて目覚めるべきだ」と主張する文章も載せられた。
状況がこのようになると7月7日、民主労働党は最高委員会を開き、連政不可の方針を再確認した。キム・ヘギョン代表は「政府と開かれたウリ党が新自由主義の政策を放棄しない限り、連政は可能とはならない」「党は民生政策を中心に事案別に共助をしていくことになろう」と語った。
このような民主労働党内の混乱に対して21世紀コリア研究所チョ・トグォン所長は「連政は絶対にダメだ」という文章で「連政論に動揺している勢力は主として開かれたウリ党内の改革勢力とかつて同じ隊伍で喜怒哀楽を共にした『自主系列』だ。また民主労働党の支持大衆の中で連政論に動揺している勢力は、その大部分が選挙のたびごとに『改革勢力』に対する『批判的支持』の立場を示した『汎386勢力』の人々だ」と指摘した。
このようにノ・ムヒョンの連政発言以降、民主労働党は内部の立場の違いを取り繕いつつ、「不可論」で筋を決めたようだ。だがそれ以降もノ・ムヒョンは連政発言を収めず、主張し続けた。
連政提案とさまざまな反応
7月28日、ノ・ムヒョン大統領は「党員同志の皆さんに捧げる文」で、ハンナラ党が主導する大連政、および地域構図克服のための選挙制度改編を見ると、その内部に多様な履歴を持つ人々を内包しており、実際に路線の違いはそう大きくはない」「政治的合意さえ実現できればハンナラ党が主導する大連政を構成し、その連政に大統領の権力を移譲し、選挙法は与野が力を合わせて作ればよい」と語った。
このような発言は、開かれたウリ党もハンナラ党も結局のところひとつ穴のムジナだということを支配階級のトップの首長が認めたに等しい。ところでノ・ムヒョンのこのような連政提案に対して「オーマイニュース」や「プレシアン」などの反応はどうか。オーマイニュースは「だれが好き勝手に権力を移譲すると言うのか」という見出しの記事で、連政反対の声を高く挙げた。
特に「あの燃えに燃えた02年の大統領選挙、市民らをアスファルトの上に追い立てた大統領弾劾反対集会をすべてなかったことにしようということか」と激昂する反応を示した。プレシアンの場合、「実際、開かれたウリ党とハンナラ党のノ政策の違いが大きくなかったとしても、『改革』と『保守』という明白な異なった旗色を掲げ、支持者たちもこのような価値を基盤にして支持の有無を決定しているという事実に目をつぶるもの」だと指摘しつつ「大統領もヒラ党員のひとりにすぎない、ということをしばし忘れたのではないのかと思う」と強く批判した。彼らの主張は、彼ら自らがノ・ムヒョン政権の支持者であることを露骨にさらけ出したものであり、いわゆる386世代の一群が連政に同意するとするなら、また別の一群はこれに反対していることを示している場面だ。それではブルジョア諸政党の反応は、どうか。
ハンナラ党を孤
立させる陰謀
8月25日、ノ・ムヒョンは一層、攻勢的に発言する。彼はTV討論会で「(ハンナラ党が)連政問題ごときでごちゃごちゃになって悩むだなんて、いっそ権力を丸ごと明け渡せというなら検討してみようものを」「連政の提案は陰謀ではないし、連政に応じるのが嫌なのならば、この分裂の構図を克服するための政治交渉でもやり、連政が危険だと言うのであれば選挙制度についての交渉をしようというのがハンナラ党への要求」だと語った。
これに対するハンナラ党の反応は冷淡そのものだった。パク・クネは「国民を不安にさせる無責任な話」だと批判した。そしてその後にハンナラ党は、連政はハンナラ党を孤立させようとする陰謀だと批判している。
ウリ党再執権
略構想の一部
メン・ヒョンギュ・ハンナラ党政策委員長は「ノ大統領は用意されたシナリオによってち密に連政論を押しつけており、究極的なねらいは『政治圏のビッグ・バン』」だと主張した。
彼によれば、選挙区制の改編をめぐって通常国会がジクザクした後、ノ大統領が党籍を離脱し、改憲および任期短縮のロード・マップを提示し、政治圏がこれに合意しなければ選挙区制の改編を中心とする改憲案を発議するだろう、との予測だ。
そして改憲案が否決されれば大統領が責任をとって辞任するだろうし、通過されれば任期の短縮によって早期選挙になる、というものだ。こうなれば「即座に大統領選挙の状況がさし迫り、現在の政治環境からしてハンナラ党包囲の形の中でやりのける可能性が大きい」というのだ。
連政提案についての、このような解釈は開かれたウリ党にあっても似たりよったりだ。これは連政が開かれたウリ党の再執権戦略とあいまっているという一部の見解を裏づけるものでもある。開かれたウリ党ミン・ピョンドゥ議員によれば「大統領が一定の期限を提示し、政治圏に地域構図の克服のための選挙制度の改編を要求するが、ハンナラ党があくまで応じない場合、大統領職の辞退もありえるし、この場合、ハンナラ党はおよそ準備のできていない状況で大統領選を迎えることとなり、ハンナラ党の候補は地域構図の克服を拒否した候補というレッテルがつけられて選挙で不利にならざるをえない」と分析した。
民主労働党・民
主党への「えさ」
もちろん、開かれたウリ党内でハンナラ党との連政に、すべてが同意しているわけではない。イム・ジョンイン議員の場合、「連政をしなければならないとしたら、経済社会改革のために民主労働党とするべきであって、ハンナラ党とやってはならない」との立場であり、キム・ヨンチュン議員の場合は、連政提起の背景が「選挙区制改編のための口実が必要なのではないのか、ということであって、事前の布石の段階として一種の取り引きを提案したが、そんな提案は野党が受け入れる可能性もなく、国民的説得力もない」と語った。
結局、一連の反応を統合すれば、ノ・ムヒョンの連政提案は開かれたウリ党の脆弱な執権基盤、特に地域主義が強固に作用している現在の選挙区制を改編し、「開かれたウリ党=湖南党」という図式を打ち破ろうとする意図だという分析に一理あるものと思われる。
そしてさらに重要なのは、ハンナラ党が連政を受けいれないことを明らかに知りながら、なぜ提案をしたのか、だ。これを裏付けるのが、開かれたウリ党ユ・シミン議員の発言だ。彼は「地域構図解消の必要条件は選挙区制の変更であり、選挙区制のみ変更すれば大連政をしなくとも問題はない」とし、ハンナラ党が引き続き大統領の提案を受け入れない場合、意を同じくする野党とともに票決を通じてでも選挙区制改善を貫徹させなければならない、と語った。
そうして選挙制の改編について民主労働党と民主党をねらった直接的な主張をする。「民主労働党の場合、13%も得票しても議席は3・3%ということで良いのか。民主党は7%得票したのに議席は3%にしかならないではないか。国民が特定の政党を支持するのだから、その分、その政党は議席を得るべきだ。100%合致はしないにしても、ほぼ近接するようにするのが選挙区制改編の核心だ。民主労働党が好感をもっているドイツ式の制度がもっとも良いと信じている。そのような法案を出すのには参加するだろう」。
新自由主義の攻勢
を加速化させる
以上の論議を整理すれば、ノ・ムヒョンの連政提案には2つの背景がある。
第1に大連政、すなわち地域主義打破という名分のもと、ハンナラ党との大連政を推進するが、これをハンナラ党が拒否しても地域主義政党というレッテルを貼ることができるがゆえに損することはないだろうとの政治的計算の産物だ。
第2に、小連政、つまり民主党と民主労働党を取り込むことは選挙制改編を通じて政権を再創出する有力な経路で、実際に開かれたウリ党とノ・ムヒョンがねらっているのは大連政よりは小連政にあるものと分析することができる。だが万一、ハンナラ党が連政を受けて大妥協が実現すれば、民主労働党や民主党を蹴散らし、いわゆる地域主義に恋々としない「合理的保守」を抱えることとなり、新自由主義の攻勢を加速化できる「新自由主義政治大連合」結成の可能性も排除できないだろう。
連政論争をどう考えるべきか?
大統領が大統領職をやっていけないということを労働者民衆は、どう理解すべきなのか。今もなお労働者民衆の暮らしが破綻している理由は、ノ・ムヒョンと開かれたウリ党の、いわゆる「改革政策」を阻んでいる守旧保守勢力やハンナラ党のせいなのか?
ノ・ムヒョンが連政を提案しているのは、持続された新自由主義の結果による政治的危機が核心的な原因だ。労働者の半分を超えた非正規職、労働貧困層をはじめとする社会的貧困の拡大、帝国主義侵略戦争に対する同調や平沢米軍基地移転拡張など反労働者民衆的な国防・外交政策、新自由主義グローバリゼーションの加速化による市場開放と公共領域の私有化による労働者・農民たちの暮らしの破綻が、そのまま支持率の下落へと現象化しているのだ。
ノ・ムヒョンと開かれたウリ党は、この政治的危機の原因を巧妙にも守旧保守勢力であるハンナラ党や地域主義の選挙の構図のせいにして、まるで選挙区制が変われば問題が解決されるかのように糊塗している。
ハンナラ党は自らの票田を失うだろうとの危機意識のために反対しているが、ノ・ムヒョンの言葉通りに開かれたウリ党とハンナラ党が一部の事案(国家保安法、私立学校法)を除いて政策的差別性がないために、いつでも権力の分立が可能だとなれば、2つの巨大政党の野合は可能となるだろう。
一方、小連政の場合、選挙区制の改編などによって算術的には民主労働党が国会議員数を増やすことができるように見えるが、はたしてそれはどれほど可能であり、また連政の代価として何が奪われるのか、そしてまた新自由主義政権との連立政府の構成が根本的に可能なものなのか、問題とならざるをえない。そのために連政は労働者・民衆の暮らしとはかけ離れた支配勢力間の離合集散にすぎず、その離合集散はそのまま労働者民衆を一層苦痛に追い立てるものとならざるをえない。
連政と選挙法の
改正の因果関係
さらに問題なのは、連政の本質や提案の政治的背景がこうであるにもかかわらず、運動陣営の一部ではハンナラ党まで含む連政という、あきれかえるような主張が乱舞しているという実情だ、ということだ。
7月27日に発表された南北共同宣言実践連帯名義の「自主を目指し統一を実現する民主連立政府を構成しよう」という声明書が、まさにそれだ。それによれば「目標は祖国統一の実現だが、それは民主連立政府を通じて可能だ」とある。つまり「進歩改革勢力(民主労働党を含む民衆運動陣営)が政府構成に協力するとき、統一の過程で予想される反統一勢力の執拗な妨害策動を克服し、安定的に統一祖国を建設することができる。民主連立政府は祖国統一を実現する強力な政治的手段となるだろう」というのだ。
こうして「現政府が任期内に民主改革を完遂しなければならないのに、それができない理由は親米極右勢力のあがきと妨害が根本的な要因」だと主張する。そのために現政府の民主改革を完成し、民主連立政府を構成するためには政治的志向、目標、内容に同意するすべての政治勢力を網羅すべきだ、というのだ。こうして民主連立政府への参加対象は6・15(南北共同宣言)支持勢力であり、「現実的に民主労働党を軸として開かれたウリ党、民主党、ハンナラ党内の改革指向勢力」だというのだ。
「社会統合」を口実
にした甘い誘惑
ノ・ムヒョン政権は最近、連政とともに社会の両極化解消、仕事の場創出などを語っている。だがその実際の内容は正規職の譲歩を通じた非正規職問題の解消、EITC(勤労所得補てん税制)の導入など、より洗練された形態の新自由主義改革にすぎない。
ノ・ムヒョン政権は執権の大衆的基盤が脆弱なことを突破するために、さまざまなポピュリズム的な振る舞いを示してきたし、それは労働者民衆運動陣営の取り込みと、政権の第2中隊の役割を担ってきた一部の市民運動陣営の支援の中で可能だった。そして、その代表的な事例が、大統領弾劾反対だったのだ。最近では一部の市民運動陣営と民主労総などが、社会両極化解消の連帯機構構成の論議が進行中だが、その旗じるしとして掲げているのが「両極化解消、社会統合、持続可能な発展」だ。
新自由主義による労働者民衆の不満や闘争を眠らせるために、社会統合というイデオロギーほど、そして持続可能な発展を通じた分配の可能性(?)ほど甘い誘惑は、あるだろうか? これに加え選挙区制の改編を通じた民主労働党の国会議員数が増える(?)という魅力的な提案など、ノ・ムヒョン政権の労働者民衆運動に対する取り込み戦略は全方位的に進められている。
今、何をすべきか。6・15共同宣言を行ったキム・デジュン政権の申し子であるノ・ムヒョン政権の民主改革(?)のために共に同居するのか、それとも反労働者・反民衆的なノ・ムヒョン政権と彼らの新自由主義攻勢に立ち向かう闘いの戦線を再構築するのか。(「労働者の力」第86号、05年9月9日付、キム・デジョン/政策局長)
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