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新自由主義の先兵役を担うマスメディア          かけはし2005.9.5号

郵政民営化法案の参院本会議否決で一斉に「小泉擁護」報道


「恨み」に満ちた朝日の社説

 八月八日、郵政民営化法案が参院本会議で否決された前後から、法案否決に対するマスメディアの懇願とも「逆切れ」ともいえる法案否決批判の社説などが相次いだ。なかでも八月十日付けの朝日新聞の社説は、同社が一貫して支持してきた自民党と民主党による二大政党制における民主党政権の誕生というチャンスにもかかわらず、「(法案が)自民党内の造反や、民主党など野党の反対で廃案となったことは、残念というほかない」と恨み節に満ちたものになっている。
 マスメディアはこれまでさんざん政府のでたらめな主張を垂れ流してきたが、この社説は、五月下旬から国会の特別委員会で明らかにされてきた法案や政府説明のでたらめさに頬かむりをしたまま、政府の主張を繰り返すだけのものである。
 社説はいう。「財政や金融を健全な形にする。……郵貯や簡保に流れ込んだ巨額の資金が国債を買い支えることで、国の財政を緩ませていた。特殊法人の廃止や民営化を進めるならば、資金の入り口を国営の形で残しておく理由もなくなる」。
 郵貯・簡保資金が国債に回り巨大な財政赤字を作り出している、という当初いわれた民営化の理由もまったく本末転倒した主張であること、巨額の国債を買い支えているのは民間金融機関も同じであること、そして「資金を官から民へ」という小泉のフレーズが、民営化によってもほとんど実現されないことなどはすでに国会審議や社会運動のなかで明らかにされている。
 郵貯・簡保資金という供給があるから需要があるのではない。需要があるから国は国債発行を通じて資金を集めているに過ぎない。問い直すべきは郵貯・簡保など資金の入口ではなく、公共事業や政府支出などの事業面である。巨大公共事業など利益誘導型政治をつうじてこの国を支配してきた自民党政治こそが問われなければならない。それは「自民党をぶっ壊す」と称して庶民の生活を破壊してきた小泉構造改革では実現されることはない。

アメリカと金融資本の狙い


 国債を買い支えているのは郵貯簡保など公的資金だけではない。貸出先が見つからない民間金融機関は約七十兆円もの国債を買い支えている。資金を官から民へというのであれば、これら民間金融機関の資金を民間企業に流し返すことが必要である。しかし小泉構造改革は不良債権処理と称してそれに逆行する政策を取ってきた。民間金融機関によって「貸し渋り」「貸しはがし」で中小企業は倒産し、労働者は街頭に投げ出された。中小企業経営者は年間四千人が自殺に追い込まれている。
 小泉構造改革は厳しい経営環境に直面するこれらの企業を「停滞分野」として資金の流入を押しとどめ、「成長分野」といわれる部門に資金を流し込もうとするものである。ではこれら「成長分野」と呼ばれる企業は「成長」のための資金不足に汲々としているのかといえばそうではない。貸出先の民間企業はどうか。東証一部上場企業は約八十兆円にものぼる現金を預金としてだぶつかせ、それを毎年十六兆円ずつも増加させてきた。これが「民」とよばれるものの実態である。
 しかもハッキリしているのは、国内外の民間金融機関が郵貯簡保資金を狙っている、ということである。アメリカは十年も前から「年次改革要望書」を通じて郵貯・簡保資金を市場に開放するよう迫ってきた。
 日本百三十二の銀行が加盟する全国銀行協会は二〇〇四年二月に発表した「郵政民営化と郵便貯金のあり方について」という報告書のなかで「定額貯金等の貯蓄性商品の新規受入を停止」「定額貯金等の既存契約分は、それに見合う資産とともに整理勘定へ分離」「改革後の郵便貯金は貸し出し業務を行わないナローバンク(通常の貸出業務を行わず、決済業務に特化し、集めた資金を国債など安全資産に限定して運用する銀行)とする」「官業ゆえの特権の廃止」という提言をまとめている。庶民が生活や老後のためにこつこつと貯めてきた貯金を、リスクマネーに流す、それが小泉のいう「資金を官から民へ」の中身であり、それは金融資本の要請に沿ったものである。

民営化=公共サービスの破壊

 朝日の社説は「公務員を減らすのは行財政改革に欠かせない」ともいう。しかしこれも散々いわれてきたことだが、約二十八万の郵政正規職員の人件費には税金は一円も投入されていない。しかも正規職員以外に、十二万にのぼる不安定雇用労働者が公共サービスを担っている。彼女ら、彼らは低賃金、不安定、無権利という状態に置かれている。郵政公社はこの流れを推し進めてきたが、郵政民営化はそれを飛躍的におしすすめることになるだろう。低賃金、不安定、無権利を拡大することが「行財政改革」「小さな政府」であるなら、朝日新聞の社説はその流れを尻押しするものでしかないだろう。
 朝日社説は郵政事業の先細りを予言する。「独立採算の郵政事業は、今のところ税金を使っていないが、公社ではやがて破綻(はたん)しかねない。日本の財政は先進国で最悪の状況にある。そのときになって、税金を投ずることに世論の理解が得られるだろうか。公社のままでは、民営事業よりも早く行き詰まり、過疎地も含めてサービスが低下しかねないのだ」。
 しかしこれはあくまで可能性の一部であり、逆の可能性も充分にあるのだ。民営化後の郵便貯金銀行が二〇一六年度の決算で六百億円の赤字に転落する可能性があり、現行の郵政公社のままであれば千三百八十三億円の黒字であることを竹中担当大臣自身が認めている。
 三事業一体として黒字部門の利益を赤字部門に流してきたことで、通信や金融の公共サービスを維持してきた。全国十八の県で郵便局の九〇%が赤字という実態がある。政府は二兆円の基金の運用益で赤字局への補填とするとしているが、全国の公共サービスを継続的に維持していくにはまったく足りるものではない。民営化によって撤退を余儀なくされた郵便局にサービスの低下もなにもあったものではない。
 民間金融機関への公的資金導入、大企業のリストラ推進支援法である産業再生法や法人税率の引き下げによる減税という名の「国民負担」は膨大な額に上っている。これらの「国民負担」こそが「世論の理解」を得られないものであり、すぐにでも廃止、改革すべきことなのである。
 「最悪」なのは財政状況ではない。それを大増税と公共サービスの破壊によって庶民に押し付けようとする自公連立政権、小泉政権こそが最悪の政権なのだ。

民営化・大増税・改憲は一体


 同社説は「総選挙を前にして、何とも気になるのが民主党の姿勢だ」として、民主党を批判を展開している。「(民主党は)将来の民営化までは否定していないが、政権を取りたいのなら、より説得力のある構想を示すべきだ。こと郵政問題に関しては、『小泉自民党』より見劣りしている」と新自由主義という同じ土俵で、大増税、憲法改悪を競い合う民主党は郵貯・簡保の縮小を明言している。それは先にも示したように国内外の金融資本の要請である。
 しかし「見劣り」しているのは民主党の郵政方針だけではない。期待をかけた民主党に裏切られた恨み節で締められたこの朝日新聞の社説が、小泉と竹中の太鼓持ち以上ではないという意味において、民主党より見劣りしたものといえるだろう。
 小泉内閣はメディアを巧みに使い、そしてメディアもそれを承知で政府の主張を垂れ流してきた。選挙前哨戦の最中においてもこの構造は変わっていない。この「見劣り」したマスメディアを通じた新自由主義イデオロギーと対決する反資本主義左翼の社会的登場こそがすべての同志、友人たちに求められている。
 国内外の闘争の歴史を継承し、新しい階級闘争にむけた世界の舞台へ飛び出そう!    (早野 一)


香港・釜山に向けて        

WTO交渉とFTA反対の全国連鎖行動へ!

香港民衆の呼び
かけに応えよう

 WTO(世界貿易機関)は、今年十二月香港において第6回閣僚会議が開かれ、農産物や鉱工業製品、サービス、知的所有権など多くの分野に関して、関税削減や市場開放、輸出補助金の撤廃などを決める「モダリティ」の一括合意を図ろうとしています。
 しかし、WTOは、一九九九年アメリカ・シアトルでの第3回閣僚会議ならびに、二〇〇三年メキシコ・カンクンでの第5回閣僚会議において、先進国主導の交渉に対して、途上国や労働組合、農民団体、NGOが強く反発し、決裂・失敗に終わりました。いまも先進国と途上国、多国籍企業と地域産業などの対立は続いており、ジュネーブにおける一〇月一般理事会での「大枠合意」の正否が、香港WTO閣僚会議での交渉の行く末を決定するでしょう。
 世界的なNGOはジュネーブに集まり、「これ以上の貿易・投資の自由化反対」と訴えます。そして、十二月香港には香港民衆アライアンス呼びかけの下、世界各国から労働者・農民・NGOが結集し、WTO閣僚会議の失敗を訴える行動と民衆フォーラムが予定されています。

FTAは途上国に
自由化を押し付ける

 一方、WTO交渉がなかなか進展しないことから、迅速な自由化交渉が期待される二国間・地域間FTA(自由貿易協定)の流れはとどまるところを知りません。日本は、これまでにシンガポール、メキシコとのFTAを締結・発効し、フィリピン、マレーシア、タイとも大枠合意し、現在ASEAN(東南アジア諸国連合)、韓国との交渉が行われています。このようなFTAは、WTO以上に自由化を推進するもので、経済的強国が途上国に自由化を押し付けるシステムとして使われています。例えば、企業の自由な活動を認めるために相手国の労働条件や環境基準を後退させることや、WTO交渉以上の投資・サービスの自由化を盛り込んでいることがあげられます。さらに、交渉の経過が非公開で秘密裏に進められている問題や協定を結んだ国とそうでない国との間での差別・排他性も指摘されています。
 日本政財界は、このFTAネットワークの行く末に東アジア共同体を構想しています。しかし、経済だけの自由化は不可能です。必ずや軍事同盟の問題、特にアメリカのアジア戦略との関連が問題となります。中国が先行的にASEANとのFTAを締結している現在、アメリカがアジアへの政治的経済的介入が可能なAPEC(アジア太平洋経済協力)の位置が、再び強まってきています。

11月韓国釜山
の闘いに合流を

 昨年、チリ・サンチャゴでのAPEC会議でもFTAのあり方が論議され、日本とフィリピンの首脳会議では両国間FTA合意のトップ決定がなされています。今回十一月APEC釜山会議には、小泉とブッシュが訪韓すると言うことで、反戦・平和の闘いの機運が盛り上がると同時に、日韓FTA合意の首脳決定がなされるのではと、韓国の労働者・農民は危機感を募らせ、十一月十八日は、十万人農民集会も釜山で呼びかけられています。
 私たちは、昨年十一月韓国から九十名もの労働者、市民団体の人々の遠征闘争団とともに、日韓FTA交渉に反対する共同行動を行いました。霞ヶ関外務省前での三日間の座り込み闘争で、秘密裏に進行するFTA交渉の内実を多くの人々に知らせることができました。この経験・交流を基軸に、今年九月、十月、韓国の労働者・農民活動家を招き、日本各地でWTO/FTAを問う連鎖行動・集会を予定しました。韓国では、チリや日本とのFTA交渉に対して、労働者・農民の大規模な反対運動が起こっています。
 この韓国の運動との交流を通して、全国でWTO/FTAの問題性を考える契機とし、進行するグローバリゼーションを問い直していきましょう。そして、その力を十二月十三日からの香港WTO閣僚会議、それに先立つ、十一月十五日からの韓国・釜山でのAPEC会議に対抗する行動へとつなげていきましょう。
 全国連鎖行動への皆さんのご参加・ご協力を呼びかけます。
二〇〇五年八月

WTO/FTAを問う全国連鎖行動実行委員会
連絡先:脱WTO草の根キャンペーン 東京都文京区白山1―31―9小林ビル3Fアタック・ジャパン気付
賛同へのご協力は… FAX03―5684―5870 もしくは メールnowtofta@yahoo.co.jp
賛同金:団体一口五千円、個人一口二千円(できれば二口以上でお願いします)
郵便振替口座:00160―3―612549 名義:WTO/FTA連鎖行動
関連ウェブサイト:レイバーネット日本
http://www.labornet.jp.org/Campaign/2005/nowto
〈第一波連鎖行動〉
9月6日(火)仙台集会(連絡先:宮城全労協)→7日(水)いわき集会(全国一般いわき自由労組)→8日(木)神奈川集会(神奈川シティユニオン)→9日(金)東京集会(東京集会実行委)→11日(日)名古屋集会(名古屋集会実行委)→12日(月)京都集会(アジア共同行動京都/ATTAC京都)→13日(火)大阪集会(ATTAC関西)→14日(水)広島集会(グローバリゼーションを問う広島ネットワーク)→15日(木)福岡集会(WOW!Japan)       


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