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9・11総選挙とわれわれの立場             かけはし2005.8.29号

郵政民営化反対、改憲・戦争国家化に反対する党と候補者に投票を


小泉「構造改革」の矛盾

 八月八日、参院本会議は自民党議員の二十二人が反対し、八人が欠席・棄権にまわることによって大差で郵政民営化法案を否決した。小泉「構造改革」の「本丸」と位置づけられていた郵政民営化法案の否決は、小泉―竹中に代表される四年間の新自由主義的「改革」がもたらした政治的・経済的・社会的矛盾が自民党内の反乱という形をとって集約的に露呈した事態であった。小泉はただちに衆院を解散し、「9・11」総選挙に打ってでた。
 今回の異例の強行手段は、袋小路に陥った小泉首相が仕掛けたのるかそるかの賭けである。小泉の「上からのクーデター」的解散劇は、今後の日本政治にとって重大な影響を刻印せざるをえない。
 ここで「自民党をぶっこわす」と宣言して登場した小泉内閣の四年間がどのような結果をもたらしているかを簡単に振り返ってみよう。
 第一は、小泉内閣とほぼ時期を同じくして登場した、ブッシュ米政権が開始した「対テロ」グローバル戦争への全面的追随と参加である。二〇〇一年「9・11」を契機にしたアフガニスタン侵略戦争を「テロとの闘い」を名目に支持した小泉政権は「テロ特措法」を成立させ、米軍支援のためにインド洋に自衛隊を派遣した。国際法や国連憲章をも踏みにじって強行された二〇〇三年三月からのイラク侵略戦争・軍事占領に際しては、小泉は自衛隊をイラクに派遣し、自ら占領軍の一翼を担った。
 こうした公然たる違憲行為は、憲法とりわけ九条の改悪と、米帝国主義と共同した世界中で「戦争をする国家」体制構築の動きに拍車をかけ、「つくる会」教科書に代表される極右国家主義イデオロギーのいっそうの台頭をもたらした。小泉政権の下で急速に進展したこうした右傾化は、小泉自身が毎年強行してきた「靖国参拝」ともあいまって中国や韓国との間の外交関係の危機を、かつてないほど深刻なものにさせている。
 第二は、バブル崩壊以後の日本資本主義の深刻な危機を資本のグローバルな競争の中で突破することを試みた市場原理主義的な規制緩和・民営化路線の推進である。それは、戦後日本資本主義の「安定化装置」であった「終身雇用」制を背景にする労使協調の枠組みを完全に崩壊させ、失業・非正規雇用の拡大をはじめとする「雇用破壊」と「賃金破壊」をもたらした。今や、正規雇用労働者は絶対数において毎年減少し、超長時間労働と年収二百万円という絶対的貧困にあえぐ労働者の比率が急速に高まっている。雇用の破壊は青年から高齢者にいたる全年齢層に広がっている。
 福祉は切り捨てられ、年金制度の崩壊などを口実にした大増税によって、社会的「安全」感覚は失われた。自殺者は年間三万人以上に達している。小泉政権の下で、財政危機は雪ダルマ的に加速した。今や、公的債務は中央・地方合わせて九百五十兆円以上(GNPの一・六倍)という天文学的水準に達している。小泉政権は、この社会・経済的危機を、労働者・民衆に「自己責任」を強制するいっそうの犠牲転化によって乗り切ろうと試み、「弱肉強食」の格差社会を作りだした。いうまでもなくこの「競争」に生き残る者は、ごく少数に過ぎない。
 第三は、この格差社会がもたらす大衆的抵抗の芽を押しつぶすために、強権主義的監視と管理と排除の体制を築き上げ、民主主義と人権を解体する動きである。教育現場における「日の丸・君が代」の国家主義イデオロギーの強制、あいつぐビラ入れへの逮捕・起訴、「共謀罪」新設法案などはその一例である。
 小泉政権のこうした一連の政策は、小泉内閣が採用した「諮問会議」(経済財政諮問会議、総合規制改革会議など)を通じた首相官邸のトップダウン方式による政策決定を伴っている。それは伝統的なブルジョア議会制民主主義をも破壊するものである。
 郵政民営化法案の否決は、小泉政権の四年間で蓄積された矛盾が、旧来の利益配分型調整による社会的統合の維持に固執する自民党の「旧構造」的政治家の反乱という形をとって表現されたものであった。

解散強行の意図は何か


 小泉首相は、郵政民営化法案への自民党内からの猛反発に対し、妥協を排して、強行的に押し切る決意を固めていた。小泉は、「改革」派対「守旧」派の図式によって、自民党内の反対派を押しつぶし、新自由主義路線での突破に打って出た。われわれはここから何を読み取るべきなのだろうか。
 第一に、新自由主義的「改革」路線によって経団連などに代表される大ブルジョアジー主流の支持を獲得し、さらに競争社会に「勝ち抜く」ことに展望を見いだそうとする上層労働者・市民の間での支援を取り付け、あわせて「強力な指導者」のイニシアティブによる絶望的状況からの脱出を求める中下層労働者・市民の「期待」をデマゴギッシュに操作しようという戦略である。自民党の「守旧」派的利害調整構造の一掃をはかり、都市において民主党にさらわれていた「上層・中層」市民票を奪還する狙いもそこに込められている。
 第二は、アメリカ帝国主義支配階級からの支持の取り付けである。ブッシュ政権との間に、グローバル戦争での対米無条件追随的「日米同盟」関係を築き上げてきた小泉政権は、郵政民営化を通じてアメリカ資本の圧力に全面的に応じようとしている。
 郵政民営化、とりわけ三百四十兆円の郵貯・簡保資金の市場開放は、クリントン政権時代の十年前からのアメリカ帝国主義の要求であった。そのことは「年次改革要望書」という米政府の対日政策要求に示されていることであり、小泉政権は米政府との頻繁な会合によって、この要求に応えたのである。
 第三は、「民営化」とその強行突破に対するマスメディアの支持である。とりわけ「朝日」から「産経」にいたるまで、大新聞の社説は小泉応援団として「郵政民営化」をたじろぐことなく貫徹せよ、とする論調に貫かれている。そしてメディアを取り込んだ「改革」派対「守旧」派という単純な対立構図によって、小泉首相と自民党への支持率は解散以後、急速に高まっている。この中に、長期にわたる左翼と労働者・市民運動の後退を背景にした、「国民的」レベルにおける民主主義的政治意識の崩壊・解体現象の一端が表現されている。
 これらの結果、小泉の「郵政解散・総選挙」方針は、民営化反対候補への「刺客」擁立がクロースアップされていることともあいまって、現在のところ世論の多数を獲得しているようである。
 いずれにせよ、「9・11」総選挙の帰趨は、今後の歴史を画するものとなるに違いない。グローバル化に命運を託する小泉と大資本は、このハプニングをとらえて、全面的攻勢の機会と位置づけている。それは新自由主義的社会再編にとどまらず、改憲と「戦争国家」体制、そして首相に権限を集中する強権主義的政治体制の確立に向かう、決定的な踏み出しとなるだろう。

正面から民営化反対を

 郵政民営化法案に対して、郵政労働者ユニオンとATTACジャパンなど「郵政民営化監視市民ネットワーク」は、総力で反対運動を展開した。それは少数ながら「民営化」をめぐる攻防を、自民党内の「小泉・反小泉」の争いだけではなく、新自由主義的グローバリゼーションに対して「公共サービスの防衛」を軸にした労働者・市民のオルタナティブな改革の展望を突き出す上で、きわめて貴重な経験であった。
 今回の総選挙は「郵政民営化の是非を問う選挙」だと小泉は訴えている。そして「民営化」に反対する者は、改革に反対する利権勢力だと印象づけ、一点突破的に政治イニシアティブを掌握しようとしている。
 「争点は郵政問題だけではない」と野党は主張する。もちろんそれは正しい。しかし小泉の仕掛けた「民営化の是非を問う」という突き出しに対して、労働者・市民はそれを避けて通るのではなく、正面から「郵政民営化反対」―新自由主義的グローバル化反対と「公共サービスの防衛」に基礎づけられた公正で連帯的な社会のイメージを打ち出していかなければならない。
 そしてこの点においてこそ、利益分配と保守的な「共同体」や「家族」の価値に裏打ちされた国家主義を鼓吹する亀井などの「郵政民営化反対」論、親米的新自由主義路線と一体化した「小さな政府」と表裏一体関係にある「改憲ナショナリズム」に突き進む小泉路線に正面から対決する左派の立場が問われるのである。
 綿貫民輔、亀井静香などの「国民新党」や、田中康夫・長野県知事を代表にかついだ小林興起、荒井広幸らの「新党日本」が、自民党「郵政民営化反対」議員によって、あわてて結成された。だがこれらの「新党」は一九九〇年代初頭の「日本新党」や小沢一郎の「新生党」などのインパクトを持ちえない。それは自民党内の「旧構造」の凋落を表現するものであり、何人かの前職議員の当選を勝ち取ったとしても急速な崩壊は必至である。
 他方、民主党は「政権交代選挙」と位置づけて、今回の総選挙を闘おうとしている。しかし今回の総選挙は、民主党にとって「想定外」であり、基本的に小泉の設定した土俵の上で闘わざるをえないという守勢に立たされている。自民党の分裂選挙は本来「二大政党」構造の下では民主党にとって有利な条件なのだが、現在のところ小泉・自民党のペースで事態が進行している。
 それは、マニフェストにおいて「自衛隊のイラクからの撤退」を掲げたとはいえ民主党が九条改憲や海外派兵を肯定し、新自由主義的な「小さな政府」と民営化・市場主義的規制緩和論であるという、小泉・自民党との共通の立場に立っていることの帰結である。民主党の岡田執行部は、小泉の政策路線をその根本において批判することはできない。総選挙の結果によっては、同党の新たな再編・分解の可能性が浮上することになるだろう。

新しい左派の闘いへ


 今回の総選挙において、今や衆院議席の三%勢力に落ち込んだ共産、社民両党は、小泉首相の仕掛けた「郵政選挙」の中で、きわめて困難な闘いを強制されている。独自の政治潮流を目指そうと闘ってきたわれわれをふくむ労働者・市民勢力も、今日の主体的諸条件と力関係の中で、今回の総選挙に独自の、あるいは左派共同の候補を擁立することはできない。
 われわれは、今回の総選挙において「郵政民営化反対」、そして改憲とイラク派兵に反対する政党・候補者への投票を呼びかける。われわれは郵政民営化と新自由主義グローバル化への反対、改憲・戦争国家化反対の主張と運動を発展させ、広範な人びととの討論を通じて、小泉・自民党の勝利を阻止し、共産、社民など郵政民営化・改憲・派兵に反対する政党、候補者に投票するよう訴える。
 そしてその中から、共同の運動と新しい労働者・市民の政治潮流を作りだしていく可能性を手繰り寄せていく必要がある。長期的に見て危機をチャンスに転化させていく闘いは、今回の総選挙の歴史的意味を労働者・市民がいかに共有していくかにかかっている。ともに闘おう!(8月22日)                       


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