| プラント労働者を泣かせた労働者大会のサギ芝居 かけはし2005.7.4号 |
76日間ストライキの結末
蔚山プラント労組のストライキは76日間にして、その幕を下ろした。
全国を騒がせたこの強力なストライキは、労働運動と、特に非正規職撤廃闘争に多くの疑問と展望とを残した。だが同時に、まさに生涯ノガダ(土方)人生の、いささか歳を重ねた労働者たちの前に、あるのかないのかさえ釈然としない「多者間交渉を通じた共同協議会の中間合意」なるものが、コロンと投げ出された。
これは彼らが今日までのノガダ人生において出合ったことのない、いまひとつの新たな欝憤であり、挫折だ。
「多者間交渉を通じた共同協議会の中間合意」は建設プラント労働者たちが望んでいたものでは決してない。これを投げ与えてストライキの勝利を語るのは、まるで話にもならないサギ芝居そのものだ。
闘争で何が保障されたのか
共同協議会の「中間合意文」(別掲)を見てみよう。「@賃金等の勤労条件、福祉について」で「1日8時間、週44時間」労働となっているが、そのほかの基本給、4大保険、有給休日など、すべての部分が「実務協議会で論議」することとなっている。
合意文自体を見てもどのようになるのか全く見当がつかない。常識的に現行法上、正確な協約でもない実務協議がキチンとなされる法的根拠や効力がない、ということが重要だ。現行法や団体協約でさえも労組の力が弱ければ、ただの紙クズ同然だというのに、実務協議というのは単にストライキを中断させるための言葉遊びにすぎない。
「A不法な多段階下請けの規制について」もまた現行法をオウム返しにしただけで、それを順守する根拠は全く述べられていないし、これまた実務協議の引き延ばしである。「B組合員採用時の不利益禁止について」も2項と全く同じだ。「C労働組合の認定と便宜提供」は組合費を集めてくれるということひとつで労組を認定するというもので、労組幹部の事業場への出入りもまた工場長協議会で肯定的に検討すると言われているが、これまた常識的には信じられないことだ。
保障されたものは「希望事項」としてはありえるものの、現実ではない。ゴミやホコリ、雨風を避けて飯を食える空間、洗面施設、着替えをする空間などの論議は一行たりとも、触れられていない。
すべての項目に「実務協議で論議する」というただし書きがあるが、投じられている数々の妄想に加え、「労働の解放」も付け加えて実務協議で論議してはどうだろうか?
勝敗の核心は団体協約だ
今回の蔚山プラント労組のストの過程においてSKと会社側は交渉を無視し続けてきたが、市民団体や蔚山市庁が交渉のテーブルに参加して多者間交渉を通じた共同協議会が構成されるにいたり、会社側はやむなく参加するに至った。ともあれ会社側を交渉のテーブルに引っ張り出したのは、多者間交渉のテーブルである共同協議会の功ではある。
だが労組がストライキをした目的は団体協約だ。個々人のノガダと呼ばれる、そして元請けはもちろん下請けに至るまでも労働者として認められない建設プラント労働者の特殊な事情にあって、個別交渉を通した何らかの成果をあげたとしても、実際に現場への復帰の過程においてそれが守られるという根拠はないがゆえに、労組の立場としては団体協約が実現するかどうかはストの勝敗がかかった問題なのだ。
核心は団体協約なのに、社会的合意を云々し続け「多者間交渉の共同協議会」を作り出したことがストの注目すべき成果だとしゃべり続けているのは、会社側のギマンに同調するものにすぎない。実際に市庁や市民団体がテーブルにスプーンを並べてはみたものの、それ以外には食べる材料はなかったし、またそれは望むべくもなかった。
まさに重要なことは隠したり小さくしつつ、重要でもないことを過大包装する理由は何なのだろうか? この「中間合意」に団体協約の内容が、ないからだ。中間合意文を記者会見で発表した直後、会社側は団体協約の内容が全くないがゆえに、この合意が満足すべきものであることをハッキリと語ったが、労組側の交渉代表は不安を隠せなかった。この相反する反応は「中間合意」が労組側の投降だということを反証している。
5・27蔚山でのブルース
5月27日、蔚山で開かれた全国労働者大会が終わるころ、プラント労働者たちの目ににじんだ涙は、スト勝利への感激の涙だと敢えていうことができるのだろうか? 敢えてそう騒ぎたてている人々がいる。演壇で中間合意の内容とストの勝利を宣言したとき、プラントの組合員たちは確かに感嘆の声と歓呼の叫びをあげ、小隊長たちを胴上げしたりもした。それは間違いなく勝利の光景のようだった。
だが全国労働者大会が開かれる当日の朝に至っても交渉への展望は不透明だった。そしてその一方で、交渉代表の名簿にもなかった民主労総の大物幹部が交渉に急派されたり、さらに結果がどうなるかは知る人ぞ知る、だったと伝えられる。組合員らは小隊別に指導部の戦術に集中し、交渉が決裂する確率が高かったのとは反対に士気は下がってはいたものの、それにもかかわらず再び闘う覚悟を固めていた。交渉が決裂すれば、それによって再び蔚山市内が戦場となることは火を見るよりも明らかなことだった。それが組合員の全般的な雰囲気だった。
だがあらかじめ集結していたタルトン公園で11時ころ小隊長らが集められ、「合意するだろう。もう寸前だ。だが気が抜けてはいけないので、話はするな」という気落ちする伝達があった。そうしながらも「ひと勝負する」との基調はそのまま維持する、と伝えられた。けれども組合員らは徐々に交渉妥結への期待感にひたっていった。自分たちが信じて従ってきた指導部が、命を賭けた闘いを売り飛ばすサギ芝居を繰り広げているとは知らないままに。
とにもかくにも長い長い集会の土壇場でストの勝利が宣言された。年かさの多い組合員たちはその言葉を信じたかった。闘いの同志たちは自らを激励し感激の涙を流した。だがほどなく酒の席で「それで結果はどう?」という問いに、だれもハッキリとは答えられないという彼らの現実を見抜いてしまった。
経験豊富な先輩がサギ師?
翌日、組合員らが集まったとき、重苦しい雰囲気が満ち満ちていた。合意内容をコピーして渡すというので待っている組合員らに対して、指導部は「麗水でも最初の闘いでは団体協約をもぎ取れず、翌年の闘いでようやく手にできた」という弱々しい弁明をし、合意文を渡してもくれなかった。
組合員教育の時間になってやっとペク・ソックン建設連盟副委員長が「団体協約がダメだったので、工場別に適宜、復帰せよ」という交渉の真実を組合員らに正式に明らかにした。
プラント労働者たちは、組織されてから、まだいくらも経ってはいない。彼らは民主労組運動についての経験も、ほとんどない。87年の労働者大闘争の際、初めて民主労組を叫びつつ爆発していた労働者たちの状態と極めて似通っていた。
凄絶なほどに劣悪な労働条件を改善してくれと言って、遂に決起したというのに、87年から鍛えられ、老練でレベルの高い運動の先輩である指導部は、プラント労働者たちの本当の要求と命を賭けた闘いを空虚なものに仕立ててしまった。
彼らがプラント労働者たちのように闘い、かつそのような結果をもたらしたのであるならば、ストの勝利などというサギを働くわけは絶対にないし、ひと勝負かけようとする闘いの意志を眠らせようとすることも断じてありえない。知っている奴、それも親しい奴からサギではめられるということは、よくよく悔しく、そして悲しいことだ。
紙くずとなった中間合意
蔚山建設プラント労組のスト76日目にあたる6月1日、組合員総会が開かれた。この日の賛否投票は「中間合意」に対してではなく、「現場復帰」についてだった。ともかくも86・4%の賛成で、スト終了と現場復帰が宣言された。
だがスト中も1500余人がストに参加せず、12〜14万ウォンだった日当を多いときには50〜70万ウォンももらって働いた、という。会社側では、このようなやり方で非組織労働者を確保しているために、組合員らの現場復帰を、そうあっさりと受け入れてはいないのが実際の状況だ。
それでなくとも問題の多い「中間合意」の「採用時の不利益禁止」の条項は、いかなる効力をも発揮できずにおり、実際に多くの組合員らが組合脱退の強要を受けており、あまつさえ脱退の覚え書きを書かなければ採用しないという侮辱を味わっている。
1日、実務協議が再開されたとき、会社側は「交渉権を委任したことはなく、代表性を認めていない」として協議を拒否した。会社側の4人の代表は5月27日の合意当時、12の専門建設企業を代表して署名したにもかかわらず、法的効力がないという判断に言葉を変えたのだ。ストを終えて現場復帰を宣言した状況にあって、労組としては会社側の開き直りに対して対抗するいかなる力もなくなった。こうして「中間合意」にあれほどに何度も記されていた実務協議は、いとも簡単におしまいになってしまった。
50代が70%を占めている建設プラントの組合員たちが76日間のストライキで手にしたものは何もない。労組を放棄しない限り、現場復帰も難しい。76日間、稼げなかったのに、「渇しても盗泉の水は飲まず」ともばかり言ってられない。彼らにサギを働いた者どもは、いったい何をしたのか、気になるばかりだ。
現場復帰ができず他所に仕事を求めてこの地を離れた労働者と、ある同志が電話で交わした対話だ。
「われわれ労働者の暮らしは、なんでこうもしんどいんだろう?」
「あゝ、だから世の中を変えなきゃならないんじゃないの?」
「世の中変える前に、こっちがオダブツじゃないか?」(「労働者の力」第80号、05年6月10日付、ホ・ソンホ/編集局長)
共同協議会中間合意文
1、賃金などの勤労条件、福祉について
●所定(基準)勤労時間は1日8時間、週44時間とする。
●会社が支給する基本給には週休手当、年・月次手当、延長・夜間勤労手当、退職金を含まない。
●4大社会保険料(国民年金、健康保険、雇用保険、労災保険)の場合、使用者負担金は使用者が、勤労者負担金は勤労者がそれぞれ負担する(国民年金と健康保険の具体的な適用は実務協議を通じて論議する)。
●有給休日と有給休暇の具体的な内容は実務協議で論議する。
2、不法な多段階下請けの規制について
●建設産業基本法に定めた不法な下請けを禁止する。
●勤労者に下請けを与えない問題は実務協議で論議する。
3、組合員採用時の不利益禁止について
●組合員であることを理由として採用時に不利益を与えない。
●採用時の不利益禁止についての具体的な方案は実務協議で別途、論議する。
4、労働組合の認定と便宜提供
●会社(協力社)は組合員についての組合費を一括控除し、労組に引き渡す。
●労組幹部の事業場(発注会社および元請け社)への出入り問題は工場長協議会の論議を経て肯定的に検討する。
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