もどる

「国民保護計画」拒否する地域の闘いを          かけはし2005.7.25号

戦争協力のための住民動員反対

東京都国民保護計画の策定を許さない!

監視・排除の軍事化社会は人権と民主主義を破壊する

 七月九日、東京の文京区民センターで「東京都国民保護計画の策定を許さない!」集会が開かれた。主催は「東京都国民ホゴ条例を問う連絡会」。
 昨年六月に有事法制の一部として成立した「国民保護法」の下で、今年三月までにほとんどの都道府県(沖縄、新潟など4県は未制定)で「国民保護協議会条例」「国民保護対策本部条例」が制定され、三月末には「国民の保護に関する基本指針」が閣議決定となった。
 東京では四月にこの「基本指針」の下で動員される「指定地方公共機関」(病院、放送、電気、ガス、水道、運輸)などが指定された。八月には「国民保護計画」の原案、十一月には計画案が出され、来年二月の都議会に提出される。また市町村レベルの「国民保護計画」も二〇〇六年度中には作成されることになっている。この日の集会は、住民には隠されたまま上意下達的に作成されるこの有事「住民動員」=戦争協力の強制を、各地域での自治体交渉などを通じてはねかえしていくために開催された。
 最初に連絡会のメンバーでもある石埼学さん(亜細亜大学教員、憲法学)が、「国民保護計画」の実態とその狙いについて説明し、この計画が決して災害や戦闘から住民を「避難」させるためのものではなく、平素から住民全体を「危機管理」の体制に巻き込むためのものであることを明らかにした(要旨別掲)。
 連絡会の山本英夫さんが、東京都議会に対する交渉・申し入れの経過を報告した後、川崎市議の猪股美恵さんが発言した。
 「川崎では、今年十二月に市議会で国民保護協議会設置条例が提出され、来年三月には保護計画ができるということになっている。しかしそのずっと前から動員体制は築かれている。川崎でも阪神・淡路大震災以後、防災計画に自衛隊が組み込まれるようになった。二〇〇四年からは警察のOBが危機管理室に入っている。議員も防災ネット、防犯ネットや監視カメラの設置を訴えるなど、こうした動きに対する危機感はほとんどない。平時の有事化とも言うべき動きを批判する発信を続けていきたい」と猪股さんは訴えた。
 続いて、戦争に協力しない、させない練馬アクションの池田さん、中野区議の武藤さん、山谷労働者福祉会館活動委員会の藤田さん、立川自衛隊監視テント村の大西さん、非戦のまち・くにたちの北原さん、東水労の芝崎さん、破防法・組対法に反対する共同行動、杉並区役所の仲間、今年広域防災訓練が行われる町田市の仲間から、各地の取り組みが報告された。
 連絡会では八月二十七日に集会・デモを予定している。       (K)


石埼学さんの講演から
平素から住民を「洗脳」する有事危機管理体制

 東京都では、この三月都議会で「国民保護協議会条例」「国民保護対策本部条例」が可決されたが(反対は、共産党、生活者ネット、自治市民の福士敬子さん)、実際には条例ができる去年の段階から各市町村に「国民保護」についての説明会が行われていた。
 「国民保護」の役割分担から言えば、政府は自治体に避難を指示したり、警報を発令するだけで、住民避難を実際に動かすのは市区町村だ。しかし市区町村職員は、危機の際に実際に住民誘導ができるわけではなく、それを担うのは地域の消防団ということになる。
 政府は、国会答弁でも分かるように現実の武力攻撃などを想定していない。そこで本当の狙いは、「平素からの備えと予防」という考え方に住民を「洗脳」することだと考えられる。大規模集客施設とされている学校、駅、百貨店、スーパー、野球場などの監視、民生委員、福祉施設、国際交流協会との連絡など社会全体を巻き込む「国民保護体制」が築かれようとしている。
 この中で、自治大学校、警察大学校、消防大学校などに「危機管理」の講座が設置され、意識啓発の研修会が行われ、宣伝広告も活発になされている。住民向けの研修会が開かれ、そこに自衛隊員が講師として派遣されるということになるだろう。地域が草の根から掘り崩されている。
 しかし「住民避難」計画といっても、米軍や自治体の動きが明らかにされるわけではないから、どこに「避難誘導」すべきかという計画は空語に近い。まったく上意下達のデモクラシーや立憲主義とは無縁の体制が築かれることになる。ロンドンでの無差別テロは許しがたい事件だが、テロの脅威を受けるような海外での戦争行為を行わせないことが大事だ。
 この秋以後、全国でゲリラを想定した陸自と警察の治安出動訓練が実施され、十一月には福井の美浜原発で北朝鮮のゲリラ襲撃を想定した住民「避難」訓練が行われる、と報道されている。法律では住民の避難は「自主性」に委ねられているが、日頃から避難しようとしない人の「説得」活動を行い、「説得」しても考えを変えない人びとの「見極め」をどこでつけるか、などということも考えられているようだ。こうした「強制」と「排除」の構造に注意していく必要がある。(講演要旨:文責編集部)            




核とミサイル防衛NO!キャンペーン
「先制・予防・事前介入」に踏み込む日本の軍事戦略

 七月十四日、東京の文京区民センターで「核とミサイル防衛NO!キャンペーン2005」の発足集会として「ミサイル防衛と日本型軍事法制の転換 備えあれば、危険アリ!?」をテーマに水島朝穂さん(早大教授・憲法学)の講演が行われた。
 今、国会では迎撃ミサイルを発射権限を現場司令官に委ね「文民統制」を破壊する自衛隊法改悪案が衆院を通過し、参院で審議中である。小泉内閣は「北朝鮮のミサイルの脅威」を口実に、巨額の予算を投入してMD(ミサイル防衛)導入・配備を押し進め、海上配備型次世代迎撃ミサイルの飛行実験を九月に、また迎撃実験を来年三月に予定している。また今年度中にMDシステムの地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)国内でライセンス生産する契約を、製造元の米ロッキード・マーチン社と三菱重工との間で結ぶ見通しという報道もなされている(朝日、7月16日夕刊)。
 講演に先立ってビデオ「軍需工場は、今」が上映された後、水島さんの講演に移った。
水島さんは、「個人に認められた正当防衛の権利を国家にあてはめることはできない。国家に固有の自衛権などというものは本来あり得ない」と語り、MDに体現される「先制・予防・事前介入」思考の突出を批判した。さらに水島さんは一九七六年の三木内閣当時の「防衛計画大綱」、九五年の「大綱」との対比で昨年十二月に閣議決定された「新大綱」が@「統合安全保障戦略」という名の三自衛隊の統合運用、A「専守防衛」からの最終的離脱としての「多機能弾力的防衛力」、B「国際的安全保障環境の改善」という名の「国連ぬきの米単独行動主義」への寄り添い、という性格を持っていると指摘した。
 水島さんは、またミサイル発射権限を自衛隊の現場指揮官に委譲するという自衛隊法改悪案との対比で「ドイツでは核ミサイル攻撃をふくむ非常事態への対処でも議会の承認を必要とする」ことを指摘して、「緊急事態」を口実とした議会の民主主義的統制権限の破壊の危険性を訴えた。
 最後に、水島さんは「どうせ……にしかならない」という「どうせ思考」を拒否し、困難な中でも地道に発信を続ける努力の必要性を強調した。   (K)



時 評

アスベスト被害の社会的影響
健康破壊を放置した企業と国責任は重大だ

今日を精いっぱい生きています。明日をください

 「今日を精一杯生きています。明日を下さい」と記者会見で、石綿障害に苦しむ被害者の一人は、涙ながらに訴えた。
 石綿は、一九七〇年から一九九〇年にかけて日本に大量に輸入され、そのほとんどは、建材、建築物に使用されていった。
 石綿製品を製造していたクボタの旧神崎工場(兵庫県尼崎市)では、石綿による従業員の健康被害はもとより、従業員の家族や工場の周辺住民までにも及ぶ被害が明らかになった。クボタを皮切りに石綿による健康被害は、製造業八十七社を対象にした。これまでの経済産業省の調査結果では、中皮腫などを原因にした死者数が、三百七十四人にのぼっており、なお、継続調査が必要であることが明らかになった。
 その内訳は、中皮腫は百十四人、じん肺が百五十四人でいずれも労災認定されている。なかでもニチアスは百四十一人で、奈良県にある王子工場では、一九三七年から二〇〇四年までに主に断熱材を製造に従事していた従業員の死亡者は、五十七人に達した。
 石綿の有害性からくる健康障害には、大きく分けて三つが上げられている。一つ目は、石綿肺(じん肺の一種)これは肺が繊維化し、せき等の症状があらわれ、重症化する呼吸機能の低下がみられる症状。二つ目には、肺にできる悪性腫瘍、つまり肺がんを発症する。三つ目には、胸膜、腹膜等の中皮腫(がんの一種)があげられている。
 石綿が原因とみられる業務に携わった労働者の中皮腫、肺がんの労働災害認定者の補償件数は、年々増加している。特に二〇〇〇年以降は、うなぎのぼり傾向にあり、二〇〇三年だけでも百二十人にも達した。先にも上げた健康被害を受けたのは、石綿が吹き付けられていた建物を解体するハツリ作業、石綿製品を用いた炉などの施設における断熱材・保温材の補修作業に携わった現場労働者たちである。
 さらにまだ判明していない過去の中皮腫による死亡者で、石綿に関係している人たちの調査は現在進められている。

十九年前に条約
を批准していたら

 しかし、何故これほどの被害がでるまでこの問題が放置ともいえる状態におかれたのだろうか。
 国際労働機関(ILO)が一九八六年に採択した「石綿(アスベスト)の使用における条約」が、今年七月十五日の衆院本会議で全員一致により承認された。
 この「石綿(アスベスト)の使用における条約」を当時、日本社会党が国会審議で採択にかけたのだが、社団法人石綿協会の「石綿への作業安全性に問題はない」という主張を自民党が全面的に支持し、否決した経過があり、当時の与党政党や担当省庁の責任は重い。政府は、この批准により新たな措置をとる必要はないと語ったと言う。  
 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署は連名で「建設物からの石綿粉じん対策」、「建物の解体等の作業における石綿対策」等のパンフレットを作成し、石綿障害予防規制を二〇〇五年七月一日から施行する旨をうたっている。これに先行して、労働安全衛生法施工令が二〇〇四年十月に施行された。石綿をその重量に1パーセントを越えて含有する十種類の製品、@石綿セメント円筒、A押出形成セメント板、B住宅屋根用化粧スレート、C繊維強化セメント板、D窯業系サイディング、Eクラッチフィーシング、Fクラッチライニング、Gブレーキパット、Hブレーキライニング、I接着剤の製造、輸入、譲渡、提供又は使用が施工令第十六条により全面的に禁止された。
 しかし十九年前にこの批准を施行していれば、これほどの被害は拡大しなかったし、過去の経緯への反省の弁も当時の与党自民党からはない。国際労働機関(ILO)が、採択した「石綿(アスベスト)の使用における条約」の批准は、カナダ、ドイツ、ロシア、スペインなど二十七ケ国であり、欧州は八〇年代から石綿による健康被害対策が進み、日本は先の否決経過と被害の拡大が顕著になるまで対応が遅く、やっと七月十五日の衆院本会議で全員一致により承認された経過がある。

国による最大限
の補償が必要だ

 クボタの旧神崎工場での被害状況は近隣住民に及び、兵庫県の斉藤副知事は、公害健康被害補償法による公害病と認定し、早期救済を環境省と厚生労働省に求めた。
 環境省は、「保健所などが実施する健康診断の結果を分析しているが、公害と認定するには難しい要件もあり、検討を重ねたい」と回答したという。
 これまでの対応の遅さとそのことから派生した被害者拡大に対する環境省、厚生労働省さらに経済産業省のそれぞれの責任において被害者の全面的救済に踏み切るべきであり、過去の否決を決断した与党自民党は、被害者に全面的に謝罪するべきである。
      (浜本清志)


もどる

Back