もどる

介護保険制度改悪を許すな               かけはし2005.6.20号

社会保障制度解体に突き進む小泉新自由主義政府と対決を



文字通りの全面的改悪

 現在国会で審議中の、「介護保険法改正案」は、「給付拡大による財政的破綻」を理由に、大幅な負担増と給付抑制を柱とする、文字通りの「全面的な改悪」に踏み込もうとしている。
 一連の年金改悪、税制改悪の中で、老年者控除、配偶者特別控除の廃止を実施し、さらなる収奪に向かう小泉構造改革の路線を受けて、この改悪案は「社会保障制度全体を効率的、効果的に見直す」とする視点をぶち上げている。社会保障の一切を「介護保険」化し、「金のないものは保障を受けるべきでない」という、あからさまな新自由主義政策を、全面的に推し進めようとしている。このことは「障害者自立支援法」の強行による、次の段階での介護保険への「統合」、老人健診などの保険事業まで吸収するという、文字通りの全体構想として突き出されている。
 二〇〇〇年から開始された介護保険制度は五年目を迎え、その「見直し」を進めてきた厚生労働省は、八十頁を超す「介護保険制度改革の全体像」を発表。五年間で給付が三・二兆円から五・五兆円に「急増」し、今後高齢化のピークを迎えていけば破綻は避けられないと危機感を煽りながら、「利用させない、もっと金を払え」という暴論を正当化している。すでに衆議院でほぼ原案のまま可決され、現在参議院厚生労働委員会での審議に移行している。

予算減らしだけが目的

 今回の改悪案の最大の眼目は、「軽度の人のサービス切り捨て」と、「施設入所者の居住費用の全額自己負担化」の二点である。
 まず介護認定の「軽度」な要支援・要介護1の利用者に対し、「改善可能性が高い場合」は、現在のような家事の代行を含むサービスを抑制し、代わりに筋力トレーニングなどの「新予防給付」を行う、というものである。厚労省は当初「予防重視」に転換する理由として、軽度の要介護者の介護度が改善されていないと主張した。「不適切な」(つまり過剰な)家事サービスで高齢者が「楽をしすぎている」からだというのだ。しかし居宅介護においては介護度の改善が明らかであり、出してきたデータ自体がそれこそ「不適切」で、恣意的なものであったことが暴露され、撤回している。週一、二回でもヘルパーによる訪問介護によって、「生きる意欲」が引き出されていることなど、「現場」を全く見ようとしない姿勢が貫かれている。
 いずれにせよ、改悪案では、在宅介護サービス利用の二百四十万人のうち百万人分の介護給付を切り捨て、代わりに「筋力トレーニング」などの「新予防給付」を行うという。だが、このとってつけたような方針は、今回の最大の「注目事項」にもかかわらず、実際どのように誰が行うのか、全くあいまいである。結局予算を減らすこと以外、まじめに考えていないからなのだ。
 また、施設入所者のいわゆるホテルコスト(居住費・食費)を全額自己負担とする、という重大な負担の強化も、強行されようとしている。月六、七万円の年金から、個室利用で三、四万を負担した上で、さらに一割負担の利用料を払い、雑費を払うといくら残るのか? 厚生労働省は「本人の手元に年金が一万円ほど残るように設計した」と説明したそうである。
 さらにこれにとどまらず、将来的には特養、老健、介護療養型病棟などの入所者を一割減らし、重度者の割合を高める方向で「入所制限」を推進しようとしている。現在でも、三十四万人もの特養入所待機者がいるのにもかかわらず、である。
 全体として、「年寄りは長生きするな」という、明快なメッセージに貫かれた法案である。しかし、これはいわば第一段階であり、介護保険料徴収年齢の二十歳への引き下げ、保険料の大幅引き上げ、障害者施策との統合問題など、社会保障改悪はとどまるところを知らない。
 ほとんどすべての人を直撃する、この大改悪を許さない闘いを作り出さなければならない。

弱者排除の不平等制度

 介護保険制度は、それ自体が成立に当たってきわめて多くの問題をはらんだ「改悪」であった。まず介護財源の国庫負担を半分から四分の一に減らし、半分を国民の介護保険料でまかなうという、新たな国民負担であると同時に、保険者である市町村ごとに、介護サービスの利用が増えれば、保険料自体が増大する仕組みだからだ(3倍以上の格差がある)。「負担なければ給付なし」。政府や自治体が責任を持つ、税を財源とする制度から「保険」への切り替え自体、絶対必要不可欠な公的サービスの後退を意味していた。その矛盾の帰結こそは、利用料の一律一割負担の実施による、低所得者への負担増―高額所得者の負担減という「弱者を排除する機会不平等なシステム」である。
 人類史に例のない高齢化社会の深まりの中で、深刻な「家事労働負担」である認知症(痴呆症)を含む高齢者介護を、家庭(=多くの場合主婦)から解放するという、「介護の社会化」スローガンが、都合よく利用されてきた経過もある。
 今回の介護保険法改悪は、この介護の社会化という観点からしても、完全に逆行するものである。利用を抑制された要介護者は、必然的に「家庭に閉じ込められる」ことになるだろうし、誰が介護を負担をするのかも、明白である。
 もはやいかなる改良の幻想も、はぎとられようとしている。
 今こそ、民衆に牙をむき出した小泉新自由主義政権を、徹底的に暴露し、追及しよう。
 介護保険制度改悪反対!社会保障制度を守り抜こう!     (樹村稔)



CADTMの宣言
G8諸国の債務帳消し計画はとんでもないゴマカシだ

 七月サミットに向けて六月十一日にロンドンで開かれたG8の財務相会議で「アフリカ支援」を名目に18の重債務貧困国の債務を「完全免除」する合意・確認が行われた。しかし、それがいかにごまかしに満ちたものであるかをCADTM(第三世界債務帳消し委員会)が批判している。なおこの声明はそれ以前の米英合意の段階で発表されたものである。G8のごまかしと約束反古を許さない闘いを!


 権力者たちの地政学的戦略や、さもしいそろばん勘定とはまったく異なる立場で、CADTM(第三世界債務帳消し委員会)は、次のように主張する。全途上国の公的対外債務の完全帳消しは、実際には簡単に実現できることであり、G8が七月上旬にスコットランドで開催するサミットで行おうとしていることとは、真っ向から対立するものだと。
 世界の金持ち諸国の指導者が声明を出したが、第三世界諸国の発展のために資金援助するという問題は長いこと議論されてきたにもかかわらず、これまでのところ確固とした満足できる結論はただの一つも出されていない。しかし、南の国々に対して、公的対外債務の返済を直ちに止めて、その資金を自国民と議会の管理の下で自国のために使うよう要請することは、簡単にできたはずだ。
 今日の状況は、完全なる大失敗だ。そして、来るG8サミットで予定されている様々な計画は、煙幕以外の何ものでもない。
 第一に、この計画が関与しているのは、世界銀行とアフリカ開発銀行による債務だけである。加えて、イギリスの提案は、現在から二〇一五年までの返済の停止を主張しているにすぎず、債務の一〇〇%帳消しからはかけ離れた内容だ。これらの計画がどういうものであろうと、詰まるところ単なる部分的債務救済であり、宣伝目的として「帳消し」の名前を付けているだけである。別の言葉で言うなら、ゴマカシだ。
 第二に、債務救済の方法は常に、北の多国籍企業の利益のために南の経済を徐々に開放していくという条件が付けられる。債権国は、債務国の公共サービスや自然資源の民営化を継続して行うよう求めるが、その論理は、人々に生活水準の向上を期待させる余地など一切与えないものだ。
 第三に、G8のいわゆる寛大さの「恩恵」を受けることになる国は、わずか二十七カ国で、途上国の全人口の一〇%以下に相当するものでしかない。重債務貧困国(HIPCs)計画は一九九六年以降、大きく宣伝されてきたが、失敗に終わっており、債務の重圧を救済できていない。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、現在この計画を実施中の二十七カ国は、二〇〇五年には二〇〇三年よりも多くの債務返済をすることになるという。
 第四に、主要な開発資金提供者たちは、これによってアフリカのための資金が自由に使えるようになると、われわれに信じさせようとしている。実際には、これまでと同じように、ひも付きなのだが。政府開発援助(ODA)は、二〇〇四年には八百億ドル以下にとどまっており、その多くは、これを必要としている地域社会には全く届いていない。他方、債務により資本流出が続いており、途上国は対外債務返済のために、年間総額三千七百億ドル以上を使っている。
 CADTMは債務に関する声明の内容について、最大限の警戒を怠らないようにしている。G8諸国はこれまで、約束を反古にしたことがあるからだ。今日現在、名前にふさわしい大規模な帳消しは、発表されていない。
ダミアン・ミレット:CADTMフランス代表
エリック・トゥサン:CADTMベルギー代表
    (05年6月9日)

改憲のための国民投票法案反対
市民と国会議員の院内集会で切迫する情勢を確認

改憲派にとって国
家とは自分のこと

 六月八日午後一時から、衆院第二議員会館で「憲法改悪のための国民投票法案反対 市民と国会議員の院内集会」が開催され、百人が集まった。主催は「憲法」を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、平和憲法21世紀の会、全労協、キリスト者平和ネット、宗教者平和ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会で作る憲法改悪反対運動共同会議。
 女性ネットの山口菊子さんの主催者あいさつの後、参加した国会議員が発言した。沖縄選出の参院議員・糸数慶子さん(無所属)は「沖縄は平和憲法を獲得するために本土復帰闘争を闘ったが、さらなる基地負担を求める動きが強まっている」と訴えた。社民党の土井たか子衆院議員は、「改憲派は国のために国民はあると主張しているが、彼らにとって国すなわち自分、国家権力すなわち自分なのだ」と批判した。
 沖縄出身の参院議員・喜納昌吉さん(民主党)は「日米同盟のトゲが沖縄に突き刺さっている。沖縄は日米安保のゴミ箱になっている。平和憲法をもっと深めていくことが必要だ。世界の中で徹底して武力を放棄した国があってもいい」と主張した。共産党の衆院議員・山口富男さんは、国民投票法案をめぐる国会情勢について「衆参両院の憲法調査会最終報告書は、憲法調査会を衣替えして法律の起案も審議もできる委員会にしようと述べている。いま準備されている国民投票法案とは九条を打ち壊すための法案だ。しかし、憲法調査会の衣替えのメドはまだ立っていない」と説明した。
 社民党党首の福島瑞穂参院議員は「大幅な会期延長が予定されており、国会法改悪や国民投票法案も予断を許さない情勢になっている。その時間を使って介護保険法改悪、共謀罪新設も通る可能性がある」と語った。
 国民投票法案に反対する署名が新たに二万七千百七十九筆、参加した国会議員に手渡された。

言論の自由への
規制を許すな!

 次に、国民投票法案をメディア規制の観点から批判する報告を毎日新聞記者の臺(だい)宏士さんが行った。臺さんは、次のように語った。
 「国民投票法案では、報道機関が投票結果予想を公表するなとか、虚偽の事実を記載してはならないとか、投票結果に影響を及ぼす目的で記事を掲載してはならないとしている。この規定は公選法をほぼそっくり援用したものだが、公選法では『報道の自由を妨げるものではない』と明記されていることが与党の国民投票法案ではぬけている」。
 「虚偽とか、公正とは何かが問われなければならない。『公正』という言葉は、安倍自民党幹事長代理がNHKの女性国際戦犯法廷の報道番組に『公正・公平な報道を』と述べたことを見ても、権力者の都合の良いように使われる。権力は露骨な形ではなくメディアの自主規制を求めるものだ。この法案の規制は報道機関だけに適用されるものではなく、『何人も……できない』と書かれているように、だれもが制約を受けかねない」。
 「個人情報保護法は、ブライバシー保護の名目で公人の犯罪の隠蔽に使われる可能性がある。一度作られた法律は一人歩きする。今やマンションへのビラまきが逮捕・起訴される時代だ。憲法九条だけではなく、二十一条(集会・結社・表現の自由と通信の秘密)も危機にさらされていることに、ぜひ注目してほしい」。
 最後に平和フォーラムの福山真劫事務局長とGPPAC(武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ)の松村ますみさんが連帯のあいさつを行った。松村さんは「世界第二位の軍事力を持った日本が、憲法九条を捨てたらどうなるかを考えたらぞっとする」というフィリピンのNGOの仲間の言葉を紹介して、九条の国際的な意味を強調した。
 八月までの、あるいは盆をはさんで九月までの国会会期延長が取り沙汰されている。延長された期間中に、憲法改悪のための国民投票法案がむりやり成立に持ち込まれる可能性も浮上してきた。こうしたもくろみを阻止する運動を作り上げよう。      (K)


もどる

Back