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5・30もんじゅ訴訟│最高裁が住民敗訴の不当判決    かけはし2005.6.13号

つくるな・使うなプルトニウム再処理・高速増殖炉から撤退を



「最低裁の最低判決」だ

 「最低裁の最低判決!まさにその通りで言いえて妙」ともんじゅ訴訟原告団事務局長の小木曽美和子さんは判決後に総評会館で開催された報告集会でこう切り出した。
 あらかじめ用意されていた集会名称の横幕「最高裁判決報告集会」の高の字の上には低の字が貼りつけられた。横幕の右には「吹き飛ばせ不当判決!」と、左には「最低裁の最低判決!」と書かれた垂れ幕が掲示された。小木曽さんは二十年にわたる支援へのお礼に続き、垂れ幕を振り返りながら判決を前にした原告団の心構え、判決に対する怒りや今後の運転再開阻止に向けた決意を語った。

「わずか10秒」の判決言い渡し


 五月三十日、午後三時の判決を前に最高裁南門の前には傍聴券を求め、原告、被告側合わせて二百人以上の列が出た。三月二十七日の口頭弁論に続き、雨が降りつける。社会文化会館で行われた前段集会でもんじゅ訴訟弁護団の海渡雄一さんは、「口頭弁論から判決までの期間が短いので、あまり良くない判決が出るのではないか」と不安を支援者に伝えていた。傍聴券は一般に対し二十七枚、取得した傍聴券は各地ごとに振り分けられた。
 開廷から間もなく、被告側の傍聴者がほくそ笑みながら退廷してきた。傘にさえぎられ原告団の姿は見えない。すぐに抗議集会がはじまった。原告団の手には「不当判決、原判決破棄控訴棄却」の用意した垂れ幕があった。敗訴であることはすぐに伝わった。悲しみと怒りが皆の顔にうかぶ。
 最高裁が国側の上告を受理し、口頭弁論を開催したことで、高裁判決から後退した判決も予想されていた。弁護団は次の三つの可能性を想定していた。一つ目は上告棄却で高裁判決が確定し、原告住民側の勝利。二つ目は高裁判決を破棄し、高裁への差戻し。三つ目は国側勝訴の地裁判決に対する住民側の控訴を棄却し、住民側敗訴を確定するというもの。住民側敗訴であることはわかったが、三つ目でも最悪のケースのようだ。刈羽村から駆けつけていた近藤容人村議が地元選出で弁護士の近藤正道参議院議員に解説を求めた。判決の内容は最高裁が自ら判断する自判という最悪のケースであることがわかった。
 最高裁第一小法廷での判決は、泉徳治裁判長をはじめ横尾和子、甲斐中辰夫、島田仁郎、才口千晴の五名の裁判官の全員一致で行われた。主文は「原判決を破棄する」「被上告人の控訴を棄却する」「控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする」の三つ。傍聴した原子力資料情報室の伴さんによれば「わずか十秒あまり」の法廷であった。

法律論から逸脱した最高裁


 報告集会で吉村悟弁護士は「今日の判決でわれわれは勝利した、負けたのは五名の裁判官である」とし、総括的に三点を指摘した。一点目は総論部分に踏み込んだ高裁判決に対し、最高裁の判決理由では各論のみに限定されており、理論的には負けていない。二点目として九五年の事故以降、設計変更をせざるをえなかったことで行政に対して勝利したと総括。三点目として全国の原発訴訟や運動に寄与し、無効確認という行政訴訟が住民の武器になった高裁判決勝利の意義は今回の最高裁判決で色あせない、とまとめた。
 住民側の補佐人をつとめた元京大原子炉研究所の小林圭二さんは「最高裁は本来法律論を審査すべきだが技術論に踏み込み、逸脱した判決だ」と批判した。判決では、国の安全審査では使用されていないSIMMERというアメリカで開発された解析コードをもとに臨界事故には至らないと判決を導いた。小林さんは、高速増殖炉燃料ではプルトニウムの濃度が高いことから、大事故で原子炉が崩壊した場合、一般の軽水炉では起こらない再臨界によって再爆発する危険性があること、裁判では議論し切れなかった至近にある活断層と地震の問題もあり、運転は絶対阻止しなければならないと訴えた。
 海渡弁護士は「判決文は裁判官が書いたものではなく、調査官が国側の上告理由書などを下書きとしてまとめたものではないか」と疑問を述べた。担当の高世三郎主任調査官は口頭弁論の事前の進行協議で住民の弁論について「法律論に絞って各論は思い切って削除されたら如何ですか」と述べたが、最高裁判決には法律論が全くなく、技術論に限った各論を判決理由とした。これは最高裁の任務を踏み外し、民事訴訟法違反の疑いもある。高世調査官はかつて東京地裁労働部で判事をしており、国労の採用差別裁判の指揮でもいかにも労働者側に立つそぶりを見せながら逆の判決文を書いたと問題点を述べた。
 海渡さんは加えて、もんじゅは十年間止まっているが、すでに老朽化がはじまっている。また、建設や四ヶ月だけだが運転にたずさわった経験者が半減しており、危険性は高まっていると訴えた。

原告団の闘いを継承しよう


 報告集会で小木曽さんは続けて訴えた。
 「行政の誤りを正すことが司法の役割、だから訴訟に訴えた。高裁はこれに応えた。最高裁はさらに法律論で深めるべきであった。最高裁判決は安全委員会がこう決めたのだから住民は黙っていろというしろもので、住民は行政にもう口出しはできないという内容の判決であった。安全委員会が認めた基本設計には口出しせずに、争うなら詳細設計ですれば、というもの。もんじゅの運転再開は二年後に迫っている。最高裁の結論で手をこまねいて見過ごすことはできない。もんじゅは危険だから二十年間闘ってきた。二年後の運転再開の問題もある、廃炉に向けて長く闘っていかなければならない。これからは行政の場、新長計の議論の場などを通じ、広く国民的な議論を行わなければならない。六月十二日に原告団と弁護団、支援する会などによる協議を行う。十二月にはナトリウム火災事故十周年の全国集会も予定している」。
 続いて原告団の伊藤実さんは「小泉内閣に追従し、天下った司法の存在をわれわれ住民の前に明らかにした」と批判した。「もんじゅの改造工事は、新幹線の延伸などとの引き換えに、住民の命の問題が取引された」と地元からの訴えを続けた。若狭湾に原発が林立するなかで、もんじゅだけは許すまじと敦賀市で立ちあがったこと、公開ヒアリング阻止闘争を経て裁判に訴えた経過、そして原告団の高齢化など現在の課題を提起した。
 当初四十人で出発した原告中六人は鬼籍に入り、原告団長の磯辺甚三さんは九十五歳で現在は療養中、この場には参加できなかった。三月二十七日の口頭弁論には多数の青年労働者が福井から最高裁に結集し、院内行動や省庁行動の先頭に立ち原告団の闘いを引き継いでいる。福井県では、昨年八月の美浜事故を受け、重大な事故が起こった場合の実質上の運転停止と再開についての行政権限を安全協定に盛り込んだ。判決後に佐藤福島県知事が高速増殖炉政策の見直しの必要性についてコメントするなど、地方行政からの不信も強い。
 報告集会では、大阪のストップ・ザ・もんじゅの池島さん、原水禁事務局長の福山さん、原子力資料情報室の伴さん、京都のグリーンアクションのアイリーン・スミスさんから今後への決意が述べられた。また、もんじゅ事故当時に動燃の社内調査の担当中のお連れ合いを亡くし、その死の真実を明らかにするために家族で旧動燃を提訴した西村トシ子さんからも連帯のあいさつが行われた。

原子力長計にNO!を 

 判決の五月三十日という設定は極めて政治的な日程であった。ニューヨークでは五月二十七日まで核拡散防止条約・NPT再検討会議が開かれ、グリーンピースはじめ市民グループは「STOP!再処理工場」のキャンペーンを行っていた。この会議では、エルバラダイIAEA事務局長によって新規の再処理施設やウラン濃縮施設の五年間凍結が提案され、結論によっては六ヶ所再処理工場の凍結によってもんじゅ運転再開の見通しが立たないこともありえたからである。
 また、もんじゅが運転再開されると、炉心を取り囲む劣化ウランでつくられたブランケット燃料中に核兵器級のプルトニウムが生成される問題がある。
 昨年六月から続けられている新原子力長計の策定作業も最終段階に近づき、NPTでの結論や今回のもんじゅ判決いかんでは、二月十日にまとめた「高速増殖炉サイクル技術の研究開発のあり方について(論点の整理)」の内容を後退させねばならないことともなったからである。
 この新長計の「論点の整理」では、「発電プラントとしての信頼性の実証と運転経験を通じたナトリウム取扱技術の確立というもんじゅの建設・運転の所期の目的を達成することにより得られる成果は今後の研究開発に大きく貢献するので、もんじゅの運転再開は現在の重要課題になっている」と位置付けられている。
 新長計は十二月の閣議報告で正文となるが、これまでの議論の方向性についての一般からの意見募集が六月にも、新長計案についてのパブリックコメントがこの秋口にも行われる。前回の二〇〇〇年長計策定時には、もんじゅ反対の意見提出運動が取り組まれ、総意見中の大多数をもんじゅ反対が占めた。推進側はもんじゅ再開へ向けて更に力を込めてくるだろう。私たちは脱原発に向けて前回以上の取り組みを行わなければならない。

チェルノブイリ事故20周年


 六ヶ所再処理工場で昨年十二月にはじまったウラン試験は「四月末で二七%の進ちょく率」との発表が五月末に行われた。機器の試験を目的とした部分だけの進ちょく率は五月末で約四割との見込みも発表し、いかにも順調であるかのように見せかけている。しかしウラン試験に先立つ通水試験や化学試験で発見されるべき機器の不具合やトラブルが多発している。また、はじめて放射性物質を使用したことで判明した計測機器などのトラブルも多発している。このまま使用済み燃料を使用し実際にプルトニウムを分離するアクティブ試験に突入したら、深刻な被曝下でないと復旧できない深刻なトラブルも含まれていることが予測される。
 三月末、日本原燃はアクティブ試験をウラン試験開始直前に発表した期間より十カ月延長し、竣工を二〇〇七年五月に変更すると発表した。アクティブ試験自体の開始は今年十二月で変更はない。アクティブ試験では〇七年三月までに約四百トンの使用済み燃料を再処理する計画で、試験といえども核分裂性にして約二・五トンのプルトニウムを分離する。イギリス・セラフィールドのTHORP再処理工場ではこの五月、八ケ月前から約二百キロのプルトニウムを含んだ硝酸溶液が漏出していることが判明、復旧には膨大な費用がかかるため、廃止となる公算が強いとされている。
 現在、十月末の集約に向け、再処理阻止の百万人署名が取り組まれている。十一月にはこの署名提出行動に合わせたさまざまな取り組みも計画されている。東京では経済産業省別館前で毎月第四水曜日の午後六時半から連続した抗議行動が行われている。
 今年は広島・長崎被爆六十周年、これを機に原水禁・原水協・核禁会議などが合同の催しを行う計画が進められている。反面、原発と核燃料サイクル問題は不問に付されようとしている。
 今国会では原子力二法案(再処理積立金法案と原子炉等規制法改悪案)が与党と民主党の賛成で成立した。民主党や支援労組内では「原発に賛成でも再処理には疑問」「軽水炉には賛成だが高速増殖炉には疑問」という、既存の原発の運転を是認する議員や潮流に対しても組織統制が強まっている。推進側は、再処理反対、もんじゅ反対の世論が多数であることをよく知り、六ヶ所再処理工場ともんじゅが止まることで既存の原発への批判が高まることへの危機感をあらわしているといえるだろう。
 来年四月はチェルノブイリ原発事故から二十年、すでにシンポジウムやコンサートなどの催しも個別に準備されている。チェルノブイリ二十周年の行動までに、九月にはJCO事故六周年の全国集会が茨城で、十一月には再処理阻止の全国集会が東京で、十二月にはもんじゅ事故十周年集会が福井で開催される。また、浜岡原発震災や九電・四電のプルサーマル計画阻止に向けた闘いも繰り広げられる。新原子力長計をめぐっても全国的な反対意見の集中が求められている。ピースサイクルをはじめ、六十周年のヒロシマ・ナガサキに向け、脱原発のネットワークを強め、六ヶ所再処理工場廃止ともんじゅ廃炉に向けた闘いを進めよう。
  (6月4日 斉藤浩二)



「もんじゅ」最高裁判決についての声明

行政に追随した不当判決だもんじゅ廃炉めざし支援を

 本日、最高裁は名古屋高裁金沢支部の判決を破棄し、我々の控訴を棄却し、もんじゅの変更前の設置許可を有効とする判決を下した。
 しかし、もんじゅ設置許可はナトリウム漏えい事故時の対策についてナトリウム溶融塩型腐食という重大事象を考慮に入れず、また蒸気発生器の伝熱管破損事故時の対策について高温ラプチャ現象発生の可能性について安全審査を欠落し、また炉心崩壊事故時については現実に発生しうる事故としての安全審査を欠落させたものである。
 ことは、万が一にも重大事故を起こしてはならないプルトニウムを燃料とする原子炉の安全性に関わる問題である。伊方最高裁判決の枠組みにしたがって判断すれば、安全審査の過程に看過しがたい重大な過誤欠落があったことは明らかであり、許可の違法性を認め無効を言い渡した名古屋高裁金沢支部判決は正当なものであった。
 ところが、この判決は、基本設計の安全性に関わるかどうかについても行政の合理的な判断に委ねられているとし、行政の判断の尊重を口実にして極端な行政追随を行うものであり、司法のあるべき姿とは大きくかけ離れた不当なものであって、我々は強く抗議する。このような判断の下では、原子力訴訟そのものが成り立たなくなってしまうであろう。
 もんじゅはプルトニウムを燃料とする、未だ研究開発段階の高速増殖炉である。世界的に見れば、高速増殖炉の「夢」は敗れ去り、アメリカ・ドイツ・イギリス・フランス等では開発は終わりを告げている。我が国においても、高裁判決の指摘した危険性に加えて、開発目的も失われ、実証炉など今後の開発の目処は全く立っていない。
 我々は、このような不当判決に屈することなく、今後も、もんじゅを廃炉にすべく、なお一層の努力を尽くす所存である。今後とも、全国の皆様のかわらぬご支援をお願いする次第である。

2005年5月30日

「もんじゅ」訴訟原告団
「もんじゅ」訴訟弁護団
原発に反対する福井県民会議
もんじゅ訴訟を支援する会


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