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投稿 イギリス総選挙―前進したRESPECT      かけはし2005.5.30号

ブレア路線への批判噴出
新しい左翼勢力登場の気運はいっそう現実化している

浅見和彦(大学教員)



 去る五月五日に投票がおこなわれたイギリスの総選挙(下院議員選挙)の結果、野党である保守党と自由民主党が議席を増やしたものの、ブレア首相の率いる労働党が過半数を占め、政権が第三期目に入ることになりました。しかし同時に、昨年一月、イラク反戦運動の大きな高揚のなかから、労働党外の左翼諸勢力を結集して結成されたRESPECTが議席を獲得したことをはじめ、労働党の「ニュー・レーバー」路線への批判が噴出しました。

総選挙の全体的
な結果を見ると

 イラク戦争・占領を争点とすることを回避し、終盤では労働党批判は「保守党の政権復帰の危険」をもたらすと訴えた労働党は、三五・三%の得票で下院六四五議席中、三五六議席(前回比四十五議席減)を占め、与党を継続することになったものの、与野党の議席差は「地滑り的な勝利」といわれた一九九七年、二〇〇一年の総選挙に比べて大幅に圧縮されました。
 移民や犯罪の取り締まり強化を掲げた保守党は、得票率が三二・四%と労働党に迫ったもの、単純小選挙区制の下、議席は一九七(同三十五議席増)に留まりました。党首のハワードは「政権復帰がならなかった」責任をとり、辞任しました。
 二大政党のイラク戦争推進・占領継続政策と距離をおいて、「反戦」の姿勢を強調した第三党の自由民主党は二二%の得票率で六十二議席を獲得し、前回選挙よりも八議席前進しました。また、昨年の欧州議会選挙では「反EU」を掲げて躍進した右派政党のイギリス独立党(UKIP)は今回明らかに勢いを失い、議席は獲得できませんでした。

実をむすんだRE
SPECTの挑戦

 結成後わずか一年三カ月にすぎないRESPECTは、今回、ロンドンやバーミンガムなど二十六の選挙区に限定して候補者を擁立しました。
 イラク反戦をめぐる活動を理由に労働党を除名された下院議員のジョージ・ギャロウェーは、「今回選挙の最激戦区」(BBC放送)といわれたロンドン東部の選挙区において、イラク戦争を支持した現職の労働党議員ウーナ・キングを打ち破って当選を果たしました。
 また、約三千票の差で次点となり、議席獲得には至らなかったものの、バーミンガムの選挙区ではサルマ・ヤクーブ候補が二八%を得票しました。ロンドン東部の選挙区では、戦争ストップ連合(STWC)事務局長で社会主義労働者党(SWP)の幹部でもあるリンジー・ジャーマンが一九・五%で次点になり、近隣選挙区のアブダル・カリク・マイアンも二一%で次点になりました。ロンドンのタワー・ハムレッツ区議会補選で最近当選したオリ・ラーマンは一七%で第三位になるなど健闘しました。
 立候補した選挙区での得票率の平均は六・八五%で、次回総選挙でも議席を十分に争えるとみられる選挙区はいま見たように五つにのぼっています。

不振に終わった
他の左翼諸党派

 他方、RESPECT以外の左翼諸党派は、全体としては不振といってよい結果でした。
 昨年十一月、社会主義党(SP、旧ミリタントの多数派)や労働者解放同盟(AWL)などRESPECTに結集していない左翼諸党派は、選挙キャンペーン組織の社会主義環境統一連合(SGUC)を結成していました。しかし、その傘下の社会主義党(*1)は、十七人の候補者を立て、元労働党下院議員のデイブ・ネリスト(*2)が拠点のコベントリー市で五%を獲得したのが最高で、平均一・五七%に留まりました。
 また、炭鉱労組の指導者であったアーサー・スカーギルの社会主義労働党(SLP)も、五十人の候補者を立て、グラスゴーの選挙区では一四・二%を獲得したものの、平均得票率は一・一五%にすぎませんでした・昨年の欧州議会選挙で勢力の回復が見られた緑の党も、議席獲得はなりませんでした。
 また、一年前には、RESPECTへの参加をめぐって臨時大会を二度も開催したものの不参加を決めたイギリス共産党(CPB)は、ロンドンをはじめとする六選挙区で独自候補を擁立しましたが、得票率は〇・五五%でした。
 一選挙区をのぞき、スコットランドのすべての選挙区に候補者を立てたスコットランド社会主義党(SSP)も、前回総選挙の得票率三%から今回は二%へと低下させました。三千人以上の党員を有し、スコットランド議会には六議席を持つSSPは、トミー・シェリダン(*3)が党首を辞任し、コーリン・フォックスを新党首にして選挙を戦いましたが、シェリダンの辞任をめぐって、マスメディアがSSP攻撃の材料にしたことが大きく響いたと思われます。
 以上のように、RESPECTの前進の一方で、他の左翼諸党派(*4)はふるいませんでした。

「ポスト・ブレア」時代がはじまった

 総選挙の結果を受けて、労働党や労働組合のあいだではどのような動きがみられるのでしょうか。
 ブレア首相が「選挙結果にあらわれた声に耳を傾け、そこから学ぶ」と言わざるを得なかった労働党では、議席を失ったのはブレア派の閣僚経験者などの右派が大半で、左派議員は再選を勝ち取ったケースがほとんどでした。とくにイラク戦争、病院民営化促進、大学授業料の大幅値上げ、反テロ法の四つに反対した強硬派が三七人も再選されているのは注目できます。左派議員や労働代表委員会(LRC)など党内左派はブレアの退陣を要求しています。「彼は今後一年から一年半で退陣するだろう」と言う議員が増えてきています。
 選挙前から強まっていたブレア首相とゴードン・ブラウン財務相との確執は、新内閣の陣容にもある程度反映しています。党内左派や労組幹部のなかにはブラウンへの「期待」がみられますが、ブラウン自身も当然、「ニュー・レーバー路線」の重要な推進者であり、多くの左派が皮肉っているように、新自由主義的な経済政策を推進する「愛想の悪いブレア」にすぎません。

労働組合の左傾
化が進んでいる

 労組幹部のあいだでも、「第三期の労働党政権が必要だ」と言って、労働党批判にブレーキをかけた民間最大労組のAMICUS(組合員数一〇六万人)のデレック・シンプソン書記長(元共産党員)は「ブレアの早期退陣」を求める発言をしています。
 また、投票日の翌日、労働運動のなかでの大きなニュースが飛び込んできました。消防士労組(FBU、組合員数五万人)の書記長選挙で、左派のマット・ラックが現職書記長のアンディ・ギルクリストを破って当選したのです。現書記長自身も、マスメディアからは「やっかいな連中」(左派の書記長たちに対するラベル)の一人とみられてきましたが、二〇〇二年から一年間にわたってたたかわれた賃金闘争での指導が労働党政府への妥協的な姿勢であったため、十分な成果をあげることができず、一般組合員から強い批判を浴びていたのでした。そのこともあり、昨年、FBUは労働党から脱退していました。
 マット・ラックは、社会主義党(SP)の元党員で、この二月に解散した社会主義連盟(SA)では、労働組合の政治基金問題(労働組合と労働党の関係)のパンフレットを執筆するなど活躍してきた人物で、四月のFBU書記次長選挙で当選したばかりでした。そのラックがおよそ六対四の大差で現職を破った意味は大きなものがあります。

左翼の統一にと
って重要な鍵は

 選挙期間中や選挙後、労働党外の左派諸党派はどのような反応をしているかを見て、今後の注目点についてふれておきたいと思います。
 ごく一部の左翼小党派を除けば、RESPECTの議席獲得と前進を積極的に評価しています。
 イギリス共産党(CPB)内部のRESPECT支持潮流は、選挙運動期間の前からRESPECTの動向やギャロウェー議員、社会主義労働者党(SWP)幹部の活動を、事実上の党紙である「モーニング・スター」で報道していました。CPB内部にあるRESPECTへの批判に対しても、国際社会主義グループ(ISG、第四インター・イギリス支部)のアラン・ソーネットの反論を同紙に掲載するなどの対応をはかっていました。選挙直前には、戦争ストップ連合のマーレイ議長(CPBの党員)とリンジー・ジャーマン事務局長(SWPの理論誌編集長)が共著で、イラク反戦運動を振り返った著書を刊行しました。また、おそらく初めてではないかと思われますが、「モーニング・スター」が社会主義党(SP)の選挙政策を紹介していました。
 RESPECTに対抗した選挙キャンペーン組織に加わった社会主義党(SP)の反応も、やや意外な印象を受けます。機関紙「ソシアリスト」ではギャロウェー議員の当選を大きく報じて、RESPECTを高く評価しています。「労働党支持の衰退と並んで、ギャロウェーの当選やその他[社会主義党など]の得票結果を見れば、次回選挙で労働党に対する左翼の真剣な挑戦が成功する可能性が示されている」と論評し、「新しい大衆的な労働者党」の建設の時期が到来していると訴えているのです。
 スコットランド社会主義党(SSP)として左翼の大連合が実現しているスコットランドを別とすれば、イングランドの場合、左翼の統一はさしあたり、@RESPECT支持勢力の中心となっている社会主義労働者党(SWP)と国際社会主義グループ(ISG)、A左派の中では唯一、日刊紙「モーニング・スター」を発行して、労働党左派からRESPECTまで幅広い友好・協力関係をもっているイギリス共産党(CPB)、B全国レベルの労組専従幹部にもその多くのメンバー(約二十人)がいて、労組運動に影響力をもっている社会主義党(SP)の三つのグループの共同・連帯がどのように進むのかが重要な鍵になっているように思われます。


 (*1)社会主義党(SP)は、その名称で選挙に立つことを選挙管理委員会に認められていないため、「社会主義オルターナティブ」という団体名称で選挙を闘っています。
 (*2)デイブ・ネリストは、旧ミリタントが労働党内への加入戦術を用いていたときに、労働党下院議員になった五人のミリタントの一人でした。
 (*3)トミー・シェリダンは、旧ミリタントのスコットランドにおける指導者で、サッチャー保守党政権下での「人頭税」反対闘争のリーダーとして有名になり、獄中から市会議員に立候補して当選した「労働者階級の英雄」でした。
 (*4)本文でふれた以外の党派では、環境社会主義連合(AGS、立候補者十人、得票率一・〇二%)、労働者革命党(WRP、旧ヒーリー派の一分派、十人、〇・三五%)、独立労働者階級協会(IWCA、一人、二・一三%)、労働者解放同盟(AWL、一人、一・五五%)など。

【訂正】本紙前々号(5月16日号)5面「4・29集会」記事5段3行目「派兵国家」を「派兵国家化」に、同6面「架橋」欄中見出しから右1行目「許可を経て」を「許可を得て」に、それぞれ訂正します。
        


コラム
政府税調がねらうもの


 小泉首相の諮問機関である「政府税制調査会」はこれまで課税最低限の引き下げを目指して活動を行ってきている。課税最低限とはそれ以下の年収であれば所得税を徴収されないとされる計算上の金額であり、夫婦と子ども二人の世帯では三百二十五万円(二〇〇四年特別配偶者控除の廃止により諮問当時の三百八十四万円から変更になっている)、独身者の場合は百十四・四万円とのことだ。
 五月十四日の朝日新聞の報道によれば十三日に開かれた政府税調総会で委員の一人である井戸兵庫県知事が「生活保護基準が高すぎて課税最低限を上回っている事態を放置してきた結果、安易に生活保護に逃げ込む人が増えてきた」と発言、これまで個人住民税が原則非課税となっている生活保護費について問題提起を行ったという。
 石会長は「生活保護費も課税対象とし、控除などで調整した方がすっきりする」と発言、総会後の記者会見でも生活保護費を課税対象に含めるべきだとの考えを示したとのことだ。また記事には東京の生活保護の基準額として夫(35歳)と妻(30歳)に子ども二人の家庭で約二百七十七万円。家族構成によっては生活保護基準額が課税最低限を上回る例があるとしている。
 生活保護費は憲法に定める「国民は、健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有する」を保障するものとして作られた「生活保護法」によって全国各地を1級地―1、2、2級地―1、2、3級地―1、2と6等分した上で決められた最低生活費である。家族構成などにより課税最低限を上回る支給があるとすれば課税最低限が低すぎるのであって、そうならないように課税最低限を引き上げればよいのだ。税金より支給される生活保護費から税金を徴収するなどは本末転倒である。
 政府は所得税を支払わない人が二五%いるから「税の空洞化」であり、もっと多くの人から税金を徴収しようとして「政府税制調査会」を設けた。しかしその他の税ではどうなっているのかインターネットで調べてみると、相続税は六千万円以下という理由で約九五%の人が支払っていない、法人税は利益がないとして約七〇%の法人が支払っていない、消費税は売り上げが三千万円未満として約六〇%の該当事業者が支払っていないとのことだ。
 消費税は今年から一千万円以上の売り上げがある事業者は支払い義務が出てくるので納税者は増えると思うが相続税、法人税は増えるはずがない。対象者の九五%、七〇%が支払わない税はそれこそ「空洞化」であろう。
 現在の所得税は弱者に厳しく、強者に優しいものとなっている。各控除を差し引いた後の年収が五百万円の人の税金は六十七万円、一千万円の人は百七十七万円、一億円の人は三千四百五十一万円であり税引き後の可処分所得は高い収入を得れば、得るだけ増えていく仕組みだ。金持ち、大企業優遇の税制に反対し、課税最低限を引き下げ、生活保護費からまで税金を徴収しようとする政府税調と対決する体制の構築を図ろう。  (高)


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