| 地域から働きかけを強めよう かけはし2005.5.30号 |
ユニオンネット・教育合同
扶桑社版教科書を採択させない学習行動集会 |
【大阪】五月十九日エルおおさかで、大阪教育合同労組とおおさかユニオンネットワーク共催の集会が開かれ、山原克二さん(おおさかユニオンネットワーク事務局長)と武井博道さん(大阪教育合同副委員長)が司会をした。集会は、扶桑社教科書の採択をしないよう大阪府下すべての教育委員会に申し入れ行動を展開するためにもたれたもの。この行動は二〇〇一年の採択の際についで、今回が二度目になる。
開会あいさつをした加来洋八郎さん(おおさかユニオンネットワーク代表)は、「竹島問題や中国の反日デモは日本の教科書問題が原因なのに、政府はそれは検定制度の問題だといって逃げ、真正面から問題に臨む姿勢がない」と批判した。また山原さんは、「偏狭で排外的なナショナリズムを危惧する。深いところでアジア民衆と出会える方法はないのか」と述べた。
この後、大阪教育合同・教科書検討プロジェクトチームから扶桑社の社会科教科書(歴史と公民)について、その特徴と批判が提起された。
国家主義史観への
対抗的価値観形成
歴史教科書については、社会科の教員である竹林隆さん(大阪教育合同書記長)が提起した。その特徴として、@中国・朝鮮・ロシアを蔑視し、その裏返しとして「日本民族」を美化している。たとえば、「近代国民国家の観念をまだじゅうぶんに理解していない清」などという言い方。その一方で「唯一無二の日本文化」と主張する。
A日本の政治・政権の自立性の強調がみられる。たとえば、「日本の自立の姿勢を示す天皇の称号」とか、大化改新について「日本独自の国家秩序を打ち立てようとしたもの」など。
B天皇制を軸として歴史を叙述する天皇中心主義史観(皇国史観)が全編に満ちている。たとえば、「神武天皇東征伝承」や「日本の神話」を読み物コラムとして入れている。江戸幕府の性格について「統治のよりどころは、徳川家が朝廷から得た征夷大将軍の称号にあった」など。
C人種概念を強調している。帝国主義対植民地という本質を白色人種対有色人種の対立にすり替えている。「近代国家として生まれて間もない有色人種の国日本が、当時世界最大の陸軍大国だった白人帝国ロシアに勝ったことは、云々」など。
D近代市民社会で使われた「公」概念を超歴史的に使用している。「武士が持っていた忠義の観念は、藩の枠をこえて日本を守るという責任の意識と共通する面もあった。このような公のために働くという理念が新しい時代を用意したともいえる」など。白表紙本では「公共の利益」とされていた。
E感情的表現が目立つ。「東アジアの地図を見てみよう……この日本に向けて、大陸から1本の腕のように朝鮮半島が突き出ている」とか、鎌倉期の元寇の時の武士、第2次世界大戦中の日本軍について「よく戦った」など。
F各章の終わりに、「歴史ドラマチャレンジ」と題して、ドラマを演じさせ、身体的に組織化しようという意図が伺える。
竹林さんは以上のように説明する一方で、他社の教科書が平板で客観的な文体の教科書であるのに比べてドラマチックであること、現在のネオコン的な政治傾向とリンクしていることなどから、扶桑社の教科書を軽く見てはいけないと言い、対抗的価値観の形成が必要だと述べた。また今年の検定により、「竹島は我が国固有の領土で、韓国が不法占拠している」という記述のある扶桑社の教科書が検定に合格し、全社の歴史教科書から「従軍慰安婦」の語句が消えたことを付け加えた。
国のために命を投
げ出す人間の形成
公民の教科書については、社会科の教員である山口昌孝さん(大阪教育合同執行委員)が提起した。その特徴は以下の通りである。
@見開き2ページをさいて国旗・国歌尊重の記述があり、サッカー選手ラモスと水泳の木原光知子の話をのせている。
A憲法の項では、その内容を学習するよりむしろ、日本国憲法が一度も改正されたことのない「世界最古の憲法」だと揶揄し、「めまぐるしく変化する国内外の情勢に対応していくためにどのように憲法を解釈すべきか」と問い、憲法の「改正」が必要だという内容の記述になっている。
B人権より「公共の福祉」を優先させ、外国の国防義務をわざわざ取り上げた。
C「多くの国民は、自衛隊は自国の防衛のために不可欠の存在だととらえている」と述べ、世界で活躍する自衛隊の写真をのせ、反対のページには北朝鮮のテポドン・拉致被害者の写真や武装工作船の写真をのせている。自衛隊の規模や武器の説明を詳しく行い、有事関連法や周辺事態法などを当然のこととして記述し、外交問題を力で解決するという考えをはっきり出している。
D国民主権の項では、天皇の写真をのせ、「天皇は政治には直接かかわらず中立、公正、無私の立場で、天皇の名の下に為政者に高い格調と責任を求める」と述べ、天皇を敬愛することの大切さを強調している。
E男女平等共同参画社会やジェンダーフリーには否定的で、戦前の家父長制による家族の絆を理想として、天皇制を中心とした国家イメージを強調する。
山口さんは、この教科書で教えられた子は近隣アジア諸国と友好を深めるよりむしろ敵愾心を持つようになるのではないか、つくる会教科書はお国のために命を投げ出してもかまわない人間を作り出そうとしている、と述べた。
続いて、二〇〇六年度版教科書採択にあたって、扶桑社の歴史・公民教科書を採択しない旨の教育委員会への申入書(案)を重藤英一さん(大阪教育合同書記次長)が提案。扶桑社教科書は労働関係についての記述が他社に比べて極端に少ないと説明し、会場からの意見でその点も申入書に追加することになった。また会場からの要請で、申し入れに行く段階で、具体的にここがこのようにおかしいという箇所をいくつか整理することになった。
まとめは、山下恒生さん(大阪教育合同執行委員長)が行った。府下の各教育委員会への申し入れ内容は六月一日のヨンデネット大阪(大阪日朝日韓連帯会議)の集会を経て最終的に確定し、六月中に府下四十五市町村教育委員会に申し入れ行動を行うことが確認された。 (T・T)
女性差別につらぬかれた「性役割」論
「あぶない教科書」をジェンダー視点から検証する
五月二十一日、東京・ラポール日教済で「ジェンダー平等社会をめざすネットワーク」は、「新しい歴史教科書をつくる会」の天皇制・侵略戦争を賛美する歴史・公民教科書(扶桑社版)の批判と八月の採択阻止にむけた「あぶない教科書をジェンダーからみると」題する集会を行い、百五十人が集まった。
ネットワークは、アジア女性資料センター、子どもと教科書全国ネット21、ふぇみん婦人民主クラブなど十四団体で構成され、全国各地域において草の根でジェンダーの観点から教科書問題、憲法と教基法改悪反対運動を取り組んできた。
今年八月は、中学校の教科書採択の年だ。すでに二〇〇六年度以降に使用する教科書の検定結果が四月に発表されている。検定を通過した「つくる会」の教科書は、小泉政権による派兵大国化に向けた政策展開と連動して、「大東亜戦争」の名称を使い天皇制と侵略戦争を賛美したり、自衛隊や「日の丸・君が代」を押し出し、憲法改悪を主張している。また、男女の性差の強調、男女平等の制限、ジェンダー平等への逆行など許しがたい内容に貫かれている。このような教科書を子どもたちに渡さないための取り組みを強化していこう。
家父長制に基づく
「家族の絆」理想化
集会は、主催者の開催あいさつに続いて、四人の講師が次々と「つくる会」教科書の批判を提起した。
俵義文さん(子どもと教科書全国ネット21事務局長)は、冒頭、「つくる会」が同会の教科書採択率一〇%以上の目標を決定し、自民党、日本会議を中心とする右翼統一戦線を作りながら全国でシンポジウムを開催していることに注意を喚起しつつ、反対運動の取り組みが二〇〇一年時(四年前の「つくる会」教科書採択反対運動)と比べて早く立ち上がり、網の目で集会、学習会が取り組まれていることを報告した。
また、(同会教科書が)「今回の改訂で天皇と国家を前面に出し、日本の歴史と天皇の権威が一貫して存在した『神の国』の歴史として描いている。現行本にある反米色を一掃してアメリカへのすりよりを強め、『脱亜入米』をめざす教科書となっている」と強調した。
加納美紀代さん(女性史研究家)は、「つくる会」の西尾幹二(名誉会長)と八木秀次(現会長)らが、ジェンダー視点に対して、ナショナリズムへの脅威、国家破壊の革命思想、伝統破壊であるなどと認識していることを明らかにし、デマゴギーと歴史の捏造に貫かれた主張を厳しく批判した。
さらに、同教科書の新版と旧版を比較し、「性役割」の強化、日本の伝統や文化継承・誇示などナショナリズムへの女性利用、ジェンダー・フリーを敵視した内容が強まったことを明らかにし、ジェンダー視点からの批判を強めていこうと訴えた。
憲法24条改悪に
向けた世論操作
吉岡睦子さん(弁護士)は、同会の公民教科書を取り上げ、「『活躍する日本人』というページは、ほとんどすべてが男性であるように、男女平等、女性の権利についての視点がない。家族の一体感、家事労働(無償労働)の称揚や『男らしさ・女らしさ』を奨励している。つまり、憲法が保障しているのは、結果の平等ではなく、機会の平等などと言っているように、個人の尊厳と両性の本質的平等の保障という憲法二十四条の理念に反対し、憲法改悪を主張しているのだ」と結論づけた。
鶴田敦子さん(子どもと教科書全国ネット21代表委員)は、「『ジェンダー』及び『家族』の記述について、二〇〇四年度検定はどのように行われたか」というテーマから、中学校の家庭科教科書を分析し、とりわけジェンダーという用語が削除されたことや、家族主義が強められたことを明らかにした。そのうえで今回の検定に対して鶴田さんは、「家族関係や家庭の働きにおいては、自己責任を促す書き方に誘導したと言える。多様化する家族を言っている。しかし、離婚と一人親家族は国家が期待する家族と大きな違いがあるということを押し出した内容となっている。また、自己責任でいとなむ家族・家庭の規範を示させたということだ」と提起した。
集会の最後にアピールを参加者全体で採択。「六月、各地で行われる教科書展示会に参加して、意見を教育委員会にあげよう。さらに、教科書採択では教育現場の意見を尊重するように、『つくる会』教科書を採択しないように教育委員会に申し入れを行っていこう」と行動提起した。 (Y)
どこが問題?教科書採択学習会
次は「つくる会教科書」で「模擬授業」をやったら?
【東京東部】五月二十日、江東区総合区民センターで「どこが問題? 教科書採択学習会」が江東・教科書採択を考える実行委主催で行われた。
最初に浅羽晴二さん(子ども教科書全国ネット21・元山梨学院大教授)が「つくる会」教科書のどこが問題なのかを講演した。
「教科書問題は一九五五年に第一次攻撃があり、一九六〇年代は教科書の冬の時代であった。それを押し返してきたのが検定と三十二年間闘った家永裁判だ。裁判では検定の違憲性については負けたが、四つの検定が間違いであり、違法であったとする判決をかちとった」。
「その後、一九七八年の安保ガイドラインの時、第二次攻撃があった。そして『侵略』を『進出』としか記述しなかった。これに対する韓国・中国政府からの強い批判があり、『アジア条項』を政府は認めざるをえなかった。一九九七年版のすべての教科書が『アジア侵略』や『従軍慰安婦』について記述した」。
「これに危機感を持った右翼は『日本を守る国民会議』などをつくり、教科書を自前でつくり、採用させる運動を行うようになった。前回はたった二校でしか採用されなかったが、今回は一〇%をねらっている。つくる会運動は会員が一万千人から七千八百人へと減っていて、成功していない。彼らは区議や区長を動かして賛同する教育委員をつくるなど政治的に活路を見出している。埼玉・神奈川・東京で半分をとると言っている。都教委からの圧力に屈するような形での動きが出始めている。地区で採択させない運動が作れるかどうかにかかっている」と浅羽さんは訴えた。
そして、浅羽さんは「天皇を軸とした自国中心の歴史教科書(自国自慢の歴史物語と考えられる)、日本国憲法を軽視し、改憲を誘導する公民教科書(改憲の手引書と考えられる)」について、詳しく批判した。
続いて、中村まさ子区議は@江東区での教科書採択の手続きA江東区の教科書展示会B陳情、請願の提出について報告した。
中村さんは「区の決算委員会の中で、自民党議員が『つくる会』教科書の人物コラムを紹介しながら、公平な教科書採択をのぞむとし、つくる会教科書の採用をうながした」と紹介した。
実行委として、陳情や委員会の傍聴、教科書展示会への参加と「つくる会」教科書が採択されないように、区民に広く訴えていくことを確認し、6月に集会を持つことを決めた。(M)
bなんちゃって模擬授業 「つくる会」教科書で「歴史」を学ぼう
6月26日(日)午後2時〜3時(受講後、教科書センターにて教科書見学を予定)/江東文化センター第一和室(地下鉄東陽町駅下車5分)
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