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非正規職法案をめぐる攻防               かけはし2005.5.23号

「人権委の受け入れ」ではなく、「改革案自体の廃棄」を

「労働者の力」編集室



人権委が意見書を発表

 4月14日、国家人権委員会は政府が提起している、いわゆる非正規職法案(期間制および短時間勤労者保護等に関する法律改正案)について、期間制の事由制限および期間満了後の正規職化、同一労働同一賃金、派遣止揚企業・団体の使用責任の認定などを骨子とする意見書(勧告)を発表した。
 これに対して政府・与党および保守マスコミからは、なり振りかまわぬ攻勢が開始された。「人権委の意見提示はバランスを欠いた政治的行為」、「非専門家らの越権行為」、「単細胞的基準」(キム・デファン労働部部長)、「荒唐無稽だ、国会は国会の道を歩む」(イ・モッキ・開かれたウリ党議員)、「とんでもない」、「労働者が耐えるべきだ」(イ・キョンジェ環労委委員長)など。
 人権委員会が提出した「政府の非正規法案についての意見」は外形上、政府案に対する批判として受けとめられ、労働陣営では少なからぬ撹乱要因として作動している。4月18日、民主労総をはじめとする358の市民社会諸団体は「人権委員会の意見を最低基準として政府立法案の修正案を作ろう」との要求を行い、57の非正規労働の代表者の連名で「人権委の意見受けいれ、4月国会での立法化」の立場が明らかにされた。だが、このような要求は人権委員会の意見に対する間違った解釈であり、むしろ政権と資本の労働法改悪を手助けする危険性を持っている。

派遣法それ自体が悪法

 よしんば意見という水準で表明されたとは言うものの、人権委員会案の核心は「非正規職は例外的な場合にのみ認定されるべきだ」というものだ。重ねて言えば、非正規職を一般的な雇用形態へと仕立てようとするすべての試みは間違いだった、というものだ。
 人権委の意見書は派遣制法案については、「現行のままにしておけ」と提示した。ネガティブ・リスト方式(許容できない業種のみ明示し、それ以外はすべて可能となるようにすること)へと変更を提示した政府案に対して人権委員会は、これが派遣勤労制乱用に道に開くものだとして反対意見を表明した。また派遣休止期を縮小して派遣期間を増やす政府案に対しても反対した。
 雇用の諸条項で一定の期間が経過した派遣労働者は自動的に直接雇用になるものと見ている条項(見なし条項)を義務条項に変える政府の案に対しても反対意見を表明した。これは正規職になれないように悪用される可能性がより高いとの理由からだった。
 言いかえれば派遣法を改正する政府案のすべてに反対したのであり、それはすべての労働者たちの人権を保護する上で、いかなる実効もないばかりか、実際に派遣労働者たちを苦しめたり、派遣労働者たちを拡大するだけだとの事実を確認したのだ。派遣法は、すでにそれ自体が悪法なので、それに手を加える瞬間、さらに悪くなるばかりだ。
 期間制法案についても同様だ。人権委員会は期間制法案について大別して2つの点について言及した。1つは同一労働同一賃金を明文化せよというものであり、もう1つは許容の事由を明示せよ、というものだ。
 この2つは労働運動陣営でも要求していたものであるがゆえに、大部分の活動家たちは、この内容を受けて政府の期間制法案を修正すればいいだろうと考える。だがこれは完全な錯覚だ。労働運動陣営が要求してきていたのは「期間制特別法」ではない。
 労働運動陣営の要求は「勤労基準法」にこの内容を入れよ、というものだった。万一、勤労基準法の改正案ではなく期間制特別法を作るのであれば、その法はむしろ期間制労働者たちを拡大することに寄与するだけだということを分かっているからだ。
 人権委員会の意見通りにしようとするなら、政府が出した「期間制法案」を修正するのではなく、政府の期間制案を廃棄し、勤労基準法の中に人権委員会が語った許容事由や同一労働同一賃金を明文化しなければならないのだ。
 結論は明らかだ。政府が出した期間制法案と派遣制法案は、いずれも労働者たちの権利や人権を侵害するばかりではなく、労働3権を保障することに何の力にもならず、むしろ非正規職を拡散するばかりだ。非正規職労働者の人権を保障する唯一の道は、たった1つ、政府の立法案を廃棄することだ。

意見通り修正させても改悪

 労働運動の一部や市民運動陣営では「人権委員会の勧告を受け入れて政府案を修正しよう」と主張するけれども、これは陥穽(かんせい)に落ちる水準だ。人権委員会の意見は原則的なレベルで問題を提起したものだ。政府の立法案という大きな枠組みをそのままにした状態で、人権委員会の意見を受容するとしつつ修正を始めれば、資本や政府が望んでいる通りに修正される可能性が大きくなる。
 例えば、期間制案について、「特別法」はそのままにして置くが、人権委員会の意見通りに許容事由だけを明示することで論議を始めると仮定してみよう。そうなれば、その許容事由を何にするのかで論難が生じる。もちろん、われわれは許容事由を何にするのかについて明確な基準を持っている。それは「臨時・間欠的業務」というものだ。このほかには絶対に期間制を受容してはならない。これが、非正規職は特殊で例外的な場合にのみ活用されるべきだ、という原則と符合する。
 ところが政府の「期間制特別法案」を廃棄しないまま、その案で許容業務を明示しようとすれば、政府や資本は専門的知識や技術の活用が必要な場合だとか、高齢者雇用促進法による準高齢者との勤労契約の場合だとか、企業業務の一時的増加などを許容事由として折り込もうと試図するだろう。
 このようなものを入れるのか入れないのかの論争をすることになれば、この中の1つでも入るところとなり、万一このような許容事由が入ると期間制は事実上、可能になるも同然だ。つまり政府の本来の改悪案そのままになるのだ。
 96年度に政府が派遣法を作るときに押し出していた論理も「専門的知識や技術が必要な業務」や「準高齢者との勤労契約」だった。そうは言うものの、現実を見るとき、骨を折りながら働き低い賃金を受けとっている労働者たちに派遣業は集中したし、そうしてひとたび道を開いた資本は、今になって派遣法を拡大しようと言っているではないか。
 「企業業務の一時的増加」のような事由は極めて抽象的なので、資本が腹を決めさえすれば期間制を活用して、企業業務の一時的増加のせいだったと主張できる。しかも以後の施行令で思い通りに許容業務をもっと入れることができるのだから、資本や政権が決して受けいれられない理由はない。だから期間制の内容の修正というのは、ありえない。可能な唯一の道は期間制案を廃棄するように要求することだ。
 これは派遣制度も同様だ。人権委員会は現行のポジティブ方式を維持せよと語る。つまり、これ以上、派遣を増やしてはならないと言うのだ。ところで、この案をもって修正しようとすれば、おそらく政府は改正案を変えると言うだろう。人権委員会が言うようにホジティブ方式は維持するが、幾つかだけはさらに許容してくれと言うだろう。
 ところで、さらに幾つかを許容するというのは、どんな意味なのか? その業務の労働者たちは、いまや派遣労働のくびきに縛られる、ということだ。いったいだれがこれを許容する権限を持っているのか? だれが労働者たちを奴隷労働に陥れる権限を持っているのか? そして許容業務、さらに1、2個入れると言いつつ、例えば「サービス業」のように広範囲な業務として許容業務を明示する場合、ポジティブ方式を維持する意味自体がなくなってしまうだろう。
 現在の派遣法自体が、すでにあまりにも深刻な悪法だ。労働者たちを中間搾取し、労働者たちを周期的に解雇する法律だ。派遣法は手を付ければ付けるほど深刻になる。派遣法の存在自体が、わが労働運動の恥であることを自覚しなければならない。そうであるならば方法は1つだ。派遣法自体を撤廃すること、少なくとも政府の改正案自体を撤回するように闘争することが、われわれの目標でなければならない。

「廃棄」に闘争の集中を!


 人権委員会の意見を基準として政府に「修正」を要求するのは極めて危険だ。人権委の意見は文字通り意見であるにすぎず拘束力もない上に、政府や資本の側が受けいれる可能性は事実上、皆無だ。人権委の意見が非正規職の保護にいささかなりとも役立ち得る唯一の道は、政府が提出した期間制法案と派遣制法案の「廃棄」以外にない。
 交渉論者の論理にしたがって改悪案の2つをめぐって交渉をしてみれば、政権の意図に篭落されつつ、政権の意図を全部貫徹させてしまうのが明らかな状況だ。人権委員会の意見を守ると言いつつ事実上は実効はなく、政権と資本がもともと出していた案に近づくことになる可能性が大きいという状況にあって、なぜ今なお民主労組運動陣営は「法案の修正」を口にしているのか?
 われらの道は1つだ。「労働法改悪廃棄!」。人権委員会の意見を「最低水準」にして交渉するとしつつ、実際は政権の意図をすべて貫徹させながらも、われわれの意図が反映されたかのように錯覚する自己欺瞞に陥ってはならない。人権委員会の「意見」が持つ最小限の意味を生かす唯一の道は「廃棄」でなくてはならない。(「労働者の力」第77号、05年4月29日付)

 注、現在、韓国には非正規職の雇用関係を規制する個別労働法は特にない。通貨危機以後、非正規職が全労働者の半数を超えて久しい(約800万人)が、法・制度的枠のない「無政府状態」が持続してきたのだ。大分以前に作られた現行の勤労基準法は正規職を一般的な雇用形態と考えている。4月14日の国家人権委員会(人権委)による政府提出の非正規職法案に対する勧告は、この点で注目に値する。人権委はb期間制雇用を「合理的な事由」がある場合に制限しb「同一価値労働同一賃金」規定の明文化などを勧告した。特に注目すべきは、人権委が非正規職雇用をわが社会の労働の「例外的形態であらねばならない」と規定した、という点だ。
 政府が国会に提出した非正規職関連2法案はb期間制の場合、現行1年の契約期間を3年に延長b3年を超過して使用するとき、契約満了を理由とした解告の禁止b現行2年から3年に派遣期間延長b3年以上、同一職務派遣時に3カ月間の派遣禁止(休止期間の導入)などを盛り込んでいる。
 これに対して労働界はb雇用形態を理由とした差別禁止の明文化(同一価値労働同一賃金の明示)b期間制契約期間の現行1年の維持b期間制使用事由の制限b派遣法廃止などを要求している。(「ハンギョレ21」05年5月3日付より)


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