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寄稿                          かけはし2005.2.28号

多様で民主主義的な討論が交錯する実験の場(下)

第5回世界社会フォーラムに参加して

                         寺本 勉(ATTAC関西会員)

各国の活動経験を交流

 昨年十二月のATTAC・ヨーロッパ会議では、各国の政治的状況をいかに変えていけるのか、他の社会運動団体との連携の重要性、ウエッブサイトやメーリングリストを通じた討論の場の設定、三月十九日のデモに向けた準備などが話し合われたようである。
 その報告の後に行われた分科会形式の討論で、私は「各国の経験交流」分科会に参加した。ドイツ・スペイン・ベルギー・オーストリア・フランスからの参加者がそれぞれの活動を紹介していたが、特に私が興味を持ったのはオーストリア・ドイツ・スイスの三か国のATTACが国境を越えて、交流と討論の場を持っているということだった。お互いに国境を接しているこれらの国が定期的に集まることで、活動に刺激を与え合い、先進的なとりくみに学べるという点がとても新鮮に感じられた。
 また、ATTAC・オーストリア会員の一人が、GATsに反対する内容のCDを出版したとのことで、「日本のATTACへのプレゼント」ということで一枚いただいてきた。彼は午後の国際会議の冒頭に、「GATsの真実」という自作の歌をギターの弾き語りで披露して大いに拍手を浴びていた。なかなかノリのいい歌で、ATTAC・フランス制作のCDもあるので、日本での活動の際に使えないだろうか。
 また、この前日のセミナーでケベック・ATTACから紹介された「インフォ・ボックス」も注目していいとりくみだった。B5くらいの大きさの箱の中にトービン税のリーフレットやビデオ、ATTACの紹介などが入っていて、ATTACやトービン税に興味を持った人にはこれ一つを渡せばOKという便利なものだ。かばんや袋とか持っていない人でもそのまま持ち帰れるところがミソで、ケベックでは実際に使ってみて大きな効果があったという。

鉄建公団訴訟の支援を要請


 一月二十九日の午後は場所を移して、ATTAC国際会議(全体会)が開かれた。ヨーロッパ各国と日本に加えて、ベネズエラ、アルゼンチン、チリ、ウルグアイ、エクアドル、ブラジル、ケベックが参加した。この会議には、国労の闘う闘争団の仲間も含めて日本から七、八人が参加し、討論に加わった。
 最初にATTAC・フランスからチュニジアのグループに対する支援要請があった。チュニジアのグループはATTACとは名乗っていないものの、ほぼ同趣旨の活動を行っているという。続いて鉄建公団訴訟支援を訴える機会を得た。
 はじめの予定では会議の終わりの方でやって欲しいとのことだったため闘争団のSさんが席を外していた。その時、突然順番が回ってきたため、これを逃す訳にはいかず、私が話すことになってしまった。反応は、当たり前のことだが好意的で、署名もすぐに集まった。また、郵政民営化反対のビラやシール、バッジを郵政ユニオンから預かってきていたので、会場で配布したところシール、バッジのデザインがきわめて好評だった。
 さて会議の方は、各国ATTACの自己紹介、午前中の大陸別会議の報告のあと、ここでも分科会形式で討論が行われた。分科会は、「ATTAC国際憲章について」「コミュニケーション・ツールについて」「活動の具体的進め方について」の三つだった。
 私は国際憲章の分科会に参加したが、ここで特徴的だったのはラテンアメリカ各国ATTACの元気のよさだった。発言の多くはラテンアメリカのメンバーから出され、ヨーロッパが今ひとつ元気がないのか、関心がないのか、意見が少なかった。ここでは、「政治的な主張を前面に出すのではなく、実践的な課題を示すものにするべき」「何かに反対するだけでなく、何を実現するのかを明確に。その意味では、トービン税の導入は特別な意義を持つ」「参加型民主主義が重要だ」「貧困・飢餓との闘いなどさまざまな運動とのリンクが重要であり、問題が相互にかかわり合っていることを明確にすべき」などの意見が出されていた。
 分科会討論に続いて再度全体会をおこない、ATTACとして「発展途上国の債務免除」と「三つの国際税導入」のための国際的キャンペーンを行うことを確認した(三つの国際税とは「トービン税などの金融取引税」「超国籍企業の利益に対する課税」「環境税」)。

ブラジル先住民活動家の報告

 話は前後するが、一月二十七日の夕食時にブラジル先住民であるシャバンチ人の活動家と交流する機会を得た。彼は以前日本にも来たことがあり、その時はアイヌの人々と交流したとのことだった。
 彼の話によれば、「ブラジルの先住民は現在二百二十の部族に分かれており、百八十の言語を持っている。人口としては約三十万人強。彼の属するシャバンチ人はマットグロッソ州のサバンナ地帯で暮らしているが、マットグロッソ州だけで四十から五十の部族がいる。今は部族ごとに決められた先住民居住地の中で狩猟を中心とした生活を送っている。シャバンチ人の生活の中では、狩りをして得た肉を食べるのはスピリチュアルな意味を持っている」とのことだった。
 しかし、先住民居住地への不法侵入が後を絶たない状況にあり、かつては居住地の三分の一を占拠して勝手に牧場にした例もあるそうで、これを取り戻すのには十年にわたる政府に対する運動が必要だったという。また、密猟や不法な森林の伐採も続いている。彼がもう一つ強調したのは、「文化的、宗教的な侵入」で、先住民をキリスト教に改宗させていく過程で、先住民の歴史的、文化的伝統が破壊されているとのことであった。今回のWSFでは、Kゾーンの中に先住民のためのスペースが設けられ、多くの海外からの参加者が訪れていたという。

トービン税の実現にむけて

 私のポルトアレグレ滞在の最終日、午前中は再びトービン税セミナーが開かれ、国際的キャンペーンの展開に向けて活発な討論が展開された。
 この中でも、「人々にわかりやすく説明することの重要性」や「さまざまなグループとの共同の追求」が発言者によって強調されていたのが印象的だった。また、国際金融システムの構造や問題点が非常にわかりにくいため、税システムの不公正さや金融システムが超国籍企業の利益のためにあることを継続的に明らかにしていくことが、人々をキャンペーンの中に引き込んでいく上で重要なポイントとなるという指摘もあった。
 セミナーは最後に、メールによるセミナー参加者の意見交流を続けること、ウェッブサイト上や出版の形で『国際金融ウオッチ』を継続的に行っていくこと、新たな金融システムについて次回WSFでより大きなセミナーを開くことの三点を確認した。WSF期間中に、フィンランドのNIGDはトービン税キャンペーンのための新たなウェッブサイトを開設した(http://www.cttcampains.info)。このウェッブサイトが国際的キャンペーンの重要なツールとして整備され、大いに活用されることを望みたい。

身近に見たチャベス大統領


 WSF組織委員会による大きなカンファレンスが開かれなかった今回のWSFで、それに代わるものとして用意(?)されたのが開会直後のルラ・ブラジル大統領の演説、そして閉会間際のチャベス・ベネズエラ大統領の演説になるのかも知れない。この二人とも各国社会運動団体との懇談会も設けていたが、たまたま私はチャベス大統領との昼食会に出席できることになった。会場は、ATTAC国際会議と同じホテル・サオ・ラファエロ。
 やや緊張気味に会場のホテルに入ったのだが、思ったほどの警備もなく拍子抜け。参加者の中には、フランス、ドイツ、パレスチナの駐ブラジル大使の顔も見える(と言っても、私が知っている訳もなく、ATTAC・フランスのメンバーに教えてもらっただけなのだが)。昼食会は約一時間ほど遅れて始まり、チャベス大統領は真っ赤な服に身を包んで登場した。入り口近くの席にいる人々と次々に握手したり、声をかわしている。自分たちの本を手渡している人やサインをもらっている人もいる。私も偶然チャベス大統領が自分の席に着く途中にいたので、握手を求められた。握った手は分厚かった。「直接お目にかかれて光栄です。日本から参加しました」と彼に話しかけると、「オー、ジャポネ!」とか言いながら、もう一度握り返してきた。
 誰かの合図がある訳でもなく、まだ彼が参加者とあいさつを交わしている中、食事が始まった。さすがに料理はポルトアレグレ滞在中では一番の美味しさだった。食事をしながら、周りの席の人と一言二言かわしてみると、向かいの人はパレスティナからの参加者で約三十人がWSFに来ているとのこと。
 スピーチの中で、チャペス大統領は雄弁に自分の政策がいかに成果を上げているのかを語った。特に、教育分野と医療分野での前進を数字をあげながら述べた。医者や歯医者の養成をすすめ、いずれは他の国の医療活動を支援できるようになりたい、というくだりが印象的だった。彼の政策についての評価はともかく、ベネズエラで貧困層に圧倒的な人気を誇っているということがわかる気がした。演説はルラ大統領以上にうまいのだ。

〇七年WSFに向けた闘い

 今回が二回目のWSF参加だったが、前回のムンバイと比べて意識的にトービン税キャンペーンやATTAC国際会議に絞ってのセミナー参加であったため、私にとってその成果は具体的なものだった。何よりもATTAC・インターナショナルが展開しようとしているトービン税キャンペーンについて、日本でのとりくみが重要な位置を占めていることを実感を伴って持ち帰ることができた。
 来年は各地域で社会フォーラムが開かれる予定だ。たとえば、来年一月にはベネズエラでアメリカ社会フォーラムが開かれ、その前段には今年十一月にカリブ社会フォーラムが開かれる。アジアでも、インドのWSF組織委員会によって、一昨年に続くアジア社会フォーラムの開催が検討されているとのこと。そして、二〇〇七年にはアフリカでWSFが開かれることになる。初めてアフリカで開催されるWSFにおいて、「もう一つの世界」に向けた歩みがさらに加速されるよう、向こう二年間のとりくみを展開していこう。


こらむ

「外来生物法」の施行

 年賀状に始まり、今年になって釣具屋や釣具メーカーから何通ものはがきや手紙が届いた。釣りはもう十年も前から「休業」状態であるから、昔の名簿でも探し出して送ってきたものと思われる。釣具業界の必死さがわかる。
 釣具業界をここまで追い込んだのは、今国会で「特定外来生物による生態系に係る被害防止に関する法律」の施行が突然決まったからである。「外来生物法」とは、沼・湖・川などで鮎、ワカサギ、クチボソなどの在来種を喰う外来種のブラックバスなどの放流を禁止し、また管理釣り場以外では釣り上げた場合のキャッチ・アンド・リリースを禁止することを含んだ法律である。
 この「外来生物法」の施行をもとめる要求や運動は二十年も前から多くの自然保護団体・個人が様々な形で展開してきた。そしていまや運動と要求の中心は単なる規制ではなく「駆除」をもとめるものへと発展している。その要求を阻み続けてきたのは、釣具業界と日本釣振興協議会などを基盤とする自民党を中心とした族議員の通称「釣議連」であった。しかし今回環境省の諮問委員会の意見が二つに割れ、族議員も郵政民営化問題で割れたのに乗じて、環境省が駆除を含まない放流、再放流だけを禁止する「玉虫色」の「外来生物法」の施行を決定したのである。
 釣り全体の経済効果は一兆円ともいわれ、バス釣り関係だけでも千億円と推定されている。釣り具の小売りレベルでの売り上げは全体で二千億円であるが、バス釣り用品はバス用ボートも含めてそのうちの一〇%を超えている。したがってバス釣り用品は、船釣り、鮎釣り用品と並んで釣具業界にとっては、売上げの中心をなしている。
 釣具業界はバブル期の三千億円をピークに、いまや二千億円に落ち込んでいる。それに加えてこの数年、霞ケ浦を中心とする鯉ヘルペスウィルス、都市部河川を中心とするカワウの魚食被害の拡大、鮎の冷水病、さらに昨秋は連続して台風が上陸するという自然災害が追い討ちをかけ、ダイワ精工、リョービなどの大手はともかく、メーカーでも小売りでも中小の倒産が相次いでいる。「外来生物法」の施行はこの構造に一層拍車をかけるものであると釣具業界が受け取ったのであるが、今までこの種の法律がなかったのがおかしいのだ。「外来生物法」の施行は国際的なすう勢であり、多くの国では「駆除」を本格的に検討する段階に入っており、日本はこの種の分野で立ち後れているにすぎない。
 昨年七月テロ対策を名目に全国の国際港湾施設の立入禁止等の規制を大幅に強化する改正SOLAS条約(海上人命安全条約)が発効されたが、クロダイを中心とする防波堤・波止釣りの愛好団体・個人が反対に立ち上ったのに、釣具団体は「外来生物法」との取引きで、反対の立場さえ表明しなかった。この一貫しない御都合主義が根本から問われているのであり、いまさら釣具店に誰も同情はしない。 (武)


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