一月二十一日から始まった第162通常国会は、今後少なくとも数年間にわたって続くであろう支配階級による憲法改悪の政治プロセスの新たな段階を画するものである。労働者・市民の側は最大限に広範な反撃の闘いを縦横自在に作りだし、それを阻止することができるかどうかをかけた転換点にしていかなければならない。
ここで作りだされる民衆の多様な共同の経験は、新自由主義的グローバリゼーションと米国の「対テロ」戦争戦略の中で攻勢を強める支配階級の政治に対して、後退と分断を余儀なくされてきた労働者・市民の運動が新たな政治的オルタナティブの獲得に向けて前進するための重要なステップとなるに違いない。
経済同友会と日本商工会議所はすでに昨年に「自衛戦力の保持」を明記した改憲意見を発表しており、日本経団連も一月十八日の理事会で「集団的自衛権の行使」を明確化した報告書を発表している。
自民党は、森喜朗前首相を委員長とする新憲法起草委員会を発足させ、十一月の自民党結党五十周年大会での改憲案作成を射程に入れて四月中の試案作成を決めている。一月二十日には、中曾根元首相を会長とする「世界平和研究所」が、天皇を元首とし、「防衛軍」の保持と、「国際貢献」活動に「防衛軍」を参加させる改憲試案が発表されている。政府・財界が一体となったこの攻勢に対し、「9条改悪反対」を軸に労働者・市民の側の反撃の陣形を確立していこう。
まず今国会中に政府・与党が進めようとしている憲法改悪をめぐる動きを列挙してみよう。二〇〇〇年一月から始まった衆参両院での憲法調査会の論議が五年間の期限を迎え、その役割を終えることになる。衆院では四月中に最終報告書がまとめられ、参院でも五、六月に報告書がまとめられる。
衆院での最終報告書は、「国内外を取り巻く情勢が憲法制定時に比べ大幅に変化したと指摘し『憲法改正は必要』との文言を盛り込む」とされている(東京新聞、1月5日)。中山太郎衆院憲法調査会長は、この最終報告書の内容について「内容は民主主義の原則に基づいて決める。自民党は憲法改正、『加憲』の公明党も改正の立場だ。民主党も改正を言っている。社民、共産両党は反対。これだけ言えば、内容はお分かりだろう」と語った(毎日新聞、1月21日)。つまり「民主主義の原則」に基づいて「改憲が多数」とする見解を「最終報告書」に盛り込むというのだ。
この最終報告書に先立って、与党は憲法調査会を「改憲国民投票法案」を審議する委員会に改組するための「国会法改悪案」を提出・成立させる予定である。そしてこの改組された委員会での審議を猛スピードで終わらせ「改憲国民投票法案」を今国会中に成立させようとしている。
中川秀直・自民党国会対策委員長は一月八日に東広島市で行った講演会で、この改憲国民投票法案を「通常国会で必ず成立させなければならない」と強調した。公明党の神崎代表も一月九日のNHK討論番組で、同法案の通常国会での成立に「異論はない」と語っている。民主党の岡田代表も同法案の成立に「反対する必要はない」と述べた。そして民主党はこの法案について、自民党と共同提出するための修正協議に入る方針を固めたと報じられている(読売新聞、1月16日)。
改憲派は、憲法九六条の「改正手続き」項で国民投票が規定されているにもかかわらず、国民投票について規定する法律が存在しないのは「立法不作為」だとして、改憲国民投票法の作成を正当化する。しかし、改憲が具体的政治日程に上っていない段階で「国民投票法」が存在しなかったことは当然であって、それは「立法不作為」とはなんの関係もない。何よりも、自民党が「国民投票法案」を何がなんでも強行しようとしているのは、憲法改悪の政治過程を加速させ、憲法9条の改悪を軸とする「改憲ムード」を盛り上げようとするためのものにほかならない。
民主党議員も参加する改憲議連(憲法調査推進議員連盟)案が軸になった「改憲国民投票法案」に関して、昨年十二月の自公合意では@有権者は二十歳以上の日本国民A投票運動に対する規制は必要最小限にB投票日は国会議員選挙とは一緒にしない、などが確認された。しかし、肝心の投票方式については、一括して賛否を問う形態にするのか、「改正」条項ごとに賛否を問う方式にするのかは、改憲発議の際に決めるということになっており、まったく法案の体をなしていない。この点では、とにかく憲法改悪のための法的基盤に格好をつけるだけで、「国民投票」において民主主義を保障するためのいかなる枠組みもないままに、スピード成立させられようとしているのだ。
われわれは、改憲国民投票法を成立させるための国会法改悪と、改憲国民投票法案そのものを阻止するための訴えを強めていく必要がある。
同時に今回の通常国会では、昨年十二月に閣議決定された新防衛計画大綱に基づいて自衛隊の海外派兵を「本務」に格上げするための自衛隊法改悪案が提出される。同改悪案では、@自衛隊を統合運用するための組織改編Aミサイル防衛(MD)システムの導入に伴った迎撃手続きの簡素化(閣議決定を経ずに防衛庁長官の判断で迎撃できるようにするもの)も盛り込まれる。
さらに防衛庁の防衛省への昇格法案も提出・成立がめざされている。内閣府に属していた防衛庁の省への昇格によって、閣議案件が独自に提案でき、独自の予算要求や省令の制定が可能となる。
このような形で、改憲プロセスと一体となった自衛隊の海外「遠征軍」化と集団的自衛権の実質的発動が既成事実として進行しようとしている。国会法改悪案、改憲国民投票法案の成立を阻止する闘いと結びつけ、自衛隊法改悪案、防衛省設置法案に反対するキャンペーンを広げよう。
こうした行動とともに、沖縄・辺野古での海上基地建設を阻止し、自衛隊のイラク派兵に反対する闘いを強化し、三月十九日にWORLD PEACE NOW実行委員会が主催するイラク反戦集会への大結集を実現しよう。(1月23日 純)
ダボスとポルトアレグレの架け橋などない!
第5回世界社会フォーラム開催
【ポルトアレグレ】第五回世界社会フォーラムが一月二十六日からブラジル・ポルトアレグレ市において開催され、オープニングのデモ行進では数万人が参加した(写真)。登録者情報では、事前登録者百二十二カ国、七万八千人。当日参加者を含め十五万人参加すると広報された。
フォーラム会場は、リオグランデドスル河が形成するガァイバ湖に面した広大な二つの公園に、大小百五十のテントが用意されている。これは前回インド・ムンバイの例を踏襲し、より大規模にしたものだ。フォーラム開催に先立つ日に、国際評議会が開催されており、二〇〇六年は各地域別フォーラムを行い、二〇〇七年アフリカで第六回世界社会フォーラム開催が決定された。
今フォーラムはブラジル・ルラ大統領二年目の評価が固まってきた最中のものであり、一月二十七日にはPT(労働者党)など主催者の一部がルラ大統領を招待し、ギガンチィーニョ(巨大屋内競技場)で演説した後、貧困削減のためダボスとの架け橋をはかるとの目的で、二年前と同様ダボスの世界経済フォーラムに向かっていった。三万人が詰めかけたルラ大統領演説会場の前では四百人の抗議者が押しかけ、「ルラよ、君の仲間はIMFか?」などと叫んでいた。(北野)(詳細次号) |