京都で日本初の社会フォーラムを開催
「〈よりよい京都〉からはじまる〈もうひとつの世界〉」
十二月十一日から十二日まで、京都大学で京都社会フォーラムが開催された。
このフォーラムは、世界社会フォーラムや世界各地で発展している社会フォーラムの運動につながる日本における最初の試みとして、「〈よりよい京都〉からはじまる〈もうひとつの世界〉」をテーマに、二十八団体と八十人の呼びかけ・賛同により準備され、二日間にわたりメイン企画のほか、十三のワークショップ、十団体のブースなどの多彩なイベントが行われた。
十一日のメイン企画では三人の基調報告と質疑の後、参加者のリレートークが行われた。
三つの視点からの
基調報告と質疑
はじめに山家(やんべ)悠紀夫さん(暮らしと経済研究室)が、「日本経済の動向と〈構造改革〉の問題点」というテーマで発言した。小泉内閣の「構造改革」は、停滞分野を除去して成長分野に資源が流れるようにすればうまくいくという考え方だが、実際には大企業が儲かっているだけで地域の経済社会は崩壊に向かいつつある。山家さんは「不良債権処理」の仕組みと問題点を非常に明快に説明し、条件さえあれば存続できた企業を無理やり倒産に追いやったと指摘し、結論として、働く人を中心に、また、地域主体の経済システムを通じて方向転換していく必要があると提起した。
次に、中林浩さん(平安女学院大学)が「〈よりよい京都〉へのまちづくり」をテーマに発言した。中林さんは、日本の景観の頽廃は深刻な文化的危機であるという指摘を紹介し、京都はまだ世界の優れた大都市の特徴が残っているが、現在の行政の下でそれが次第に失われつつあると指摘し、反戦運動やさまざまな社会運動に関わっている人たちは、景観という問題についても考えてほしいと提起した。
三番目の報告者の吾郷健二さん(西南学院大学)は「ラテンアメリカの社会運動の動向から」というテーマで、主にメキシコにおけるグローバリゼーションの実情とそれに対する抵抗について報告した。環境、知的所有権、農村の危機、雇用等をめぐる非常に先鋭な対立・矛盾の中で、民衆の抵抗がさまざまな創意的な形態をとって発展していることが豊富な実例を通じて紹介された。
質疑では、地域通貨の可能性、人の移動の問題をどう考えるのか、「成長モデル」でないモデルはどのようなものかなどの問題が提起された。「成長モデル」に関連して山家さんは、米国では囚人の数が二百万人であり、経済成長で社会がうまくいっているとは考えられないと指摘した。
グローバル化の現
実認識の共有を
メイン企画の後半のリレー・トークでは、十六人の発言者が簡潔に問題意識や活動の現状を語った。テーマは実に多彩だった。世界社会フォーラム、北海道におけるGM(遺伝子組み換え作物)、イラク派兵、辺野古の闘争への支援、在日難民の状況、人身売買の問題、野宿者への支援、地球温暖化、日の丸・君が代、教育基本法、憲法等。
司会の平川秀幸さん(ATTAC京都)は、報告されている問題の一つ一つは、まさに「新自由主義的グローバリゼーションによる同時多発テロだ」と述べ、それぞれの課題についての取り組みが互いにつながっていくことが社会フォーラムの大きな意義だと提起した。
このあと、大学構内の食堂に場所を移して交流会。人形劇、翌日のワークショップの呼びかけをまじえて、交流を深めた。
ATTACの
ワークショップ
十二日は午前と午後の2つのセッションで合計十三のワークショップが行われた。
飢餓問題、エネルギー問題、「地域経済を支える京のものづくり職人たち」、「難民と一緒に暮らせる街に」、辺野古緊急報告、「クマはなぜ町に出てくるのか」、NHK裁判(「検証!女性国際戦犯法廷」番組改ざん事件)、若者の労働等のテーマで実行委員会参加団体がそれぞれ準備してきた。
ATTACは「トービン税」と「郵政民営化」の二つのワークショップを開催し、それぞれ活発な議論を通じて、非常に具体的な行動が確認された。トービン税については十一月のミカエル・ブックさんの講演会の成功をベースにして、全国的取り組みを強化することが確認され、来年前半の行動計画が提起された。郵政民営化については、郵政ユニオンの呼びかけに応えて、「市民監視ネット」などの活動を広範に展開することが確認された。
最後に、全体会でワークショップの報告を共有し、実行委員会からの二日間のまとめの提起を受けた。報告集を作成すること、第二回の開催に向けて、今回の経験について意見を出し合っていくことが提起された。
参加者有志による反戦デモが呼びかけられ、小雨の中、自衛隊派兵延長抗議、辺野古への基地建設反対等の声を上げながら、今出川通りをデモした。
手作りのフォー
ラムとして成功
京都社会フォーラムは、全国的にも注目される新たな試みだった。
主催者発表によると、参加者は一日目が百五十人、二日目が二百五十〜三百人、両日で合計三百五十〜四百人だった。参加人数だけを取り出せば、数ある集会の一つと変わりはないかもしれない。しかし、その質においては、世界社会フォーラムや世界各地の社会フォーラムの運動につながるものである。
何よりも、京都の多くの社会運動団体が、それぞれの課題を持ち寄りながら、「もうひとつの世界」を共通のテーマとして議論し始めたことは、非常に重要な経験だった。しかも無党派の市民運動やエコロジー運動から共産党、社民党、新社会党、新左翼諸党派、アナーキスト系のグループまで、ひとつの空間を共有し、協力し合ったのである。
また、次の二つの点を特筆しておくべきだろう。
第一に、京都社会フォーラムが、文字通り「手作り」のプロセスとして実現されたことである。行政や外部の基金に頼ることなく、また、有名人や大きな団体に依存することなく、すべてが参加団体・個人の自発的、精力的な活動によって行なわれた。これは地域における社会フォーラムの一つのあり方として、重要な経験となるだろう。
第二に、京都社会フォーラムのすべての側面において、ATTAC京都をはじめとする若い活動家たちが中心を担ったことである。それは京都の「土着的」な運動およびそれを担っている世代の経験と、新しい世代の新しい発想・活力が結合する大きな契機となった。
これらの成果や可能性がまだ端緒的なものであり、安定したものでないことは言うまでもない。しかし、逆に言えば、発展の可能性に満ちている。
世界社会フォーラムの重要な意義の一つは、巨大な数の結集を通じて、新自由主義的グローバリゼーションに対する世界各地の抵抗を「可視化」することにあった。このダイナミズムを推進力としつつ、地域においてそれとつながる運動を発展させていくことがますます重要になっている。この課題に日本において初めて挑戦した京都社会フォーラムの意義は、今後ますます明確になるだろう。(K・H)
山口啓さん(郵政労働者ユニオン、ATTACジャパン)に聞く
民営化に反対し「もう一つの郵政改革」へ
利権構造を変える闘い
――山口啓さんは、郵政労働者ユニオンの組合員であるとともにATTACジャパン(首都圏)の運営委員です。先日の京都社会フォーラムでは、「郵政民営化=公共サービスを守るための労働者・利用者・社会運動団体の共闘は可能か」というワークショップで職場状況についての報告もされています。そこで、今日は、郵政労働者として、またATTACジャパンとしての立場からも、小泉内閣の最優先課題とされている郵政民営化にどういう形で反対するのか、おうかがいします。
小泉政権の発足以来、首相は「構造改革の本丸は郵政三事業の民営化」だと言いつづけてきたわけですから、郵政ユニオンは当然危機感を持って民営化反対の立場を取ってきました。今回の民営化は日本だけの話ではなく、「公共サービスの民営化」という世界の新自由主義的な流れに乗ったものです。「郵政民営化基本方針」を閣議決定し、新内閣を「郵政民営化実現内閣」として押し出し、担当大臣まで置いたのですから、民営化キャンペーンは追い込み段階に入ったのでしょうね。
しかし民営化反対といっても、私たちは利権にまみれた郵政事業がこのままでいいとは思いません。この利権構造を変えなければなりません。郵政民営化の中身は、結局のところ利権構造は温存したまま、三百五十兆円とされる郵貯・簡保資金を市場原理に委ね、物流部門に進出して多国籍企業に転身しようとするものです。
だから「郵政民営化反対」という時、たんなる「反対」ではなくて、郵政事業を労働者と利用者の手に取り戻すという視点が重要なのです。
現場で先行する民営化
郵政の労働現場では、すでに民営化が進んでいるといってもよいでしょう。今のままでいったら、仮に民営化されなかったとしても郵政という公共サービスは破壊されてしまいます。だから今の郵政事業ではなく、労働者と利用者のための郵便局、地域を活性化するための郵便局という立場にたって現場のところから変えなきゃならないんです。
現場では「効率化」「生産性向上」という名目で、トヨタ生産方式が導入され、ジャパンポストシステム(JPS)と名付けられました。二年前から埼玉県の越谷郵便局に郵便集配現場の「ムリ・ムダ・ムラ」をなくし、効率化による人減らしで郵便事業の赤字を解消するモデルとするために、このシステムが入ったんです。
郵政公社の生田総裁は、越谷でJPSを入れたことで生産性が一〇%向上した、次は二〇%向上を目指すと言い、全国展開に乗り出したわけです。しかし現状はどうかというと恐ろしいほどの労働強化です。
トヨタから七人の社員が越谷郵便局に入って集配と郵便内務の労働を調べて千七百以上の「カイゼン」項目を提出しました。その過程では配達するバイクと自転車にGPSを付けて配達経路のデータを取ったり、郵便物を配達する道順に区分けするのに何秒かかるかとか腕を何センチ伸ばしているか、などまで調べたんですね。
その結果、区分けの棚の形を変えたり、長年の経験と知恵で作られた最良の作業方法を全部組み換えてしまったんです。すると区分けが遅れる、二〜三時間の超勤をしても配りきれないところが出てくる。実際、サービス超勤というかたちで超勤手当も支払われないケースもある。暗くなってから配達するので誤配も増える。二〇〇三年の正月には一月一日に年賀状が配られない家が越谷市内で沢山出ました。ひどい場合では、翌朝に朝刊と一緒に郵便物をとることになり「最近、郵便局はサービスがよくなったのね、朝刊より早くに配達される」なんてほめられることもあるそうです。実は、前の夜遅くなってから配達したのにね(笑)。JPSになってから超勤が増えたために、越谷局などでは「三六協定」を何度も結びなおすというほどです。
利用者へのサービス低下も見られます。これはATTACジャパンの越谷プロジェクトで越谷住民から出た話なのですが、その住民の家の近くにあるポストではいつのまにか集荷が一日三回から一回に減ったんです。駅前など人通りの多いところのポストでは一日三回の集荷が五回に増えたりしているんですが、逆に人通りの少ない住宅地などでは減ってしまった。するとたとえば速達郵便をポストに入れても、一日一回の集荷が終わった後なら次の日までポストに残留するわけです。
確かに、ポストに書かれている集荷時間を見ると一日一回になってしまっている。しかしそんなことは住民には知らされていないから、知らない人が多いんです。こんなことで「住民サービス」とは言えませんよね。
それから、越谷では今までポストからの集荷はすべて日逓に委託していたわけですが、経費削減のためということで集配の労働者が途中で集荷もやる、という労働強化になっています。
「効率化」という人減らし攻撃
労働現場の話を続けますと、現場では「効率化」という人減らしがすさまじい勢いで進んでいます。正規職員がやめたら補充せずに日々雇用の非常勤「ゆうメイト」に置き換えられています。私の職場で言いますと、一カ月契約、六カ月契約の非常勤労働者がいます。北海道の人から聞いた話では二週間契約という人もいるそうです。そうした場合は、二週間働いても次の二週間は働けるかどうかわからないこともある。一カ月契約でもその月の末に「来月もお願いします」という通知がなければ、次の月は働けないという、非常に不安定な雇用なんです。いま郵政の正規職員は二十七万人で、非常勤職員は十二万人です。このままいけば両者の比率は逆転してしまうでしょう。
私の職場では、正規職の八時間労働に対して非正規職は七時間労働が多いのですが、七時間働いた後さらに一時間の超勤で八時間働くという人も多いのです。超勤は強制ではないけれども、雇用形態が不安定であり、この先働くためには拒否できない。
さらに二〇〇四年の四月から非常勤の人にも新賃金制度が導入されました。今までは更新のたびに僅かでも上がっていた時給が、六カ月毎に査定されてランク付けされた結果、下がってしまった人がたくさんいます。時給で六十円も下がった例があります。一応、苦情処理制度があるのですが、なかなか苦情を言えない身分的な弱さがある。郵政ユニオンは新賃金制度は賃金切り下げのためだと批判してきたのですが、その通りになってしまいました。
郵政公社は非正規職の賃金・雇用についてマクドナルド方式を取り入れたのです。新自由主義グローバリゼーションを象徴するトヨタシステムとマックジョブが郵政公社の現状です。
差別分断の非正規雇用
こうした厳しい環境だから、誰も「郵政民営化」に関心がないかのように、職場で話題になることがあまりありません。私の職場では、職員が八百人くらいで非常勤職員は五百人くらい働いています。そして賃金の面では、非正規職員と正規職員の分断・差別が大変なものです。ゆうメイトの場合、時給八百円前後が普通ですが、七時間働いて日給で五千円ちょっと、月にすれば十万円をやっと超すぐらいですよね。正規職員との年間の賃金格差は三分の一、四分の一になります。
また非常勤だけではなく、入力の打鍵作業や二四時間制のカード紛失センターでは部外委託の派遣の労働者が働いています。つまり正規職員、非正規のゆうメイト、派遣という三種類の身分があるんです。ゆうメイトの場合には、当局の側に管理責任があるわけですが、部外委託の派遣労働者の場合には当局には管理責任すら生じないわけです。責任は派遣会社の方にある、ということになる。
この職場の分断状況をなんとかしないと「民営化反対」と言っても現実を変えることはできないと思うんです。正規雇用労働者と派遣労働者や非正規雇用労働者とが分断され、低賃金や超勤でこき使われるような実態では、公共サービスを支えることはできないんです。
利用者の利益をも守る闘い
――郵政ユニオンやATTACジャパンは「公共サービス防衛」の立場から、民営化にどう反対していこうとしていますか。
組合が労働者の利益を守ろうとするのは当然なのですが、私は、国鉄や電電公社の民営化を考えた時、労働組合が労働者の利益だけを守ろうとしたために押し切られてしまったという面もあると思います。同時に利用者の利益という問題を考える必要があります。
郵政民営化に反対するとき、労働組合だけの狭い枠を超えることが必要なのであり、それが「もう一つの郵政改革」の意味ではないでしょうか。
郵政ユニオンは「郵政民営化を監視する市民ネットワーク」を形成しようとしています。郵政ユニオンはもちろん民営化反対なのですが、このネットワークは頭から「民営化反対」を打ち出すのではなく、民営化問題を労働者と利用者が対等のレベルで論議を深めていくことを目指しています。「官から民へ」、「国民の利便性」、「郵貯・簡保資金の市場での活用」などと言われていますが、こうしたことを労働者と利用者がキチンと討論し、無関心な人びとも討論の中に入ってもらいたい、ということです。
市民ネットとユニオンの連携を
――フランスでは民営化による郵便局の統廃合に対して、地域や自治体ぐるみでの共闘によるストなどが闘われていますよね。
そう。日本でも民営化によって五千もの郵便局がなくなってしまうとされています。私が北海道にATTACの例会で出かけたとき、長万部の高校の先生が来ていて、近くの村の郵便局が廃局になるという話が持ち上がっているといっていました。老人が多い地域で、郵便局が廃局になれば便数の少ないバスに乗って市内の郵便局に行かなければならないそうです。そこでは郵便局が、地域のコミュニティーを維持するために重要な役割を果たしているんです。こうした過疎地の声が郵政ユニオンにもなかなか聞こえてこない、という問題があります。
フランスではSUD―PTTなどの郵政労働者と、郵便局が廃止される地域の自治体の長や議会が共闘して地域ぐるみで闘っています。過疎の地域で郵便局がなくなってしまう、ということの深刻さを考えなければいけませんね。
ATTACジャパンは越谷プロジェクトを通じて、地域の利用者と労働者との具体的なつながりを草の根的に作りだしていくために踏み出そうとしています。利権構造の維持でも民営化でもない「真の郵政改革」とは何か、公共サービスの防衛とは何か、ということを郵政ユニオンやATTACの仲間がいるところで小さくてもいいから模索していく必要がありますね。
郵政ユニオンは、組合と監視市民ネットを別々に切り離して考えているところがあり、私はそれではいけないと思っているんです。ATTACとしては郵政ユニオンとも監視市民ネットとも連携して、反対運動をやってきたいと考えています。そうでないと「民営化反対」が労働組合だけの闘いになってしまい、今までと何も変わらないのじゃないかと思うんです。
京都社会フォーラムでは、民営化監視市民ネットワークをふくめて、それぞれ具体的に何がやれるのか、という討論をするためのワークショップを企画しました。今後もそれをATTACの重要な課題として位置づけて、全国各地で監視市民ネットに賛同する人とともに運動を作っていきたいのです。そういうところから「もう一つの郵政改革は可能だ」に挑戦したいと思います。
フランス準備委員会の討論から
欧州社会フォーラムの総括論議
アングリド・アイェス
フランスで総括
準備討論集会
十月にロンドンで開催された欧州社会フォーラムの総括を行うために来る十二月十七日と十八日、ヨーロッパ集会が開催される。この集会を前にして、フランス準備委員会が欧州社会フォーラム総括討論集会を十一月三日に開いた。この討論集会での欧州社会フォーラムに対する全体的な総括は肯定的なものだった。
労働組合と社会
運動団体を結集
フランス準備委員会は、欧州社会フォーラムの準備期以降に存在しているパリ・サンドニ地域の組織であり、フォーラム開催後も引き続き存続することをすでに決定している。ロンドンで開催された欧州社会フォーラムをフランス側で、準備したのはこの組織である。フランス準備委員会は、労働組合と社会運動団体を結集しており、共同作業のおかげで、さまざまな構成団体をときとして引き裂くさまざまな意見の相違にもかかわらず、欧州社会フォーラムが果たすべき役割について共同の理解に到達することができた。
フォーラムの硬
直した組織方法
今回の討論会では多くの発言がなされた。LDH(人権同盟)、CGT(フランス労働総同盟)、FSU(統一組合同盟)、Attac、ネットワーク・バベル、ACG(反戦行動委員会)、『ルージュ』紙、No Voxなどの代表がこの問題についてその意見を表明し、討論を行った。
討論は二つの側面をめぐって展開された。ひとつは、欧州社会フォーラムが組織されたそのやり方についてであり、もうひとつは、運動に提起されている戦略的問題である。最初の点については、イギリスの組織委員会が硬直したやり方を取ったという点が強調された。こうした硬直したやり方によって、イラク問題とかロンドン市長のケン・リビングストンの発言の問題とかいった、いくつかの不可避的な政治問題が、とりわけ異なるさまざまな立場の間の民主的討論の保証という枠組にもとづいて、フォーラムの過程で解決されることが、できなかった。
またこの硬直したやり方のために、フォーラムの準備過程で中心的問題であるとみなされていた、とりわけ、フェミニズムの問題などに十分な場が与えられなかったし、青年の討論への参加の場が十分に得られなかったという事態が引き起こされた。
戦略的問題に関しては、それは複雑である。すなわち、それは、フォーラムの有効性をいかに立証することができるのか、そしてまたいかにしてフォーラムの過程の全側面にすべての参加者がうまく対応して参加できるようにするのか、という問題である。これは、もっとはっきりと言えば、社会運動総会の役割である。
討論全体の基調
は肯定的に評価
しかしながら、討論の全体的な論調は、否定的側面が中心ではけっしてなかった。すべての発言は、ロンドンの欧州社会フォーラムの収支決算が肯定的なものであるという点に同意していた。
とりわけ社会問題やヨーロッパ問題をめぐる討論は、非常に興味深いものであったし、前回の社会フォーラムに比べて、共同の定式の作成や実践の点でははるかに前進していた。同じく、出会いとネットワークの確立という観点からすると、欧州社会フォーラムは、全ヨーロッパからやって来たさまざまな団体の間の結びつきを深めることができた。この点で、設定された諸目標は達成されたのである。
フィレンツェで欧州社会フォーラムが準備された二年前の時点から開始されたヨーロッパ規模の過程を、ロンドンはけっして停止させなかったのであり、欧州社会フォーラムに参加する諸勢力がそこから距離をおくなどということは問題外である。社会フォーラムのこの過程にさらに積極的に参加することこそ、欧州社会フォーラムの将来について展開されているマスコミの攻撃に対して断固として反撃することができる。
マスコミは、ロンドンの欧州社会フォーラムは「終りの始まり」であり、ロンドンは「イスラム的左翼」――昨年発明された表現――が活動するとんでもない場であった、などという話を人々に信じ込ませようとしていている。
討論は、とりわけ次の欧州社会フォーラムの展望を見据えて、今後も続行されるだろう。次の社会フォーラムは、二〇〇六年春にアテネで開催される。
「ルージュ」(二〇八六号、04年11月11日)
投書
映画「戦争」シリーズ全5巻―院内上映会に参加して
町田一郎
十二月八日、参議院会館で「戦争」シリーズ全五巻を観た。参加者は八十三人だった。第一巻「日韓併合への道」(30分)、第二巻「朝鮮半島植民地支配の実態」(28分)、第三巻「太平洋戦争への道中国大陸侵略」(30分)、第四巻「太平洋戦争と東南アジア」(29分)、第五巻「太平洋戦争と沖縄」(35分)。途中20分程説明があったが合計三時間、教えられることが多くとても勉強になった。
中津義人が全五巻の脚本・監督をつとめるこの映画は十年前東映が高校生のため作ったもの。日本が再び戦争への道を歩み始めた今、倉庫に眠らしてはならないということで、本集会が計画された。
第一巻の日韓併合は一九一〇年へ至る道である。明治維新以後、日本は江華条約をテコに半島侵略の第一歩を築く。甲午農民戦争など義兵の闘いが安重根の伊藤博文暗殺まで続く闘いだったことがよく分かった。一九四五年までの三十五年、日本による不当な侵略が続いた。日清、日露の二つの戦争もあった。
第二巻は植民地支配の実態である。@農民から土地を奪うA皇民化教育で日本語を強要するB創氏改名で朝鮮人の名前を奪うC太平洋戦争時に入ると強制連行で北海道の炭鉱などに連れて行く、そしてD一九二三年の関東大震災では六千六百人を超える朝鮮人を虐殺した。一方不屈の闘いであった一九一九年の三・一独立闘争は正義の闘いであり今日に続く。
過去の侵略戦争
から現在を問う
映画監督の中津さんは、歴史には必然性があると語った。
三年間もかけ全五巻を完成させた中津さんは、戦争はこうして作られ、戦争はこうして次なる戦争を呼び、戦争はこうして破壊を導くと言う。次なる戦争に第三巻の中国侵略をあげることができるだろう。
一九二九年世界恐慌、一九三一年に日本は中国侵略に突き進み、満州を侵略した。平頂山で三千人の虐殺、その証言は一度聞いたら決して忘れられないものである。南京二十万人の虐殺は世界に報道された。
一方抗日の戦いは日増しに前進し、日中戦争は泥沼化していくのである。
第四巻の東南アジア、第五巻の沖縄は一九四一年の太平洋戦争が出発点だ。中津さんが言うように日本が破滅への道を転がり落ちていく過程でもあった。
日本は東南アジアへの戦争で、鉄鉱石や石油などを求めた。日本は中国重慶やハワイ真珠湾攻撃が失敗であったと同様、勝利の展望を見いだせない。マレー半島における皇民化教育、天皇制温存のための時間稼ぎだった沖縄戦など、まさしく日本の戦争は天皇のための戦争であったのだ。
一九四五年八月、日本は広島、長崎と二つの原爆をアメリカに落とされた。アジアの人民は解放の声をあげたという。残念ながら同情の声はなかったのである。
以上全五巻は二十世紀の戦争を告発している。
そして九・一一以後再び戦争が私たちの前に立ちはだかっている。
主催者は言う。各地、各グループの皆さん、ぜひこの「戦争」シリーズを活用してほしい。(12月10日)
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