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教基法改悪阻止・新自由主義教育改革に抗するスクラムの強化を |
改悪法案化をめぐる綱引き
小泉政権は、グローバル戦争参戦国家体制にむけたステップである自衛隊イラク派兵延長(十二月九日)、新「防衛計画大綱」と次期中期防衛計画(十日)を決定した。こうした既成事実を先行して積み上げつつ、戦争ができる国家作りのための憲法改悪と教育基本法改悪の動きを加速させている。
小泉政権は、改憲攻撃と連動して大資本と多国籍企業のための市場主義、差別・排外主義、弱肉強食競争を軸とした社会改造、軍事と治安弾圧のグローバル化に民衆を同意させ、統合し、動員するための重要なテコの一つである新自由主義と国家主義が結合した教基法改悪法案を改憲の前哨戦として位置づけ、次期通常国会に上程し強行成立をねらっている。
一九九○年代を通した資本のグローバリゼーションの拡大によって、その世界市場秩序維持のために日米安保体制の再編・強化を担うために小渕政権は、一九九九年第一四五国会で周辺事態法を制定した。同時に、国家主義統合を強制する国旗・国歌法を強行成立させた。自民党がこの「成果」のうえに念願の教基法改悪を決定し、小渕首相は、二○○○年一月の国会で「教基法見直しに着手する」と施政方針で表明したのである。そして、小渕首相の私的諮問機関である教育改革国民会議が教基法改悪をメインとした「教育を変える十七の提案」最終報告をまとめた。途中、小渕首相は病気で死亡し、森喜朗が首相となり、教基法改悪を繰り返し強調し、右派勢力を動員した改悪運動を開始していった。
この内容は基本的に壊れることなく文部科学省「二一世紀教育新生プラン」(○一年一月)に反映された。そして文科相の諮問機関である中央教育審議会は、○三年三月に「新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方と教育振興基本計画の在り方について」を答申した。
答申は、@「二十一世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」A「日本の伝統、文化の尊重」B「郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養」C「『公共』に主体的に参画する意識や態度の涵養」D文科省の権限拡大と教育内容の介入強化のための教育振興基本計画など新自由主義と国家主義的教育改革を具体化させ、教基法改悪法案に明記せよと迫ったのである。
この中教審答申を受けて、自民党と公明党は、〇三年五月から「与党・教育基本法改正に関する協議会」を設置し、作業部会として検討会をスタートさせた。○四年六月に協議会は、「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について」(中間報告)を発表した。
報告は、現在の憲法と密接な関係にあり、準憲法的性格を持った教基法(現行は前文と十一条)に対して前文、教育の目的、教育の目標など十九項目を改悪した内容になっている。
さらに報告は、与党間で合意していない「現行前文中の『憲法の精神に則り』の扱いについて」、「国を愛する心について」、「宗教教育及び宗教的情操の内容と取り扱いについて」、「義務教育制度について、特にその年限について」、「教育行政における『不当な支配に服することなく』について」など十一項目にわたる論点を示した。
早期法案化をめざす自民党は、公明党に対して一致していない部分を除いた合意部分から文科省が法案化作業に入ることを了承させた。文科省法案チームが作業を開始し、与党検討会に十一月十七日、教基法改悪法案一条から五条までを提出した。だが、この段階でも二条「教育の目標」は、自民党案の「郷土と国を愛し」、公明党案の「郷土と国を大切にし」とする両論が併記されたままの法案だった。
公明党は、「『愛する』という個人の主観的な営みを、権力による強制力を伴う法律で規定することは、近代立憲主義の根本である『内心の自由』を侵害することにつながりかねず、賛成できない」と主張している(公明新聞九月二十七日)。たとえ「愛」を「大切」にしても、「愛国心」教育の強制においては一致している。公明党神崎代表は、三月の記者会見で「郷土愛の延長線上の自然な感情としての愛国心は健全な国際人として育つためにも必要だ」と発言していた。だが、この十二月になって「愛国心」問題に対して「戦前の教育の反省を踏まえ、ことさらに慎重な検討が必要だ」と「後退発言」をした。つまり、創価学会・池田体制の了承がまだとれていないだけの段階にすぎないことを示している。
さらに、「宗教教育」に関して公明党は、「信教の自由」を侵すおそれがあるため現行条文の不変更を主張し、自民党が国家神道教育を射程にして「宗教が果たす役割を明確に書くべきだ」、「どうしても譲れない」と強硬意見が出ており、合意できていないままだ。
結局、検討会座長の保利は、論点対立について合意しないまま、文科省に第二次素案作成を指示する形で集約せざるをえなかった。
自民党推進派は、公明党に対する批判のボルテージを高めている。例えば、十一月二十九日に日本会議、日本会議国会議員懇談会、「日本の教育改革」有識者懇談会、教育基本法改正促進委員会の主催の「教育基本法改正を求める中央国民大会」で安倍自民党幹事長代理が声高に「『国を愛する』表現は譲れない一線だ」と強調し、公明党を批判している。
このデッドロックに対して民主党の教基法改悪推進派が介入し、改悪法案の作業を促進させようと登場してきていることに警戒を強める必要がある。民主党は、「創憲と連動して新教基法の創造」と称して教基法改悪をめざしている。
党教育基本問題調査会会長の鳩山は、中間報告に対して「部分的かつ限定的な修正であり、新たに創られるべき憲法を反映した教基法をつくるべきだ」と主張した。二十九日の「国民大会」には、民主党・元文部大臣の西岡武夫があいさつをしたが、そもそも教育基本法改正促進委員会の最高顧問が西岡、自民党の森喜朗、顧問として民主党の鳩山らが参加している。
この委員会は、「新教育基本法大綱」の実現を結集軸とし、侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」とつながりがある「日本の教育改革」有識者懇談会や天皇主義右翼の日本会議とも密接な関係にある。要するに、自民・民主党の改悪推進派は、公明党への圧力として「国民大会」を設定したのである。だから安倍と西岡は、「共産党、社民党を除いた超党派で教基法改正を成立させたい」とエールの交換発言をしたのだ。
このように与党間における論点対立は、いまだに克服されていない。自民党と民主党の改悪推進派の巻き返しを許さず、この一時的な時間的猶予を利用し、教基法改悪反対の陣形を拡大していかなければならない。
教基法全面改悪にむけた「中間報告」
日本資本主義は、八〇年代後半から九〇年代にかけた資本のグローバル化・多国籍化を背景に、世界競争に勝ち抜くために高コスト労働力雇用構造の解体・再編を迫られていった。その転換を指し示したのが一九九五年の日経連「新時代の『日本的経営』」路線だ。これまでの企業主義的統合を作ってきた一律的な終身雇用と年功賃金制を解体し、労働力を基幹職の長期蓄積能力活用型、有期雇用の高度専門能力活用型と雇用柔軟型に差別化した雇用形態に転換しながら、合理化とリストラを推進していった。
同時に財界は、資本のグローバル大競争に勝ち抜くための人材育成に向けて、政府に画一的教育政策から新自由主義的教育改革への転換を強力に求めた。具体的には、学校選択制と企業化、校長の権限と管理強化、教育の規制緩和、公教育のスリム化、複線型学校教育などである。そして、この諸政策を小泉構造改革路線に組み込みつつ、集約したのが中央教育審議会答申(○三年三月二○日)であり、教基法改悪にむけた中間報告である。以下、簡単に批判する。
現行の教基法の前文に対して中間報告は、「法制定の背景、教育の目指す理想、法制定の目的」のみを列挙しているだけだが、論点として「『憲法の精神に則り』の扱いについて」として挙げ、検討課題としている。つまり、この文言を削除し、「民主・人権・平和」の原理を捨て、新自由主義と国家主義をミックスした改悪前文をねらっている。
「教育の目的」は、現行法の「平和な国家及び社会の形成者」などの文言を削除し、戦争ができる国家に従順な「国民の育成」を強調しているのだ。
「教育の目標」では、「道徳心の涵養」、「公共の精神」、「良き習慣」、「伝統文化を尊重し、郷土と国を愛し(大切にし)」など新たに六項目を加えた。教基法が改悪されたら、国家がこの観点から学校教育の内容や、内心に対する不当な介入を正当化させる根拠となってしまう。「愛国心」については、自民党案と公明党案の決着がついていないが、いずれにしても愛国心の強制を行っている。『日の丸・君が代』強制を全国化していったように、教基法改悪をバネに露骨な愛国心の強制を広げていくのだ。
さらに「男女の敬愛と協力」の文言は、明らかにジェンダー・フリーを否定していくものである。「国際社会の平和と発展に寄与」の文言も、戦争ができる国家作りを正当化させ、動員を実現していくための根拠に使うだろう。
「教育の機会均等」は、現行法の「ひとしく」「教育の機会を与えなければならない」などの文言を削除し、「能力に応じた教育を受ける機会を与えられ」となってしまっている。つまり、国家として機会均等義務を否定し、差別・選別・エリート教育の強化をねらっている。
「義務教育」は、「国民としての素養を身につけるために行われ」ると位置づけ、国家が望む国民像を押しつけるものだ。そして、「九年の普通教育」を「別に法律に定める」として学校教育法の改悪を射程にしている。義務教育費国庫負担金は、来年度暫定的に四千二百三十億円を削減することに決まった。今後も財政破綻を理由にした削減傾向は拡大し、教員削減など地域間の格差が必至だ。
「男女共学」は、全面削除。男女平等教育の否定だ。ジェンダ・フリー・バッシング、憲法二十四条「婚姻・家庭生活における両性の平等」改悪攻撃と連動している。
「学校教育」では、教育の公共性を否定し、学校設置者の範囲を拡大し、新自由主義教育の推進を強調する。さらに、教員に対しては、「規律を守り、真摯に学習する態度」や「自己の崇高な使命を自覚して」などを強調した。国家が望む教員像の強制である。
「大学教育」は、新設であり、グローバル経済を勝ち抜く人材育成が必要だと位置づけた。「私立学校の振興」も同様の観点から位置づけ、教育特区や株式会社学校などを広げようとする。
「宗教教育」は、「改正案」に「一般的な教養」を加え、これを根拠に「宗教的情操の涵養」と称して、復古主義的な国家神道教育の導入を拡大していく可能性がある。
「教育行政」では、教育への国家・行政権力の介入を禁じた現行法十条を否定した。さらに、「不当な支配に服することなく」を掲げ、教職員組合や市民運動などの批判をはねのけろと明記しているのである。
補則において改正案は、教育振興基本計画を教基法に組み込むことを主張している。これを根拠に教基法が理念法から行政施策法へと変質し、行政の教育の介入が強化される。すなわち、諸統制、予算措置など文部科学省の権限が強化されてしまうのだ。
中間報告は、これまでの教基法の基本原理を根本的に解体し、新自由主義と国家主義が結びついた教育改革への踏み出しであることを宣言している。中間報告の反動的内容を暴露し、急ピッチで進めている教基法改悪法案に対して全面的な批判を展開していこう。
石原と都教委の強権攻撃をはね返そう
東京都教育委員会は、○三年十月二十三日に「入学式・卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」通達を出し、○四年の卒業式・入学式において国歌斉唱時不起立であった教員と、生徒の不起立も理由にして三百人以上の教職員を処分した。そして、被処分教員に対して「再発防止研修」への参加を求め、転向を強要する事態まで発生している。
これらは憲法十九条の思想・信条の自由に対する侵害であり、教基法第十条「教育は、不当な支配に服することなく」の違反である。つまり、教基法改悪に向けた中間報告で「教育行政は、不当な支配に服することなく」と変更しているが、『日の丸・君が代』強制を批判する者を「教基法違反だ」として処分を乱発していくことを先取り的に行ったのである。
さらに弾圧がエスカレートしている。都立板橋高校の三月の卒業式で同校元教諭が「日の丸・君が代」強制を批判した『サンデー毎日』のコピーを配布したことに対して板橋高と都教委は、式を妨害したとして被害届を権力に出し、地検が十二月三日、元教諭を在宅起訴した。権力を動員してでも『日の丸・君が代』強制に反対する者を圧殺していく姿勢の現われであり、見せしめ的弾圧だ。
石原と都教委による教育破壊は、これだけにとどまらず都立養護学校への性教育バッシング、ジェンダーフリーバッシング、侵略戦争と天皇制を賛美する「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書採択、愛国心教育と道徳教育の強制などと続いている。
このような権威主義的な強権攻撃とともに、新自由主義的教育改革を次々と押し進めている。都立四大学の廃止と首都大学東京の強引な設置、学校間の競争原理の導入である都立高校の学区制撤廃と統廃合、ニューパブリックマネージメント(新公共管理)を導入した学校経営・管理と教員人事管理、都立学校の管理・チェックシステムの強化をめざした都立学校経営支援センターの設置などだ。
これらを都教委は「東京都教育ビジョン」(○四年四月)でまとめあげ、当面する戦略として設定した。この路線を推進させていく一環として「日の丸・君が代」強制反対運動に対する処分乱発等による排除も組み込まれている。これ以上の石原と都教委の暴走を許してはならない。
教基法改悪法案化作業の一時的遅れが発生しているが、改悪法案は、確実に通常国会で提出される局面に入っていることをあらためて確認しなければならない。東京都における○五年春期の「日の丸・君が代」強制反対、石原都知事と都教委の教育破壊を許さない闘いを教基法改悪阻止と結びつけて拡大していかなければならない。被処分者を先頭にした処分撤回闘争、裁判闘争などに支援連帯していこう。この間の「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」、「都教委包囲首都圏ネットワーク」、「『学校に自由の風を』ネットワーク」の取り組みの成果を防衛し、教基法改悪と『日の丸・君が代』強制に反対し、新自由主義的教育改革を許さない闘いを作り出していこう。
一月十日、「変えよう!強制の教育 学校に自由の風を!」(主催 自由の風1・10実行委員会/午後1時開場/日比谷公開堂)、二月六日、「『日の丸・君が代』強制反対!『10・23通達』、不当処分、不当解雇を撤回せよ! 〇五年二・六総決起集会」(主催 石原・横山東京都教育委員会の暴走をとめよう!ネットワーク/午後1時〜/日本教育会館)に参加しよう! (遠山裕樹)
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