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『沸騰する「資本主義中国」』「かけはし」編集委員会編
―新時代社発行 300円               
かけはし2004.08.9号

普通の「帝国主義大国」への軟着陸は成功するか


 世界の大富豪ランキングで有名なアメリカの経済誌「フォーブス」と同様の中国経済誌「新財富」(03年4月号)が、「中国の大富豪百人」を発表した。トップの栄智健の資産は六十一億一千万元(約九百十六億円)。彼は香港やニューヨークで大規模な株や土地の投機を行っている中国最大のノンバンク「中国国際投資信託公司」(CITIC)会長であり、同公司前会長で前国家副主席・栄毅仁の息子である。第二位は、アメリカ、イギリス、ドイツ、カナダなどに数十の子会社を持つ自動車関連部品やカメラ関連機械製造の萬向集団総裁・魯冠球で、資産は五十二億四千万元(約七百八十六億円)。魯冠球は萬向集団の共産党主席と党委員会書記を兼ねている。ちなみに、萬向集団のアメリカにおけるロビイストは現大統領ブッシュの叔父で父ブッシュの兄であるブレスコット・ブッシュである。
 七〇年代末から始まった「改革・開放」路線の下で進行してきた中国資本主義の成長は、新自由主義グローバリゼーションの流れと結合することによって一挙にスピードアップした。世界資本主義にとっていまや中国は、インドと並ぶ最大のフロンティアとなった。中国経済の新自由主義的発展は、中国に一億人を超える大衆消費社会市場を形成し、帝国主義諸国に準ずる消費の「豊かさ」を享受する一定の層を形成した。しかし国有企業や内陸農村部では無数の労働者人民が切り捨てられ、貧富の差はかつてない勢いで広がっている。そしてまた「世界の工場」となった中国経済の新自由主義的発展は、世界の労働者人民に「底辺への競争」を押しつけ、労働条件を切り下げる決定的テコの役割を果たしているのである。
 二〇〇二年十一月の中国共産党第十六回大会は、江沢民の「三つの代表論」を規約に書き込み、すでに始まっていた資本家の大量入党を公式に路線化した。二〇〇四年三月の全人代では、共産党支配体制の周辺で国有財産を食い物にしながら成長した中国ブルジョアジーの強い要求であった「私有財産不可侵」を、憲法に明記した。中国共産党は公式に資本主義的国民政党となり、共産党一党支配体制の下で中国国家は公式にブルジョア国家となった。中国で求められているのは、共産党支配体制のあらゆる人権弾圧を許さず、新自由主義と対決し、新たな社会主義革命をめざす闘いである。反グローバリゼーション運動はこの闘いを支援し、連帯しなければならない。(04年7月)  
目 次
b中国共産党16回大会―資本主義的国民政党への転換へ
b『中国現代化の落とし穴』によせて
b中国共産党3中全会―『私有財産保護』を初めて盛り込む
b全人代で憲法改定―「私有財産不可侵」を明記
b「反官僚政治革命」という戦略概念をいまどのように考えるか 

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