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福井・美浜原発死傷事故糾弾                    かけはし2004.08.30号

核燃料サイクル政策とプルトニウム政策の抜本的転換を

やめよう! 再処理8・21集会


1500の配管を放射能で汚すな!

青森・福井の報告

 八月二十一日、「やめよう!再処理八・二一集会〜千五百キロの配管を放射能で汚すな〜」が東京・渋谷勤労福祉会館で開催された。東京都内の地域原水禁に結集する仲間や首都圏の市民活動家のよびかけによる実行委員会が主催し、およそ八十人が参加した。
 集会は、グリーンピースジャパンの鈴木かずえさんの司会、呼びかけ人を代表して江戸川原水禁の須貝純二さんによる主催者あいさつではじまった。
 集会のスピーカーは、原子力資料情報室の澤井正子さんが「六ヶ所再処理工場とは/ウラン試験とは」と題した報告、青森県原子力政策懇話会委員の笹田隆志さんから青森の現地報告、R―DANネットワークつるがの田代牧夫さんから福井の緊急報告、原子力資料情報室共同代表の伴英幸さんから原子力長期計画策定会議についての報告、コストから原発を考えるプロジェクトの松丸健二さんから「原発の後始末〜十九兆円の行方」と題した報告、グリーンピース・ジャパンの鈴木真奈美さんから海外再処理工場の汚染の実態について報告が行われた。

原発下請け労働

 田代さんは美浜事故後、旧知の原発下請け労働者に最近の現場の様子と事故の感想を聞きとってから集会に参加してくださった。
 蒸気噴出事故で死傷した十一人は、他の下請企業の休憩中にあえて現場に入ったという。効率を優先した結果だが、知り合いの労働者は今回の事故を「他人事ではない」と感じたという。かつては運転中に現場に入ることはなかったが、定検短縮のために準備工事が早く始まるようになった。また、かつては二十四時間体制でも仮眠がとれたが、いまは働きっぱなしである。
 敦賀三・四号炉増設の準備として海岸の埋め立てがはじまっているが、原発の新設工事の仕事はなくなった。定検などの下請け業者による仕事の取り合いにより、単価が安くなり工程もきびしくなった。人間の数も、たとえばピークに合わせて十五人を集めるが、片付け作業などは二人で済ませるしかないなど、「きびしい、苦しい、何とかしてほしい」というのが下請け現場の声だ。そうしたところに今回の事故が起きた。
 関電の社長は何度も「申し訳ない」と頭を下げたが、「責任があった」とは一言も聞いていない。今日の「福井新聞」によれば関電内部では今回の事故を単なる労災事故と位置付けているという。下請け労働者はしゃべった内容で人物を特定されてしまう。しゃべれないが、不満は蓄積している。
 鈴木真奈美さんは英仏の再処理工場による環境汚染実態からグリーンピース・インターナショナルがシュミレートした六ヶ所再処理工場による汚染の広がりについてのレポートを紹介した。
 まず、放射性トリチウムによる汚染について。全欧州のトリチウム汚染源の八〇%は英仏の再処理工場を起源とし、他のすべての核施設からの排出を凌駕する。トリチウムは有機結合型になると体内から排出される時間が長くなる、つまり体内に滞留する時間が長くなり、それだけ被曝線量が増加する。トリチウムはフィルターでは捕えられずに海に垂れ流され、魚介類の体内で濃縮、さらに人の口に入る。六ヶ所再処理工場の放出管理目標値でシュミレートすると、英国のセラフィールド再処理工場が九九年に放出した三倍のトリチウムを海に垂れ流すことになる。

ウラン試験許すな

 鈴木さんはさらに、英仏における放射性ヨウ素やクリプトン、アメリシウムやプルトニウムの汚染実態について報告し、現在世界で唯一計画されている商業用再処理工場である六ヶ所施設の危険性を訴えた。
 青森県内では自民党県議団は美浜事故についての説明を国に求めており、八月二十五日に予定される全員協議会での説明に加え九月定例会議中でも行うことを求めているため、安全協定締結はその先になることが確実で、八月ウラン試験開始は事実上なくなった。
 関西電力が先頭を切ってきたプルサーマルにブレーキがかかっている。今こそ、六ヶ所再処理工場の操業を中心とする核燃料サイクル政策と日本のプルトニウム政策を抜本的に改めるチャンスである。また、ウラン試験を目の前にした今しかできない行動である。美浜事故の責任と原因を究明し、六ヶ所再処理工場のウラン試験を止めよう!(S)



経産省に向けて美浜原発事故抗議のデモ

 八月十八日、美浜原発事故緊急抗議デモが行われ、およそ百五十人の市民・労働者が永田町・社会文化会館前から経済産業省前を通り日比谷公園まで行進した。この緊急行動は、原水禁、原子力資料情報室、ストップ・ザ・もんじゅ東京、核燃やめておいしいごはん、東電と共に脱原発をめざす会、たんぽぽ舎、日本消費者連盟、せたがや原水禁、とめよう原発せたがやネット、ふぇみん婦人民主クラブが呼びかけた。
 八月九日、長崎原爆投下の日に起こった美浜原発のタービン建屋での蒸気噴出事故は、四人もの死者を含む労働者の死傷者が出した。日本の原発事故史上最悪の死傷者を出した事故だった。今回の事故は経済性優先の安全軽視の中で起こった人災ともいえるもので、未然に防げたものだ。尊い命が奪われた今回の美浜原発の事故に対して、原発の安全確保を管轄する経済産業省に緊急の抗議デモが行われた。
 デモ出発前、社文前で集会が行われた。平和フォーラム福山真刧事務局長は「八月に入って重大事故が二つ起こった。八月九日の美浜原発事故であり、八月十三日の沖縄での米軍ヘリの墜落事故だ。この事故は絶対に許せない。脱原発をめざして、事故の徹底糾明をめざしてゆく」と決意表明した。
 続いて、原子力資料情報室の澤井正子さんは「加圧水型原発は原子力潜水艦のために開発された技術を応用したものだ。原子炉と発電機を分けているために、配管が複雑になりそこに問題が起きる。関電の社長は『安全に運転してきた』と発言しているが、危険な配管を二十八年間一度も検査をしていなかった。関電は三菱に丸投げし、三菱は下請けに丸投げして検査を行っていた。関電は検査状況についてまったく知らなかった。コストを考えれば、全部を見ていられない。東電の原発は、昨年のシュラウドの亀裂を隠したのがばれて十七基全部が止まった。安全性を無視し続けられる原発の推進をやめさせよう」と訴えた。
 集会を終えて、経済産業省に対して抗議デモを元気に行った。    (M)


資料

関西電力、県、経産省への抗議と要請文
美浜3号死傷事故抗議集会参加者一同
原子力発電に反対する福井県民会議


関西電力社長
  藤洋作様


 安全性を軽視し、稼働率アップを重視した貴社の経営姿勢の結果、十一人の死傷者を出した美浜3号事故は、国内原発史上最悪の重大事故であることを直視してください。
 事故以来、貴社が示した対応は、事件の重大さも、それがもたらす深刻さも深く受け止めているとは思われず、県民の不安と憤りは高まるばかりです。
 運転中の原発をすぐ止めて総点検しなければ、とても安心できない、という住民の思いを理解しようともせず、書類上の点検で済まそうとしたそもそもの対応が、県民の激しい憤激をかったのは当然です。
 西川福井県知事の強い要請で、ようやく停止を決めたとはいえ、三グループにわけ、小出しに停止するやり方は姑息であり、本当に反省しているのか疑われます。
 点検漏れは美浜3号の破損箇所と異なる配管場所で見つかり、高浜一号、三号、大飯三号、四号と広がり、もはや二次系主要配管の検査漏れは関電の全原発に及ぶと考えても言い過ぎではありません。
 その一方で、情報規制を強めたり、事故原因となった検査漏れの責任をなすりあったり、いまだに電力業界トップとしての責任を明確にしない貴社の姿勢は、十一基の危険な原発を運転する資質を欠くあぶない企業と呼ばれても仕方ありません。
 私たちは強い憤りを込め、以下の事を要請します。


一.運転中の原発をすぐ止め、一次系を含めた十一基総ての総点検をすること。
二.事故原因に関わるすべての情報を公開すること。
三.会社としての事故責任を明確にし、再発防止をはかること。
四.プルサーマル計画を中止すること。
二〇〇四年八月二〇日

福井県知事
 西川一誠様

 痛ましい死傷者を出した美浜三号機事故は、県民に言葉では尽くせない衝撃を与えています。東京電力の安全性をゆるがす原発の不祥事のあと、電力業界のトップとして原子力を担ってきた関西電力が、安全性をないがしろにした結果の人災事故であることが明白になってきました。
 このままでは次の大事故が起こりかねないという県民の不安をしっかり受け止め、関電の原発を停止して総点検を強く求めた知事の毅然とした姿勢を、県民は高く評価しています。
 事故責任のなすりあいに終始しているとしか写らない関電の姿勢を厳しく追及し、老朽炉の安全性確保を最優先するため、以下のことを要請します。


一.未点検が出てから止める関電の姿勢では、住民の理解は遠のくばかりです。改めて全原発をまず止め、実際の検査を進めるよう関電に要請してください。
 また、この際二次系だけでなく、より厳しい条件にさらされ、劣化が進んでいる一次系も点検するよう求めてください。
二.関電は情報規制を強めており、情報公開に徹するよう求めてください。
三.定検の準備作業と称する定検の前倒し中の事故であり、運転中の施設内の作業は認めないよう国に求めてください。
四.情報不足の中で消防職員は、何度も危険な施設内を探すことを余儀なくされています。現場の声を聞き、安全対策を強化して下さい。
五.老朽炉を抱える福井県は、とりわけ安全管理がより厳しくあるべきです。経済性を優先させるねらいの十八ヶ月長期連続運転による定検短縮の電事連の方針を認めないよう国に求めてください。
六.関電の運転資格を問われる事故であり、関電によるプルサーマルの実施は、了解を白紙にもどして下さい。
七.もんじゅ再開の判断は、原子力委員会の原子力長期計画策定会議の結論と最高裁の判断を待ってからにしてください。
二〇〇四年八月二〇日

経済産業大臣
 中川昭一様


 十五基の原発集中化の中で暮らしている福井県民は、運転中の原発施設内で十一名の死傷者を出した関電美浜三号機事故により、強い憤りを抑えることができません。
 事故の直接責任を負う関西電力はもちろん、安全責任を一元的に負う国に対する原子力への信頼は、推進してきた人々を含めて失墜しました。
 たとえ当面の事故再発防止策が示されようとも、住民の信頼を取り戻すことは至難であることを深く、認識して頂きたい。
 まだしばらくは老朽炉と共に生活を余儀なくされる私たちは、二度と死傷者が出るような事故を起こさないために、当面、次のことを国が真剣に取組むよう要請します。


一.今回の事故に関し、国の管理、指導責任を明確にしてください。
二.事故を受けて原子力安全・保安院は配管の減肉検査体制の点検を指示しましたが、加圧水型では2次系冷却水配管と沸騰水型では給水系統や主蒸気系統だけです。
 より過酷な条件にさらされている一次系も含めた検査の総点検をするよう指示して下さい。
三.定期検査の準備作業と称する定期検査の前倒し作業が運転中に行われていたことが今回の惨事を呼びました。事実上の定検短縮となるこのようなやり方が、いつから行われているのか、また、法的に認められているのか、明らかにして下さい。
 準備作業といえども、運転中は作業員を施設に入れないことを徹底してください。
四.定期検査のあり方を検査方法、検査対象など含め見直して下さい。
五.老朽炉時代を迎え、検査のあり方は、より厳格であることが求められています。
 電気事業連合会は、コストダウンを目的に、十八カ月連続運転を認めるよう国に働きかけ、さらなる定期検査期間の短縮をめざす動きにあります。
 安全性より経済性を優先させた姿勢が今回事故の要因でもあります。十八カ月運転は絶対認めないで下さい。
二〇〇四年八月二〇日


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