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「新しい歴史教科書をつくる会」ら極右が策動      かけはし2004.07.5号

ジェンダーフリーへの敵対許すな

男女共同参画社会基本法からの逸脱だ

荒川区の新条例案阻止へ
市民・労働者が百八十人で緊急集会

 【東京東部】六月十七日、「男女共同参画社会基本法から逸脱する荒川区条例案を認めない緊急集会」が開催された。主催は「荒川区の男女共同参画を考える会」。東京・荒川区の「サンパール荒川」には、区内で運動する個人・団体はじめ、この問題に関心を寄せる人々約百八十人が集い、会場を埋めつくした。
 荒川区職労の白石さんの司会で集会が始まった。「昨日、区の助役が逮捕された。この事件は決して今日の集会と無関係ではない。ここ数年役所内の雰囲気は非常に息苦しい。私たちの声が区政に反映されていない。今日のテーマについても、管理職も含めまだまだ理解や合意ができていない。なのになぜ条例を作るのか、それを急ぐのか」。

「つくる会」系の発言に驚きの連続


 最初に主催者を代表してあいさつがあった。「私は荒川区に住んで二十年になります。ここ荒川区には、二〇〇一年に作られたすばらしい『計画』があります。これを否定して新たな条例を作るというのです。委員には『つくる会』の人が入っています。私たちは勉強会を続けました。そして今日の集会にはこんなに多くの人が集まってくれました。これからも微力ながらがんばっていきます」。
 「懇談会」元委員が登壇し、審議の経過を報告した。
 「学識経験者」のAさん。「私は懇談会メンバーの構成を聞いたとき、この人選にまず疑問を持った。そして会議を続けるうちに、この懇談会の中だけですべてを決めるのは無理だと感じた。有名な三人の委員の方々は『筋の通った』人たちだ。彼らはあまりに一方的だった。彼らと真っ向から対立していくのは不毛だと思った。だから私と意見の近い委員と連携を取りながら進めてきた。こちらの意見をどうやって聞いてもらうか大変な努力をした。そして多少やりとりができるようになってからは、雑多な考え方や価値観を盛り込み、混在させる、決定に幅をもたせる、という戦略を探っていった。何度か区長とも話をした。私たちの意見は結果的に『少数意見』として提出した」。Aさんは終始淡々とした口調で当時を振り返った。
 Bさんは公募で選ばれた。「区民として十五年、何もわからないまま委員になった。仕事も持っている。男女の差別をなくす社会を実現したかった」「会議のなかでは『つくる会』系の人々の発言に驚きの連続だった。たとえば彼らは『この問題については各地で混乱が起きている。それをなくすようにわれわれは区長から委嘱を受けた』というが、具体的な混乱の事例はいっさい示さなかった。今回出された報告書については、八人の委員が『問題がある』と考えている」。
 Cさんは区内の女性団体で活動している。「委員の会長と副会長はすべて男。学者扱いで区民ではない。私はこういう性格なので、意見をズケズケと言ったが、すべてはね返された。半年間の頑張りが条例案には反映されていない。無力感でいっぱいだ。もう辞めたいが周囲に『闘いはこれからだ』と励まされた。支援してくれた仲間のみなさん。ともにがんばりましょう」。

条例案は基本法と根本的に矛盾する


 橋本ヒロ子さん(十文字学園女子大学教授)は、「基本法」の理念とこの問題をめぐる全国各地の状況について報告した。
 「今回荒川で報告された条例案第一八条には、『男女の特性』と明記されているが、この言葉を挿入している自治体は全国でも稀である。ここでいう『乱用の防止』(※3)は「基本法」の推進を妨げるものであり、根本的に矛盾している。敵側はこの文言の明記で勝利宣言をしている」「彼らの言う『文化と伝統の尊重』も共同参画とは関係がない」「条例案には荒川区の地域的特性が出ていない。これは計画的な実態調査をしていないからだ。外部からきた『専門家』によって作られたからだ。条例はそれが作られるプロセスが大切なのだ」。

小学校の教育現場から体験報告


 続いて教育現場からの発言。小学校教員のDさんの報告は実に説得力がある。「かつて小学校では身体測定の際に、男も女もパンツ一枚で廊下を保健室まで歩いていった。それを変えてきたのはだれか。心ある親たちの運動だった。現在の男女別更衣室は、ジェンダーフリー社会をめざす人たちの運動が作ったのだ」「教育現場で広く浸透している混合名簿や合同の靴箱に対して、苦情が寄せられている、と彼らはいうが、『苦情』は彼ら自身が作り出しているのだ。私は『苦情』を言う人とはぜひ直接対面して話し合いたい」。
 Dさんはさらにこんなエピソードも披露した。「これはあくまで子どもの作り話」と前置きして「父親がリストラで会社をクビになったが、母親はそれをひどく責めたて父親が涙を流した」。私はその子どもに言った。「お父さんが、男が泣いたらいけないの? 男だって泣くときはあるよ。本当はお父さんを家族みんなで支えなくちゃいけないんだよ。男も女も助け合って生きなくちゃいけないんだよ」と。彼女の発言に会場はしばし静まり返った。

ジェンダーフリーを実践する保育所

 「じゃがいも共同保育所」は設立から三十年、男も女も共同で保育を続けてきた。ジェンダーフリーを区内で先駆的に実践してきたという自負がある。「園への送り迎えは父親が多いが、それはいまでは極めて自然。家事分担も男女が自然に実践し、子どもたちが喜んでそれを自然に受け入れている」「大勢の子どもの面倒をよく見られるね、と友人は驚くが、それは他人の子だからです。自分の子どもなら絶対無理」。「人前で話すのが大の苦手」というスタッフの女性の正直な発言に、明るい笑い声が響いた。
 「じゃがいも」へ毎日子どもを送迎する若い父親の一人、在日のEさんが登場。「実は私は今回のテーマにはまったく関心がなかった。しかし所長のFさんが何やら悩んでいる。そこで『つくる会』のことをHPなどで調べてみた。彼らは国籍や所属団体をめぐって在日への個人攻撃を繰り返していた。こういう人たちは委員の代表にはふさわしくない」。会場は大きな拍手に包まれた。
 限られた残り時間で参加者の質疑応答が行われ、最後に「集会宣言案」が全体で確認されて閉会した。
 荒川区で過去、「扶桑社教科書採択」をめぐって、区民のねばり強い運動の前に一度は敗退した「新しい歴史教科書をつくる会」。今回も荒川区は彼らの重要な攻撃目標となった。陰険かつ強引なやり方で手段を選ばない復古主義的右派勢力の策動を、市民運動と連携した大きな力で、敢然とはね返していこう。(S)

解説

荒川区における男女共同参画基本条例をめぐる動き

 東京都荒川区は二〇〇四年四月、「男女共同参画社会推進計画」を策定した。これは九九年六月に施行された国の「男女共同参画社会基本法」を受けたもので、〇〇年二月に設置された「荒川区男女共同参画社会づくりに関する懇談会」が提言としてまとめたものを基礎にしている。当時九人の委員によって区長に提出された提言には、男女が対等の立場で議論し、社会参加ができるよう社会的支援を求め、区の体制整備や職員の意識形成の推進を謳っている。
 こうした極めて妥当な「計画」が制定された直後、藤沢志光氏が新区長として就任した。藤沢氏は「日教組やフェミニストの連中が性差を否定して社会生活を壊し、家庭を壊している」と決めつけ、「推進計画は私が責任をもって正す」と〇三年九月の議会で宣言した。
 区長の諮問機関として同年十二月、「荒川区男女共同参画社会懇談会」が設置された。会長に林道義東京女子大教授、副会長に高橋史朗明星大教授(「つくる会」副会長)、八木秀次高崎経済大助教授(「つくる会」理事)が就任した。
 懇談会の要職が「つくる会」関係者で固められ、他の委員が終始モノ言えぬ雰囲気のなかで行われた会議は、異例の経過をたどった。公開が原則の審議がいっさい公開されず、傍聴も許されず、合意事項であった公聴会も最後まで開催されなかった。会長の林は「男は保育には不向き。育児は母親がすることは遺伝子的次元で決まっている人類の正常な役割分担。女性の政治家を増やす必要はない」など、反動的な発言を繰り返していた。
 密室の中では、特定団体関係者が持論を展開し、反論を封じ込めた。国の基本法や区の推進計画をまったく無視した審議に、委員らは強く反発。在日の男性弁護士は抗議の辞任をした。今年五月十八日までに計八回の会合を重ね、五月二十四日に「報告書」を区長に提出した。
 「つくる会」派の強引な議事進行で作られたこの報告書には、「家庭の尊重」「母子の生命の尊重」「文化と伝統の尊重」など独特の項目が並んでいるが、その極めつけは「乱用の是正と防止」である。いわく「男女の区別を差別と見誤って否定の対象としない」、「性差を否定する教育を行ってはならない」「数値目標を立てて男女の比率を同じにする方式は……慎重に判断しなければならない」などなど。
 こうした文言の明記は全国でも異例であり、男女の共同参画を推進する国の「基本法」の理念と相反し、明らかに時代に逆行している。この項目の削除を求めた女性六委員の意見は、「報告書」には記載されず「付記・追加意見」という差別的な扱いを受けた。これに対し、六委員は五月二十七日、「報告書の内容は懇談会の総意ではない」と区長に申し入れを行った。
 区長が六月二十二日、区議会本会議に提出する予定の「条例案」は、「乱用の防止と是正」の項目を「逸脱の防止と是正」に書き換えた他は、「報告書」を踏襲する内容となっている。この条例案は六月二十八日の委員会で審議の後、七月一日に開かれる本会議で採択に付される。(6月19日) 
b追記 六月二十七日、朗報が関係者へメールで流された。せの喜代議員(総務区民委員・本案の本会議提出後、審議する予定だった)によると、二十八日に審議予定だった本案が、区長自身によって、本会議への提出を取り下げられた。二十八日に正式決定した。区民の大きな声が反映された、画期的な勝利といえる。しかし、油断は禁物だ。荒川だけではない。各地で「作る会」は、虎視眈々と反動条例の制定をねらっている。今後も注意が必要だ。(S)



「今、語りたいイラクのこと」
ピースオンの相沢恭行さんがファルージャ現地入りの報告

 【秋田】六月十九日、午後六時から、秋田県湯沢市のアビニヨンで「今語りたい、イラクのこと」と題して、NPOピースオン代表の相沢恭行さんのイラク現地報告集会が行われ、約六十人が参加した。
 相沢さんは四月の人質事件のバッシングについてふれ「いまの日本社会には、自由にものを言えない空気があり、ファシズム的予感がある」と述べた。
 イラク戦争については、「政府の責任」と「戦争を止められなかったか各個人の責任」があり、「個人責任の解決方法としてイラク支援の直接活動をしている」と語った。
 そして五月十一日にファルージャ緊急支援行動として再度イラク入りしたときの様子をビデオなどを使って報告した。
 ビデオでは、米軍によって虐殺され、何日間も放置された民間人の遺体収容作業にかかわったことを説明し、ブッシュの「大義のための戦い」の現実を糾弾した。
 その上で「アメリカ経済は戦争経済システムになっており、日本はその経済システムに組み込まれ、アメリカ国債の一番の引き受けてであり共犯者である」「この経済システムを変えなければならない。今後とも非暴力直接行動で闘っていく」と報告をしめくくった。
 続いて九十歳近い高齢をおして発言に立ったむのたけじさんは「メディアは、テロ攻撃と一くくりに報道しているが、これは強力な米軍事力に対するイラク人民の命をかけたレジスタンスだ」「アメリカの次の標的は巨大なマーケットとしてのインド、中国へと向かうだろう」。むのさんは「そのために小泉政権は有事7法案を成立させ憲法を改悪し、日米の軍事力の一体化をおし進めている」と批判した。
 しかし、民主、共産両党の得票率を足せば自民党を上回っていると、むのさんは指摘し「政党は、小泉を阻止するためになぜ統一して闘わないのか」「われわれは反戦争・反改憲の統一した闘いをさらに前進させよう」と訴えた。
 集会の最後に司会から今後の行動提起が行われ闘いの前進を確認しあった。(N)


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