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フィリピン                      かけはし2004.07.5号

大統領選挙、国会議員選挙、自治体選と革命的労働者党の闘い

ハリー・ツボンバンワ



 二〇〇四年五月十日にフィリピンの大統領選挙、国会議員選挙、自治体選挙などがいっせいに行われた。大統領選では開票をめぐる一カ月以上の混乱の末に、ようやく六月二十日に現職のグロリア・マカパガル・アロヨ候補が、対立候補の映画俳優フェルナンド・ポー・ジュニアを破って再選された。得票はアロヨが一二九〇万五八〇八票、ポーが一一七八万二二三二票だった。グロリア・アロヨは、二〇〇一年に彼女の前任者ジョセフ・エストラダが大統領弾劾裁判によって辞職した後に大統領に就任した。今回の選挙戦での彼女の主要なライバルは、著名な映画スターのポーだった。この二人の政治的マヌーバーは、フィリピン民衆の生活とはおよそかけ離れたものだった。限定された形でしか代表を立てることのできない草の根勢力もまた、選挙への準備を進めていった。以下の論文は、選挙以前の今年三月に書かれたもの。筆者は、ミンダナオ革命的労働者党(RPM―M、第四インターナショナル・フィリピン支部)の指導的メンバーであるハリー・ツボンバンワ同志。



選挙戦をめぐる状況の概括

 昨年以来フィリピンは選挙モードに移行した。司法、立法をふくめて、この「政治工作」から逃れられるものは存在しない。しかし最も逃れられないのは、あらゆるレベルの統治機能、バランガイ(村落)からマラカニヤン(大統領宮)にいたる行政機関である。
 公的機関の政治へのこうした情熱は、きわめて強烈なもので、その成功は、政敵に対して加えられる打撃の大きさによって評価される。現職は、政府の意のままになるすべての手段を所有しているという利点を「組み込んで」いるのに対して、野党の側は、与党による攻撃に持ちこたえ、反撃するための手段を新たに雇い入れなければならない。野党の側が最大限に作り上げてきたそれらの手段の一つは、人気というものである。わが国の歴史の中で、これほど多くの男優、女優やTVパーソナリティーが、あらゆるレベルの統治機関の選挙に立候補したことは、これまでなかった。
 そうした中で、フィリピンの人口の五〇%以上が貧困ライン以下で生活している。社会サービスはほとんど皆無である。教育や保健といったサービスがあったとしても、それは現職者の宣伝のために作りだされたものであり、住民の基本的ニーズや福祉に真に応えるものではない。それらは選挙期間に合わせて出発したものですらある。
 そして、選挙熱が高まるにつれて、フィリピン国軍(AFP)の下級兵士のイライラが強まってきた。この八カ月の間に下級将校による二つのクーデター未遂事件が起こった。それは、選挙目的に国軍を利用することへの抗議、ミンダナオなどで反テロ熱に浮かされた作戦を実行するための国軍の使用、といった共通の課題を持っている。
 こうした政治的展開は、わが国の経済に直接的な影響を与えてきた。アジアの近隣諸国の中で、フィリピンは国内総生産(GDP)成長率が最低である。フィリピンの通貨(ペソ)は、この二カ月で何度も切り下げられ、いまや米ドルとの関係で歴史上最低の価値になってしまった。輸入に従属した輸出指向の国で、こうした通貨情勢はきわめて危険である。
 一方、進歩派と革命的諸政党・グループは、この情勢を自らの利益のために最大限に利用しようとしている。極左派――すなわち毛沢東派・スターリニストのフィリピン共産党――はその軍事攻勢を強化しており、他の革命的諸党はブルジョア選挙機構の中でより広範で強力な位置を獲得しようと選挙プロセスに関わってきた。
 ミンダナオ革命的労働者党は、議会、選挙、国際的大衆運動、平和運動、武装闘争などさまざまな場でその能力を強化してきた。わが党は、わが国のこうした急速に展開する事態において、効果的な政治的指導性を発揮するために党員とその機構を準備してきたのである。

戒厳令時代より深刻な腐敗


 二〇〇四年五月選挙は、むこう三年ないし六年間を見すえて、候補者を全国と地方の双方で選出するものである。人びとは、大統領から自治体の首長にいたるまで五千人以上を公職につけることになる。
 わが国の支配階級は自らの隊伍を打ち固め、この時期にだれがふさわしいのかをめぐっておたがいにけなしあったり、策を弄しあったりするだろう。選挙運動のやり方は、フィリピン政治の中で前代未聞のものと呼ばれてきた。それは戒厳令時代よりもひどいものだ。いまや候補者たちは、政綱ではなく人気、信頼ではなく現ナマを基礎に運動している。
 大統領候補たちは、わが国をグローバル化する新自由主義構想を実施する上で最も効果的な存在として自らを押し出すために全力をふるい、アメリカの帝国主義的親分により受け入れられるほど勝つ見込みがある、と考えてきた。
 一部の政治アナリストは、この選挙は依然として、アロヨ政権と追放されたエストラダ大統領との間の選択だ、と述べている。
 大統領選の有資格候補者は六人いる。一人は妨害的候補として資格を剥奪された。しかし現在では、アロヨ大統領と、人気のある俳優でエストラダの親しい友人であるフェルナンド・ポー・ジュニアに対決が絞られたという見込みが強まっている。現政権の側は、市民権の問題や、ポー氏が高校をドロップアウトしたという問題などを取り上げて、彼の資格を剥奪することに全力を上げている。最高裁は、フェルナンド・ポー・ジュニア氏に有利な決定を下した。それは彼が生まれつきのフィリピン市民であると認めたことを意味している。彼の資格剥奪の請願は、その請願の作成者(与党の側の人物)の方にはねかえってきた。なぜなら野党の大統領候補への大宣伝となってしまったからである。
 フェルナンド・ポー・ジュニア氏は、現在フィリピンで最も人気のある俳優である。彼は、親友で大統領職から追放されたエストラダよりもさらに人気者だ。そのため、彼が公式に立候補を宣言して以来、アロヨ大統領陣営は最悪のシナリオに向けた準備を進めてきた。いまやアロヨ大統領は選挙管理委員会に二人の新委員(票の算定と勝者を宣言する役割につく)を任命し、エストラダが任命した二人の委員を予定より一年早く退任させた。
 アロヨ政権は、財政的支援のために、二〇〇四年度予算が議会を通過しない場合、自動的に二〇〇三年度予算を再成立させる措置を下院で可決させることに成功した。これはすでに実施されているプロジェクトへ巨額のカネが予算化されているために、大統領が自由裁量権を通じて、予算の再配分と再調整の権利を持つことを意味する。それは確実に選挙目的で使用されるだろう。
 政府の内部事情に通じている人たちは、次のように言ってきた。「大統領とポー候補の得票差が二百万票程度であれば、彼ら(アロヨの支持者)は自分たちに、有利なように結果を操作することができる。しかし票差が三百万から五百万になれば、そんなことはできなくなる。したがって別の戦術が取り入れられるだろう。それは『NOEL』(選挙なし)シナリオを作りだすことで可能となる」と。
 これが「ノー・エレクション」(選挙なし)情勢である。この情勢は、戦争や爆弾事件を作りだすことで正当化される。もっともありそうなのは、ミンダナオでのアブサヤフとアルカイーダの活動だったり、不満を抱いた将校のクーデターだったり、あるいはその両方である。以前、公然とアロヨ大統領を支持している前大統領ラモス派の一部の退役・現役将校が、選挙前にまず憲法を変えることを要求していた。
 選挙や「選挙なし」の結果がどうあろうとも、国軍が決定的役割を果たすだろう。いま現在、国軍が分裂していたとしても、この事実に注目することが重要である。たとえばフィリピン軍事アカデミー(PMA)出身の将校の三〇%はパンフィロ・ラクソン上院議員(前将軍で、六人の大統領候補の一人)の支持者である。革命的民族主義者連盟(RAM、将校と下士官の組織)は、グリンゴ・ホナサン上院議員を通じてポー候補を支持してきた。
 ラクソン上院議員も強力な大統領候補と見なされてきた。犯罪を許さないという彼のイメージと、反収賄・反腐敗の選挙スローガンのためである。軍部以外にも、彼はわが国の中国人コミュニティーから強力な後援を得ている。彼はさらにポー氏の陣営と良好な関係を維持しており(双方ともエストラダ前大統領派である)、ポー氏が立候補資格を喪失したり、もちろん内戦や「選挙なし」シナリオが起こった際には、ラクソンが控えとして登場すると一部の人は推測している。
 もう一人の大統領候補は、前上院議員でアロヨ政権の教育相だったラウル・ロコ氏である。以前の調査では、彼は一貫してトップだった(しかし後の調査では、アロヨ、ポーに次ぐ三位となった)が、運動をやりぬく選挙機構や資金・手段を有していない。彼は、民衆の福祉を第一位に置くオルタナティブ政権のためのキャンペーンを行ってきたが、それはこれまでのところ一般的声明に終わっている。彼はわが国の新自由主義的グローバリゼーション綱領に反対する、明確な綱領を持ち合わせていない。彼は、他の候補と同様に、危険で致命的な道に踏み込んで、新自由主義の神を怒らせないように、この問題についてはきわめて注意深い態度を取っている。

財政赤字、ペソ切り下げ、失業

 フェルナンド・ポー・ジュニアが大統領選への立候補を公式に表明した時、ドルに対するペソの価値は急落した。その時以来ペソの価値は回復せず、1米ドル=56・30ペソというフィリピン史上最低にまで到達した。アロヨ政権はただちに、ポーが立候補し、彼が調査でトップにつけたためにペソの平価切り下げになった、と非難した。
 マカティ・ビジネスクラブ(MBC)――フィリピンの経済エリートたち――の間で行われた調査では、ポーが大統領になれば経済が必ずいっそう悪くなる、ということになった。彼らの中でポーに投じられた票はゼロであり、アロヨ大統領には高い得点が与えられた。しかし一般大衆にとって、この構図は以下のことを知らせるものである。すなわち、経済はアロヨ政権の下できわめて不安定なものとなっており、したがってたんに彼女をだれかに置き換えるという見込みだけでは、わが国の経済を荒廃させてしまう、ということだ。
 それは、現政権下のわが国の経済的ファンダメンタルズは、数字がその通りであるならば、確固たる基盤の上に立っていないということを示すだけである。しかしわが国の経済はアロヨとは切り離せない。彼女の選挙スローガンが述べるように「アロヨ大統領は依然としてわれわれの最良の希望だ」ということになる。
 経済の悪化した姿を示すもう一つの指標は、予算の赤字である。昨年の予算の赤字額は二千百十億ペソ、すなわちこの年の国家予算の二五%に達した。いまや二〇〇三年予算が二〇〇四年に再執行させられるにおよび、政府支出は税の徴収から得られる額を上回ると予測されている。国税局(BIR)は、二〇〇四年二月に三百四億三千万ペソの税を徴収する目標をたてたが、実際に徴収したのは二百八十八億三千万ペソにとどまり、五・三%足りなかった。
 ほぼ七十億米ドル、すなわち五千億ペソ(ほぼ国家予算の五〇%)に達した海外フィリピン人労働者(OFWS)からの年間送金額にもかかわらず、それは政府赤字を埋め合わすものにはなっていない。今回の選挙で票を買ったり、投票に影響を及ぼすためにカネが流れることになり、この赤字はさらに悪化するだろう。
 わが国の対外債務もまた、赤字ギャップを埋めるために借金する必要から、増大してきた。しかしわが国の対外債務の七〇%はドル建てであり、したがってペソの平価切り下げのたびごとに、対外債務は直接的な影響をこうむる。そして国家予算の四〇%以上は、自動的に対外債務の利子支払いに振り向けられるのである。したがって、基本的な社会サービスや民衆の福祉のためには、実質的になにも残らない。国内を流れる選挙マネーによって商品価格は確実に高騰するが、労働者と被雇用者の賃金はきわめて長期間にわたって停滞してきた。こうした情勢は選挙後も続くだろう。
 さらに悪いことに、失業率が着実に上昇してきた。失業率は二〇〇三年十月の一〇・一%に対して、二〇〇四年一月には一一%に達した。そのピークは二〇〇三年七月で、ほぼ一三%になっていた。首都圏地域(NCR)では、労働者の五人に一人が失業している。この事実は、アロヨ大統領の雇用政策の悲劇的失敗を確証している。
 ビジネス部門(国内ならびに国外の)の「待機静観」の態度が、わが国の経済生活のほぼゼロ成長の実態に付け加わった。フィリピン中央銀行でさえ、今月(二〇〇四年三月)の有価証券投資が、昨年三月の六億七千五百八十万ドルに対して、八千九十万ドルという低額を記録したと指摘した。これは、国内・国外の投資家が来るべき選挙に不確かさを感じていることを意味している。

教会、マスメディア、中間勢力

 投票日が近づくにつれて、民衆の選択は二人の候補に絞られてきた。現職大統領のグロリア・M・アロヨか、フェルナンド・ポー・ジュニアかである。
 アロヨのキャンペーンの路線は、ここ三年間(追放されたエストラダ大統領の残りの任期)の彼女の政策を継続することである。そしてそれには、基層大衆の利害から見れば自慢すべきものはなにもない。社会サービスはみじめなものになり、失業率は上昇し、平和と秩序は依然として不安定であり、汚職と腐敗は強まっている。この汚職と腐敗には大統領の家族が関与しているものさえふくまれている等々。
 フェルナンド・ポー・ジュニア(フィリピン映画界の帝王として知られており、その唯一の資格証明書は、彼の出演した映画がすべてメガヒットだということである)は、いまや自分はフィリピン大統領として行動すべきだ、ということを信じている。なぜなら彼は自分の映画のファンに恩返ししなければならないからである。彼によれば、それは彼の人生の最大のパフォーマンスである。
 最近、彼はもし当選したならば国家債務のリストラを要求しようとする、と発表した。ただちに市場取り引きは暴落した。そしてまた彼の声明は、ただちに野党によって撤回された。彼は危険な政治的・経済的地雷原に踏み込み、彼の顧問たちは不幸におちいった。フェルナンド・ポーの経済顧問たちが免職された前大統領エストラダの顧問だったということを考えれば、両候補とも、わが国の新自由主義的グローバリゼーション構想を継続するという意向を示している。
 限定された選択の中で、教会はその独立性を維持しなければならず、信者たちに対して良心にしたがって投票せよと呼びかけなければならない。退任したマニラ枢機卿は、間接的にラウル・ロコをを支持したが、それは大きな比重を持たない。教会は実業界と同様に、「待機静観」の態度を堅持しなければならない。そうせずに、敗北した候補に支持を与えたならば、彼らはその財産やビジネス利害にとって困難な結果に遭遇するかもしれないのである。一人の候補者がいる。「イエスは主」運動の創設者であるブラザー・エディー・ビラヌエバである。しかしそれでも、教会は彼を支持するという徴候を示してはいない。
 マスメディアは、他の選挙と同様にきわめて行動的で党派的だった。有力政治家たちはロビー活動に大金をつぎこみ、彼らが他の候補に比して頭角を現す傾向にあると主張するよう依頼した世論調査の発表を確保してきた。
 副大統領の問題は決定的である。エドゥサ(EDSA)通りといった象徴的な場所で民衆が直接的介入を行ったエドゥサ・ピープルズ・パワーU(二〇〇一年、エストラダ大統領を辞任に追い込んだ民衆運動)以来、メディアはわが国の指導部を変えることができる。それは弱体な民主主義制度のしるしであり、憲法上問題にしうる行為である。しかしメディアは憲法を利用して、継承の問題で自らの利害を押し出すこともできるのである。
 この文脈の中で、ABS―CBN――わが国最大のテレビネネットワークであり、そのオーナーはわが国の電気と水道事業をも支配している――は、自分たちの元タレントが副大統領になるのを支持している。アロヨとポーの二人の副大統領候補は、ABS―CBNの出身である。両勝ち状況について言えば、電気、水道、不動産建設業といった、わが国の重要な産業で別の利害関係を有しているABS―CBNのような巨大メディアにとって、それは古典的な一例である。
 中間勢力は分裂している。アロヨ大統領の新自由主義経済政策によって厳しい打撃を受けているために、変化を望む人びとは、三人の間で選択をしなければならない。ポーは、これまでのところ一貫性を持った経済的プログラムを持ち合わせていない。ラウル・ロコは少なくとも、「希望の連合」というスローガンに体現された彼の経済的プログラムの青写真を持っている。しかし彼には資金・手段や機構が欠けており、それでは大統領になれないのは確かである。退役将軍で現上院議員のラクソンは、犯罪、汚職、腐敗の解決で具体的な変化を約束している。しかし彼の経歴は、彼が見せびらかしているものとは反対のことを言っている。実際、むずかしい選択である。

進歩的・革命的諸政党の闘い

 二〇〇一年選挙闘争での一部の政党の最初の勝利は、今回の選挙でより多くの地位と議席をなんとしてでも獲得する闘いに彼らを向かわせている。社会運動よりも選挙での改革により多くの焦点を当てている進歩的グループ・政党も存在する。他方、選挙闘争を宣伝と資金調達のために最大限に利用しているグループもある。
 毛沢東主義・スターリニスト党であるフィリピン共産党(CPP)でさえ、選挙運動を強化し、六つ以上の選挙政党を作り上げた。与野党の双方の政治家から選挙運動基金を集め、選挙を資金調達の場に利用する以外にも、彼らのカードルと活動家は彼らの候補者の政治ポスターを貼りだしたりしている。
 彼らは前回の選挙で、新たに就任したアロヨ大統領と交渉に入ったことに留意すべきである。なぜなら、アロヨを大統領に押し上げたエドゥサUに彼らは参加したからである。彼らは下院に三議席を獲得できる以上の票を獲得することができた。勢力回復、拡大、確立の努力の多くは、二〇〇一年の選挙で彼らが獲得した選挙運動のエネルギーからもたらされたことは明らかである。現在、彼らはさらなる推進力を望んでいる。
 他のすべての地下政党は、一つを除いて、自らの選挙政党を作り、候補者を擁立した(フィリピンマルクス・レーニン主義者党〔MLPP〕は、選挙に参加していない)。選挙は革命の道から逸脱するものだという、典型的な毛沢東主義・スターリニスト的伝統から出発した各党は、ブルジョア選挙に参加することの重要性に目覚めたことが明らかである。
 この状況は新しい現象である。選挙事務所の利益と特権は、こうした諸政党の拡大、確立、さらには回復を助けることができる。反動的制度に食いつくされてしまう危険性は、こうした有利さによって隠されてきた。民族民主主義的伝統から出発した一、二の政党は、自らの政治的エネルギーを選挙闘争だけに焦点化していると見なすこともできる。こうして社会的大衆運動は、しばしば選挙闘争に従属化させられてきた。
 こうした政党がすべて、政治的宣伝を犠牲にして「勝利のための参加」原則を採用したのは明らかだ。大統領候補のプロフィールを、政策綱領や適任かどうかというところから見れば、進歩的・革命的グループのだれも、どの候補の運動も公然とは支持してこなかった。しかし後になって、CPP―NPA(新人民軍)につながる政党が、フェルナンド・ポー候補と彼の副大統領候補ローレン・レガルダを、きわめて微妙なやり方で支持していることが明らかになった。
 その理由は明確だ。弱体な大統領を通じて国家を弱めるということを別にすれば、彼らはポー陣営の内部サークルに接近し、レガルダを通じて和平会談の再開を求めるだろう。そして彼らは、大量の人権犯罪犠牲者への賠償金をマルコスの財産から支払うことを要求できる。
 こうしたグループと党のすべての人びとは、「選挙なし」シナリオに気づき、準備している。大統領とその政権の居座り、選挙管理委員会や最高裁への彼女の影響と支配の後退は、明らかに分裂しているフィリピン国軍内での彼女の権力を打ち固めている。
 彼女は昨年以来、忠誠度による任命を基礎に、彼女の将軍たちの忠誠度チェックを行い、軍中枢の再組織化を定期的に行ってきた。とりわけ、票の多いミンダナオでの「テロリスト」の脅威は、「選挙なし」シナリオと得票集計のコントロールの背景説明として主張されてきた。複数の地域が紛争地帯として宣言され、票の集計は軍隊宿営地内で行われるだろう。
 さまざまな革命的グループ(CPP―NPA、MILF〔モロ・イスラム解放戦線〕―BIAF、RPMM〔ミンダナオ革命的労働者党〕―RPA〔革命的プロレタリア軍〕など)との和平交渉ですら、時として現大統領にとっての選挙上での積極的得点を付け加えるために復活してきた。衝突を解決し、自らの隊伍を固めるためのブルジョアジーの伝統的手法は、もはや彼らの専業領域ではない。さまざまな目標と方針を持った革命的諸グループと諸政党は、この選挙に参加し、勝利する準備を整えている。
 選挙の結果がどうあろうと、わが国のグローバリゼーションのための新自由主義諸政策の基本的弱点は、いっそうあからさまになるだろう。革命的活動の強化のための物質的基礎は、いっそう豊かになっていくだろう。真の労働者政党は、わが国の社会主義的プロジェクトの履行に向けてその歩みを促進しないまま、この時宜にかなった機会を見過ごすなどということはしない。
(「インターナショナルビューポイント」04年4月号)               


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