| アジア民衆・社会運動会議分科会の討論から かけはし2004.07.12号 |
WTO・FTAに対抗するために
食糧主権の分科会は六月十四日午後から。主催団体は国際的な農民運動団体であるヴィア・カンペシーナ、ホスト団体は韓国全国農民会総連合と韓国女性農民会が担当した。
パネリストはフィリピン・バンクのぺぺさん、タイのフォーカス・オンザ・グローバル・サウスのニコラさん、ヴィア・カンペシーナの東アジアコーディネーターのインドラさん(インドネシア)、韓国全国農民会のパク・ウンドさん、日本全日農の御地合書記長、タイの農民団体チンダさんの五人が、それぞれが抱えている問題を紹介しながら、これからの運動の方向を提起した。
いま世界的に農産物価格は下落して、輸出国の農民も打撃を受けている。漁民も規制緩和のために小規模漁民は生活できない。輸出のための養殖・農産物の過剰生産―価格下落―民衆圧迫・借金増大という悪循環に陥り、食料生産システムは超国家企業の手に握られている。こうした状況のもとでは、食糧主権とは農漁民だけでなく、民衆のものである。人々は食べる権利を自然権として持っている。食糧は国家と地域が管理し、生産―流通の新しい仕組みを確立し、WTOに対抗しなければならない。
グローバリゼーションの下でインドネシア農民は土地を失っている。食糧主権はいま人々の世界共通の課題であり、農民だけでなく、さまざまの立場の人々と話し合い、作りあげる必要がある。インドネシアではわれわれは労働者と手を組んでいる。WTOをどうすればなくせるか、七月WTO一般理事会と香港閣僚会議に対抗する大きな闘いをバンコクでも作りたい。
韓国の穀物自給率は二九%、農産物価格は下落し、多くの農民が離農している。農民の八〇%が米を作り、所得の五二%を得ている。アメリカの北朝鮮への経済制裁により、韓国から北朝鮮に援助している中で、コメの需要は大きい。WTO再交渉次第で、コメ作りが崩壊してしまう。コメを守る運動からはじめ、国を超え世界の人々と食糧主権を作る運動を広げる。9・10は韓国では百万農民と民主労総の行動日として準備しているが、世界的共同行動をとることを提案したい。
日本はカロリーベースで自給率四〇%、いまや世界一の食糧輸入国である。ガットのURでミニマムアクセス米を受け入れた後、五年間で農民の受け取る米価は三〇%下落した。アジアの農民はコメで共通の立場にある。ここを基盤にアジアの農民と手をつなぎ、WTO・FTAに対抗する運動を進めたい。食糧主権とは、農民の作る権利を守ることである。世界の多様な農業が共存できる仕組みをつくらなければならない。
タイ政府は多国籍企業と親密な関係にあり、自国の農民より多国籍企業に有利な政策を優先させている。中国とのFTAで安いタマネギやフルーツが大量に入り、タイ農民は作れなくなった。タイ国内で多国籍資本が操業できる制度も作ったために、水、空気、環境も危機にある。我々は食糧を生産できるのに、貧困化し飢餓に陥ってしまう。
その後、会場からブラジルWSF組織委員会のメンバーがブラジル・ルラ政権の新自由主義的政策を批判して報告した。
ブラジル政府は二つに分裂しつつあり、MST(土地なき農民運動)の求める土地改革に圧力を加え、輸出農業か土地改革かと対立を煽っている。農村開発大臣は左側だが発言権は少なく、農業大臣は右側で、農産物輸出に力を入れ、ブラジル人があまり食べない大豆生産を輸出のため拡大している。そうした中で農業関連企業家五百人を連れて中国にFTA交渉を行うなど、ルラ大統領や農業省は企業の利害代表となっていることなどを報告した。
続いて、特に食糧主権とはどういう概念なのかをめぐり、日本からの脱WTO草の根キャンペーンからの参加者が「生産・流通・消費を包括するシステムとしてとらえるべき」と提起、それをめぐり「土地・水、土地改革まで含め考えている。種子を取り戻すことも食料主権である」などの意見が出された。
また、日本の遺伝子組み換え食品いらないキャンペーンの参加者からは、日本におけるGMO(遺伝子組み換え作物)との闘いを紹介し、アジア・レベルでのGM稲反対の共同行動を提案した。全体的に、この分科会でも中国(そしてブラジル)の農民がFTAの問題点など知らされていないこと、輸出主導型農業への根本的批判の弱さなどが焦点化され、論議不足が感じられたものとなった。(S)
女性は新自由主義にどう対処すべきか
グローバル化のもとでの戦争、家父長制、暴力に抗して
分科会を主宰した韓国社会進歩連帯女性委員会のスン・ヒーさんが、「私たち女性は新自由主義にどのように対処すべきかを考えるためにフェミニスト分科会を企画した」と語った後、参加者が自己紹介をした。フェミニズムに関心があるという男子学生も数名参加した。
世界社会フォーラム(WSF)インド組織委員会のメンバーであり、フェミニズム運動に関わっているジャイアさんは、フェミニストの観点から戦争とグローバリゼーションの関係を的確に分析した。
「アジアは天然資源が豊富にあり、戦争を推し進める新自由主義的グローバリゼーションのもとで利益争奪戦の場になっている。その中で、女性は目に見える直接的な力と見えない力の二重の圧力を受けている。見えない圧力とは男が支配する家父長制である。女性は、教育や政治などあらゆる分野で男より階級が低いとされ、対等の機会が与えられていない。女性を保護するという口実のもとで、女性は職を失い、公共の場から締め出されている。そして、戦争になると、社会的な不安が募る中で、男は欲求不満のはけ口として女性に暴力を振るう。それは暴行やレイプである。いままさにこの事態がアフガニスタンやイラク、パレスチナで起きている。
家父長制の上にグローバリゼーションが覆いかぶさったこの十年の間に、フラグメンテーション(崩壊/細分化)が進行した。インドのナイキ工場には生産工程の一部が配置され、若い女性たちが不安定な臨時工の身分で水を飲みに行く時間もトイレ休憩もなしに働かせられている。そして組立ては隣国のバングラデシュで行われる。一方で、こうした不安定な職場であっても、失業した男たちがやってきて、女性たちは職を奪われるという事態も進んでいる。締め出された女性たちの行き着く先は性産業である」。
「また少数のイスラム教徒やキリスト教徒を敵視し、ヒンズー教のルールを押しつける政策が進められている。西洋文化を排除して、至るところに占星術が取り込まれている。教育制度が変更され、クリケットが禁止された。これは、グローバリーゼーションのもとで偏狭なイデオロギーを押しつけて、パキスタン、インド、バングラデシュを一つのインドに統合して支配しようという英国の政策でもある。
世界銀行やIMFは支援の前提としてコンディショナリティという条件を押しつけている。このもとで、安定した、かつ豊富な雇用を提供してきたインドの公共部門が次々に民営化され、民営化された事業体は企業の論理で利潤追求に走っている。民営化によって職を失った労働者たちには仕事がない。
さらにコンディショナリティは人口削減を強要し、インド政府は子どもを二人に制限する人口管理政策を導入した。三人目を出産すると処罰され、教育や医療の援助が受けられない仕組みになっている。一方で、貧しい女性たちには、妊娠したくないが、子どもを持ちたいと思っている先進国のカップルの代理母を請け負う者も出てきた。インドの代理母の子宮にはカップルの受精卵が埋め込まれる。女性には出産まで毎月一定の報酬が支払われるので、代理母は確実かつうまみのある仕事になっている」。
こうした状況を分析しながら、ジャイアさんは次のような提案をした。
「私たちは目に見える戦争にも家父長制にも反対して闘わなければならない。あらゆる部門が共闘して男の支配と闘わなければならない。今年一月ムンバイのWSFで私たちは多くのさまざまな女性たちと出会い、討論することができた。最底辺に追いやられ、見えない存在とされていたダリット(カースト制度外に置かれている人たち)の女性たちと交流することができた。戦争とグローバリゼーションの問題について徹底的に論じ、不正と不平等を推し進める社会システムと闘っていくことを確認した。あらゆる問題が女性の問題と連関している。運動にフェミニズムの観点を持ち込むべきである。あらゆる運動に女性の同意を取り入れるべきである」。
次に韓国社会進歩連帯女性委員会代表から、韓国の女性の状況について報告があった。
「一九九七年の金融危機の後、労働市場に参入する女性が増えてきたが、パートや派遣労働など不安定な低賃金で働かせられている。一方で、家父長制と儒教精神が社会構造の中に浸透していて、韓国の女性は賢くて良き母であるべきだという論理が強固に支持されている。女性は家計を支えるための外部の労働と家庭内の無償労働の二つの義務を負わされている。職場には均等待遇がなく、家庭では夫から暴力を受けることが多い。グローバル化が進み、戦争の危機が取り沙汰されると、女性の問題は脇においやられ、戦争の問題が最優先される」。
ジャイアさんの分析と提案は冴えていた。多くの男たちに彼女の話を聞いてもらいたいと思う。(寄稿 ATTACジャパン 秋本陽子)
「分離壁」建設は生活をズタズタに破壊している
パレスチナ人活動家が来日し報告
イスラエルが建設している「分離壁」に反対する活動の中心的役割を担っているバレスチナ人のファエズ・タネブさんが来日し、六月七日に東京・千代田区の「市民のひろば」事務所で交流会を行った。彼の来日は、パレスチナの取材を続けているフリージャーナリストの小田切拓さんの尽力によるものであり、各地でパレスチナの現実を訴える交流会や外国人記者クラブでの報告などが行われている。
ファエズ・タネブさんは四十四歳。実家は西岸の被占領地にあるトゥルカレムで代々農業を営んでいた。彼は学校を卒業したあと、石材加工業の労働者として働いていたが、一九八五年に父親が死んだ後は家の農地を引き継いで、農業に従事し、農民組合の活動にも従事してきた。
ファエズさんが農地を引き継ぐことを決意したのは、兄が三人いるが彼以外は湾岸諸国などで働いていること、そしてイスラエル兵がしばしば家族の土地に侵入し、ブルドーザーで土地を平らにするなどの不法行為を繰り返していたからだ。パレスチナ人の土地に相続者がいないとイスラエル政府が判断すれば、イスラエルの封鎖措置によって土地の正当な所有者・相続者が入れなかった場合でも、三年後には「合法的」にパレスチナ人の土地を併合することができる。ファエズさんは先祖からの農地をイスラエルに奪われないために、農業を継いだのである。
彼は、その間、なんの令状もなく幾度かにわたって投獄された。最も厳しかったのは、一九八八年の第一次インティファーダの時、彼の最初の子どもが生まれた直後の逮捕だった。彼は外出禁止令のため、食料を確保するほとができない貧しい家庭に食料を届けようとして捕まったのだ。彼はその時、シナイ半島近くの刑務所に一年間近く送られ、それからまた別の刑務所に半年以上拘留されていたという。
彼の農地のすぐ前に「分離壁」が建設されはじめたのは二〇〇二年の夏。彼らは「分離壁」内側の彼の農地を取り上げようとしたのだ。昨年初め、イスラエル軍は彼が農地に入ることを禁じ、ブルドーザーを使って農地を破壊しはじめた。最初の日、彼はブルドーザーを阻止しようとしたが、彼は拘束されて首まで土に埋められたという。そこでファエズさんの妻は、石を投げてブルドーザーの窓を破壊した。その日は、結局ブルドーザーは帰ってしまったが、翌日にはもっと多くの兵士がやってきて、農地は潰された。
そのためファエズ・タネブさんは、分離壁の建設に反対するパレスチナ人の運動のコーディネーターとして活動し、毎日取材に訪れる外国人記者や支援の外国人活動家にイスラエル支配の実態を伝えるために自分の家を開放している。「壁」から五メートルのところにある彼の農地の三〇%は戻ってきたが、彼の行動はイスラエル軍のジープや戦車からカメラで完全に監視されている。
昨年末、ファエズさんは分離壁に反対するPENGONというパレスチナのNGOに参加し、今年二月にはオランダのハーグで開かれた国際司法裁判所で開かれた公聴会に合わせて行われた民衆法廷で、被害者の代表として証言した。
イスラエルの「分離壁」建設は、相互に孤立し、分断させられた被占領地のパレスチナ人を生活できなくさせることによってパレスチナの土地から住民を追放し、イスラエルに完全に併合することを目的としている。ファエズさんの話によると、壁に包囲されたトゥルクレムの一キロ四方の地域には四万五千人の住民が住んでいるが、そこには一カ所しかゲートがなく、ゲートをチェックしているのはたった二人の兵士だ。ゲートをいつ開けるか閉めるかは兵士の裁量にかかっており、壁の外に仕事に出たり、学校に行ったり、病院に通うなどということはきわめて困難なのだ。
異なった地域に住む住民相互の情報交換は困難である。携帯電話やメールでの通信は、すぐに切られてしまうため、ガザで何が起こっているかについての正確な情報も西岸の人びとには伝わらないというのだ。
イスラエルの不当な植民地支配と虐殺、人権犯罪の数々は国際世論から強く非難されているが、シャロン政権は「ガザからの撤退」(入植地の撤去はうたわれていない!)という「閣議決定」で、批判をかわし、パレスチナ人追放政策を強化している。
パレスチナの現実を伝え、イスラエル政府を糾弾する運動をねばり強く広げよう。(K)
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