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郵政4・28処分撤回裁判控訴審             かけはし2004.07.12号

ヤッタ! 支援共闘全員の勝利です! ありがとうございます

名古屋哲一(郵政4・28ネット/免職者)



皆で心から喜び合いたい

 「エエッ!」「ヤッター!」「ホントかよ!」……歓声が満員の傍聴席から上がった。六月三十日十時五十五分、東京高裁江見弘武裁判長が「東京地裁判決を取り消す。原告七人全員の懲戒免職処分を取消・無効とする」旨の判決主文を読み上げた時だった。
 この大勝利は、免職者のみならず、弁護団・支援共闘の仲間全員の大勝利であり、皆で心から喜び合いたいと思う。
 四半世紀前の一九七九年四月二十八日、郵政省(現日本郵政公社)は五十八人の懲戒免職を含む八千百八十三人への処分を出した。七八年十二月より約二カ月間、全逓十八万人組合員が全国の郵便局で「差別は許さない」と、「反マル生越年闘争」=ブツ溜め・怠業を闘ったことへの報復処分だった。4・28処分直後から労使協調へと転換しだした全逓(現日本郵政公社労組)本部は、九一年六月三十日(判決日と同日!)をもって、ついに4・28免職者を労組からも追放した。
 以降、4・28闘争は自立自闘の歩みを始め、郵政現場の仲間・地域共闘の仲間らから無私の支えを受け、十三年間の道のりを越えてきた。

「処分裁量権の誤り」認定


 判決の中身は単純明白で、「全逓本部の指導に従って闘争参加した一般組合員を懲戒免職にしたのは、処分裁量権の明らかな誤り」との趣旨だ。しかも七人の内一人の原告は全逓本部の「だまし」により提訴取り下げ・再提訴を行った。再提訴の場合は、単に「不当」なだけでなく「重大、且つ明白な違法性」ある処分の時だけ「無効」と判定される。
 「処分裁量権の誤り」との判決は、重大な意味を持つ。全逓役員には軽い処分で指導責任を問うことなく、指導に従った一般組合員には首切りを含む重い処分、これは現場組合員を「恐怖」で締め付ける前代未聞の処分政策だった。労組の団結権の否定にも直結する。自民党政府が全逓をオトナシクさせ次に国労へ集中攻撃、労戦再編〜政治再編を目論んでの極めて政治的な新処分政策だった。
 このデタラメな新処分政策を、同じくデタラメな国鉄改革法=一〇四七人首切り法作成に参加した江見裁判長が否定した。
 高裁判決の他の部分は、基本的に一審判決の反動的な中身を踏襲している。「マル生差別=不当労働行為」には触れず、争議行為を禁止した「公労法一七条」やその「違憲性」等には全く触れない訴訟指揮をし、判決文でも「原判決の通り」としているだけだ。

大反動の時代に勝利した諸要因


 この反動の時代に大勝利の高裁判決をもたらした要因は、さまざまに考えられる。
 新自由主義など不安定雇用・競争主義による生産性の低下や民営化先進国の失敗、三菱自動車などに見られるモラルハザードと労組のチェック機能の欠如、ILOなど「日本の常識は世界の非常識」等々、危機を感じる権力内の亀裂も考えられる。
 解決局面へ踏み出した国鉄闘争や各ナショナルセンター流動化、有期雇用労働者連帯など社会的労働運動の動き等の情勢を見据えた、何らかの政治的な判断等も考えられる。
 江見裁判長を批判する「4・28から」も一度裁判所前で配布したが、徹底的に厳しく批判し続けた全動労争議団や鉄建公団訴訟団など国鉄闘争の活動が、江見裁判長を追いつめた可能性が大きい。裁判所の反動化に抗議する運動も形成されていた。
 そして、全逓十八万人が同様の怠業行為をしたのに何故この免職者が選ばれたのかの「処分裁量」の問題で、当局は裁判長から何度も「反論」を促されたにもかかわらず一切反論を提出せず(できず)、江見裁判長のプライドを傷つけたのかもしれないし、これでは当局に軍配を上げる論理が作れなかったのかもしれない。
 また、全逓弾圧の首切り方法よりも、国労弾圧の改革法首切り方法が「優れている」ことを示したいと、批判の矢面に立ち、首切り人形でピエロにされ、改革法で大出世の予定がおぼつかず等々の江見裁判長は、腹立ち紛れだったのかもしれない。

25年の闘いが勝利を作った

 いずれにしても全国の仲間の二十五年間の闘いがこの大勝利につながった。反動時代での大勝利が「異常」であるとすれば、二十五年間の争議継続も「異常」であるだろう。非人間的な全逓本部の裏切りが「異常」だとすれば、全逓に見捨てられても争議を続けられたことは敵にすれば「大異常」であるだろう。争議が今後何年続くのか、「驚異」ですらあったのかもしれない。
 東京総行動・けんり総行動・首切り自由は許さない実行動・春の共同行動等々、一体何十回、郵政公社の門前行動を行っただろう。裁判傍聴・全国連鎖集会・全労協との共同集会・連続講座・全国署名・ピースサイクル・各地守る会等々、一体どれだけ多くの人が足を運び、また物販カンパに応じてくれただろう。郵政現場では、全逓現場組合員・郵政ユニオン等々、非常勤・下請け労働者を含め諸争議の絶えることはこの二十五年間なかった。
 人事院闘争で処分の不当性・矛盾を洗いざらい暴露させ、第一審で当局側主張を否定する内容を判決文の中に反映させ、そして今回の高裁で最後的に追い詰めたのだった。

郵政公社総裁は上告するな


 生田郵政公社総裁は上告をするな。上告・上告受理申請をしたとしても「憲法判断」「重大な判例違反」などの規定に合致せず、最高裁は門前払いにするべきだ。七月十五日、鉄建公団訴訟と郵政深夜勤公判が行われる日の昼休み時間帯、私たち4・28ネットは郵政公社へ大衆的な申し入れ行動を行う。多くの人々が参集してくれるよう、お願いします。
(2004年 7月初)
P・S 七月十六日朝七時半〜八時半、八王子郵便局前情宣。その後、就労申し入れを行います。是非、ご支援・ご参加をよろしくお願いします。


郵政4・28不当処分裁判控訴審判決要旨

 裁判所が処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか、又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法と判断すべきである。
 本件闘争は、上記のとおり、全逓の意思決定の下に実施された争議行為に他ならず、公労法により争議行為が禁止されている以上、事業の混乱、これによる国民生活上の不利益等も、全逓及びその意思決定に関わった者が第一次的にその責めを負うべきで、全逓の意思決定には参加する地位にないが、これに従った組合員は、本件闘争への参加、関連して行われた秩序違反行為の態様等に応じて懲戒を受けうるものの、本件闘争の実施の意思決定についてはもとより、本件闘争による郵便事業の混乱が大規模に及んだことについては、懲戒を受けるべき理由はない。
 本件闘争については、それが、全逓の意思決定の下に実施され、郵便事業の大規模な阻害という重大な事業秩序違反があるにもかかわらず、いわば本件闘争の首謀者として、違法な争議行為の実施の意思決定への関与を理由に、公労法に基づく解雇又は国家公務員法に基づく懲戒免職を受けた労働組合の地区本部以上の組織の役職者が異常に少ない。
 一方、全逓の意思決定に従い、全逓から見れば忠実に、郵政省から見れば執拗に、争議行為を実施した五五名(当局の当初の判断によれば、一三〇数名)もの多数の者が、大半は、地方本部、地区本部又は支部はもとより・分会の役員でもなく、本件闘争の実施についての全逓の意思決定に参画したといい難いにもかかわらず、最も過酷な懲戒免職(相当)とされた。
 全逓において、公務員の身分を有しない役員(かつて公務員であり、従前の違法争議行為等を理由として公務員の身分を失ったと推認される。)が多く、このため、本件闘争の実施についての意思決定に参画したことに基づくいわゆる指導者責任を追及し難い事情があることを窺うことができる。
 しかしながら、このことを考慮しても、本件闘争につき、施設の破壊等の反社会的行動やその他の秩序違反行為もないにもかかわらず、意思決定に従って忠実(又は執拗)に争議行為を実施したことのみを理由として、懲戒免職を課すこと自体、さらには懲戒免職を課されるべき者が五五名又は一三〇数名もの多数となることについては、違法な争議行為についての問責のあり方として、合理性に重大な疑いがあるというべきである。
 控訴人らの一部は、上司の職務上の命令に従わないことをも非違行為とされているが、労働組合の指示に従い、違法と認識しながらも、争議行為に参加し、極端に能率を低下させた態様で業務に従事し、就業規則等により定められた業務を拒否しているのであり、上司の命令に従って争議行為を中止しなかったからといって、違法な争議行為の実施を理由とする懲戒処分を重くする理由となるものでなく、もとより、懲戒免職を是認する事情となるものではない。
 懲戒処分が処分権者の裁量に委ねられるべき範囲の大きいことを考慮に入れても、事業体の秩序の維持のために労働者を組織外に排除する懲戒免職の事由の合理性にはおのずから限界があるというべきで、上記のような本件闘争及びこれを理由とする控訴人らに対する懲戒免職の合理性に疑いのある事情等によれば、本件闘争を理由として控訴人らに対してされた懲戒免職は、全逓の意思決定に従って違法な争議行為を実施した組合員に課されうる懲戒処分の選択及びその限界の決定につき、考慮すべき事実を考慮せず、社会通念に照らして著しく不合理な結果をもたらし、裁量権の行使を誤った重大明白な暇疵があり、取消しを免れず、また、無効というべきである。


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