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戦争と新自由主義に反対!              かけはし2004.06.28号

世界経済フォーラム ソウルで対抗行動

米軍による女子学生ひき殺し事件糾弾!

 イラク派兵を中止せよ

ソウル・光化門前を埋める人波

 ソウルでの一連の行動と会議に参加するためにやってきた日本からの参加者は、初日の宿泊先となった韓国教会百周年記念館から集会場所となっている光化門へ向かった。

高校生や中学生
も多数参加して

 地下鉄一号線の鍾閣(チョンガッ)駅を下車して、ソウル市内中心部を東西に延びる鍾路(チョンノ)を光化門方面に進んで行くと、光化門から延びる百メートル道路の世宗路(セジョンノ)と鍾路が交差する鍾路側の車道線には、約五百人ほどの学生隊列が座り込んでいる。その学生隊列の中間部には、折れた角材が飛散しており警官隊との衝突があったのだろう。
 座り込み学生たちは、日本から持ち込まれATTACやレインボーピース旗、電通労組など見慣れぬ旗に注目している。「今日と明日の集会に参加するために日本から来ました」と話すと、学生隊列から拍手が起こる。
 この日の集会は、学生隊列の中間部にトラックを横付にしてステージを設営し開始された。てっきり公園または広場での集会とばかり思っていたのだが、歩道と車道一車線での集会だ。ステージを中心にして、横七〜八十メートルほどに所狭しと労働者、学生らが参加する。
 民主労総の労働者の参加が圧倒的のようだが、高校生や中学生の参加者も目にすることができる。ある中学生の十人ほどの一団の中には、Tシャツに米軍に殺された「ヒョスン・ミソン」とハートをマジックで書き込んで着ている女子中学生もいた。歩道の中心部をつねに人が動いている状態なので、どれほどの人が参加しているのかなど目測するのも困難なのだが、それでも二〜三千人ほどはいただろうか。

ひき殺された2人
の犠牲者を偲んで

 集会はまず、二年前の六月十三日に米軍の装甲車に轢き殺された女子中学生ミンヒョスン、シムミソンさんを偲ぶ黙祷から始まった。発言は、全国民衆連帯や民主労総の代表などが次々と「イラク派兵反対」や「米軍の撤退」などを訴えた。またそうした発言の合間に、歌やダンス、高校生のパフォーマンスなどがあった。八時半過ぎになってようやくうす暗くなり、キャンドルにもポツリポツリと明かりがともされていった。

大きく転換した
韓国の政治情勢

 一年前に二人の女子中学生が米軍に殺され、韓国人の反米民族感情が大爆発した当時の状況と比べると、韓国内の政治環境は大きく変化してきたように思えた。四月に行われた国会議員選挙では、北朝鮮への太陽政策を継承するウリ党が過半数を制し、民主労働党が十議席を獲得した。また旧守派といわれてきたハンナラ党国会議員の九〇パーセントが「国家保安法」を撤廃してもよいという立場をとっている。
 北朝鮮の「核問題」はあるものの、主要には米帝国主義との政治的カードに使われており、現実的な脅威になっているわけでもない。そのことを証明するかのように、先日、イラク戦争のドロ沼にはまり込んだ米帝国主義が、在韓米軍の三分の一にあたる一万二千人を削減することを発表した。
 現在、韓国資本は、中国資本主義の発展に大きな脅威を感じており、日韓FTA(貿易協定)締結後の新自由主義グローバリゼーションの中での生き残り競争のためにも、北朝鮮の安価な労働力を一日も早く手にしたいのである。こうして南北和解と経済交流は韓国資本と保守政党の超党派によって推進されることとなった。
 女子中学生二人を偲ぶ二周年の集会は、こうした変化のなかで開かれたのであり、イラク反戦、反米軍と自国の軍国主義化と対決してゆく闘争の質的な飛躍が求められていることを感じずにはいられなかった。




グローバル化と戦争に反対し朝鮮半島の平和めざして
国際主義の熱気あふれる闘争前夜祭

 六月十二日の夜十時から世界経済フォーラム東アジア会議が行われる新羅(シルラ)ホテルを公園ひとつはさんで展望することができる東国大学グランドで、「グローバリゼーションと戦争に反対し、朝鮮半島の平和実現」のための闘争前夜祭が開催された。前夜祭には、日本からの約百人をはじめアジア各国から百五十人ほどを含むおよそ二千人が参加した。
 光化門から東国大へ移動する日本からの参加者を道案内してくれたのは、KoPA(WTO反対国民行動)のイジョンフェ代表だった。われわれが東国大グランドに到着すると、すでに前段の集会が行われており、各労組や移住(外国人)労働者の代表などが発言している。グランドには大テントを四〜六張りほど並べた大きな屋台が三つほど出店しているが、ほんどの労働者は集会に集中している。
 十一時ころになってようやく前夜祭の本会が始まった。まずは、インド、フィリピン、タイ、バングラデシュ、ネパール、香港、スリランカ、日本など海外からの参加者が登壇する。会場からは圧倒的拍手が上がる。タイからの参加者が代表して発言し、その後、全体の連帯を確かめ合うかのように感動的なインターナショナルの大合唱が行われた。
 その後はKoPAのイジョンフェ代表や民主労働党国会議員など数人からの発言やグループダンスなどがあり、日本からの参加者によるパフォーマンス「千と千尋の神隠し」の寸劇も行われた。寸劇は、韓国語のスローガンを多用しながら、日米の支配者によるグローバリゼーションを打ち倒してゆこうというものであり、その異色性からか、韓国の労働者にかなり受けていたように思えた。
 行事はなかなか終わらない。宿泊先の門限である十二時はとうに過ぎてしまっている。日本からの参加者は、十二時半ごろに会場をあとにして、タクシーや徒歩で宿泊先にむかった。途中に通りかかった東大門市場は、すでに午前一時を過ぎているにもかかわらず、ビルや商店は光々と明かりを放ち、人でごった返している。市内路線バスもゴーゴーとエンジン音を響かせてソウルの街をかけめぐっていた。 


アジア民衆・社会運動会議
新自由主義グローバリゼーションと戦争に抵抗する闘いのために

 六月十四日から十五日まで、「新自由主義グローバリゼーションと戦争に抵抗するアジア民衆」―アジア民衆・社会運動会議が、ソウル市内の高麗大学で開催された。この会議には、日本から参加した百人のほかにも、インド、フィリピン、タイ、インドネシア、バングラデシュ、ネパール、香港、スリランカなどアジア諸国から百七十人の活動家らが参加した。
 第二学生会館大講堂でのオープニングは、海外から参加した活動家を歓迎するあいさつから始まった。チョングァンクン全国民衆連帯代表、イスホ民主労総委員長、シムサンチヨン民主労働党国会議員が歓迎のあいさつで、海外からの参加者を熱烈に迎え入れた。その後は、高麗大学の学生十人ほどによる歓迎のダンスパフォーマンスが披露された。
 会議は一日目の全体討論@「新自由主義と戦争に対抗するアジア社会運動の課題」のあとは十五のワークショップが二日目の午前中まで続いた。二日目の午後から全体討論A「アジア民衆・社会運動の連帯強化方案」、全体討論B「共同宣言文採択」という日程で行われた。十五のワークショップは「食料主権国際討論会」「貧困とホームレス」「資本主義以後の生活」「国立大民営化なにが問題なのか」「戦争と新自由主義に反対する女性」「非公式・非正規職労働者と労働権」「ブッシュとネオコンに対決するアジア民衆の対策」「水の自由化と労働組合の対策」「アジア学生運動フォーラム」「アジア反戦平和運動の現状と展望」「アジア地域移住労働者の国際連帯」「WTO・FTAと食糧の安全」「アジア地域一国間交渉に対する民衆の戦略(全体)」である。
 アジア民衆・社会運動会議は、十五日の夜、「共同宣言文」を採択して閉幕した。    (高松竜二)



アジア社会民衆運動団体の行動呼びかけ

新自由主義グローバリゼーションと戦争に反対する共同行動を

 私たちアジア社会民衆運動団体―労働組合、農民、零細農民、女性、消費者、学生、移住労働者、都市貧困者、および戦争と新自由主義的グローバリゼーションに反対する活動家たち―は、世界経済フォーラム(WEF)と新自由主義的グローバリゼーションと戦争への反対を表明するために、ここソウルに結集した。WEF会議の結論に関する情報は閉ざされているが、私たちは、新自由主義的グローバリゼーションを具体化するWEFに対して今後も闘いを継続する。
 二日間、私たちは食料主権、食品安全性、公共サービスの民営化、労働の柔軟化、戦争とミリタリズム、貧困の女性化、貿易の自由化、移住労働者、自由貿易協定、およびWTO(世界貿易機関)などの問題を共有して、検討し討論した。
 行動と討論というソウルでの私たちの経験を基盤として、私たちは経済が主導するグローバリゼーション、ミリタリズム、そして戦争に対して闘いを継続することを決意した。さらに、私たちはここに結集して連帯を強化し、私たちの共同闘争戦略について討論した。
 アジアの民衆は、世界の他のすべての民衆と同様に、ミリタリズムとグローバルな資本主義の影響に苦しめられている。この事態が最も際立ったのは新自由主義的政策がアジア全域を覆いつくした一九九七年であり、それ以来、私たちの経済では民衆を犠牲にしたさらなる「リストラ(再編)」と自由化が進行している。FTA(自由貿易協定)の急増は民衆をさらに貧困に追いやる。貧困、失業および不安定がこれまで以上にますます拡大している。
 アジアは、数多くの米軍基地を持つ地域でもある。それらの存在は、米国が経済および戦略的利益を求めて、アジアで軍事力行使を計画する上できわめて重要である。いわゆる二〇〇一年の「対テロ戦争」宣言以来、米国の軍事介入はアジアで強化され、民衆の安全を脅かしている。アジアにおける米軍の不安定化戦略は、私たちが結集したここ朝鮮半島をはじめ、至るところで見ることができる。
 新自由主義的グローバリゼーションとミリタリズムは同時に進行している。私たちは、米国のイラク占領およびWTO/FTAが重要な闘争の場であり、二つの顔[軍事と経済]を持つ「武装化」したグローバリゼーションの象徴であることを確認した。
 私たちは、イラクとパレスチナの占領が終了するまで闘いを止めない。私たちは、米国およびその他の軍隊の撤退を要求する。私たちは、各国政府に対してアジアの軍隊のイラク駐留を止めるよう引き続き圧力をかける。
 私たちは、現在の農業交渉を阻止することによって、カンクンにおける私たちの勝利を維持しなければならず、EUと米国にWTOの復活を許してはならない。教育、健康、水、文化など、すべての基本的な公共サービスはWTOまたはFTAにおける売り物ではない。私たちはいわゆる「自由貿易」システムから私たちの権利を奪還する。
 したがって、私たちはすべての民衆および社会運動団体に私たちとともに次の行動計画に参加するよう呼びかける。
 六月三十日―米国は「主権」をイラクのかいらい政府に引き渡し、その違法占領の合法化をねらっている。私たちは改めてイラク占領の中止を要求する。私たちは六月二十六〜三十日に世界同時行動に参加する。
 七月十九〜二十四日―食料主権を求める世界同時行動ウィークに参加し、現在のWTO農業交渉を阻止する。
 九月十日―リー・キュン・ヘさんの命日にちなんで、九月十日を食料主権を獲得し、WTOに抵抗するための国際行動デーとする。
 WTO香港閣僚会議―私たちは次の二〇〇五年香港閣僚会議に結集することを確認する。私たちはともに香港に結集し、私たちの連帯を具体的に強化するための一つの方法としてその結集を利用する。私たちは率先して行動と動員の計画および組織化を進める香港委員会のイニシアチブを歓迎する。ソウル行動の動員成功によって獲得できたこの勢いを利用して、私たちはこの計画を実現するために次の数カ月、香港委員会とともに作業を続ける。私たちは、私たちの反対の意志と力をグローバルに表明するために、香港だけではなく、私たちのすべての国々で動員を行う。
 私たちはイラクとパレスチナ民衆の抵抗、ならびに移住労働者、非正規およびインフォーマル労働者、労働組合、農民、零細農民、都市貧困者、および女性たちの闘いと連帯する。私たちは、私たちの行動を連携させて、アジアにおける闘いを拡大し強化することを決意した。希望をグローバル化しよう! 闘いをグローバル化しよう!


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