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「社会から産むなと言われているようだ」        かけはし2004.06.28号

出生率1.29-「小泉改革」が「少子化」を加速した



「少子化」が加速するのは当然だ

 際限なく保険料を引き上げ、際限なく給付額を引き下げる年金大改悪案が参院で強行された直後、法案の基礎データ中の基礎データであるはずの〇三年の出生率が、〇二年の「一・三二」からさらに低下して「一・二九」となり、第二次大戦後初めて一・二台に落ち込んでいたことが発覚した。
 「保険料は二〇一七年度まで毎年引き上げるがそこで固定」「給付額は現役世代の五〇%を確保」という法案の二大宣伝文句がいずれも大ウソであることを示していた厚生労働省の試算と同様、これもバレれば法案の基礎が崩れてしまうデータだから、成立まで隠していたのである。
 「少子化」の問題を考えるに当たって、まず最初に「産む、産まないは女性の自由」という原則を確認しなければならない。女性が出産を強いられてはならない。問題なのは、女性が子どもを欲しいと思っても、小泉政権の新自由主義的「構造改革」によって、安心して子どもを産んで育てることができる社会的条件が、ますます掘り崩されていることである。マスコミは「衝撃的数字」などと大騒ぎしているが、現在の日本のような社会状況では、「少子化」が進行するのはむしろ当たり前なのだ。

『産みたくても産めない社会」


 リストラを徹底的に支援する「小泉改革」のもとで、完全失業者は三百五十万人前後で推移している。このほかに、就職を希望しハローワークに通い続けても職を得ることができず、求職活動をあきらめてしまった人が五百万人を超えている。幹部社員でも管理職でも、いつ首を切られるかわからないという不安にさらされている。
 いつ解雇されるかわからない不安に加え、低賃金化がどんどん進行している。企業は正社員を減らし続け、派遣やパート、アルバイトなどの非正規雇用に置き換えている。東京都の「派遣労働に関する実態調査二〇〇二」によれば、派遣労働者の六〇%以上が年収二百五十万円未満である。内閣府の調査では、三十四歳までの若年フリーターは四百十七万人になった。このような若年フリーターの六割が年収百万円未満である。
 厚生労働省の〇三年「国民生活基礎調査」では、一世帯当たりの平均所得は六年連続で減り、ピーク時の九七年に比べると六十八万円も減少した。その一方で、教育費や医療費の価格は過去五年間で六%を上回る上昇となっている。
 生活が「苦しい」と答えた世帯は五三%と過去最多となり、「大変苦しい」と答えた世帯は二一・八%に上った。児童のいる世帯では、六二・八%が「苦しい」と答えている。小泉の年金制度大改悪は、「子どもが大きくなったころは、いまよりさらに悪くなっているだろう」という「将来への不安」をさらに加速した。このような状況では、安心して子どもを産み育てることはできない。
 リストラによる人減らしが進むなかで、正社員であっても育児休業を取るのは困難である。ましてや派遣やパートや契約社員などの不安定雇用労働者には、育児休業もまともに保障されておらず、元職復帰や再就職に不安があれば産みたくても産むことができない。
 「東京都の派遣社員(38)。二年前、派遣先に妊娠を告げると『育児休業の対象外』として解雇通告された。夫はアルバイト。仕事をやめるわけにいかず、中絶を決意して病院を訪れたが、派遣社員の労組を知り、会社と交渉して育児休業明けに仕事を紹介してもらう確約が得られ、出産した。『社会から産むなと言われているようだ。産めといいながら、産めない不安定雇用ばかり増やしている』」(朝日新聞6月7日)。
 もちろん、労働組合と接触して次の雇用を保証され、出産できたこの女性のような例はまれで、ほとんどは出産をあきらめているのである。

過労死労働と育児は両立不可能


 それだけではない。大量失業と不安定雇用化の進行の一方で長時間労働とサービス残業=強制的ただ働きがますます横行している。川人博『過労自殺』(岩波新書)は、過労死ラインと言われる週六十時間(年間三千百二十時間)以上働かされている男性労働者の数が九六年に男性労働者数の一五・六%、五百一万人に達していると指摘していた(総務省の労働力調査)。
 それが〇二年には一八・五%に増加している。約六百万人もの男性労働者が、週六十時間以上の過労死に追い込まれる危険性のある超長時間労働をさせられているのだ。しかも、子どもを持つ年ごろの三十歳代では全体の二三%、実に四人に一人が過労死労働させられているのである。そして三十歳代は、平均でも法定労働時間(週四十時間)を十時間も上回る五十時間以上の長時間労働に従事させられている。裁量労働制の拡大は、サービス残業=ただ働きを「合法化」し、過労死労働をさらに深刻化することになる。
 日本の男性が育児に関わる時間が、世界の主要国で群を抜いて少ないことはよく知られている。過労死労働で夜中や明け方に帰るような生活では、育児を主体的に担うことはできない。そして女性でも、百万人近くが週六十時間以上の過労死労働をさせられているのである。もちろんその中心は二十歳台から三十歳台である。これで子どもを持とうと考えられるだろうか。
 小泉政権は保育所運営費の削減や「民間委託」による保育条件の切り下げを続けている。「待機児ゼロ作戦」とは名ばかりで、定員オーバーの保育所の廊下に寝かせるほど詰め込んでも、待機児は増え続けている。公営保育所は足りず、民間の無認可保育所の保育料は高い。
 医療への市場原理導入で、もうからない小児科は全国で切り捨てられて激減し、数少ない小児科医がここでも過労死労働で必死で支えているが、急病でたらい回しにされた子どもが死亡するという悲劇も起きている。
 先に触れたように教育費は上がり続けている。大学の入学金・授業料は世界一高い。国立で約七十七万円、私立で約百二十九万円(全国平均)である。フランスやドイツでは基本的に無料であり、サッチャー以来の新自由主義政策で年間十九万三千円の個人負担が必要になったイギリスでも、本人や家族の所得による減免制度で、約四〇%の学生が学費を免除されているのである。「小泉改革」は、「少子化」を徹底的に加速させたのである。

実現可能な少子化対策とは


 人間の生活に対する公的責任を放棄し、あらゆる公共サービスを民営化して利潤追求の分野として解放し、資本の横暴から社会を守ってきたあらゆる規制を取り払おうとしてきた「小泉改革」。この新自由主義政策が「産みたくても産めない社会」の現実を深刻化させ、「少子化」を加速した。
 取られるべき「少子化対策」とは、このような「産みたくても産めない状況」「社会に産むなと言われているようだ」と女性たちが考えざるを得ないような極端に否定的な状況を改善することに尽きる。
 第一に、サービス残業を厳しい罰則で禁止し、労働時間を大幅に短縮して週三十五時間労働制に移行することで失業を一掃することである。育児中の労働者の単身赴任の禁止や深夜勤務の厳格な制限によって、ILO(国際労働機関)が求めている「家族責任」をだれでも果たせるような状況を作り出さなければならない
 第二に、不安定・非正規労働の時間当たり賃金や育児休業も含む休暇などで均等待遇を実現するとともに、どんな職種でも正規雇用を原則とすることである。
 第三に、安心して育児休暇を取って子育てができるよう、育児休業中の賃金保障や代替要員の確保、公営保育所や小児科病院の抜本的拡充などの施策を押し進めることである。
 第四に、「先進国クラブ」といわれるOECD(経済協力開発機構)三十カ国で二十九位という低水準の教育への公的支出(対GDP比)を抜本的に増額し、大学教育まで含めた教育費の無料化をめざすことである。
 第五に、若い人々の将来への不安をかき立てている年金制度大改悪法を廃止し、全額国庫負担による生存権保障の基礎年金制度を確立することである。
 このような方向に転換することが、求められる「少子化対策」である。これらはすべて、数字の上でもただちに実現可能な政策である。日本と同様に「少子化」が進行してきたヨーロッパ諸国では、それらは程度の違いはあっても現実のものになっている。そのため「少子化」の進行は下げ止まり、上向きになりつつある。たとえばフランスの出生率は、九四年の一・六五%を底に〇二年には一・八八に回復した。
 多国籍資本とその意を受けた諸国政府は、長年の労働者人民の闘いによってかちとられてきた社会保障体制や労働者の権利を根本的に解体することによって利潤率を引き上げようとしている。ヨーロッパでも年金改悪をはじめ、「小泉改革」と同様の新自由主義政策が押し進められつつある。
 日本と決定的に異なっているのは、ヨーロッパではこれらの新自由主義諸政策と正面から対決する労働運動をはじめとする強力な社会運動が存在し、大衆的ストライキや何十万、何百万の街頭デモで反撃しているということである。日本では、違法なただ働きの強制であるサービス残業をはじめ、次々に改悪される労働法制さえ踏みにじる違法行為がまかり通っている。違法行為を許さず、団結の力で権利を守り拡大する闘いこそ、日本社会の「少子化対策」の出発点である。

『戦争する国」の少子化対策


 小泉政権は六月初め、「少子化社会対策大綱」を決定し、今後の少子化対策(新新エンゼルプラン)の策定作業を開始した。「大綱」を主導したのは、自民党少子化問題調査会(会長・森喜朗前首相)。森は昨年六月に九州で少子化問題について講演し、子どもを産まない女性には人権はないというかのような暴言を吐いて物議をかもした。
 森は述べた。「子どもをたくさん作った女性に将来、国がご苦労様でしたといって面倒見るのが本来の福祉です。ところが子どもを一人も作らない女性が、好き勝手、と言っちゃ何だけど、自由を謳歌して楽しんで、年取って……税金で面倒みなさいというのは、本当におかしいですよ」。
 「少子化社会対策大綱」は言う。「自由や気楽さを望むあまり、家庭を築くことや生命を継承することの大切さへの意識が失われつつあるとの指摘もある」(朝日新聞6月8日)。森のウルトラ反動的な認識が、まさにストレートに反映されている。
 「大綱」策定に向けて自民党少子化問題調査会が五月に発表した中間報告では、「個人や自分を強く意識する風潮の基盤をなしてきた法律などを見直す」「結婚や出産はいわば人間の本来的な生き方だと自然に考える社会の雰囲気を醸成する」と述べている(同前)。
 一読すればだれにでもわかるように、森らは自分たちが「見直し」の念頭に置いているのが教育基本法であり、憲法そのものであることを隠そうともしていない。すなわち、自民党・小泉政権の「少子化対策」の柱の一つは、憲法や教育基本法を改悪し、「生活や労働条件が苦しくとも文句を言わず、国策のために進んで子どもを作る」という精神性を植えつけるということなのである。
 「大綱」が「五年後の出生率回復」のために掲げた「重点施策」には、「不妊治療への経済的支援」という形で、国家政策としては初めて「妊娠推進」が盛り込まれている。自衛隊がイラクの戦場に出兵し、有事法制が整備され、教育基本法改悪と憲法改悪が政治日程にのぼり、「戦争国家体制」の法的基盤を完成させようとする流れのなかで、「富国強兵」の柱の一つだった「産めよ増やせよ」政策が登場してきた。この点でも、新自由主義と戦争政策は一体になっているのである。
 (6月14日 高島義一)


障がい者支援費制度の介護保険への統合反対

千人の障がい者・支援者が厚労省に抗議


 支援費制度(64歳以下の障がい者が対象)を介護保険に統合しようという厚労省の策動に対し、六月九日全国から千人の障がい者・支援者が集まり、大規模な抗議行動を行った。
 呼びかけはDPI(障がい者インターナショナル)日本会議や知的障がい者の当事者組織であるピープルファーストジャパン設立準備会など。
 午後十二時三十分、日比谷公園草地広場には全国各地から結集した障がい者(車イス利用者だけでも四百人以上)と支援者があふれた。横断幕やのぼり旗は手書きが多く、この種の行動に初めて参加した人が多数であった。
 集会が始まり、各地から怒りの発言があいついだ。神経難病のひとつであるALS(筋萎縮性側索硬化症)の団体である日本ALS協会の橋本操会長は「一万人の仲間と私の命を守るため、統合には断固反対していきます」との決意を述べた。
 橋本さんは、病気が進行し自発呼吸だけでは危険になり、気管切開し人工呼吸器をつけ生活している。そのため発声はできないが、前夜遅くまでパソコンと格闘して作った文書を、介助者に代読してもらう形でアピールを行った。
 橋本さんは厚労省との交渉に、人工呼吸器を車イスにつけ毎回のように参加しており、無言の圧力を厚労省官僚にかけつづけている。
 橋本さんのように、介助者が二十四時間ついていないと生命にかかわる人たちにとって、介護保険に統合されるということは、一日三時間しか介助者が来てくれなくなることであり、病院に送り込まれそこで一生を終えることを強いられることである。
 約一時間の集会の後、厚労省・財務省・議員への交渉団、陳情団を送り出し、霞ヶ関を一周するデモ行進に移った。
 「厚労省は障がい者の声を聞け」「入所施設はもう作るな」「重度障がい者の地域生活を保障しろ」というシュプレヒコールが官庁街に響きわたった。
 四時からは厚労省前で抗議行動を展開。各地から参加した障がい者は「統合で自分たちの生活は根本から破壊されてしまう」と統合策動を糾弾した。
 来年早々の介護保険法改正案の国会上程をにらんで、この一〜二カ月の闘いが決定的な段階を迎えようとしている。(赤井岳夫)


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