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小泉政権と民主党による有事7法案・3条約の成立を糾弾する                                   かけはし2004.06.21号

「戦争国家体制」を作らせるな

憲法9条改悪を阻止する闘いを広げよう


多国籍軍への参加を許すな

 通常国会の会期末を二日後に控えた六月十四日の午後五時四十五分、参院本会議でついに有事7法案・3条約が自民・公明の与党と民主党の賛成で可決・成立した。一括採択された「国民保護法案」など有事7法案は投票総数百九十四のうち、賛成一六三・反対三一、ACSA(日米物品役務相互提供協定)改定は賛成一六四・反対三〇、ジュネーブ条約の二つの追加議定書は全会一致の賛成という圧倒的多数での可決である。
 本会議採決前の討論で賛成意見を述べた民主党の榛葉(しんば)議員は、アメリカのイラク侵略戦争とそれに追随した小泉政権を糾弾し、自衛隊のイラク多国籍軍参加を批判し、有事7法案の国会審議が「わずか三十一時間。中央・地方の公聴会もぬきで行われた拙速のもの」であり、「国民の理解を得ているとは言えない」と語った。あたかも反対意見のようである。「しかし」と榛葉議員は述べる。「わが国の安全に責任を持つ最大野党として、この有事法案に賛成する」というのだ。
 われわれは、与党と民主党との取り引きによる有事7法案・3条約の成立を厳しく糾弾する。昨年の武力攻撃事態対処法などの有事3法案に続く、今国会での有事7法案・3条約の成立によって、「戦争国家」体制の法的基盤は完成段階に入り、憲法改悪への道が大きく切り開かれた。憲法の「平和主義」と基本的人権の保障を葬り去った既成事実としての「戦争国家」体制の法整備が、支配階級にとって9条改悪を軸にした「明文改憲」をいよいよ緊急の課題に押し上げることになった。
 有事法体制の確立は、「9・11」以後のアメリカ帝国主義の「対テロ」グローバル戦争戦略を小泉政権が全面的に支持し、ついにイラクに自衛隊を占領軍として派兵する中で遂行されたものである。イラクに派兵された自衛隊を多国籍軍に横滑り的に参加させることをG8サミットでブッシュ米大統領に確約した小泉は、民主党との合意の上で「緊急事態基本法」や、自衛隊を恒常的に海外派兵する法案を次の段階で準備している。
 歯止めなくエスカレートする「戦争国家・派兵国家」への道は、一九九二年のPKO派兵法を皮切りに、一九九六年の「日米安保共同宣言」、九七年の日米新ガイドライン、九九年の周辺事態法、二〇〇一年のテロ特措法、昨年の有事3法とイラク特措法を経て、ついにアーミテージ現米国務副長官が主張する「米英同盟」的「日米同盟」完成の段階に入り込もうとしている。
 有事7法案・3条約の成立を見た今日、われわれはこの動きにストップをかける広範な共同の闘いに全力を上げなければならない。その第一のステップはイラク多国籍軍への自衛隊参加を阻止する運動であり、参院選で自民、公明、民主党の候補を一人でも多く落選させることである。そして第二のステップは、「有事」を発動させない職場・地域での闘いを基礎に、憲法改悪阻止の闘いへの布陣を築き上げることである。

戦争動員を阻止する闘いへ


 六月八日、G8サミットに参加した小泉首相は、サミット開会直前の日米首脳会談で「イラク新国連決議の全会一致での成立はアメリカが妥協したためではない。アメリカの大義が勝利したのだ」と、ブッシュを最大級の言葉でほめちぎった。そして「武力行使を伴う多国籍軍への参加は違憲」という湾岸戦争以来の政府見解を反故にして、自衛隊を新国連決議の下での「多国籍軍」に参加させることをブッシュに約束した。
 「多国籍軍参加は違憲」という政府見解の詭弁的変更は、すでに六月一日の秋山法制局長官の国会答弁で示されていた。秋山は「武力行使を行わず、活動が他国の武力行使と一体化しない場合には、武力行使を伴う任務、伴わない任務の両方が与えられる多国籍軍に参加することは憲法上問題ない」と答えたのである。
 しかし国連安保理のイラク新決議(決議1546)では、「多国籍軍は……治安維持に貢献するために必要なあららゆる措置を取る権限を有する」とされ、多国籍軍は「統一指揮」の下に入ると明記されている。多国籍軍の任務の一つとして「人道・復興」が上げられているとしても、その活動を「武力行使を伴わない任務」として自動的に規定するのは、誤りを意識的に誘導するイメージ操作である。「人道・復興」は「治安維持」と切り離されるものではない。多国籍軍の全体としての任務はあくまで「武力行使」を主軸にした「治安維持」「武装集団に対抗するのに必要な活動」「イラク軍の訓練と配備」なのだ。
 米占領軍を主力とする「多国籍軍統合司令部」の「統一指揮」下に入る自衛隊が、「独自の指揮権を維持する」という小泉の言いぐさは、まったくのデタラメにすぎない。小泉政権は「アンダー・ユニファイド・コマンド」(統一指揮下)という国連決議の記述を「統合された司令部の下」と「改訳」し、自衛隊は「独自の指揮下」にとどまると強弁しようとしているが、そんなごまかしは通用しない。「コマンド」は「命令、指揮、支配」なのであってそこには独立した指揮権の余地はない。
 小泉内閣は、「政府見解」に照らしても違憲・違法な自衛隊の多国籍軍参加を、国会での審議に付すこともなく、イラク特措法の条文に新国連決議を「政令」で加えることにより強行しようとしている。
 しかし多国籍軍の駐留が、イラク占領の事実上の継続にすぎないことを、圧倒的多数のイラク民衆が厳しく批判している。有事法案の成立と軌を一にした自衛隊の多国籍軍参加は、アメリカのイラク侵略戦争と占領の破綻、ひいてはブッシュのグローバル戦争戦略の破綻の中で強行されようとしている。
 アメリカ帝国主義のグローバル戦争戦略の危機は、それと一体化して自衛隊を最前線に動員する日本の「戦争国家」体制の危機をも促進している。有事法制の成立は、決して「戦争国家」への民衆動員がスムーズに進行することを保障するものではない。われわれはイラク反戦運動の中で、民衆の抵抗運動の可能性を端著的につかみとった。有事法制反対運動は、イラク反戦運動が持っていた可能性を引き出すことはできなかったが、その限界を、新自由主義的グローバリゼーションへの抵抗と結び付けた国際主義的な「平和・人権・民主主義」の運動を社会的に築き上げていく努力の中から克服していかなければならない。
 自衛隊の多国籍軍参加を阻止しよう。憲法改悪を阻止し、「戦時法制」の発動を許さない抵抗の力を拡大しよう。7月参院選で「戦争国家体制」と憲法改悪を阻止する候補に投票を!
 WORLD PEACE NOW実行委員会は参院選の最中の七月四日に「VOTE for PEACE 多国籍軍参加は違憲・違法だ! 平和のための投票で自衛隊撤退の実現を 7・4渋谷」(開場午後1時・開会午後2時・パレード出発午後3時、渋谷・宮下公園)を開催する。7・4渋谷を大きく成功させよう。
(6月15日 純)      


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