| フランソワ・オリヴィエ (上) かけはし2004.06.21号 |
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世界情勢─第四インターナショナル国際委員会への報告 |
この報告書は第十五回世界大会の決議および報告の枠内にある。インターナショナルの主要支部の討論と活動からもたらされたものであり、われわれの強さとともに、われわれの限界と弱点も反映している。この報告は、五つの大陸のすべてをカバーする世界政治情勢のすべての問題の「網羅的な検討」を行うものではない。この報告は、われわれが直面している、方向性に関する大きな問題に影響を与える可能性がある、国際情勢の重要な点を取り上げたものである。
第十五回世界大会以降の世界情勢の新たな発展を取り上げる前に、この世界大会で指摘されたこの時期の分析の一般的枠組を特徴づける基準点を想起しよう。
b新自由主義的反改良とその社会経済的政治的影響の深まり。
b「新世界秩序」の不安定化と国際資本主義体制内の新たな矛盾の出現。すなわち、資本主義的グローバリゼーションの武装した次元、金融資本主義の支配と結びついた経済的矛盾、帝国主義間矛盾、「全国的」社会的政治的危機。
b新自由主義的政治の正統性の危機、伝統的労働者運動およびブルジョア民族主義政党内の社会的抵抗と構造的変化。
b急進的反資本主義左翼および革命的マルクス主義潮流や組織の政党建設のための新しい空間。
1 イラク戦争
(1)世界政治情勢の構造を作り出している戦争
イラク戦争によって、以下のことが確認された。
b新自由主義的グローバリゼーションは、解きほぐせないほど有機的に武装グローバリゼーションと結びついていること。それは国際的事件に対処する通常モードとして武力に頼ることに反映されており、また「先制攻撃戦争」や「無制限戦争」の概念に反映されている。
bアメリカ帝国主義の戦略的利害、すなわち、石油、アジアの出入り口でもある中東の戦略的領域の占領、新しい形態の植民地主義、帝国主義列強を米国の利益にそって再編成すること。
b米国の軍事的優位性。軍事予算の増額によって推進されている。
支配の形態がこれまで以上に差別化され階層化されている世界の中で、米国は、価値と富の創出と割り当ての過程を支配しようとしている。
(2)イラクの泥沼
しかし、この支配の企ては矛盾に遭遇している。
米国のイラク占領は、現在、無秩序に向かっている。石油生産が二百八十万バレルに増加し、経済封鎖の時期の生産レベルを超えているとしても、イラク社会は崩壊し始めている。人口の七〇%は失業しており、貧困が爆発し、食糧援助が消滅し、政治的宗教的政党の抵抗と軍事的抵抗が発展している。
現在、最もありそうな仮説は、米国にとっての泥沼である。米国のベトナム介入の場合との違いを考慮に入れてではあるが、米国の新聞は新たなベトナムの「惨状」を口にし始めている。米国自身の国内情勢も、世論はこの方向に向かっている。軍事占領の長期化や兵士の死亡者数への懸念、新たな部隊派遣のための新たな徴兵制の恐怖、などが存在する。
2 帝国主義間矛盾の発展
(1)イラクにおける戦争、転換点?
これらの矛盾が、イラク戦争中に爆発した。それらは国家と人民の間、ヨーロッパとアメリカ間、米国とロシアおよび中国間の関係を含む世界関係の再定義の広範な傾向を反映している。
米国の側では、便宜的に「多国間協調主義」と呼ばれているものに挑戦するに至っている。これは、国連、ユネスコ、WTO(世界貿易機関)、世界銀行、IMF(国際通貨基金)などの国際的機関を通じた特定タイプの国際的関係である。これらの機関は、世界の力関係を帝国主義列強の利益にそって下支えするものであり、彼らの支配の道具を構成するものである。しかし、それらは制度の内部の矛盾にとらえられている。
欧州の側では、「古い欧州」からの抵抗というのは当てはまらないが、図式的に言えば、二つの軸の間の対立が発生している。すなわち一方は米国に反対する仏独同盟の軸、もう一方は米国を支持する英国、スペイン、イタリア、オランダ、デンマーク、および東欧諸国である。路線は動く可能性があるが、米国と欧州の間の矛盾であり、欧州内矛盾と結びついた図式的対立である。
(2)これらの緊張の意味と限界
これらの矛盾は、イラク戦争中に現れた対立を超えて進んでいる。それらは、新自由主義的反改良の至上命令の下での経済的矛盾の鋭さを表現している。それは経済の重要部門、すなわち鉄鋼、航空産業、農業食料部門でも、ドル地域とユーロ地域間の関係でも同様に現れている。それらは、米国の支配と欧州の立場の間の地政学的対立も反映している。
新しい対立が米国とロシアおよび中国の間で現れているだけでなく、米国と新興「大国」、たとえばブラジルやインドとの間でも生じている。特定国家の「核開発能力」に関する資本主義大国間の武装対立も忘れてはならない。
長年にわたって帝国主義とソビエト官僚の間の均衡の体制によって封じ込められていた遠心的傾向が、新たな世界情勢にのしかかっている。
それらは、資本主義体制にとって内部的な矛盾の一つを表現している。それらは第一次および第二次世界戦争前夜の帝国主義列強間の矛盾のような重要性を持ってはいない。資本主義国家間の対立を目撃するのは初めてではない(たとえば、一九六〇年代の米国の政策とドゴールの政策の対立)。その意味を過大評価すべきではない。なぜなら、これらの矛盾は、全体の基本的利益のより良き理解によって抑制されるからである。したがって、米国がイラクにおいて単独行動主義的に行動し、フランスとドイツが米国のイラク再建計画に反対した場合、ブッシュ政権は他の帝国主義大国との協調を無視することはできない。特に、協調の旗印として国連が持ち出される場合はそうである。
しかし、一九九一年のソ連崩壊後、社会経済的および政治的安定とあらゆる種類の矛盾(階級間だけでなく国家間の矛盾)の減少を基盤にして新しい世界秩序が構築されることを展望した人々の世界展望とは反対に、世界情勢はあらゆる種類の対立と無秩序が顕著になっている。
支配階級にとって、世界はますます手に負えなくなっている。
イラク戦争は、世界情勢が歴史的安定の新しい時代に入ったというあらゆる予見が誤りであることを明らかにした。それは「スーパー帝国主義」(単一の帝国主義である米国帝国主義の矛盾なき支配)や「帝国」(金融多国籍企業のネットワークが国家に取って代わる)などの概念を無効にした。イラク戦争は帝国主義国家の現実、米国帝国主義支配の現実を確認しただけでなく、資本主義国間矛盾をも確認した。
資本主義国間矛盾は主要な矛盾ではない。それらは基本的矛盾である人民と帝国主義列強の間の矛盾、支配階級の利益と人民諸階級の間の矛盾の結果である。
これらの資本主義国間矛盾を考慮に入れることは、主として以下の理由から実際的である。
b対立と社会的動員による危機によって開かれた空間を理解するため。たとえば、WTO内の矛盾は、グローバルな正義のための運動が動員を再配置することを可能にした。イラクに対する戦争の間に、米国とドイツおよびフランスの間の矛盾が反戦運動の動員の新たな空間を開いた。
b自らの資本主義的利益のために支配的帝国主義の利益に反対している支配階級の周りに形成される神聖同盟の政策に対して闘うため。労働者運動や労働組合運動からの欧州権力支持の政策に反対することは特に重要である。欧州は、米国その他のモデルに対置された民主的文化のモデルになろうとしている。われわれは体制内部の矛盾を利用しようとするが、われわれの目的はそれぞれの支配階級に対決する人民階級の統一と独立の政策を維持し続けることである。
最後に、これらの対立は亀裂と緊張と再評価を作り出した。次の米国大統領選挙は、これらの緊張のレベルを分析するのに良い機会である。新自由主義的反改良政策と武装グローバリゼーションはブッシュ政権以前に始まった。米国議会は共和党も民主党もいっしょになって米国の介入を承認したことを忘れないようにしよう。しかし、ブッシュ一派の政策の望ましくない影響、袋小路、不安定化の危険を、今日では米国支配階級の諸セクターが非難し始めている。これらの緊張は政権の再評価と変更をもたらすのか、それとも緊張は一掃されるのか。これは米国の選挙にかかっている重要な問題の一つである。
3 資本主義的攻勢の深化
われわれはこの問題に、米国経済政策の発展、欧州建設、およびラテンアメリカ情勢を通じてアプローチする。
(1)米国経済情勢に関するいくつかの検討
数字は、二〇〇三年に経済成長が再び始まったことを示している。この成長の新しい局面にはいくつかの限界がある。雇用が作り出されていない。新たな生産性向上の追求と結びついたリストラや、この上昇局面の不安定性のために、大量の仕事は創出されていない。工業投資やIT投資はやって来そうにない。しかし、この成長の新しい局面は、主として米国経済の基礎的不均衡によってモデル化されている。米国の成長は、何よりも、世界の資本フローをウォール街に引きつける米国の能力に結びついている。
米国はこれによって、経常収支赤字、予算の赤字、そして間接的に家計消費クレジットの赤字を埋めることが可能になっている。米国の対外負債は依然として非常に高いレベルにあり、GDPのほぼ三〇%に達する。赤字は軍事予算と富裕層優遇の税金政策の圧力の下で増え続けている。
この世界の資本を引きつける能力は、米国に有利な政治軍事的力関係に結びついている。また、経済成長の米国モデルは輸出することはできない。さらに、米国経済に対するこの金融的圧力は、海外では米国の産業および金融グループの利益になるような競争の強化を意味し、国内では労働者の搾取を先鋭化して最適の利益率を確保することを意味する。したがって、賃金に対する圧力の高まり、公共予算の削減、自動車のような戦略的部門でのレイオフを導くようなリストラや下請け化の発展を意味する。
(2)ヨーロッパにおける新自由主義的反改良の加速
欧州諸国の支配階級の要請と国際競争の影響、特にヨーロッパとアメリカの競争の影響が、欧州諸国政府に賃金労働者と失業者に対して新たな攻勢を行うことを強制している。すなわち、社会的状態の解体、フランスおよびドイツにおける社会保障の解体、年金改革、社会的関係の規制緩和、フランスにおける労働法への挑戦である。
今日、この政策を追求しているのは、フランスのラファラン政府、スペインのアスナール政府、イタリアのベルルスコーニ政府などの右翼政府だけではない。左翼リベラル政府も、すなわち英国のブレア政府やドイツのシュレーダー社民党政府もこのような政策を追及している。
この新たな攻撃は、階級闘争の状態を緊張させている。それは労働者、移民、およびその組織や団体に対して、社会的状態をせばめ可罰状態を拡大し、抑圧の強化をもたらす。右翼政党を連合させて権威主義的政策を推進するように駆り立てる。伝統的な労働者運動が世界的に後退し、資本主義的新自由主義に順応している状況の中で、ファシスト的またはネオファシスト的政党が目立った発展を示している。イタリアやオーストリアなどの一連の国において、権威主義的右翼の連合の再生が人民階級に対する攻撃政策の強化をもたらしている。
政治的および制度的レベルでは、欧州ブルジョアジーは、現在、支配を保証するのに必要な制度の評価を進めている。ジスカールデスタン協議会の議論の失敗は、全二十五カ国のブルジョアジーすべての企図を統一することの困難性を示している。また、ブルジョアジーの一部は、仏独枢軸を中心とする「欧州権力」の構築を進めようとする意志を示している。
(3)ラテンアメリカの危機
ラテンアメリカ情勢を特徴づけているのは、深い不安定性、新自由主義的政策の暴虐、闘争と社会的運動の爆発、人口の重要な部分から見た新自由主義的反改良の非正統性、そして危機の全般化を意味する「全国的」社会的政治的危機、である。
米国政府の圧力と国際機関(IMFおよび世界銀行)の圧力が、調整政策と新自由主義的リストラを推進するように諸国政府を強制している。「FTAA(米州自由貿易圏)またはFTAAライト(ゆるやかバージョン)」の枠組の強制は、生産と米州貿易において米国に有利であり、対外負債支払いの要求は社会的予算の削減、公共サービスの解体、貧困の全般化をもたらしている。
最近のFTAA会議では、ベネズエラのチャベス政府を除いてすべてのラテンアメリカ政府は米国支持にまわった。
ブラジルのルラ政府は、ブラジルのIMFに対する約束を守り続けることを確認した。IMFの優等生とみなされている。
アルゼンチンでは、IMFは経済援助に関する脅迫を続け、利潤を向上させるために行政機関の新たなリストラを要求している。
ボリビアでは、主要天然資源の一つである天然ガスの民営化が日程に上っている。
ハイチの混乱は、何世紀にもわたる帝国主義支配、国家の解体、そして最近のウルトラ新自由主義的政策の影響が組み合わされた結果がどれほど悲惨になるかを、特に衝撃的に示している。
この圧力は、支配階級と国家の頂点における腐敗と寄生性を悪化させた。マフィアが介入する政治的財政的犯罪行為は、この種の支配と一体になっている。
米国の圧力の下でのこの新たな米州支配は、やはり、巨大帝国主義グループとその子会社への種々の資源の大規模な譲渡を意味している。これらの譲渡を拒否することは、ボリビア(ガス民営化の拒否)やベネズエラ(石油生産の管理)では民衆動員の課題の一つになっている。
最後に、新自由主義政策の影響が作り出した不安定性が、米国帝国主義の政治軍事戦略の転換点に関係している。すなわち、コロンビアとベネズエラにおける対反乱戦略、ボリビアにおけるクーデターの準備、アルゼンチンとブラジルにおける不安定化である。ここでもやはり、米国支配の経済的戦略的要求が政府のマヌーバーの余地をますますせばめており、特に「社会自由主義」型政策の余地をせばめている。(つづく)
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