| 年金大改悪法案成立強行を糾弾する! かけはし2004.06.14号 |
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「小泉改革」による公的年金制度の新自由主義的破壊を許すな! |
政府首脳も「欠陥商品」と自認
小泉政権は六月五日の参院本会議で、年金大改悪法案の可決・成立を強行した。六月三日の参院厚生労働委員会での採決は、与野党で質問者として合意していた共産党の小池晃議員、社民党の福島瑞穂議員、無所属の西川きよし議員の質問を残したまま、一方的に審議を打ち切って強行された、まれに見る暴挙であった。
野党の質問権剥奪という暴挙こそ、この年金大改悪法案のでたらめさと小泉政権の驚くべき無責任さを象徴している。先の総選挙の公明党のマニフェストをそのまま引き写した小泉政権の年金大改悪法案は、「百年安心の抜本改革」(公明党神崎代表)という触れ込みだった。ところが、審議をすればするほど、与党幹部が自ら「欠陥商品」(朝日新聞6月4日)だと言わざるを得ないほどデタラメなものだということが暴露され、テレビや新聞でそれが連日報道され始めたのである。
「厚生年金の支給は現役世代の五〇%を保障」「国民年金保険料は二〇一七年度以降一万六千九百円で固定」などの宣伝文句がすべてウソであることが、厚生労働省自身が衆院での採決強行後にようやく公表した試算で、あらためてはっきりしてしまった。
厚生年金給付水準の最も低い「独身男性」の場合、受給開始時にすでに三六%しかなく、二十年後には二九%と三割を切ってしまう。フルタイムの共働き世帯も同様に三一・七%、「五〇%保障」のはずの「モデル世帯」(夫が四十年間厚生年金加入、妻は専業主婦)でも四〇・五%に低下する。
法案では、現行月一万三千三百円の国民年金保険料を毎年引き上げ続け、二〇一七年度に月一万六千九百円まで引き上げるが、そこで固定するとされていた。ところが厚生労働省は実際には、これを想定する物価と賃金の上昇(それぞれ年間一・〇%と二・一%)に連動して引き上げることを想定しており、二〇一七年度には月二万八百六十円、二〇二七年度には月二万五千六百八十円になりその後もまさに際限なく引き上げると試算していたのである。これについて小泉は、「物価や賃金が上昇すれば徴収される保険料が上がっていくのは当然だ」と開き直った。
他方で、現在でも高齢者の最低限度の生活をまかなうことさえ困難なほど低水準の国民年金支給額は、少子化の進行や寿命の伸びに合わせて給付水準を自動的に引き下げる「マクロ経済スライド」導入によって、現在四十年間一月も欠かさず保険料を支払ってようやくもらえる満額月六万六千円が、月四万五千円に切り下げられてしまうのだ。
厚生年金の加入者数は、リストラにつぐリストラによる大失業と、保険料支払を免れようとする企業が正社員を次々に派遣や請け負いに転換することによって激減している。しかし法案では、激減する厚生年金加入者数が急増すると想定されている。そしてその根拠についての説明は一切ない。
子育ての苦しさ、将来への見通しのなさから少子化の進行には全く歯止めがかかっていない。ところがなぜか出生率が突然上昇し始めることが前提になっており、その根拠についての説明も全くない。国民年金の空洞化で、納付率は六〇%にまで低下しているが、それが三年後にはなぜか八〇%に急上昇することが前提になっている。まさに「欠陥商品」である。これだけでも、衆院での採決は無効であり、廃案にされるのが当然だ。
追いつめられて強行採決へ
そしてこれに加えて小泉自身も含む「年金未納・未加入問題」や小泉の厚生年金違法加入問題が爆発した。自民党は最後まで、年金未納議員について党としての公表を拒み続けた。安倍幹事長は公表要求を「魔女狩りだ」とののしり、小泉は「公表するかしないかは議員の『自由』だ。それが『自由民主党』だ」と減らず口をたたいた。
小泉は勤務実態もないのに不動産会社の「社員」として給料をもらい、厚生年金に加入していた。勤務実態がないのに厚生年金に加入することは、「厚生年金保険法違反」であり、まぎれもない違法行為である。小泉は国会で「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ」と得意の口先三寸で切り抜けようとしたが、大衆的不信感を増幅しただけだった。
さらに六月三日の参院厚生労働委員会では、法案提出の最高責任者であるはずの小泉自身が、法案がどのようなものであるのか全くわかっていなかったことが暴露されてしまった。法案の「マクロ経済スライド」が導入されれば、物価が上昇しても年金受給額は抑制されてしまう。この問題について民主党議員から「知っているのか」と質問された小泉は、「年金には物価スライドがある」と答え、物価が上がれば年金も引き上げられると思いこんでいたことを暴露した。
そして年金給付額を際限なく切り下げる今回の法案の核心の一つである「マクロ経済スライド」と、旧来の「物価スライド」の違いさえわからなかった小泉は、この点についてさらに質問され、「それは専門家に聞いてくれ」「専門家の意見を聞いてやっている」「どうしても私が答えなければならないのか」としどろもどろになってしまった。
すでに年金大改悪案への不信感は天井知らずに高まり、どの世論調査でも七割から八割が、「このまま法案を成立させることに反対」と答えていた。厚生労働委員会で、共産、社民など与野党で合意した三人の質問を残したままという異例の状態で採決を強行したのは、法案の内容について全く知らない小泉が答弁不能になって何度も立ち往生し、それがマスコミに「法案の中身も知らない無責任首相」と書き立てられ、廃案に追い込まれることを恐れたからにほかならない。
公的年金を金融資本の食い物に
リストラをすればするほど税金をまけてやる「産業再生法」の適用対象の拡大、労働者派遣の製造業への拡大をはじめ、「小泉構造改革」のもとで弱肉強食の新自由主義をむき出しにした大企業のリストラ支援政策が積み重ねられてきた。その結果、すでに雇用者の三割が非正規雇用となった。
一般的に正社員を減らし、企業が社会保険に責任を負わない非正規雇用が増えているだけではない。従業員をいったん解雇した後、会社が「元従業員」と「業務契約」するという形で厚生年金から脱退してしまう企業が増え続けている。〇二年度の厚生年金加入事業所は約百六十三万事業所で、前年度より二万三千も減少した。今回の年金改悪で企業負担も増加するため、厚生年金加入者も加入事業所もさらに大幅に減少するだろう。
現在でもきわめて低額な国民年金受給額はさらに削減され、しかも支給開始年齢が、六十七歳、七十歳へと先送りされていくとすれば、年金しか収入のない多数の高齢者はそもそも生きていくことができなくなる。
マスコミは昨年来、「もう年金には頼れない」などという特集を組み、年金制度への不信感を増幅させてきた。若い世代ほど「保険料を払っていても自分が受給年齢になるころにはさらに受給開始年齢が先送りされているかもしれない」「制度そのものが破綻しているかもしれない」という不信や不安が大きい。それが公的年金制度の基礎を掘り崩している。公的年金制度そのものが掘り崩され、破壊されつつあると言っても過言ではない状況が進行しているのである。
しかしそれは「自己責任」と「官から民へ」をうたい文句とする「小泉改革」のねらいそのものであるということもできる。「もう時代が変わったのだから、公的年金に頼らず、老後のことは『自己責任』でやるしかない」という人々が増加すれば、金融資本の私的年金市場が拡大するからである。
今年二月、経済同友会が発表した政策提言は、いわゆる「一階部分」にあたる基礎年金を全額消費税で賄い、「二階部分」を企業と個人の掛け金による私的年金にすることを求めている。そしてそのねらいを隠そうともせず、次のように述べている。「公的年金をスリム化し、私的年金の拡充を計ることは、市場経済の発展につながるものであり、また市場の競争原理を通じて質量両面にわたり、年金商品の改善も促進される」。
小泉は五月三十一日、参院決算委員会で共産党の「公的年金の水準をここまで引き下げて、どうやって生きて行けというのか」という質問に答えて、「公的年金だけで全部生活を見るということとは違う。そのほかに日ごろの備えも必要だ」と平然と述べた。
何度も指摘しているように、国民年金しか受け取っていない高齢者は約八百九十万人、その半数近い四六%の受給額は月三万円台で、年金しか収入のない世帯は、高齢者世帯の五九・六%に上っている。小泉は、「『日ごろの備え』をしていなかった年寄りは勝手に死ね。それが『自己責任』だ」と言いたいのだろう。
すでに労災保険の民営化まで提言されている。資本は、労働者人民の生存権として社会に保障することを義務づけた社会保障制度を掘り崩し、それを食い物にしようとしているのであり、「小泉改革」と年金大改悪はそれを体現するものなのである。
生存権保障の基礎年金を!
年金制度は、労災保険や失業保険と同様、資本主義社会のなかで商品としての労働力を売ることによってしか生活手段を得ることができない労働者階級が、病気やけがや失業や高齢化で労働力を売ることができなくなった場合にも生きていくために、資本と政府に負担を要求し、闘いとってきた成果である。
民主党に期待することはできない。民主党は昨年の総選挙に当たって発表したマニフェストで、経済同友会の要求そのままに基礎年金の財源として消費税増税を充てると明記している。今回の年金大改悪案でも、「未納問題」の大混乱のなかでうやむやになったものの、自民・公明との「三党合意」にまで至った。
憲法で権利として保障された「健康で文化的な最低限度の生活」が十分に営めるような基礎年金制度の確立が必要だ。十八歳・単身で生活扶助と住宅扶助合わせて十四万一千円になる東京都の生活保護費と少なくとも同水準が、実現されるべき基礎年金の最低基準である。無年金者を出さないため、イタリアやフランスなどと同様、それらは国が全額を負担すべきである。
既成政党のなかでは、全額国庫負担で無年金者をなくし、月額五万円の最低保障年金制度を作れという共産党の政策が、相対的に最も正しい。本紙でも再三指摘してきたように、財源は軍事費の抜本的削減や道路特定財源の一般財源化、大企業・金持ち大減税政策のの抜本的見直しと累進課税の全面的強化で十分にまかなうことができる。
小泉政権による年金大改悪法成立強行を糾弾する。公的年金制度の破壊を許すな! 最低生活保障の基礎年金制度を実現しよう。労働運動の再生が核心である。今回の年金大改悪に関しては、大衆行動としては事実上、全労連系のそれほど大きくない国会行動などしか展開されず、社会的影響力のある大規模な行動は全く成立しなかった。来る参院選で新自由主義に反対し有事法制と憲法改悪に反対する候補と勢力を押し上げながら、階級的労働運動とその政治闘争を復権させるために闘わなければならない。
(6月7日 高島義一)
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