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もう一つのヨーロッパのための反資本主義宣言     かけはし2004.06.14号
社会的・民主主義的で、フェミニスト的・エコロジスト的な、平和・連帯のヨーロッパのために

EU議会選に向けて  反資本主義左翼共同アピール

 六月十日イギリス、六月十三日フランスなど欧州各国で欧州議会選挙が行われる。この選挙に、反グローバリゼーション運動と反戦運動の先頭に立ってきたトロツキー派を先頭とする左翼組織は、社会民主主義やスターリニズムから独立した反資本主義左翼の連合を形成して立候補している。この間積み重ねられてきた欧州反資本主義左翼会議を基礎にした「もう一つのヨーロッパ」をめざす宣言を掲載する。


 二〇〇三年二月十五日は歴史的な日となった。全世界で幾千万人もの人びとが、戦争を止めるためにデモ行進した。さらに、こうしたかつてない動員は、権力の座にある者たちに対して、普遍的平和、正義、国際的連帯、社会的平等を強制する強力な政治的意思を示している。この日は新しい欧州が生まれた日である。新しい欧州――すなわち欧州連合(EU)、ならびにそれを手段とする支配階級に立ち向かう一般民衆のヨーロッパである。
 労働者の世界は、再び動員を開始した。ほとんどすべての諸国で、労働者階級がデモとストライキ――部門別、あるいは複数の部門にまたがったストライキ、そしてゼネスト――に立ち上がった。この道を切り開いたイタリア、スペイン、フランスの後に、ドイツやオーストリアなどの諸国の労働者がすばらしい戦闘性を示し、欧州で最も強力で一枚岩的な労組官僚を震撼させた。アジェンダ2010は頑強な抵抗に出くわし、信頼を失ったシュレーダー(独首相)は、自分の党を次の選挙での敗北から救い出すために、社民党が大統領の座につくことを諦めなければならなかった。
 反戦運動の衝撃波は、いまだ衰えてはいない。ブッシュが戦争を開始してから一年後の街頭デモは、とりわけスペイン、イタリア、イギリスでふたたびきわめて大規模なものとなった。それは「公式の政策」に影響を与えつづけている。
 すべての予測に反して、ブッシュの友人・アスナールは、民衆の目を見張る介入のために国会選挙で放り出されてしまった。人びとは、戦争への大衆的な反対をアスナールが言語道断にも拒否したこと、そして彼が卑劣にも公然たるウソをついたことに対して、復讐したのである。結論は明白である。「無制限の戦争」政策と新自由主義政策は人びとの支持を受けず、拒否された。
 民衆の投票によって放り出された右派政権を引き継いだのは、新自由主義的で帝国主義的な政策と決別しない中道左派政権である。反戦運動と欧州社会フォーラムの社会的力は、選挙において、そして広範で複数主義的な反資本主義政治運動の形成という姿を取って、政治領域にまで拡大すべきである。
 二〇〇四年六月の欧州選挙は、欧州のグローバルな公正のための運動が休みなく闘ってきた要求と提案のために、闘う機会となるだろう。すなわち反動的・反民主主義的・反社会的なEU憲法に反対し、帝国主義戦争と欧州規模のミリタリズムに反対し、われわれ自身の国から平和と全面的非武装を求め、新自由主義政策に反対し、社会的・反資本主義的綱領のために闘う機会である。

1 欧州で、そして全世界で、われわれすべてにまともな暮らしを

 社会的問題は、幾百万の人びとの生活にとって最も重要である。それこそ優先される。あらゆる男性と女性は、安定した正規の職、まともな賃金、失業給付、疾病給付、障害給付ないしは年金、住むべき家、教育と職業訓練、良質の保健サービスへの権利を持っている。そしてわれわれは、これらの権利を享受し、改善するために、ここ二十年の間にわれわれから奪われたものをすべて取り戻す必要がある。
 これは、社会的・政治的・法的・制度的などあらゆるレベルで女性の立場をラディカルに改善することを意味する。さらに、環境的諸条件はわれわれの福祉の一部である。経済政策を、持続的発展、都市と農村の計画、移動可能性と交通システム、天然資源の合理的な利用、農業と食の安全にとって必要な基準から切り離すことは不可能である。
 経営者と政府は、利潤を極大化する闘いの中で、こうしたことはまったく「不可能」であり「機能しない」かのように装っている。しかし一九七〇年以来、欧州連合(拡大以前の)が創出した富は、人口が増大しなかったにもかかわらず、二倍となった。生産性の巨大な飛躍(技術革新、労働時間と労働強度の拡大、製造システムの再編成)から利益を得たのは支配階級だった。この巨大な社会的不平等に取り組むためには、労働者階級への富の分配、公共セクターの開放と決別し、再組織化することで十分であろう。われわれは、われわれの生活を資本家の利潤に従属させる、生態系の私有化の拡大を止めなければならない。
 こうした諸条件が満たされるならば、われわれは次のように言うことができる。そう、われわれの社会と経済は、われわれすべてに富を提供しうる、と。

2 新自由主義システムと絶縁しよう。利潤よりも民衆が大事だ!

 欧州連合は、厳しい予算上の制限を課したマーストリヒト条約を通じて制度的枠組みを構築した。欧州中央銀行は、この正統派の新自由主義的マネタリズムの硬直した守護者となった。こうした政策は、社会支出の厳しい削減をもたらし、あらゆるオルタナティブな経済政策を不可能にする。それは、住民大衆を貧困に押しやり、公共部門と社会部門の予算を圧縮することで、民営化を不可避なものにしようとする。このようなやり方で、資本は有利な新投資分野を見いだす。その目的は経済成長ではなく、利潤率の再構築である。
 こうした経済政策と、その制度的枠組みを変更しなければならない。われわれは欧州新自由主義の中核と決別し、マーストリヒトの収束基準と安定化条約を抑え込む必要がある。「グローバルな公正のための運動」と同様に、われわれは新自由主義的資本主義とその諸制度に攻撃をかけ、金融投機と闘い、真の社会政策を支援するステップとしてトービン税を支持する。
 われわれは、完全雇用、公共部門の拡張、社会的投資、まともな最低賃金の保障を通じて、それぞれの国でも欧州規模でも、社会的平等のために闘う。

3 欧州超国家に反対し、平和なヨーロッパを!

 二〇〇二年三月のリスボン首脳会談は、欧州連合の主要目的として、世界で最も強力で生産性の高い経済となることを目標にすえた! それはEUが、他の二つの主要世界パワーである米国、日本に立ち向かう、経済的・金融的・技術的・文化的・メディア的・軍事的能力を強化することによってのみ生じうる。それは資本主義世界システムの周辺諸国の搾取と、欧州連合内で働く勤労諸階級の搾取を意味する。
 欧州の建設と自らを最も一体化させた支配階級は、ブッシュ大統領の不法かつ野放図な政策のおかげで、米支配階級に反対することにより、欧州の住民からの何らかの正統性を初めて獲得した。
 しかしわれわれは、欧州連合がなしうることに関して幻想を持たない。われわれの立場は以下の通りである。
――戦争反対! 欧州連合は国際紛争に介入する方法として戦争を利用することを非難しなければならない。
――永続的戦争と予防的軍事介入という米国の政策を支持するな。われわれは、「反テロ戦争」に反対する。その最初の犠牲となるものは市民権と自由である! NATO反対!
――新しい欧州ミリタリズム反対! EUの旗の下にあるか、加盟諸国の旗の下にあるかを問わず、欧州帝国主義軍隊の撤退を! 「人道的」軍事作戦反対! 欧州軍とその特殊旅団は解散せよ!
――すべての大量破壊兵器(核・化学・生物兵器)を廃棄しなければならない!
――欧州軍事産業の創設と発展に反対! 武器輸出をやめよ! 現存する軍事産業を閉鎖し、市民的生産に転換を!

4 われわれの民主主義的自由の防衛を!

 「無制限戦争」の戦略は、民主主義的自由を攻撃し、人民大衆が活動できるスベースを狭める強力なテコとなってきた。支配階級は、不確実性と恐怖の永続的気分を作りだすことにより、われわれに選択を強制しようとしている。「皆さんの安全を保障するために、私たちは皆さんの自由を削減しなければなりません」。テロリズムに対する闘いの名の下に、ブッシュは国家テロを合法化してきた。そしてシャロンはまさに彼と歩調を合わせている。
 すでに二〇〇一年九月に、EUは「テロリズムに対する闘い」を利用していたが、それは当時ヨーロッパに存在しなかったテロリストグループを攻撃するためではなかった。実際には、労働組合や、社会運動、フェミニスト運動、反レイシスト運動、政治運動とその公的・民主的諸活動への法的保護を奪い去る機会として利用された。いまやそれは「一国ないし複数の国々、その国民や諸制度に対して、脅迫し、一国の政治的・社会的・経済的構造に重大な変更を加えたり、破壊する目的をもって、個人やグループが行う国際的攻撃」と呼ばれるにいたっている。
 それ以来EUは、欧州レベルで抑圧的手段の一式を強化してきた。欧州逮捕令状、ユーロポル(欧州警察機構)、より迅速でより完全な情報交換、CIAとのより密接な協力、移民の抑圧、法の支配がもはや存在しない空間の創設などである――EU加盟諸国の国家機構間の競争関係がこの活動のペースを減退させたとしてもである。
 資本主義は困難の中にある。資本主義は下から信用を失い、再び公然たる大衆的な挑戦を受けている。同時に、それは諸運動と大衆的動員を制限、ないしは抑圧さえしている。
 脅威にさらされている民主主義的自由を防衛し、拡張することは、またも切迫した課題となっている。

5 移民、難民と亡命の権利の防衛を! 欧州要塞反対、極右反対!

 世界中の両性の幾百万人もの労働者は、資本主義的グローバリゼーション、あるいは国家による弾圧の被害者となっている。彼らは、着実に悪化する諸条件の中で生き延びている。彼らの一部は、強化された国境を越え、帝国主義要塞の内部に「不法」に入ろうとしている。欧州連合は一九八五年のシェンゲン協定で、こうした要塞を建設してきた。
 しかしその後、欧州の経営者は、選択的な合法移住政策を要求し、獲得してきた。それはもっぱら経営者たちの労働力へのニーズにしたがって適用された。労働者、納税者としての社会的給付を除外するために、移住者に対する市民権は抗議ぬきで拒否された。こうした諸政策の結果、彼ら移住労働者の人間的条件は耐えがたいものである。
 同時に本国労働者階級の最も貧困な部分と、無権利の、防衛手段を持たない新しい移住労働者との間の、無慈悲な競争が存在する。極右とナチ諸政党(ときには左右の伝統的政党も)は、レイシズム、ゼノフォビア(外国人嫌悪)、憎悪をうながすために、この隠れた対立を利用している。
――われわれは、人びとの自由な移動を支持する! シェンゲン協定反対! すべての移住労働者に平等な市民権と労働権を! すべての人びとに良質の社会的インフラストラクチャーと公共サービスを!
――われわれは、その起源や口実がどのようなものであろうとも、あらゆる形態のゼノフォビアやレイシズムに反対する! 労働者階級の運動は、男性と女性の移住者が賃金水準や労働の諸権利でいかなる差別も受けないよう、闘わなければならない。それは政治的・社会的優先性であるだけではなく、労働組合と社会運動にとっての道徳的優先性であるべきである。
――われわれは、亡命の権利を求めなければならないすべての人びとに連帯を表明する。彼らは、自由、市民権、良心の自由、民主主義、社会的ないしは革命的信念、あるいはたんにより良い生活のために闘ったがゆえに、弾圧から逃れなければならなかった人びとである。

6 多国籍資本の反民主主義的憲法反対

 ブルジョアジーは、EU国家機構の不調和に終止符を打つために闘っている。これは、金融・産業寡頭制と欧州最大の帝国主義諸国家の表明された意思である。
 第一に、彼らは欧州スーパーパワーという展望の下に、強力な体制を緊急に必要としている。この機構は、セミ権威主義的民主主義を発展させている。欧州執行機関(閣僚評議会、EU委員会、EC)は欧州レベルで選出されたものではないが、普通選挙で選ばれた議会を支配し、議会をその監督下に置いている。このプロセスは、あらゆる民主主義的規則や制度を掘り崩している。
 第二に、EU憲法は今日の資本主義の諸原則を、揺るぎなきものとして確定している。市場原理の圧倒的優位性、生産・交換手段の私的所有の保護、さらに現在の新自由主義的、マネタリスト的諸政策までもである。他方、憲法は、労働立法、義務的規則や基準、欧州レベルでの労働組合と資本家の職業(国家)間の集団交渉を排除している。しかし財政、金融、商業、経済の政策は、欧州レベルで強力に集権化された機構によって支持されている。それはEU加盟諸国の労働者階級の間で進行中の競争をもたらしている。それは、すべてのEU諸国で生活・労働条件の絶え間ない下降を招いている。
 第三に、憲法は欧州帝国主義の欠くことのできない一部である欧州ミリタリズムに道を開き、それを組織化している。軍事支出の義務的・系統的上昇、欧州軍事産業の組織化、NATOとの継続的連携の一方で自律的欧州軍への門戸開放、「テロリズムへの無制限戦争」への統合、がそれである。
 第四に、欧州執行機関(欧州委員会、欧州評議会、政府間会議、欧州中央銀行)の強化は、民主主義の面での欠陥を悪化させている。それは国民国家機構に対するEUのいっそうの支配、小国家に対する大国家のいっそうの支配、国民国家の「少数」民族への否認をもたらしている。
 憲法の反民主主義的性格は、それを作りだすために使われた方法と完全に対応している。閉ざされたドアの背後で、「著名な政治家」が率いる信頼すべき人物の厳格な選択と、大国による厳重な統制が行われた。一つのことが明らかである。この憲法は、欧州の民衆の意思とはなんの関係もない! こうしたあらゆる理由のために、われわれはEU憲法に反対する。それは正統性を持たず、非民主主義的であり、きわめて反社会的である! それは修正されえない。投げ捨てることができるだけだ! この目標を実現するために、われわれは一般住民投票の組織化を支持する。
 われわれは、社会的で民主主義的であり、エコロジスト的かつフェミニスト的であり、平和に生き、南と連帯した、別の社会と別のヨーロッパのために闘う。それは欧州の民衆と諸民族が、彼らがいかに、そしていかなる社会的・制度的原則の下で、ともに生きたいと望むのかを決定することにかかっている。われわれは、すべての権力は主権を持った民衆の手に握られるべきだと確信している。
 われわれは、国家なき民族が彼らの将来を決定する権利を承認し、われわれ自身の政治的分析がいかなるものであろうとも、この方向で闘っている左翼勢力と連帯する。選挙キャンペーンが、閉ざされたドアの背後での「制憲」政府間会議の準備と一致しているので、われわれはこの機会を利用して、このニセ憲法を非難し、われわれのオルタナティブを発展させるだろう。

7 社会自由主義との決別を! もう一つのヨーロッパは可能だ!

 そう、しかしそれにはすべての進歩的勢力の、通常ではない動員を必要とするだろう。各政府はいっそう脆弱になっているが、EUは、繰り返された危機にもかかわらず、今日の世界の中で恐るべきほどの帝国主義勢力となった。それは労働者階級が百五十年の闘いでかちとった社会的・民主主義的成果を破壊する機構である。
 このEUは、最初はブルジョアジーとその政党の子どもであった。しかしそれは、ブレア、シュレーダー、ジョスパン、フェリペ・ゴンザレス――すなわち欧州社会民主主義の積極的協力なしでは決して勝利の凱歌を上げることはできなかっただろう。
 彼らは何年にもわたって政権の座にあった。彼らは重要な時期に、各国の政府とEU指導機関(欧州委員会、欧州評議会、そして欧州中央銀行さえも)を支配していた。しかし彼らは新自由主義と決裂するのではなく、自ら社会自由主義になったのだ! 彼らがこうした政策と決別するなんらかの意思を持っていた、と示唆するものはどこにもない。
 われわれは、漸進的な方法では新自由主義、帝国主義のシステムから離れられないだろう。われわれは、ラディカルな政治的決裂とオルタナティブ、反資本主義の戦略と綱領を必要とする。
 この闘争は、別のヨーロッパ、下からのヨーロッパの手に握られている。この運動は、反戦デモ、社会的・エコロジー的闘争、市民のイニシアティブ、女性の動員を通じて成長し、成熟している。それは活動家たちと諸組織――労働組合、農民組織、エコロジカル集団、「持たざる者」(失業者、ホームレス、滞在許可書を持たない移住者、亡命権を求める人びと)の運動、反レイシストのネットワーク、学界と知識人のイニシアティブ、第三世界キャンペーン、NGO――を通じて前進している。
 欧州社会フォーラムは、通常ではない枠組み、欧州規模での民主的で統一した、新しい解放運動を創出した。この社会運動は、すでになにごとかをあてにできる勢力である。しかしそれは、いまだ政治的分野を征服してはいない。
 その圧力の下で、二十年にわたってEUとその政策に従ってきた伝統的労働組合運動は、再び行動に立ち上がったが、いまのところ、流れを逆転させる一貫した戦略や、強力な社会的オルタナティブのための闘争を発展させてはいない。
 そう、もう一つのヨーロッパは可能である。しかしそれは、ラディカルな勢力――反資本主義でエコロジスト、反帝国主義で反戦、フェミニストで市民権を支持し、反レイシストであり国際主義的な――が、街頭と投票箱で、闘争と選挙の場で、動員をする用意があるかどうかにかかっている。資本主義へのオルタナティブが再びその頭を持ち上げている。それは社会主義的で民主主義的な社会、下からの自主管理社会、労働の搾取や女性の抑圧のない社会、持続可能な発展にもとづき、地球を脅かす「成長モデル」に反対する社会である。

 ブリュッセル 二〇〇四年四月二十九日

 左翼ブロック(BE ポルトガル)、赤と緑の連合(RGA デンマーク)、スコットランド社会党(SSP スコットランド)、レスペクト(RESPECT)統一リスト(イングランド、ウエールズ)、社会主義労働者党(SWP イギリス)、革命的共産主義者同盟(LCR フランス)、左翼(LG/DL ルクセンブルク)、統一オルタナティブ左翼(EUiA カタルーニャ/スペイン)、エスパシオ・アルタナティーヴォ(EA スペイン)、ラディカル左翼連合(ギリシャ)



アジア連帯講座 公開講座案内
ポルノ被害とは何か
女性への暴力を許さない社会のために

 日本ではこの十年間のあいだに、セクシャルハラスメント、ドメスティックバイオレンス、児童ポルノ買春、ストーカー行為などが深刻な人権侵害であることが認定され、それらの人権侵害に対する法的規制が女性たちを中心とした運動のなかでかちとられてきました。
 しかしその一方で、それらの行為から人権を保障する法的規制が極めて不十分であることも指摘されています。またこの十年は性的リベラリズムが日本にまん延した時期でもありました。性犯罪や人権を侵害するポルノグラフィのまん延がそれを物語っています。
 女性たちを中心とした運動によってかちとられてきたさまざまな諸権利が、新自由主義的グローバリゼーションの中でバックラッシュ(反動)に直面しています。「被害者はいない」とまことしやかに主張されるポルノグラフィーが蔓延するこの社会において、私たちは本当に性的な自由を享受しているのでしょうか。本当に自由な性表現は可能なのでしょうか。
 今回のアジア連帯講座では、ポルノグラフィの具体的な被害の調査に当たっているポルノ・買春問題研究会の森田成也さんをお招きして、日本におけるポルノグラフィの被害を検証し、「反ポルノグラフィ公民権条例」(注)などを例に、被害を食い止めるためにどのような行動が必要なのかについて考えます。

(注)「反ポルノグラフィ公民権条例」  アメリカのフェミニスト、キャサリン・マッキノンとアンドレア・ドヴォーキンによって一九八三年にミネソタ州ミネアポリスで起草された条例。ポルノの法規制を刑法規制(わいせつ物頒布罪)から、民事訴訟による被害の救済に刷新した画期的な法律で、具体的には、五つの加害行為││「ポルノグラフィへの強制行為」「ポルノグラフィの押しつけ」「特定のポルノグラフィに起因する暴行脅迫」「ポルノグラフィによる名誉毀損」「ポルノグラフィの取引行為」││による被害者が、損害賠償と当該ポルノグラフィの流通を差し止める民事訴訟を提起できるようにするもの。
6・26 アジア連帯講座
ポルノ被害とは何か

講師  森田成也さん(ポルノ・買春問題研究会)
日時  六月二十六日(土) 18:00〜
場所  文京区民センター3C (地下鉄春日駅、後楽園駅など)
資料代  五〇〇円

参考図書  『キャサリン・マッキノンと語る ポルノグラフィと売買春』
(ポルノ・買春問題研究会 翻訳/編集、不磨書房、一五〇〇円)


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