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韓国はいま                       かけはし2004.05.3号

雇用許可制導入反対! 140日を超えて続く移住労働者の闘い

移住労働者は労働解放へともに闘う同志だ

 
 昨年十一月、雇用許可制の導入に抗して闘いを始めた移住労働者運動は、140余日にわる強固な闘争の隊伍を維持している。「準備された総闘争(?)」、「弾劾無効、民主守護」など指導部か、まごまごうろうろしている労働運動とは対照的に、政府や資本の新自由主義攻勢に立ち向かう闘いを展開している。
 一方、人道主義の観点から制度圏に対する圧力やロビー、交渉を中心軸とみなしている相談所運動勢力が闘いから離脱することによって、一方で移住労働者の籠城闘争は孤立しているものの、この闘争はまた一方では闘いの橋頭堡を死守すると同時に、今後展開される新たなレベルの移住労働運動のための組織的土台として機能している。
 移住労働者たちの運動はいまや労働運動の1領域としての位置を占めている。移住労働運動は一方で人種主義的偏見や差別に立ち向かう運動であると同時に、労働者としての基本的権利のための運動だ。したがっていまや移住労働者は気の毒な外国人ではなく、闘う韓国の労働者とともに、資本の抑圧と搾取とに対決し労働解放の旗のもとにともに前進すべき同志だ。
 80年代末、移住労働者の導入にかかわる制度を準備することの論議が始まった。これについて89年には韓国労総、90年に全労協、92年にソウル労働運動研究所など4団体が移住労働者の導入についての反対の意思を表明した。移住労働者の導入による賃金の下落競争を阻み、内国人の雇用を保護するとの理由だった。そして、この基調は97カ国36万人(2003年3月現在)の移住労働者たちが韓国で働いている時点でも、民主労総を含む労働組合の立場として維持されてきた。
 いわゆる「補完性の原則」というものだが、労働者たちが忌避する業種に制限して移住労働者の流入を許容するというものだ。こうして移住労働者たちが就業できる事業場の規模や業種を制限し、事業場別の移住労働者の比率などを制限する必要性についても提起している。
 この主張は極めて現実的な悩みを背景としている。政府の政策に対する要求においては抽象的なレベルだったとしても、現場のレベルに下ろしていけば、はるかにし烈な現実的ジレンマが現れる。
 建設現場では、移住労働者たちが賃金ダンピングをしている状況で韓国人労働者たちが賃金競争をする仕儀に至った。仁川のある陶磁器工場ではストの際、移住労働者たちを代替勤労させたためにストが破壊される状況が生じたりもした。よんどころなく、小さな縫製工場で女性労働者たちが移住労働者たちに押し出されて解雇されたりもした。
 このような状況で移住労働者の導入に対して反対の意見を明らかにし、関連産業の移住労働者の導入規模を決定する政府の政策決定過程に積極的に介入しないならば、むしろそれは労働組合としての本分をキチンとはたせないものと見られるようになっていく。
 これまで韓国社会において移住労働者たちは不法滞在者、産業技術研修生というクビキを背負って長時間・低賃金労働力として搾取されてきたにもかかわらず、ちゃんとした闘争を1回も組織できなかった点を、その原因として指摘できる。だが、より根本的には移住労働者たちの闘争を孵化させられる韓国労働運動の実力と決意が裏付けられなかったことが大きい。
 2003年、非正規職の大会場から連行された平等労組闘争局長ビドゥ同志やチャマル同志、それに明洞聖堂籠城闘争団代表だったシャマル同志が韓国での闘いの末に強制追放されたように、移住労働者たちが闘いを決意することは、とりも直さず強制追放を決意することと同一の状況であり、韓国労働運動の支持・援護が移住労働者運動死守において決定的なものであるにもかかわらず、民主労総に代表される民主労組運動の陣営は今日まで、その役割を自ら任じることができなかった。
 その根底には、内国人労働者の雇用および労働条件保護のためには移住労働者の流入に反対しなければならず、国内で働いている移住労働者に対する労働力の搾取に対しては闘いを組織しなければならないという韓国労働運動のジレンマならざるジレンマが位置している。つまり、移住労働者の流入に関しては「補完性の原則」という基調と観点を、国内の移住労働者の闘争については「プロレタリア国際主義」の観点から連帯の手を差し伸べなければならない。
 そうして韓国において移住労働者運動は労働者運動として組織されるというよりは、人権の死角地帯から保護されるべき対象として規定することが、はるかに早く、かつたやすい道だった。これがこれまで韓国の移住労働者運動を宗教界をはじめとするNGO的性格の移住労働者支援センターが代理してきたひとつの原因だと言えるだろう。
 だが周囲を見渡してみると、いまや移住労働者はわれわれの身の回りにいるということが分かる。移住労働者たちは、「いわゆる3K(汚い、危険、きつい)」業種に分布している。大部分が劣悪な労働条件、低賃金、単純反復作業などだ。鍍金などの化学工場、木材、家具、プレス射出、組み立てなどの金属業種、繊維製造業、印刷業などに従事し、中国僑胞の場合は意思疎通が比較的に円滑なので建設現場や食堂、旅館などのサービス業種で働く。
 これは公式的に発表された業種であり、実際には移住労働者が仕事をしている大規模農畜産業から道路通信網の設置、マンション管理まで広範囲にわたっている。韓国社会全般において移住労働者は自らの場を握っているというわけだ。これは逆説的に韓国政府の政策においても表れている。雇用許可制の導入決定は、これまで黙認してきていた移住労働者に対する需要と、これに応じた未登録移住労働者の流入が黙認のレベルでは解決できず、いまや国家が公式的な労働力として移住労働者を認定し、それを管理・監督しなければならないということを認めたということを意味している。
 こうして韓国政府は窮余の策として2004年8月に施行予定の雇用許可制を導入した。雇用許可制は、いかなる意味を持っているのだろうか?
 第1に、これまで韓国政府がその存在自体を否定してきた隠れた労働としての移住労働を超えて、公式に低賃金移住労働者の導入の必要性を制度的に認定したということだ。
 第2に、移住労働者の必要性は認めたが、依然として移住労働者の労働基本権は奪ったまま労働力だけを搾取していこうとする旧来の悪質な移住労働者政策の基調は全く変えなかったということを見せつけた。雇用許可制の下でも事業場移動の自由、特に賃金を目的とする事業場移動の自由を厳格に禁止し、毎年再契約をさせることによって、いま再び奴隷の足鎖をはめた。
 第3に、ノ・ムヒョン政府はさらに一歩踏み込んで新自由主義の労働のフレキシビリティーを移住労働者政策でもそのまま貫徹させようとする姿勢を示した。毎年契約を更新することだけではなく、国家的レベルで時期別に諒解の覚え書き(Mou)を締結し、国家とクォータ(導入割り当て制)を調節するようにすることによって、国内の移住労働者の需給を調節できるシステムを用意した。さらに国内の未登録移住労働者の比率をMou国家締結の重要な決定要因とみなすとともに、国家別の未登録移住労働者の自動調節システムを作ったというわけだ。
 さらに悪質なのは韓国への入国許可のために、あらかじめ希望賃金などを作成してインターネット上にあげておき、何人かのうちの一人を社長が直接選定するという方式を取るようにしたという点だ。そうなれば賃金下落競争は、すでに本国で始まる。実際、労働部(省)は「最低賃金の水準で移住労働者の賃金水準が決定されるだろう」として中小零細企業の雇用許可制への参加を督励している。

 第5に、雇用許可制粉砕闘争が移住労働者のものだけではないことを明確にした。社長が移住労働者たちを雇用できるためには「内国人優先雇用」の努力がなければならない。だがより低い賃金で移住労働者たちを雇用できるのに、どこの間抜けな社長が高い賃金を提示して、わざわざ韓国の労働者たちを雇用するだろうか? 移住労働者と韓国労働者の賃金下落競争の環は雇用許可制において、すでに制度的に作られたのだ。
 移住労働者たちは、そうでなくても働き口のない状況にあって韓国労働者の仕事場を奪っているとの非難を浴びている。資本やマスコミから公然と仕事を奪っているとの非難を受けているということで言えば、前に記したように現場では暗黙のうちに移住労働者の存在自体が特に、不安定労働者たちにとって脅威となっている。
 だが明らかなことは低単価落札、賃金下落競争を助長しつつ、韓国の労働者たちや移住労働者たちを競争関係に追い込み分離させているのは移住労働者たちではなく資本の側だという事実だ。
 だが雇用許可制が持っている多くの問題点にもかかわらず、ひとつ明らかになった事実は、移住労働者が公式的に労働者としての――中味は空っぽだが――地位を受けることとなり、この契機を通じて移住労働者の労働権を確保するための闘争は火がつくことになる点だ。そしてこの主体の闘争を通じて移住労働者たちは韓国労働運動の一主体となるための普段の闘争の過程を始めた。
 したがって「雇用許可制の批判的賛成なのか、粉砕闘争なのか」の争点よりも、はるかに根源的な問題である移住労働者に対する階級的労働運動陣営の立場は何なのかについての原則から、まず確認しないければならない。われわれの原則の確認なしに一時的な政策に対して労働者たちの得失をはかり、その基調をつきつけるならば、あげくには知らず知らずに政府と資本が掘った分裂の落とし穴にはまりかねないからだ。
 狭い意味での国内労働者の雇用および労働条件に対する保護にのみ執着して移住労働者運動にアプローチするならば、最後には政府と手を組む危険な道を行くことになりかねない。最初のボタンは、きっちりとはめなければならない。
 移住労働者政策にどのような観点を維持するのかということについて、何人をどのように韓国に連れてくるのかは、われわれが論議すべき領域ではない。むしろわれわれの領域は韓国内の移住労働者の労働基本権をどのように闘いとるのか、さらには「まさに猛烈にがんばっている韓国労働運動のもうひとつの戦線をいかに援護し成長させるべきか」だ。
 現場で移住労働者たちが低賃金によって内国人労働者たちを攻撃すると感じられるならば、連帯闘争の手をさしのべてともによりよい労働条件、賃金水準へと歩むことのできる道を切り開かなければならない。移住労働者たちが未加入組合員ならば積極的に組織化しなければならない。
 「内国人優先」や「補完性の原則」は、韓国人労働者と移住労働者間の差異を差別へと固定化させ、これを通じて労働者階級を序列化させ、またもや賃金下落競争の奈落へとわれわれを陥らせるからだ。政府のクォーターを減らし、移住労働者の流入に反対する政策決定に参加することが対案ではなく、むしろ移住労働者たちを真の同志として、ともに闘っていけるようにすることが、われわれの雇用と仕事場を守る道だ。(「労働者の力」第52号、4月9日〜22日付、ピョン・ジョンピル/会員)


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