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                            かけはし2004.05.3号

何と全会一致!裁判員法案の衆院通過を糾弾する

「市民参加」の名による密室・即決裁判を許すな!

 

 四月二十三日の衆院法務委員会は、死刑または無期に相当するなどの重大犯罪の刑事裁判に国民の参加を義務づける裁判員法案を自民・公明・民主三党の全会一致で可決、同日午後の衆院本会議で同法案は共産党と社民党も賛成して全会一致で可決した。これで裁判員法案の今国会での成立は確実になった。
 裁判員法案は、内田雅敏さんのインタビュー(本紙3月22日号)にもあるように、「裁判への市民参加」の建前で密室・即決裁判を押し進めようという「とんでもない法案」である。この「とんでもない法案」が、共産党と社民党も含む全会一致で可決され、五年後の二〇〇九年後には施行されることになる。

市民を動員した密室・即決裁判


 法案では、選挙人名簿に登録されている二十歳以上の市民から無作為抽出で選ばれた裁判員六人が、三人の裁判官とともに有罪か無罪かだけでなく、「死刑」や「無期懲役」などの刑の重さまで「多数決」で決めることになっている。
 アメリカの陪審員制度を描いた映画『十二人の怒れる男たち』では、「もう少し考えて見よう」という理由しかないのに「無罪」を主張するたった一人の陪審員の行動が、次第に全体を動かし、真実を発見し、一人の無実の青年の命を救った。
 陪審員制度では裁判官は訴訟指揮を行うだけで、陪審員の討論にも評決にも加わらない。ところが裁判員法案では、三人のプロの裁判官が六人の素人の裁判員と一緒に討議し、しかも陪審員制度のように陪審員だけの「全員一致」ではなく、裁判官と裁判員の「多数決」で判決を下すのである。
 その上、判決は一人以上の裁判官が賛成したものでなければならない。六人の裁判員が全員無罪に賛成しても、裁判官三人が反対すればその「多数決」は拒否される。これでは裁判官の意見が通るのは当然であり、市民は単なるお飾り以上のものになり得ようはずがない。
 しかも裁判員は匿名で、各裁判員や裁判官の意見、評議の経過、評決の数などの「職務上知り得た秘密」について、厳重な「守秘義務」を課せられる。裁判員となった市民が、たとえばその被告が「死刑」ではなく「無実」だと考え、その「多数決」判決にどうしても納得できなかったとしても、その意見を公表することもできない。
 自分の意見も含めた「評議の秘密」を外に漏らしたりすれば、懲役か五十万円以下の罰金が待っている。可決された民主党の修正案は、原案の「懲役一年以下」から「懲役六カ月以下」に引き下げただけの代物で、裁判員となった市民を沈黙させるには十分な威嚇効果を発揮するだろう。この「守秘義務」は生涯続く。「あの判決は間違っている。無実の人を殺してしまったかもしれない」という苦悩を、文字通り墓場まで持っていかなければならない。
 裁判員を匿名にし、厳格な守秘義務を負わせただけでも「密室裁判」という評価に十分に値する。これに加え、仕事を持った市民が長期裁判に関わることはできないということで、非公開の「公判前整理手続き」が行われる。
 密室で裁判の骨格が決められた後、裁判員が参加して連日、公判が開かれる。その間も被告の身柄は拘束されたままで、弁護側は十分な打ち合わせもできない。したがって、被告側の防御権が制約された迅速判決となる。
 立川反戦ビラ弾圧事件でも裁判所は検察の言うがままに、郵便受けにビラを入れただけの三人に対する逮捕令状の発行を認めた。ほとんど検察の主張をうのみにした判決を出し続ける今日の司法の状況では、検察の思うままの即決有罪判決の連発になる可能性は極めて高い。

共産党と社民党の重大な裏切り


 衆院法務委では、「政令または最高裁規則で裁判員制度の細目を定め、施行に当たっては守秘義務の範囲の明確化や裁判員にわかりやすい立証・説明などの工夫、制度の趣旨が十分に生かされる運用となるよう、国会の論議を十分に踏まえること」という付帯決議が可決された。この程度の内容ではほとんど「お経」のようなものである。
 共産党と社民党は、議員数が減ったために法務委員会に委員を送り出せず、委員会審議で質問に立つこともできなかった。もちろん、自民・公明・民主だけで行われた超短時間の審議にほとんど意味がないことは、民主党の「修正案」が示している。にもかかわらず共産党も社民党も、衆院本会議であっさりとこの「とんでもない法案」に賛成し、あろうことか「全会一致」で通過させてしまったのである。
 共産党は多数の弁護士グループを擁して日弁連のなかにも大きな影響力を持ち、今日の「病める司法」を告発し、政府・財界の国家主義と新自由主義に貫かれた「司法改悪」に反対し、「民主的司法改革」を求めてきたはずである。社民党の福島瑞穂党首は、有力な「人権弁護士」として活動し続けてきた。この「全会一致」は、共産党と社民党の新たな「人権への裏切り」として記録されるだろう。
 共産党は、裁判員制度の導入とセットですべての刑事事件を迅速処理の対象にしようとする「刑事訴訟法一部改正案」については、現行の代用監獄制度の温存や検察手持ちの証拠の全面開示がないこと、「証拠の目的外使用禁止」条項の修正が十分でないことなどを理由に反対した。社民党も反対した。
 この「刑事訴訟法一部改正案」は、すべての刑事事件に「裁判員法案」と同様の非公開の「公判前整理手続き」を導入し、被告の身柄を長期に拘束したまま連日の審理を行い、弁護側との十分な打ち合わせも立証も許さずに迅速裁判が行えるようにしようというものである。
 裁判官の訴訟指揮権も強化され、従わない弁護人には懲戒請求もできることになっている。開示された証拠を法廷の外で被告の支援者などが裁判批判に使ったりすれば懲役刑が課せられる。まさに裁判員法案と一体の「とんでもない法案」である。これに反対できるなら、なぜ裁判員法案に反対できないのか。
 共産党と社民党は「司法への市民参加に後ろ向きだ」と与党やマスコミにキャンペーンされるのが怖いのだろうか。なぜ「『司法への市民参加』に名を借りた密室・即決裁判の道だ」と反撃することができないのだろうか。
 いまからでも遅くはない。参院法務委員会には共産党も一人、委員を送り出している。衆院で賛成した態度を撤回して自己批判し、裁判員法案に反対する態度を明確にして徹底した審議を要求し、それが「民主的司法改革」に全面的に逆行する超反動法案であることを徹底的に暴露して闘い抜くべきである。
 たとえ参院で廃案に追い込むことが不可能だとしても、ここで断固として反対することこそが、施行までの今後五年間にあらゆるところでしばりをかけて事実上、法の施行不能に追い込み、真の「民主的司法改革」への道を開く出発点になるだろう。

新自由主義「国家改造」と司法改革

       
 内閣に設置された「司法制度改革審議会」が九九年十二月に出した「論点整理」は、「司法改革が行政改革等に続く『この国のかたち』の再構築の一つの支柱として課題設定された」「政治改革・行政改革・規制緩和等の経済構造改革が構想され、実施に移されつつある」「今般の司法制度改革は、その最後のかなめともいうべきものである」と、きわめて露骨にそのねらいを語っていた。
 すなわち、橋本政権、小渕政権、森政権を引き継いで小泉政権が押し進める「司法改革」は、新自由主義的で国家主義的な国家改造の、文字通り「要」として構想されてきたのである。裁判員法案がその最も重要な柱の一つであることは論を待たない。
 そこには最初から、人権も民主主義もない。「小泉改革」のような弱肉強食の新自由主義政策は貧富の差を激化させ、あらゆるところに「勝ち組」と「負け組」を作り出し、社会を分裂させて不安定化させる。揺らぐ「国家秩序」を強化するために「市民」を裁判に動員し、即決裁判で次々に重刑判決を下すこと、それが裁判員法案のねらいなのである。
 「刑事訴訟法一部改正案」には、先に指摘したように弁護士への裁判所の統制強化が盛り込まれている。今国会には「司法改革関連法案」として「総合法律支援法案」も上程されている。法務省の監督する「日本司法支援センター」が国選弁護を運営する。これによって、国選弁護人を弁護士会が推薦する制度は廃止され、法務省監督下の「支援センター」と契約した弁護士のなかから弁護人が指名されることになる。
 人権擁護団体として活動してきた弁護士会を、司法書士への弁護士業務の一部解禁などの規制緩和にさらして弱体化させ、変質させ、弁護士自治を解体し、国家権力の統制の下に置こうとする攻撃が、急速に表面化しつつある。これもまた国家主義的「司法改革」の柱である。
 「裁判員法案」と「刑事訴訟法一部改正案」の衆院通過を糾弾する。共産党と社民党は重大な裏切りを自己批判しなければならない。それは自分で自分の首を絞めるに等しい誤った行為である。われわれは共産党と社民党に、裁判員法案をはじめとする「司法改革関連法案」の参院での廃案をめざして闘い抜くよう呼びかける。
(4月25日 高島義一)



辺野古の海を殺すな!
米軍新基地建設を許さない!
ボーリング調査を中止せよ!
現地実力阻止行動に連帯し防衛施設庁に抗議行動

 四月二十三日、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの呼びかけで、那覇防衛施設局が米海兵隊の新たな出撃基地建設のために強行実施しようとした辺野古海域のボーリング調査の中止を求める緊急抗議行動が行われた。

「闇討ち着工」に怒りの抗議行動

 四月七日、沖縄・稲嶺県政は、那覇防衛施設局から出された辺野古海域のボーリング調査に関する「公共用財産使用協議書」に同意した。これを受けて那覇防衛施設局は四月十九日、地域住民のほとんどが就寝中の午前五時に、ボーリング調査のための資材置き場設置を強行しようとした。
 珊瑚が群生しジュゴンの餌場になっている美しい海にパイルを打ち込むボーリング調査は、基地建設に反対してきたあらゆる団体が指摘してきたように、事実上の工事着工そのものである。また、県が依頼した専門家のほとんどが、ボーリング調査はジュゴンや珊瑚礁の生育と保全に直接、重大な悪影響をもたらすと指摘している。
 しかも、SACO合意で名護・辺野古への基地建設が決められて以降、マスコミなどで繰り返し行われてきた世論調査でも、沖縄県民と名護市民の大半が反対している。ボーリング調査=米軍新基地建設着工は、沖縄を米軍の侵略戦争出撃拠点としてさらに強化する
暴挙であり、地球に残された貴重な自然環境を破壊する暴挙であり、住民の意志を踏みにじる許し難い暴挙なのだ。
 「闇討ち着工!」の急を聞いて駆けつけた住民の体を張った激しい抗議行動は、防衛施設局をひとまずその日の作業強行断念に追い込んだ。しかし緊張した対峙状況はいまも続いたおり、現地のオジイ、オバアも毎日海岸で座り込み炊き出しを行いながら、辺野古の海を守り米軍新基地を阻止する必死の闘いを続けている。
 四月二十三日の防衛施設庁に対する緊急抗議行動は、この沖縄現地での闘いに連帯して行われた。防衛庁正門前では最初に、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックから現地の緊迫した闘いの報告を受けた後、北限のジュゴンを見守る会、日本山妙法寺、命どぅ宝ネットワークなどが抗議のアピールを行い、防衛施設庁長官宛てにただちにボーリング調査を中止するよう求める抗議文を読み上げ、手渡した。
 ボーリング調査を中止させ、辺野古の海を守る闘いは、ブッシュ政権の「グローバル戦争」に全面的に参戦しようとする小泉政権の戦争政策と対決する闘いでもある。「防衛施設庁はボーリング調査をやめろ!」「米軍は沖縄から出て行け!」。抗議のシュプレヒコールが繰り返された。(I)


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