四月二十六日、衆院有事法特別委員会に小泉首相が出席して総括討論が行われた。メディアでもほとんど報道されない中で、有事7法案の審議は超スピードで進んでいる。
この日の正午から、平和フォーラム(フォーラム平和・環境・人権)と戦争反対・有事をつくるな!市民緊急行動が共催して衆院第2議員会館前の路上で、国会に向けた昼休み抗議行動が行われた。平和フォーラムに参加する労組や市民、宗教者など約百人が参加した。
市民緊急行動の高田健さんの発言に続いて、社民党の山本喜代宏衆院議員、民主党の大出彰衆院議員が発言。大出衆院議員は「民主党は有事法制そのものには必要性を認めてきたが、私自身はかりに有事法制が必要だとしても、それを憲法の厳格な枠内にとどめたい」というあいまいな発言に終始した。
続いて日教組、日本山妙法寺、神奈川平和運動センター、キリスト者平和ネット、自治労、日本消費者連盟、航空安全会議からのあいさつを受け、最後に平和フォーラムの福山真劫事務局長の総括提起を受けて、国会に向けたシュプレヒコールを行った。
福山さんは、@米軍のファルージャでの大量殺戮を止めさせ、自衛隊の即時撤退をA有事7法案の廃案へB沖縄の反米軍基地闘争と連帯し、5・16普天間基地包囲行動の成功を、の三点にわたって当面の行動方針を提起した。 (K) 有事7法案に反対し自衛隊撤退求め院内集会
宗教者や市民緊急行動が呼びかけ
四月二十日午後二時半から、衆議院第二議員会館で「戦争につながる有事関連法案に反対し、自衛隊のイラクからの撤退を求める市民・宗教者と国会議員の院内集会」が開催された。この集会を呼びかけたのは、宗教者平和ネット、キリスト者平和ネット、戦争反対・有事をつくるな!市民緊急行動の三団体。会場には百人以上の市民や宗教者が集まった。
イラクでの米軍によるファルージャなどへの大量無差別殺りくと、日本人の「人質」事件が起きる中で、この日、衆議院では有事7法案の一括審議が行われている。小泉政権は「人質」を見殺しにして自衛隊のイラクからの撤退要求を拒否する一方で、戦争国家体制の法的基盤を完成するために「国民保護法案」など有事7法案と3条約・協定を会期内に成立させるために全力を上げている。
主催者を代表して、キリスト者平和ネットの小河義伸さんは、小泉政権の自衛隊派兵政策と「自己責任」論による「人質」と家族への批判を糾弾するとともに、キリスト者から日本人「人質」の解放に尽力したイスラム教聖職者協会に感謝の手紙を送ったことを報告した。
国会議員からは共産党の井上哲士参院議員、民主党の金田誠一衆院議員、社民党の照屋寛徳衆院議員、土井たか子衆院議員があいさつした。井上哲士さんは、ファルージャへの米軍による包囲・虐殺を厳しく批判し、土井たか子さんはスペインをはじめ全世界でイラクからの撤退が続いていることとの対比で、あくまでブッシュ政権に追随する小泉政権との闘いを訴えた。
平和フォーラムの福山真劫事務局長、韓統連の宋世一事務総長につづいて発言した市民緊急行動の高田健さんは、人質の解放は日本、イラク、世界の市民運動のネットワークによってかちとった成果であることを強調するとともに、有事7法案の成立をあらゆる可能性を捉えて阻止するよう訴えた。
基地はいらない!女たちの全国ネットの芦沢礼子さんは、沖縄・名護の新基地建設に向けたボーリング調査を阻止する現地での攻防を紹介し、沖縄の運動と連帯しようと呼びかけた。
最後に宗教者平和ネットの武田隆雄さん(日本山妙法寺)が、今後の行動方針を提起した。五月三日の憲法集会、五月二十一日の「自衛隊のイラク派遣NO! STOP!有事法制 守ろう平和といのち大集会」(6時半、明治公園)の成功をかちとり、有事7法案の廃案へ! (K)
有事7法案・3条約批判(下)
「戦争国家体制」の法的基盤完成めざす
2 米軍行動円滑化法案
米軍行動円滑化法案(米軍支援法案)は、その名の通り「武力攻撃予測事態」段階から自衛隊と共同作戦を行う米軍の行動の自由を確保するためのものである。
同法案はその第1条(目的)において、「この法律は、武力攻撃事態等において、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(「日米安保条約」)に従って武力攻撃を排除するために必要なアメリカ合衆国の軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置その他の当該行動に伴い我が国が実施する措置について定めることにより、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とする」としている。つまり国が自衛隊の戦闘行動を可能にするための土地や物資の収用や「国民の権利」の制限に関わる諸措置を、米軍に対しても適用するとともに、自衛隊による弾薬などの「物品役務」の提供を保障するものである。
弾薬を含む「物品役務」を提供
同法案第10条は、自衛隊による米軍への「物品役務の提供」に関わる業務内容として、「補給、輸送、修理もしくは整備、医療、通信、空港もしくは港湾に関する業務、基地に関する業務、宿泊、保管、施設の利用又は訓練に関する業務」としている。これまでは「周辺事態」やPKO活動において「ACSA」(日米物品役務相互提供協定)にもとづいて弾薬を除く物品・役務提供は可能とされていた。今回の米軍支援法案ならびにACSA改悪によって、「武力攻撃事態等」で自衛隊が弾薬補給を米軍に行うことが可能となったのである。それだけではない。直接に日本領域への「武力攻撃事態」ではない「周辺事態」であっても、それが「武力攻撃事態」と連動するという口実で弾薬補給に道を開く可能性が作りだされたのである。
そしてこの「物品役務の提供」にあたっての自衛隊による「武器の使用」も認められた(12条)。
土地の強制収用
同法案15条では、「内閣総理大臣は、武力攻撃事態において合衆国軍隊の使用に供するため土地又は家屋を緊急に必要とする場合において、その土地等を合衆国軍隊の用に供することが適正かつ合理的であり、かつ、武力攻撃を排除する上で不可欠であると認めるときは……当該土地等を使用することができる」と定めている。まさに米軍の戦争のための土地収用である。そして土地にある立木その他の物件については、米軍の行動の実施の妨げになる場合「移転」や「処分」が可能となり、家屋についても「形状変更」ができる。
それだけではない。自衛隊法を「読み替えて準用する」ことにより、土地使用のための「立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、二十万円以下の罰金」という罰則規定が付けられている(17条)。米軍の戦争に協力しない者に対しては、権利を剥奪し、罰則が課されるのだ。
自衛隊法改悪案、日米物品役務提供協定(ACSA)改悪案は同法案を補完するものである。自衛隊法改悪案では、自衛隊による米軍への物品・役務の提供範囲を、在外邦人の輸送、災害応急対策に従事する米軍、訓練等の目的で自衛隊施設に一時滞在する米軍にまで拡大している。
3 特定公共施設利用法案
特定公共施設利用法案は、「武力攻撃事態等」において「特定公共施設等」(港湾施設、飛行場施設、道路、海域、空域及び電波)の米軍や自衛隊による優先利用を管理者(自治体の首長)に要請し、管理者がその要請に従わない場合には首相自ら権限を行使して強制使用することを可能にするものである。
「対策本部長(首相)は……当該特定の港湾施設の港湾管理者に対し、当該特定の港湾施設の全部又は一部を特定の者に優先的に利用させるよう要請することができる」(7条)。そして戦闘目的の利用を優先させるために「港湾管理者は……当該特定の港湾施設の利用に係る許可その他の処分を変更し、又は取り消すことができる」(8条)。「現に停泊中の船舶の移動が必要であると認めるときは、当該船舶の船長その他の当該船舶の運航に責任を有する者に対し、当該船舶の移動を命ずることができる」(8条2項)。さらに「要請」に港湾管理者が応じない場合は、首相を「指示」を出し、それでも「所要の利用が確保されないとき」には、首相は国土交通大臣を指揮して、港湾施設の使用のための「許可その他の処分又は許可その他の処分の変更もしくは取り消しを行わせることができる」(9条、同3項)。
これらは、港湾施設を戦争目的のために優先利用し、港湾管理者が首相の「要請」「指示」に応じない場合、首相が代わって直接的に権限を行使する規定である。自治体の港湾管理権限は「武力攻撃事態」において剥奪される。この点は「周辺事態法」での自治体への「協力要請」とは決定的に異なっている。
この港湾についての戦争目的での「優先利用」は、飛行場、道路、海域についても準用される(10〜13条)。
さらに14条では、海上保安庁長官に対して「告示により、特定の海域に関し、範囲又は期間を定めて、当該特定の海域を航行することができる船舶又は時間を制限することができる」という権限を与えている。そしてこれに違反した者には「三月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」という罰則が課される(20条)。
こうした一連の戦争目的の港湾、飛行場等の優先利用規定は、「武力攻撃事態」だけではなく「大規模テロ」などの「緊急対処事態」についても準用されることになっている(21条)。「有事」には軍事目的のために、港湾、空港、道路、海域などで一般の船舶、航空機、車両の使用が禁止されてしまうのである。
4 外国軍用品海上輸送規制法案
同法案は、武力攻撃を行っている「外国軍隊」などへの武器・食糧などの海上輸送を阻止するために、「我が国領海又は我が国周辺の公海」で「外国軍用品」を輸送する民間船舶への「停船検査」「回航措置」を可能にするものである。そして停船措置等に応ぜず、抵抗したり逃亡したりする場合には、当該船舶に対して海上自衛隊による「武器の使用」が認められる。
「外国軍用品」には武器だけではなく、軍用通信機器・電子機器、ヘルメットや防弾着、航空機・船舶・車両の修理や整備に用いられる装置・部品、燃料・潤滑油、軍用食糧まで含まれる。
「停船検査」とは「外国軍用品等を輸送しているかどうかを確かめるため、船舶の進行を停止させて立入検査をし、又は乗組員及び旅客に必要な質問をすること」であり「回航措置」とは「停船措置を行った船舶の船長等に対し、我が国の港へ回航すべき旨を命じ、当該命令の履行を確保するために必要な監督をすること」(2条七、八項)とされる。
防衛庁は「外国軍用品審判所」を設置し、回航された船舶の積載物を検査して、それが「核兵器、化学兵器、生物兵器もしくは毒素兵器(これらの運搬の用に供されるミサイルその他のこれらの運搬手段を含む)又は対人地雷」であれば廃棄し、その他の「外国軍用品」である場合には「輸送を停止」する、とされている(6条)。
これらの条項は「周辺事態法」での船舶「臨検」活動の制約を突破するものである。実際には、同法案は「周辺事態」と「武力攻撃事態」をつなぎ、米軍支援の「臨検」と「外国軍用品輸送」阻止をつなぐ媒介の役割を果たすものとなる可能性を持っている。
5 捕虜取扱法案・国際人道法違反処罰法案等
捕虜等取扱法案は、三自衛隊の共同機関として「捕虜収容所」を設置するとともに「捕虜等」の規律違反に対する懲戒制度を整備する、としている。
さらに「防衛出動を命じられた自衛隊の自衛官が武力攻撃が発生した事態において、捕虜等の資格を有することを疑うに足りる相当の理由があると判断する者を拘束することができる権限を整備する」「拘束された者について、連隊長・艦長等に引き渡しの後、方面総監等に後送の上、捕虜等の資格を認定するために必要な手続きを規定する」という条項が存在することは、いわゆる「非正規戦闘員」「テロリスト」とされた者を自衛隊が拘束する権限を規定したものと考えられる。
捕虜取扱法案、国際人道法違反行為処罰法案、そしてジュネープ条約追加議定書T、Uの締結については、いずれも日本が本格的な「戦争遂行国家」となるために、戦時国際法、国際人道法の枠組みを組み入れたものである。
有事7法案・3条約案は、超スピード審議で衆議院を通過しようとしている。「戦争国家」体制の法的整備は、自衛隊のイラク派兵・占領への参加を「既成事実」として一挙になされつつある。最大野党の民主党が有事法案に賛成の姿勢を示すことにより、国会内の力関係では有事法案を阻止する闘いは、きわめて困難な情勢にある。しかし問われていることは、イラク占領反対・自衛隊即時撤退を求める闘い、そして人質解放を実現した行動の中で、市民運動・民衆運動が示した抵抗の機運の広がりを「有事」を阻止する力として強化していくことである。反安保実の5・16行動(午後二時半、水谷橋公園)、陸海空港湾労組二十団体、市民緊急行動、宗教者平和ネット、キリスト者平和ネットが呼びかける「自衛隊イラク派遣NO! STOP!有事法制 守ろう!平和といのち 5・21大集会(午後6時半、明治公園)に結集しよう! (純)
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