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ブラジル                       かけはし2004.05.31号

PT(労働者党)主導政権成立から1年の情勢と党建設の課題

社会主義的民主主義潮流(DS)全国調整委員会


1 労働者党(PT)内の潮流である社会主義的民主主義(DS)は、二〇〇三年十一月二十一日から二十二日まで、第七回大会を開催した。会議の討論の焦点は、ルラの選出というブラジルの新しい情勢についてであった。ほぼ一年たったPT主導政権の批判的評価、社会運動ならびに労働者党への影響、オルタナティブな綱領に関して進行中の戦略的討論、そしてブラジルにおける党建設の決定的問題に関してである。

2 大会は、PTの歴史の積極的価値(その綱領的貢献、潮流の権利と内部民主主義、そのフェミニスト的業績、異なった勢力を結集する能力、左翼の諸経験)を防衛することが重要だと見なした。この文脈の中で、大会は党組織とPTの周囲の広範な社会的・政治的運動との連携を再活性化する必要性についても強調した。

3 大会は、PTのこの歴史的構想、社会主義的・民主主義的政党としてのその戦略を防衛することの正統性を活用し、党が採用している路線に関する論争に介入することを決定した。大会は、党内の対立の中で、社会主義的・民主主義的党としてのPT再建のための結集の極として、大衆的左翼潮流を発展させようとつとめることに合意した。この潮流を発展させ、PTを社会主義政党として再建するために闘うことは、綱領的適応に向けた圧力の受け入れと、新党というセクト主義的構想の双方に対するオルタナティブとなる。この二つの考え方は、大衆的で社会主義的・民主主義的な党を建設するための全経験をあきらめることを意味する。

4 大会は、「民主主義の防衛、PT議会メンバーの除名反対」の特別決議を採択した。その決議でわれわれは、もしわが同志エロイザ・エレナが除名されたら、われわれはただちにPTの次期全国会議に向けたアピールを発し、その期日の繰り上げを呼びかけることを明確にした。このイニシアティブは、エロイザ同志との連携を維持しつつ、大会が合意した政治的枠組みを強化してPTが採用している路線と闘うことを追求した。

5 二〇〇三年十二月十四日、PT全国指導部はPTの議員メンバー四人の除名を決定した。除名された人びとの中で、連邦議員のルシアナ・ジェンロ、ババ・フォンテス、ジョアオ・フォンテスは、別の政党を形成するという考えをすでに進めていた。それは同志エロイザ・エレナの考えではなかった。PT全国指導委員会において、われわれはPTのすべての少数派潮流とエドワルド・スプリシ上院議員を団結させて、除名に反対投票することに成功した。同じ週に、DSを代表した同志ウォルター・ピニェイロは、PTの次回全国会議へのアピールを提出した。

6 同じく十二月、リオデジャネイロとパラナの少数のDSメンバーは、PTを離党し新党建設に参加すると主張する宣言にサインした。

7 二〇〇四年一月十九日、リオデジャネイロで少数のDSメンバーは会議に参加し、新しい政党の設立を支持する宣言にサインした。

8 新しい左翼政党の宣言と、それを現実化するためにすでにスケジュール化されている課題は、それを必要と感じている人びとにとっては正当な政治的選択である。しかしDS全国調整委員会は、このイニシアティブがわれわれの最近の大会決定と直接的に矛盾していると見なす。

9 PT内のテンデンシーであるDSの第七回全国大会で選出された全国調整委員会は、二〇〇四年二月七日の最初の会議で、以下のことを決定した。

bPTを離党したすべてのメンバーに再加盟を呼びかける。それは、ともにわれわれの七回大会決議を実行し、われわれの潮流を弱体化するのではなく強化するためである。
bこれらのすべての同志に、わが潮流との連携を再活性化し、新党建設と距離を置くことを呼びかける。
b党、政府、議会、そして社会の中で広範な運動の創出を支え、PTにその歴史的立場を回復させ、ルラ政権に労働者とブラジル人民が望む社会的変革を実行させるようにする。
b労働者党全体に対して、PTを離れた同志たちの宣言と行動について説明する。そして新党創設のための活動は、われわれの全国大会で表現されたDSメンバーの態度を表明するものではないし、全国調整委員会に支持されたものでもないことを説明する。
                     二〇〇四年二月七日、サンパウロにて
(「インターナショナルビューポイント」04年3月号)



解説

PT左派国会議員の除名と党内対立の激化

 二〇〇二年十月の大統領選の勝利を受けて、ブラジルで昨年一月に正式に発足したPT(労働者党)が主導するルラ政権は、一定の進歩的政策にもかかわらず、国際的な圧力の中でIMFや世界銀行が強制する新自由主義政策を踏襲し、PTに期待をかけた多くの労働者農民の批判を受けている。とりわけ社会主義的民主主義潮流(DS、第四インター・ブラジル支部)の同志エロイザ・エレナをふくむPT左派国会議員が、昨年十二月にPTの全国指導部によって除名されたことにより、PT内部の対立は激化している。
 今年一月には、除名された国会議員をふくむ一部のPTメンバーが、ルラ政権の新自由主義路線に対決した新たな左派政党の結成を呼びかけ、そのための準備活動を開始した。この呼びかけには、同志エロイザ・エレナをはじめとした若干のDSメンバーも加わっている。今年二月初旬、DS全国調整委員会は、こうした新党建設構想に反対し、PT内部で左派の立場を強化することを再確認した。
 二月下旬に開催された第四インターナショナル国際委員会には、DS全国調整委員会多数派の同志とエロイザ・エレナ同志がともに出席し、「ブラジル問題」をめぐる討論が行われた。第四インターナショナルは、このPTへの態度をめぐる意見の相違について国際的な討論をブレチンを通じて行うことを確認した。
 ルラ政権、そしてブラジルPTについての戦略的討論は、今日のラテンアメリカと世界の情勢、そして反グローバリゼーション運動全体にとってきわめて重要であり、われわれも意識的にこの討論に注目し、主体的に関与していく必要がある。    (平井純一)


PTから除名された上院議員エロイザ・エレナに聞く
権力の囚人ではないオルタナティブな左翼政党が必要だ

 以下に掲載するのは、ブラジルの政権党であるPT(労働者党)から昨年十二月に除名された上院議員エロイザ・エレナとのインタビューである。彼女はDS(社会主義的民主主義潮流、第四インター・ブラジル支部)に属している。このインタビューはブラジルの雑誌「ジョルナル・ド・ブラジル」04年2月8日号に掲載されたもの。エロイザは最近、新しい左翼政党を建設するための調整機関を確立する活動に参加している。

新党の準備作業の現状について

――左翼の新政党はどのようになっていますか。

 第一に、いくつかの左翼グループが、内部民主主義などの共通点を定義するために作業会議を行ってきました。今からは、討論フォーラムのための準備総会を予定しています。それは三月に始まり、六月まで続くでしょう。
 選挙法には多くの障害が存在しており、そのため私たちは砂漠の中に小道をつけているところだと言えるでしょう。私たちは六月第一週に第一回大会を開催しようとしており、それ以後、明確な政党登録を獲得するために私たちは五十万人以上の署名を集めなければなりません。この法律は最近のものであり、現にあるどの政党も、その条件を満たす必要はありませんでした。
 それはヘラクレア的任務(訳注:ヘラクレアはイタリア南部の古都でエピリウスの王がローマ軍を敗った故事に由来)ですが、すでに私はアラゴアス(訳注:ブラジル北東部の州、エロイザの出身地)の「奥地」の熱には慣れています。

――明日リオデジャネイロで開催される会議では、どんな段階のことが取り扱われるのでしょうか。

 それはリオデジャネイロの大学での初めての総会です。新党は上からの指令によって生まれるものではなく、ある政治的人格の意思によって生まれるものでもありません。
 私たちは、左翼のオルタナティブな政党を建設する必要性が存在することについては、はっきりしています。それは権力の不誠実な囚人ではない政党です。

――新党の哲学はどういうものですか。

 私たちは、社会主義的・民主主義的左翼の結集点となる、オルタナティブを建設する助けになりたいと思います。私たちは労働者階級の歴史的旗を防衛するでしょう。私たちはテンデンシーの権利を尊重します。私たちは、新自由主義者、ナチス、レイシスト、政治的犯罪者以外のすべての人びとに開かれています。
 私たちは、プラナルト宮殿(1)の権力の宴会で食事することもできるでしょうが、私たちはこっちの選択を築き上げることを欲します。

IMFからの自立は可能か

――IMFとの協定を作成することぬきに統治するなんて可能でしょうか。

 この点について疑問はありません。私は党の綱領を防衛しています。つまりブラジルの国際社会との関係は、国際通貨基金(IMF)や他の多国間金融機関に代表される外国資本に従属するものではないのです。IMFは、国際的銀行家の「慈善」を後援する慈善的組織ではありません。それはアメリカ財務省の付随物以外のものではないのです。
 おそらくブラジル政府自身、すでにIMFとのこの汚いゲーム全体を後援しており、来年以降の協定を更新しないでしょう。こうした態度には、革命的なものはなにもありません。ブラジル憲法は、国家主権は経済政策の不可避的な基礎であると述べています。

――対外債務の支払いを停止することは可能でしょうか。

 私たちのうちほとんどの人は、債務の監査を支持しています。わが国の最近の歴史全体を通じて、左翼の諸政党や社会運動の多くの重要な活動家は、一般投票や請願を行うと同時に、債務の監査や不払いを提案してきました。私は皮肉や偽善や政治的無遠慮ぬきで、どうしてこのような逆のやり方で考えているのか理解できません。債務監査に反対し、支払いを支持することは、反動的で保守的になることです。セルソ・フルタード(2)は、ルラに対して国家モラトリアムを行うことを提案しました。
 私たちは恐怖をうながすテロリズムを終わらせる必要があります。このことだけで、失敗し、破産したモデルの正統化に奉仕しているのです。この公式は、世界中のどこでも正しいものではありません。このモデルは、民衆の多数の努力を不当に流用する少数の寄生者にとってのみ正しいものです。

 新党は、二〇〇六年選挙で普遍化する(選挙上)の敷居条項を克服しなければなりません。
 私たちはその難しさを知っています。私たちは生き残っています。私たちは自分たちの恐怖を飲み込んでやっていかなければなりませんが、抵抗することを学んでいます。アラゴアス州でPTを建設するために私に起こったこと、すなわち私の命を危険にさらし、侮辱され、虐殺されそうになった経験の後では、私はなにも恐れません。敷居条項は、私たちがすでに直面してきた挑戦と比較すれば、ほんのささいなことです。

――PTからの除名の過程で、なにか積極的なものを引き出すことは可能だったのでしょうか。

 私は、ブラジルの人びとの魂の中に、最も素朴な人びとから最も教養のある人びとにいたるまで、いかに民主主義的感覚が根づいているかを感じました。私の世界観に同意しない人びとは、私は私の信じることを守る権利を持っている、と語りました。それは私の魂と心に受けた傷への癒しとなりました。

――ルラ政権の社会政策についてどう考えますか。

 社会政策をふくむ公共政策は、政権の経済的選択の反映です。政府は保健に振り向けられる予定だった収入の一八%を、断固として予算の黒字を増額させるために拠出しました。ここにはなんのマジックもありません。経済政策は、「飢餓ゼロ」や農業改革や教育や保健の失敗を決定づけたものです。
 銀行家たちの食欲を満たすために、ブラジル人たちの皿を空っぽにする必要があったのです。

――自治体選挙についてはどうですか。

 PTは大きく成長するでしょう。同盟政策を全般的に柔軟化させ、ケレシアとヤデルのPMDB(ブラジル民主運動党)、PL(自由党)、そしてマルフ(著名な汚職政治家)のPP(人民党)との連合を許容したからです。二〇〇三年は、外国資本への良好な支払いがなされた年でした。私は、選挙戦に資金が欠乏するだろうとは思いません。

子どもたちの未来のために

――マセイオ(3)の市長になるという夢をあきらめさせられたことで、不満を感じていますか。

 それはとても苦痛に満ちた個人的経験でした。すでに私は、州知事ポストへの立候補をやめさせられていました(4)。私は、市長に立候補する準備を進めていましたが、彼らは私を公式リストから取り除きました(5)。彼らはシンボルとして私の立候補を妨げたのですが、しかし彼らは私がより良いことだと信じてきたもの、つまり私の解放の魂を取り去らなかったのです。

――あなたはマセイオ市長のカティア・ボーンになにか反対しているのですか。

 私はだれに対しても個人的には敵対していません。また私を細やかで、尊敬をもって扱ってくれたサルネイにも敵対していません(6)。存在しているのは政治的相違です。

――あなたの宗教との関係は。

 私はもともとエキュメニカルです。私にはさまざまな宗教の友人がいます。私はすべての部族を尊重しています。私はカソリックで、いつも教会に行きます。私には奥地に多くの友人がいますが、彼らは祭司です。先週いっぱい、私は一つの町で四つの大規模集会に出かけて、祝典の手伝いをしました。
 私は数年前、苦悩を通じて私の信仰を再発見し、決意を固めました。私の宗教的経験は、私の生涯の困難な時期に、多くの愛の証を私に与えてくれた天界にいる同志とともにあります。

――あなたは自分が著名人だと思っていますか。

 著名人になるなどいうことは、意味がありません。私は民衆の愛と連帯に幸福を感じます。それが私を幸せにするのです。

――子ども時代に飢えを経験したことがありますか。

 (長い沈黙)私がゴミ捨て場をあさる必要がなかったのは確かですが、非常な苦難を経験しました。すべてが私をより良い人間にしました。私が子ども時代にくぐりぬけたすべての困難は、貧困や屈辱で際だっていたとはいえ、現在の民衆に起こっていることと比べればたいしたものではありません。
 一皿の食事のために街頭で体を売っている少女や、私の子どものように食事をするか家でコンピューターをするかを選べるのではなく、周辺化した存在に追いやられることを運命づけられている子どもたちを見るのは心を傷めることです。私は、そこから生き残った人間です。

原注
(1)ブラジルの大統領官邸
(2)セルソ・フルタードは、ブラジルの著名な「開発主義」学派の経済学者。
(3)マセイアはアラゴアス州の州都。
(4)エロイザ・エレナは、アラゴアス州の州知事に立候補する意思を持っていたが、悪名高い汚職政治家を副知事候補として押しつけた自由党との取り引きをPTが行った後、辞退した。
(5)市長に立候補するためには、政党リストに入る必要があるが、エロイザ・エレナはPTから除名されたため、リストに入ることはできない。
(6)PT政権の議会における主席「執行官」。
(「インターナショナルビューポイント」04年3月号)               


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