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「女性国際戦犯法廷」NHK番組改ざん事件裁判     かけはし2004.05.24号

判決の問題点とメディアを問う

NHK免罪不当判決と「報道・表現」の自由をめぐって

 控訴決定緊急シンポジウム開く

 四月二十八日、「不当判決を許さない!NHK番組改ざん事件裁判控訴決定緊急シンポジウム」が開かれた。このシンポジウムは、三月二十四日の東京地裁による不当判決に対して、「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)が四月一日に正式に控訴したことを受けて開催された(東京地裁の不当判決については本紙4月5日号既報)。

NHK番組改ざん裁判と地裁判決

 この裁判は、二〇〇〇年十二月に東京で開かれた「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」に取材して〇一年一月に放映されたNHK・ETV2001の番組「問われる戦時性暴力」が、放映直前に右翼や自民党の圧力で全面的に改ざんされたことに対して、主催団体の一つである「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)が、NHKと制作会社NHKエンタープライズ(NEP)、ドキュメンタリー・ジャパン(DP)の三社を相手取って提訴していたものである。
 放映された番組には、「天皇有罪」も元加害兵士の証言も、だれを裁く裁判だったのかという説明もすべて削除され、主催者を代表して法廷の趣旨を説明した故・松井やよりさんへのインタビューも削除されて、その代わりに「被害者の証言は信用できない」などとして法廷の意義と被害女性の尊厳を冒涜する右翼政治学者・秦郁彦の悪質なコメントがつけられていた。
 提訴の主旨は、NHK側の提示した企画内容に合意したからこそ全面的に取材協力したにもかかわらず、全く別の内容に改ざんされてしまったことによって信頼(期待)利益を侵害されたこと、NHKが番組改編の説明義務に違反したために損害を受けたことの二点であった。
 東京地裁・小野剛裁判長は判決のなかで、「番組内容は、当初の企画と相当乖離(かいり)しており、取材される側の信頼を侵害した」と認定した。にもかかわらず判決は、自民党や右翼の圧力を受けて番組を改ざんしたNHKの責任を一切問おうとせず、逆に改ざんを「編集の自由」として免罪してしまった。
 その上で判決は、改ざんに抗議して最終段階で制作から降りた孫請けの制作会社DJ社に、「取材に協力したVAWW―NETジャパンに国際法廷の忠実なドキュメンタリーが作られるかのような期待を抱かせてしまったのが悪い」として全責任を押しつけ、「原告に百万円を支払え」と命じた。それは、「一部勝訴」どころか、ジャーナリズムの取材活動と言論活動を制約しかねない、許し難い反動判決であった。

「編集権」と「報道の自由」めぐり報告と討論

 午後六時半から東京芸術劇場会議室で開かれたシンポジウムでは、故・松井やよりさんの後を引き受けて裁判闘争を行ってきたVAWW―NETジャパン共同代表の西野瑠美子さんが、怒りを込めてあらためて判決を告発した。続けて弁護団の飯田正剛さんと大沼和子さんが、簡潔に判決の問題点について整理した。
 報告を受け、「NHK裁判一審判決の問題点とメディアの課題」と題するパネルディスカッションが行われた。パネリストは立教大学教員の服部隆章さん、武蔵大学教員の小玉美意子さん、立正大学教員の桂敬一さん、新聞労連委員長の明珍美紀さんの四人。それぞれの発題は「番組製作者との信頼関係軽視の東京地裁判決」、「問われなかった戦時・性暴力―末端だけに責任を押しつけた妙な判決」、「国家の意志を代弁し出したメディアたち―イラク人質事件から見えてきたもの」、「メディアの現場から」。
 東京地裁の判決は、NHKには撮影素材を自由に編集する権利があると認めながら、取材される側が抱いた「期待・信頼」は法的保護の対象になるとして、その「期待権」を侵害した場合にはNHKではなく取材者である制作会社に賠償責任が生じるとしている。
 「『期待権』って何これ? 期待を裏切ることで責任を問われるなら、報道はその瞬間に機能を停止する。取材によって新たな事実をつかんでも、被写体や取材対象者の思惑に沿わなければこれも報道できなくなる。……まずいよこれ。政治家への取材もできなくなるじゃないか。週刊文春の差し止め問題でメディアは大騒ぎだったが、この判決はそれと同等か、見方によってはもっと悪質な前例を残したと言えるだろう」。
 服部さんは、このように言う映画監督の森達也さんの「メディア通信簿」(週刊現代4月17日号)を引用して、判決の問題点と危険性を指摘した。
 桂さんはイラク人質事件をめぐって、産経や読売の社説を引きながら「政府は国家に不服従の人間を見殺しにしようとし、メディアは『自己責任論』でそれをあおり、国民に有無を言わせない状況が作られつつある」と厳しく批判した。
 そして「政府は従順なメディアにはサービスし、邪魔なメディアには情報遮断するという形で対処し、メディアの側は巨大な商売の機会としての戦争報道のためにそれに従っている。メディアは自分で自分の首を絞め、報道の自由を投げ捨てようとしている」と指摘した。
 明珍さんは新聞記者の立場から、NHKを部長に、NEPをデスク、DJを記者に置き換えて説明し、「記者には取材の意図を説明する権限がないと言っているに等しい」と今回の判決を批判した。そして「イラク攻撃の報道でも、大手メディアは危ないところから引き揚げ、代わりにフリーランスが戦争の現実を伝えようとした。その一方で米軍の従軍取材にはキー局が入る。政府やスポンサーの圧力で動いてしまう。こんなことで、弱い立場の人々を守るはずのジャーナリズムの役割を果たせるのか。ジャーナリズムの危機は深刻だ。社内で民主主義がなくなり、自由にものが言えなくなっている」と訴えた。
 パネリストと参加者とのディスカッションでは、会場から「なぜNHKだけに独占取材させたのか。あんなことはNHKならやって当たり前かなとも思った」という意見が出された。これに対してはやはり会場から、それは深刻極まりないテレビ報道の現状を踏まえない言い方だという反論がされた。
 「私もテレビのプロデューサーだが、いまのテレビの状況でそういう言い方は間違いだ。日テレから取材はあったか。TBSがこんな番組を作ろうとするか。残念ながらそんなことはない。民放には、改ざんされたあの程度の番組でさえ放送する枠はない」。
 桂さんは裁判闘争の方向性について提起した。「『期待権』がつまみ食いされて逆手に取られ、互いに信頼関係を作ってきたバウネットとDJ社が対立させられた。相手は二倍勝とうとしている。『期待権』の侵害とは、報道取材の原点に戻って、放送法に言う『公正』や『客観性』に対する権利ということでなければならない。この点からすれば、バウネットの権利も女性国際戦犯法廷の権利も侵害され、市民の知る権利も侵害されて損害を被っている。判決は勝手に『教養番組』と言っているが、三社で『ドキュメンタリー番組』として作るという合意がなされていた。ドキュメンタリーは報道であり、事実が公正に伝えられているかが問われる。そういうことをきっちり主張していくことが必要だ」。
 バウネットジャパンは、裁判の傍聴や記録ビデオを見る集いの開催、裁判支援カンパへの協力などを訴えている。     (I)
★「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)連絡先 TEL&FAX03―3818―5903
Eメール vaww-net-japan@jca.apc/org
http//www.jca.apc.org/vaww-net-japan/
★NHK裁判支援カンパ送り先 郵便振替00120―3―31955VAWW―NETjapan(一口二千円。通信欄に「NHK裁判支援カンパ」と明記してください)。


アジア連帯講座
検証 北朝鮮はどこへ
「ピョンヤン宣言」と「統一朝鮮革命」めぐる二つの報告


 四月二十四日、アジア連帯講座は、東京・文京区民センターで「検証 北朝鮮はどこへ」というテーマから荒沢峻さん(新時代社)が「ピョンヤン宣言」を読む』、滝山五郎さん(新時代社)が「統一朝鮮革命について」問題提起した。

ピョンヤン宣言に対する分析と評価

 荒沢さんは、冒頭で二十三日、北朝鮮平安道・竜川で列車爆発事故が起きて大量の死傷者が発生していることを取り上げ、「報道では、運んでいた爆薬が送電線に触れて大爆発したらしい。送電線は、かなり老朽化し、カバーもはげ落ちていたはずだ。少し触れるだけで火花が出てしまう状態だった。これらの要因だけでも、単なる事故ではなく人災だ」と糾弾した。
 また、この間の北朝鮮をめぐる時事問題に触れて、「六カ国協議を前にして、金正日が四月十九日から二十一日、中国を訪問した。中国指導部は、六カ国協議に関わった段階で北朝鮮を逃がさないというレベルで力を入れている。報道で中国共産党政治局常務員全員と金正日が会って、仰々しく抱擁しているシーンが写しだされていたが、実はそれだけ関係が険悪な状態だったと見たほうがいい。中国自身が原油の三〇%を輸入に頼っている状態だ。だから中国がこれまでのように余裕を持って食糧、原油支援できるという条件が整わない中で、金正日に対して六カ国協議の出席と核問題に対して厳しい注文をしているはずだ。その中身と対応が見えてくるはずだ」と分析した。
 次に『「ピョンヤン宣言」を読む』にひきつけて荒沢さんは、現在の局面に対して「日本と北朝鮮両国首脳が署名したピョンヤン宣言から一年半。だが日朝国交交渉は中断し、北朝鮮政府は『拉致事件』決着論を振りかざして拉致被害者家族の日本帰国を拒み続けている。日本政府は北朝鮮に対する経済制裁法の立法化によって『圧力』行使に踏み切ろうとしている」と批判した。
 そのうえで一九九一年からの日朝国交正常化交渉の経過、北朝鮮側と日本側の主張内容を確認しながら国交交渉のこれからについて@拉致事件生存被害者の現状回復Aその後に国交交渉再開B国交交渉再開をまたなくても取り組める課題として在朝被爆者訪朝治療、文化財返還協議などをあげた。さらに、ピョンヤン宣言の各条文に対する分析と評価を行った。とりわけ、「核問題の包括的解決」について触れ、「日本はNPT体制(核拡散防止条約)の上にあぐらをかく核大国アメリカの北朝鮮核開発批判には同調すべきではない」と強調した。

極東解放革命論と統一朝鮮革命論

 滝山さんは、@旧日本支部の極東解放革命論の経過と主張の紹介A金日成官僚体制打倒の主張が変化する過程B綱領的考え方の後景化の分析について提起した。
 コンパクトに日本支部の主張の経過(一九七〇〜九〇年代)を提起したうえで滝山さんは、「当時のわれわれは、『堕落した労働者国家を帝国主義から防衛せよ』にとどまり、金日成体制に対する分析がおざなりになり、北朝鮮の支配体制下で何が起こっているのか理解していなかった」と総括視点をアプローチした。
 そして、「荒沢が九七年に『北朝鮮・黄書記の亡命と金正日体制の危機』論文を発表した(『かけはし』97年3月10日号)。ここでは旧来の北朝鮮分析が放棄されてきた状態から転換し、現実に北朝鮮内部でどのようなことが起こっているのか、また、その歴史はどうだったのか、こうした観点から見直しを行っていった。スターリニズムの腐敗を極限まで推し進めたものと儒教思想とが融合したような『王朝的支配体制』として金日成・金正日をとらえた」と提起した。
 最後に滝山さんは、「グローバルな人権・平和を求めて、北朝鮮民主化のための様々な取り組みが重要になっている。脱北者への支援、拉致問題の解決、核武装の放棄と北東アジアの非核地帯の実現をめざしていこう」と訴えた。
 アジ連の仲間は、講座を集約する形で「昨年十一月に『太田昌国さんの『拉致』異論を読む』の公開講座で太田さんが『日韓連帯運動、国交回復正常化運動、様々な権利剥奪・差別反対の在日運動は昨年の九・一七以降、自分たちのあり方に対してもっと発言すべきであった。拉致問題、北朝鮮に対する評価など心情の吐露も含めて明快に語らない傾向が強い』と指摘された。それ以降、なかなか討論を深めていくことができなかったが、今回、滝山さんが第四インター日本支部が北朝鮮をいかに評価してきたのかについて歴史的検証と今後の方向性を提起した。滝山提起を一つのたたき台として位置づけ論議を深めていこう」と呼びかけた。(Y)


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