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                           かけはし2004.04.26号

撤退すべきは軍隊だ! NGOやジャーナリストではない!

5人の解放をかちとった力で全占領軍の撤退を!

1500人が渋谷の街を行進

 四月十八日、東京・宮下公園で「WORLD PEACE NOW 4・18ピースラリー&パレード」が行われ、千五百人が参加した。
 イラクで米軍などの軍事占領に反対し、自衛隊の撤退を求める武装グループによって拘束されていた今井紀明さん、郡山総一郎さん、高遠菜穂子さんたちは十五日に、続いて安田純平さん、渡辺修孝さんが十七日に解放された。
 集会は、世界の反戦運動のさまざまなメッセージが武装グループたちに届いたことによって解放が実現したことを大きな喜びで確認しながら、「米軍はファルージャから、イラクら手をひけ!自衛隊はイラクから撤退を!小泉内閣は総辞職を!」のスローガンを掲げ、緊急に取り組まなければならない闘いの方向性を指し示していった。

これ以上、殺させないために!

 高田健さんの主催者あいさつからピースラリーは始まった。高田さんは、「仲間たちが解放されて本当にうれしいです。草の根市民運動の国際的ネットワークが、どんなに力強いものであるかということを明らかにしました。小泉首相や外務省が色々と解放に向けて取り組んだようなことを言っているが、事実経過を知っている私たちは、怒りを超えて笑ってしまう。日本政府はなにもしなかっただけでなく、妨害をし、米軍や特殊部隊の出動要請までした。その次に自己責任論によって仲間たちを批判し、かかった費用を請求しろという意見まで出てきた」と厳しく糾弾した。
 さらに、「日本人の五人が帰ってきたけれども、イラク人はいまだにたくさん殺されている。ファルージャでは米軍が八百人と言われる人々を殺害し、包囲し続けている。そして、米軍の支援として自衛隊が派兵されている。この間の市民運動に確信を持ちながらイラク軍事占領反対、自衛隊の即時撤退、有事法制反対、憲法改悪反対の取り組みを継続して取り組んでいこう」と力強くアピールした。

私たちには平和への自己責任がある

 志葉玲さん(フリージャーナリスト)は、「解放されてよかったです。高遠さんと安田さんは、友人でした。皆さんとともに行った国会行動を、ちゃんとイラクの人々は観ていた。日本人のみんなが敵じゃないということをわかってくれた。小泉政府は、いろいろと動いたと言っていたが、あのイスラム聖職協会に対して政府はなにも連絡をとっていなかったことからわかるように、なにもやっていなかった。小泉のウソ八百ぶりが明かになった」と批判した。
 また、小泉政府が「自己責任」論を持ち出して自己正当化していることや日本のメディアが追随して翼賛報道をしていることに対して批判し、「イスラエル軍は、ジャーナリストを排除してパレスチナの人々に対して虐殺を繰り返してきた。米軍は、ファルージャで虐殺を行っている。ジャーナリスト、NGOが紛争地にいること自体が、一刻も早く虐殺をやめさせるために絶対に必要だ。日本のメディアは、小泉政府防衛の報道をやめるべきだ」と強調した。
 豊田直巳さん(フォトジャーナリスト)は、「首相官邸サイドから日本人人質事件は『自作自演』だとか色々な悪質デマキャンペーンが行われた。これが家族に対するバッシングの引き金になった。さらに、政府は米軍に対して特殊部隊を出動要請し、仲間たちの生命が非常に危険な事態にまで追い込もうした。だが、仲間たちは、武器を持たず、非暴力で平和を求めるイラク民衆のための支援者だったから解放された」と発言した。
 また、「私たちは、平和を求める自己責任がある。イラクの人々から『日本は広島、長崎の悲惨な経験をしているのに、なぜこの戦争に賛成したんだ』と言われた。この間の反戦運動によって『広島、長崎の経験を忘れない人たちがいる』ことが伝わったと思う」と提起した。
 集会終了後、大ピース・レインボーフラッグを先頭にしてピースパレードに移り、「自衛隊はイラクから撤退を!米軍はイラク民衆虐殺をやめろ!NO WAR!」のシュプレヒコールを繰り返し、渋谷一帯に響かせた。     (Y)


国策翼賛の「自己責任」論を許すな
ジャーナリストとNGOが院内集会


 四月十五日午後、WORLD PEACE NOW実行委員会は参院議員会館で緊急の院内集会を行った。この集会は、ファルージャへの米軍の無差別殺りく攻撃をはじめとするイラクの現状について報告し、NGOやフリージャーナリストの活動に対する「自己責任」論をふりかざしたバッシングに対抗するために設定されたもの。
 フォトジャーナリストの豊田直巳さんは、「テロリスト一掃」という名目で米軍が進めているファルージャ包囲・軍事攻撃によってすでに七百人もの一般市民や子どもたちが殺されている事実を報告した。豊田さんは、ファルージャで無差別に殺されている市民が「テロリスト」というのであれば、反米意識をますますつのらせているイラク国民のすべてが「テロリスト」になってしまうと指摘した。さらに豊田さんは自衛隊が派遣される以前にサマワに駐留していたニューヨーク州出身の米兵九人が、劣化ウラン弾によると見られる放射能被曝によって深刻な健康被害に陥っていることを報告するとともに、「人道支援」という名目で占領軍の一部として派兵された自衛隊の活動を厳しく批判した。
 NPO「ピースオン」の相沢恭行さんは、友人である高遠奈穂子さんのストリートチルドレンへの支援活動を紹介し、「ピースオン」が展開している障害者施設にスクールバスを送る活動などについても報告した。
 JVC(日本国際ボランティアセンター)の熊岡路矢さんは、政府・与党の政治家やメディアが吹聴している「自己責任」論に対して批判するとともに「NGOの人道支援活動については、政府ができない貴重な貢献であるという評価が確立されるべきであり、そもそも人道支援活動は軍事組織が行ってはならず、国際的で公平、中立な非軍事組織によってなされるべきというのが国連の原則だ」と強調した。
 そして熊岡さんは、軍事活動と「復興支援」の明確な区別を無視した自衛隊派兵を批判し、ファルージャへの米軍の攻撃を止めさせるために全力を上げようと訴えた。
 続いて、参加した国会議員からの発言。中村敦夫さん(みどりの会議、参院)、阿部とも子さん(社民党、衆院)、照屋寛徳さん(社民党、衆院)、藤田一枝さん(民主党、衆院)、近藤昭一さん(民主党、衆院)、稲見哲夫さん(民主党、衆院)、石毛えい子さん(民主党、衆院)、東門美津子さん(社民党、衆院)がそれぞれ「人質」の解放と自衛隊撤退のために市民運動、NGOと協力して行動する、と述べた。(K)




自衛隊イラク派兵に反対し東京東部で集会とデモ
占領軍は撤退せよと250人


 【東京東部】四月十五日、東京・錦糸公園で「自衛隊のイラク派兵に反対する4・15東京東部集会」が、沖縄の闘いと連帯する東京東部集会実行委の主催で開かれ、二百五十人が参加した。
 自治労小菅ユニオンの中川達也さんの反戦フォークの後、主催者を代表して岸本町雄さん(東京東部労組委員長)は「石油利権のために、ブッシュはイラクへの侵略戦争を行った。何の正当性もないアメリカの占領に対して、イラク民衆は抵抗を激しく行っている。小泉政権の自衛隊派兵は誤りであり、即時に撤退させるべきだ。三人の連れ去られた仲間たちを救おう」と訴えた。
 続いて、韓民統のソ・ヘンデさんは「共和国への経済制裁やマンギョンボン号の往来を禁止するような法案提出は、共和国への戦争挑発だ」と日本政府を厳しく批判した。部落解放同盟の藤本忠義さんは「昨年五月から、同盟員個人に対して『殺してやる。住めないようにさせてやる』などの差別ハガキが大量に送られている」と報告し、「侵略戦争への加担が差別・排外主義を増幅させている」と警告し、ともに闘うことを訴えた。墨田教職員組合の加藤委員長は、「『日の丸・君が代』の強制に反対する闘いに、石原都政が大量処分で弾圧している」ことを批判し、「教育基本法の改悪を許さない闘いを作りだそう」と訴えた。
 次に、荒川区労評、足立・三反の会が地域の取り組みを報告した。沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの事務局長・木村さんは「沖縄駐留米軍の三千人がイラク戦に参加し、そのうちファルージャ攻防戦に千六百人が参加している。さらに、普天間飛行場代替施設建設のためのボーリング地質調査が近々行われようとしている。私たちは基地の拡張やイラク戦争への加担に反対する。5・15平和行進、5・16基地包囲行動を行います」と訴えた。
 集会アピールを採択し、江東区の亀戸文泉公園まで「アメリカの占領をやめろ! 自衛隊のイラクからの撤退を」訴え、一時間のデモを行った。  (M)

「人質の命」か「ブッシュ」か
自衛隊即時撤退求め5日目の官邸前行動

 四月十三日午後六時、WORLD PEACE NOW実行委は、この日で五日目となる「『日本人の命』か『ブッシュ』か 小泉総理は、自衛隊をただちに撤退させろ!」衆議院議員面会所集会を行った。イラクで武装グループに拘束された三人の仲間の解放が、いまだに実現しておらず、かつファルージャに対する米軍の包囲・大量虐殺の強行の危険性が迫っているという深刻な現地状況の下で、約千人以上(首相官邸抗議行動時)の参加者があった。
 高田健さんは、四日連続行動の経過報告後、「小泉政府は妨害ばかりをやっている。自衛隊の即時撤退こそが唯一、三人の仲間の解放につながる」とあらためて強調した。また、ピースボートがカタールに代表を派遣し、アルジャジーラ放送に出演し、武装グループに三人の仲間の解放を訴えたことを紹介した。さらに、この議面集会で緊急連続行動は終了することを確認し、十八日、渋谷・宮下公園の集会デモに結集することを呼びかけた。
 次に国会議員から連帯アピールが続いた。社民党、共産党、民主党、無所属の議員たちは、この五日連続行動で一番多く、十人が駆けつけた。とりわけ民主党の議員からは、民主党執行部が「自衛隊撤退」の態度を鮮明に打ち出せないことを批判し、撤退署名運動などさまざまな取り組みを果敢に展開していることを報告した。
 続いて、志葉玲さんは、友人の高遠菜穂子さんがストリートチルドレン支援活動をねばり強く行なってきたことや交流の日々について紹介した。そして、「ファルージャは米軍に包囲されている。停戦中だが、狙撃兵が民衆をねらっている。三人の仲間は、ファルージャにいる可能性があり、米軍の包囲によって、危険だからこそ解放できない状況にあるのかもしれない。だからこそ、米軍と自衛隊の撤退が必要なんだ」と怒りを込めて訴えた。
 拘束されている今井紀明さんの友人である田部知江子弁護士は、署名とカンパ運動の急速に拡大している状況にあることを報告し、自衛隊の即時撤退を本当に実現していこうと力強くアピールした。
 集会終了後、首相官邸に向けて移動し、「三人の仲間を殺すな!自衛隊の即時撤退!イラク民衆を殺すな!戦争反対!」のシュプレヒコールを繰り返し行っていった。(Y)


ファルージャを救え!
小泉は殺りく中止を申し入れよ首相官邸と米大使館に抗議行動

 四月十六日午後六時から、首相官邸とアメリカ大使館に対して、米軍の包囲を解いてファルージャでの大虐殺を即時中止するよう申し入れる行動が行われた。主催は劣化ウラン廃絶キャンペーン、劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワーク、自衛隊の即時撤退を求める法律家の会。この行動には二百五十人が参加した。
 イラクで多発している外国人誘拐が、ファルージャで続けられている米軍による大虐殺を何とかして食い止めようとするものであることは論を待たない。今井君、高遠さん、郡山さん三人が解放された後も米軍による無差別虐殺は続いており、新たにフリージャーナリストの安田純平さんと「米兵・自衛官人権ホットライン」の渡辺修孝さんが拘束された。この日の行動は、すでに六百人以上が殺害され数千人が負傷させられたファルージャ大虐殺を何とかして食い止めようという流れを作り出すために取り組まれた。
 アメリカ大使館への申し入れ項目は以下の三点。1、ファルージャへの無差別攻撃をただちにやめて包囲を解くこと。2、占領下で行われている人権侵害をただちに中止すること。3、劣化ウラン弾使用をただちに中止すること。
 衆院議員面会所前の集会では最初に主催者を代表して映画監督の鎌中ひとみさんがあいさつ、「これ以上殺させるな。一分一秒でも早く虐殺をやめさせよう。何万人も殺害したブッシュの戦争犯罪を糾弾しよう」と訴えた。
 テレビや新聞や週刊誌では、ブッシュ政権の無法な侵略戦争と憲法を踏みにじってそれに追随する小泉政権の暴挙を問うこともなく、非道というしかない「被害者バッシング報道」がはんらんし、家族の苦しみを倍加させている。ほっかいどうピースネットの七尾さんは、このような反動的マスコミによる「被害者三人と家族に対するバッシング」を怒りを込めて糾弾し、「三人と家族を支えよう」と訴えた。
 劣化ウラン研究会の山崎久隆さんは、この瞬間も続いているファルージャでの大虐殺について、生々しい現地からのレポートを紹介しながら告発した。「頭を撃たれた若い女性や体が焼けただれ足がちぎれた男性などが次々に病院に運び込まれている。すでに六百人以上の人々が殺害された。そのうち百人以上が子どもで二百人以上が女性たちだ。米軍は『休戦』といいながらも、占領したビルから狙撃兵が負傷者を運ぶ救急車までねらい撃ちにしている。かろうじて残っているジャーナリストがこの惨劇を伝えている。あらゆるジャーナリストを排除しようとするブッシュや小泉の策動は、イスラエル軍によるジェニンの大虐殺を再現しようとするものだ。われわれの目の前で起こっているこの大虐殺を止めよう」。
 議面集会ではこのほか、社民党衆議院議員の阿部知子さん、新しい反安保実の天野恵一さんなど、いくつかのアピールを受けた。首相官邸前では、違法な侵略戦争を支持し憲法違反のイラク派兵を続ける小泉に抗議し、アメリカ大使館前ではブッシュ大統領とベイカー駐日大使への申し入れ書を読みあげて手渡し、リレートークや歌で闘うイラク民衆への連帯の意志を表現した。      (I)


「日本人人質事件を考える」
日本ビジュアルジャーナリスト協会の緊急集会に九百人

 四月十六日、東京中野の「中野ゼロホール」で「日本人人質事件を考える」緊急集会が開催された。主催は「日本ビジュアルジャーナリスト協会(JVJA)」とフォトジャーナル誌『DAYS JAPAN』。一時は「解放」が伝えられた邦人三人だが、その後事態は進展せず、開催前日になってようやく解放された。だが一方で新たに「二人のフリー記者が拉致された」との情報も入った。事態が緊迫の度合いを増すなか、本集会は緊急に呼びかけられた。会場には入りきれないほど人々が続々と詰めかけ、参加者は最終的に千人近くにも膨れあがった。
 まずJVJA世話人代表の広河隆一さんがあいさつ。「今回の人質事件は実にさまざまな問題をはらんでいる。日本政府は、事件の混乱に拍車をかけるようなこと以外には何もしなかった」「私たちは二つの『人質事件』を最も早い段階で知る立場にあった。第一報をはたしてだれに伝えるべきか。政府にそのまま伝えていいのか。そういうちゅうちょもあった」。「今回の人質二人の救出は、三人よりもはるかに難しいかもしれない。帰国後、彼らには口封じの圧力もかかるだろう。そうしたこと含めて今日は問題提起と討論の時間を設けています」。
 最初に森住卓さんが発言。「今回の事件は二つとも私が第一報を発した。二回目の二人の事件は、米国のイラク侵略の行く末を決する運命的なものを感じる」「私はバグダッドでストリートチルドレンを撮り出したが、子どもたちと一緒にいる高遠菜穂子さんを撮るために彼女を待っていた。しかし約束の時間になっても彼女は現れなかった。こうして事件が発覚した」「一連の事件をどうみるか。イラクの人々はアメリカに対して、サダムを倒してくれたことはうれしいが、サンキューとは言えない。なぜなら、アメリカが自由と民主主義の抑圧者であることがわかってきたからだ」。
 森住さんのスライド上映の後、豊田直巳さんが報告した。
 「イラクでの自衛隊の活動はメディアで流されるが、NGOの活動はほとんど流されず人々に知られていない。自衛隊はサマワに給水車を提供したというが、サマワには水も給水車も豊富にある。ただのパフォーマンスだ」「現地の自衛隊員に支払われる『手当て』で、どれほど多くのイラク人が現地で雇えることか。どれほど多くの車が買えることか」「この兵士の写真、米軍か自衛隊かまったく区別がつかないですよ。普段この建物はだれも『防衛』したりしません。内部に自衛隊が入っている間だけこうして重武装の自衛隊員が周囲を警戒し、終わったらさっさと解散するのです。自衛隊員は隊員自身の『人道援助』を『防衛』しているのです」。
 ビデオ・ジャーナリストの土井敏邦さんは、バクダット大学での学生へのインタビューや、そのホームスステイ先の家族へのインタビュー映像を紹介した。ほとんどの学生とイラク市民が自衛隊の派兵に反対し、日本のアメリカ追随主義への批判をはっきり表明している。
 「ファルージャでは米軍の占領によって六百人もの人々が家族から奪われている。私たちはそういう悲劇にも想像力を巡らせるべきだ。私たちはファルージャの現実を伝えなければならない。それがジャーナリストの仕事だ」。
 最後に古居みずえさんが発言。「今回の人質はすべて私たちの友人だ。今井紀明君は北海道で私の講演を熱心に聴いてくれた」「政府は無責任な退去勧告をし、現地に居続けるフリーのジャーナリストに対して非難が浴びせられている。こういうことが続けば、戦争の被害地へ行って、その実態を伝える人はいなくなるだろう」「ジャーナリストの本質とは、弱者のもとに行くことだ。私もファルージャに行きたい。私たちは有名になりたいとか、スクープをねらって危険な地域に行っているわけではない。NGOの人たちも、苦しんでいる人を無視できないから活動を続けているのだ」。
 発言の最後にアジアプレスの綿井健陽さんからのメッセージが代読された。
 アンケート用紙が回収され質疑応答が始まった。会場からの質問内容は「ジャーナリスト自身の危機管理について」「現地での取材への圧力」「日本とイラクの民衆で何ができるのか」「帰ってくる三人をどう迎えるか」など実に多様だ。回答として提起者から次のような発言があり、賛同する参加者が拍手で応えていた。
 「『危機管理』といえば、イラク現地では、自分が日本政府を拠り所にしたとたんに、相手の殺意を感じる。日本政府に何かをしてもらおうとすれば、現地では殺されてしまうことだってあるのだ。私たちはこれからも日本政府に助けを求めるつもりはない(広河)」。「フリーは発表する場が非常に少ない。大手メディアに登場しても、短い放送時間枠で要領よく真実を伝えることなど、できないのが現実だ(古井)」。「私たちの武器はペンとカメラだ。非暴力に徹してやっていく。今回の事件の教訓を、人質となった人たちと共有できるような取材を帰国後、彼らに対して行いたい(豊田)」。「三人のこれまでの行動や現地での貢献を、日本人ではなく当のイラクの人々がどう感じているのか、という視点が決定的に重要だ(土井)」。
 広河さんが「今回三人が無事解放されたのは、まさに彼らがこれまで現地でやってきたことの結果だ。私たちは彼らを誇りに思う。そして彼らを無事に助けることが、ジャーナリズムと人々の知る権利を守ることなのだ」とまとめて、閉会した。
 四日前に電子メールで呼びかけられた「緊急集会」だが、開場前から長蛇の列ができていた。当初被害者家族が発言を予定していたが、「解放」の報を受け急きょ欠席した。にもかかわらずロビーは着席できない参加者であふれた。この事件への関心の広さと、情勢に対する人々の強い危機感が表れていると言える。
 「自衛隊は戦闘に行くのではない。人道支援に行くのだ」と繰り返し詭弁を弄した小泉政権は、今回の事件で解決不能な自己矛盾と馬脚を早くもさらけ出している。それはこういうことだ。
 巨額の税金を浪費した自衛隊による「人道支援」は強行しても、危険を顧みず何ら報酬を求めない民間人の地道なボランティア活動――これこそが真の「人道支援」である――に対しては、「自己責任」という一言で無視し、切り捨てていく、という矛盾。
 日本による「人道主義的国際貢献」を声高に叫びながら、戦争グローバリゼーションを推進し、民間人やNGOには「危険地帯へは絶対に近づくな」と「一国平和主義」を押しつける矛盾。
 大手メディアは常に安全な場所に逃亡し、危険な取材はフリーランスを使いながら紙面を埋めていく。生活費を切り詰めてアルバイトで渡航費を稼ぎ、手弁当で戦争の真実を伝えようとするジャーナリストらは、大メディアの「需要」にも的確に応えている。しかしそんな彼らを批判し、彼らの行動を牽制し、仕事を奪うということは、大新聞の「競争力」を削ぎ落とし、結果的に統制・官製・御用報道へと行き着くという矛盾、などである。
 いうまでもなく事件の責任はすべて、自衛隊の派遣を強行し、アメリカと一体になった占領軍として立ち振る舞わせた日本政府にある。自衛隊は即時イラクから撤退せよ。アメリカは占領と虐殺をやめよ。ジャーナリストやNGO・民間人の生命の安全とその行動を、日本政府は保証せよ。国民の伝える権利と知る権利を守れ。     (S)



人質事件受け秋田で自衛隊撤退要求デモ
32回目の定例日曜日行動


 【秋田】四月十一日、第三十二回定例日曜市民デモが駅前を一周するコースで行われた。この日のデモには人質事件を受けて、いつもより多い八十人が参加した。
 日曜デモを主催している「有事法制の廃案をめざす共同行動事務局」は、イラクのファルージャでの激化する戦闘という情勢の中で発生した人質事件を受けて、「県民アピール」を発表した。
 声明では、「政府が相手側との接触もできないうちに『自衛隊の撤退はしない』と公表することは重大な問題であり」「今こそ自衛隊のすみやかな撤退を強く求めます」としており、イラクから撤退すべきは「軍事部隊」であって「民間NGOやボランティア」ではないと道行く人々に訴えた。
 この日は人質問題もあってマスコミ各社も取材に来ていた。
 「共同行動事務局」では四月十四日(水)の夜には「三人を救え(見殺しにするな)!!キャンドル・デモ」を予定していたが、こちらのほうは、「人質解放」の声明発表の報道をうけて中止となった。
 今後も自衛隊の撤退に向けて四月中も日曜デモを継続して取り組んでいくことが確認された。  (S)

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