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                            かけはし2004.412号

有事7法案反対!戦時動員体制を作らせるな

グローバルな反戦運動と結合した持続的抵抗の闘いを発展させよう


 パウエル米国務長官は、昨年二月に国連安保理で行った「イラクの移動式生物兵器製造装置の存在」という主張が「不確かな情報にもとづくもの」と発言した(四月二日)。ブッシュ政権がイラク侵略戦争に踏み切った「大量破壊兵器の脅威」という口実がすべて虚偽の情報操作であったことは、もはや動かしがたい事実である。
 ブッシュ政権でさえ、もはや「戦争の大義」にすがりつくことができなくなっているにもかかわらず、小泉首相はあくまでも米英によるイラク攻撃の「正当性」に固執し、憲法を頂点にした法体系を破壊して自衛隊のイラク派兵を強行した。そしてイラクにおいては、四月四日にナジャフやバグダッドで起こったシーア派のデモに対する占領軍の発砲と武力衝突に示されるように、六月「主権移譲」という展望はますます破綻に瀕している。帝国主義諸国のイラク占領支配は永続的な泥沼状況におちいっている。
 このような情勢にもかかわらず、ブッシュの戦争を無条件に支持し、占領軍として自衛隊をイラクに送り込んだ小泉政権の責任を問うべき国会審議は、「べたなぎ国会」と評される惨状である。小泉首相はまともに質問に答えることもなく、高飛車に追及をかわすだけである。
 三月二十六日に二〇〇四年度予算が成立し、国会はいよいよ「国民保護法案」など有事7法案、年金制度改悪関連法案、道路公団民営化関連法案など重要法案の審議に入りはじめた。七月十一日投票の参院選の日程がすでに確定しており、政府・与党の側は六月十六日の会期末に向けた二カ月の日程で、これら重要法案を成立させなければならない。会期延長はできないのである。
 しかし財界が仕掛けた自民・民主の「二大政党」体制の下での初の国会では、その冒頭から古賀潤一郎衆院議員の「学歴詐称」と民主党除籍、佐藤観樹衆院議員の秘書給与詐取による逮捕・議員辞職、宮城1、2区で当選した今野東、鎌田さゆり両衆院議員派の選挙違反への地裁有罪判決によって、民主党は重大な打撃をこうむっている。
 こうした参院選をにらんた最大野党・民主党の「イメージダウン」の中で、「テロの脅威」「北朝鮮の脅威」キャンペーンを背景に戦争国家体制の法的完成をめざす有事7法案が超スピード審議で成立させられようとしているのだ。
 自衛隊イラク派兵と有事7法案の上程は、それと連動した形で「戦争国家」化へのあらゆる憲法的制約を除去しようとする動きをともなっている。三月三十日、自民党国防部会・防衛政策検討小委員会は党の安全保障政策に関する提言「新しい日本の防衛政策」を了承した。同提言ではアメリカへの技術提供以外の武器輸出を原則禁止している「三原則」を緩和し、「@国連が決議したテロ支援国や人権侵害国、A国連決議で武器輸出が禁止された国、B国際紛争地域、C貿易体制が整っていない国」を除いて、武器輸出を認めることを提言している。また集団的自衛権の行使を規定した「国防基本法」を制定し、「敵国」のミサイル基地への武力攻撃を可能にすることなども主張している。
 また三月三十一日の開催された自民、公明、民主の三党間の協議会では、民主党が提唱している「緊急事態基本法」の法案骨子を、有事7法案衆院通過前に作成することを自民党が提案しており、民主党もそれを基本的に了承すると見られている。さらに北朝鮮への「経済制裁」の一環として、外為法改悪に続いて「特定船舶入港禁止法案」を民主党はすでに衆院に提出しており、与党案も提出の運びとなっている。
 「国民保護」法案は、「有事」にあたって「国民の自発的協力」という建前の下で、戦闘遂行のために自治体を通じて住民の退去にあたらせ、土地・家屋・物資を徴発し、電気・ガス・水道・通信・交通運輸・医療などの「指定公共機関」を動員し、命令に従わない者には懲役・罰金などの罰則を課する戦争動員法案である。
 「特定公共施設利用法案」は、港湾、空港、道路などに関して戦闘目的の優先的使用を、公共施設の管理者である自治体に強制し、必要な場合には首相が自ら管理権を代行しうる法案である。
 「外国軍用品等海上輸送規制法案」は、公海上で外国軍用品を運搬している船舶を臨検し、停船・回航・積み荷の引き渡し等を命令するとともに、命令に従わない場合は武器の使用を認める法案である。
 「米軍行動円滑化法案」(米軍支援法案)は、米軍の戦闘行動のために土地・家屋を使用し、港湾・空港を優先利用させ、弾薬をふくむ「物品・役務」を提供する法案である。
 こうした戦時動員法案が、「思想・信条の自由」をふくむ基本的人権を剥奪する弾圧法であることは言うまでもない。
 有事7法案の意図を多くの人びとに訴えるとともに、戦時動員を拒否し、抵抗を拡大するための労働者・市民運動の力量をこの法案阻止行動の中から蓄積していこう。イラク反戦・派兵反対の行動の中で始まった新たな可能性を、グローバルな闘いと結んだ持続的な抵抗へと発展させていこう。その道は確かに開かれているのだ。(4月5日 純)   


超スピード審議を許さない!

有事7法案と3条約・協定に反対して連日の国会行動

 三月三十日から四月一日まで三日間連続で、衆院第二議員会館前の路上で正午から午後一時まで、「国民保護法案」など有事7法案と日米物品役務提供協定改悪など3条約・協定に抗議する集会が開かれた。主催は陸海空港湾労組二十団体と戦争反対・有事をつくるな! 市民緊急行動、宗教者平和ネット、キリスト者平和ネット。三日間ともそれぞれ約百人近くの労働者・市民・学生が集まった。
 三日間とも航空連、海員組合などの二十団体を構成する労組や宗教者、市民団体が、自衛隊イラク派兵、有事法案、憲法改悪、立川テント村への令状逮捕・起訴などに示される「テロの恐怖」を口実にした治安弾圧の強化への抗議を訴えた。また共産党、社民党の国会議員が連日、参加者を激励して、ともに有事7法案を廃案へ! と訴えた。また四月一日には、ミュージシャンの喜納昌吉さんが発言した。
 四月九日に日比谷野外音楽堂で行われる「自衛隊のイラク派遣NO! STOP!有事法制 守ろう平和といのち大集会」に続いて、五月二十一日には明治公園で大集会が開催される。
 政府・与党は「べたなぎ国会」と言われる中で、四月六日にも衆院で有事法案を審議入りし、四月の連休前にも衆議院で可決して参院に送るというスピード審議をもくろんでいる。あらゆる可能性をつかんで、戦時法体系を現実に機能させるための有事7法案を廃案にするための運動を広げよう。       (K)


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