かけはし重要記事

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「もう原発は作りたくない」――           かけはし2002.4.22号より

原発の時代の終わりを表現する電力業界の本音


 電気事業連合会はこの三月、原発で発電をした後の使用済み核燃料再処理や耐用年数の過ぎた原発の解体撤去、再処理工場の解体撤去などに、二〇四五年までに三十兆円を要するという長期試算を発表した。
 もちろんこれで済むわけはない。来年三月に運転を終える核燃料サイクル開発機構(核燃機構)の新型転換炉「ふげん」(十六・五万キロワット)の廃炉費用が、四十年間で少なくとも二千億円と見込まれている。運転中の商業原発はほとんど「ふげん」の六倍から八倍もの出力で百万から百三十五万キロワットもあり、それが五十二基も稼働しているのだ。
 しかも核廃棄物の管理は四十年では終わらない。原発の高レベル核廃棄物が天然ウラン程度の放射能(それでもきわめて有害なレベルである)に衰減するには 百万年もかかるとされているのである。天文学的費用の算定は事実上、不可能である。
 長期試算では、六ケ所村に建設中の再処理工場が二〇一五年に稼働して十五年間で一万トンの使用済み核燃料を再処理するだけで三兆九千億円かかるという。しかも再処理して作られるプルトニウムは高速増殖炉が世界的に破綻したために核兵器以外に使い道がない。
 長期試算を発表した電力業界の本音は再処理の凍結である。現在二兆一千四百億円(もっと膨れあがる可能性が高い)もかけて建設中の再処理工場が完成し再処理を始めてしまえば、工場は高レベルの放射能に汚染されるために解体撤去費用が一挙に膨れあがるからである。再処理工場を建設している日本原燃の二〇〇一年度の増資計画に対し、これまで「国策」として協力してきた鉄鋼、化学、生損保、セメント、銀行、機械、非鉄金属などの各社が引き受けを拒否したため、電力十社がやむなく肩代わりせざるをえなかった。もうやりたくないのである。
 もはや「原発の発電コストは安い」というデマを主張するものは、電力業界も含めだれもいなくなった。電力自由化で競争が強まることによって、巨額の設備投資と天文学的な廃炉費用を必要とする原発は重大な重荷になりつつある。すでに各電力会社が計画中の原発の稼働開始予定は次々に延期されている。特殊法人・電源開発の民営化を控え、電気を買い取る側の電力業界からは電源開発が〇九年に稼働予定の青森県・大間原発の凍結論が出されている。
 自由化へ向けた最大の重荷である原発のコスト圧縮に全力を上げる電力業界は、定期点検の間隔を広げるなどより一層、危険性を増幅する方向でコスト削減に向かおうとしている。さらに電力業界は、原発コストへの公的支援を要請する方向で協議を開始した。そして経済産業省は、原発を建設する電力会社に補助金を出す方針を二〇〇四年度から実施する考えであると報じられている。
 「電力業界が原発コスト削減に向けた新たな公的支援を求めるのは、本格競争が迫り、原発の経済上の欠陥がはっきりしてきたからだ」。社の方針として頑迷な「原発推進」の姿勢で報道し続けてきた朝日新聞でさえ、このように(02年1月11日)言わざるを得なくなっているのである。
 コスト削減のために、かつては七十日〜八十日かけていた原発の定期点検期間は、いまでは半分の四十日前後に圧縮され続けてきた。今度は年一度の定期点検の間隔を広げることによってさらにコストを削減することが検討されている。
 原発立地点の地方紙や地方版以外にはほとんど報じられていないが、全国の原発で驚くほど多くの大小の事故が発生している。老朽化した原発ほど当然のことながら定期点検に時間がかかる。この定期点検がコスト削減のためにさらに簡略化されることによって、重大な事故の危険性がより一層、高まらざるをえないのである。
 高速増殖炉もんじゅのナトリウム火災事故が起き、東海村再処理工場の爆発火災事故が起き、敦賀原発二号炉では大量の冷却水喪失事故が起き、ついに二人の死者と数百人の被曝者を出したJCO臨界事故が起きてしまった。そして昨年十一月には、東海大地震震源域に断つ老朽原発浜岡1号炉で緊急炉心冷却装置(ECCS)配管爆発破断事故が発生し、原子炉圧力容器の制御棒駆動装置の深い亀裂から冷却水が漏れ続けていたことが発覚した。
 この冷却水漏れは、七月から続いていたことが明らかになっている。たいした漏れではないのにいちいち止めて点検し、長時間かけて修理したりすればますますコストがかかると考えた中部電力が、定期点検までだましだまし運転し続けようとしている最中に、ECCSという原発の最後の命綱で配管の爆発破断という重大事故が発生してしまったのである。
 昨年十二月二十八日、日本原燃は記者会見で、六ケ所村に建設中の核燃料再処理工場の使用済み核燃料貯蔵プールで七月から冷却水が漏れ続けていたようであると発表した。漏れ出した量は二月現在で五千リットル以上、二百リットルドラム缶二十五本分を超えた。二月十八日になんらかの理由でとまっていた漏水は、三月一日から再び始まった。
 コンクリートのプールに内張りした厚さ四ミリのステンレス板に細長い亀裂が生じているのではないかと思われるが、核燃反対一万人訴訟原告団が建設中に現場検証した際に、「溶接も稚拙で、ステンレスが浮き上がっているところなどもあり、漏洩を起こすことは確実だと思う」と語っていた。それが使用開始から二年足らずで現実のものになってしまったのである。
 漏水個所さえいまもって判明せず、原因もまったく特定できていないにも関わらず、一時間に一リットルのペースで漏水が続いている最中の二月六日、福島第二原発の使用済み核燃料十三トンが運び込まれた。九九年十二月以来、十四度目の搬入で、受け入れ総量は四百九十三トンに達した。そして日本原燃は三月十日までに、二〇〇二年度には四百トンの使用済み核燃料を六ヶ所村の漏水の続く貯蔵プールに運び込む方針を固めたと報じられている。
 言うまでもなく使用済み核燃料は、強烈な放射能の崩壊熱を出し続けるために貯蔵プールで冷却し続ける必要がある。下北半島沖は大地震震源域であり、再処理工場の下には活断層が走り、地盤も軟岩できわめて脆弱である。大地震で亀裂のところからプールが壊れてしまう可能性もある。
 なぜこんな崩壊しかけた恐るべき貯蔵プールに、しかも漏れている原因も場所も分からないまま高レベルの放射能を持つ使用済み核燃料を搬入し続けるなどという危険な綱渡りをしているのか。理由はきわめて単純である。全国の原発サイトにある貯蔵プールには使用済み核燃料がたまり続けており、六ケ所村の貯蔵プールに運び出さないと次々に運転を停止せざるを得なくなってしまうからである。
 たとえば福島第二原発は〇二年十二月から計七回、百七十九トンを六ケ所村に運び出した。にもかかわらず第二原発1号炉〜4号炉の使用済み核燃料プールは管理容量の八七・五%が入り、ほとんど満杯になりかけている。定期点検の度に発生する使用済み核燃料を運び出さなければ、たちまち運転停止に追い込まれてしまうのである。
 また、搬入を一時停止して調査すると改めて危険性が印象づけられ、しかも深刻な損傷が発見されて大規模な修理をせざるを得なくなったりすれば、長期間にわたって搬入停止に追い込まれるかもしれない。電力関係者が「いま、搬入にストップがかかれば再開の見通しが立たない」と懸念したと報じられている。各地の原発の運転停止は現実のものになろうとしていたのである。
 漏水し続ける六ケ所村核燃料貯蔵プール問題が象徴するように、廃棄物問題が解決できなかったことによって原発は終わりつつある。日本原電は一月四日、九八年に運転停止して廃炉になった東海原発(黒鉛ガス冷却炉、十六万六千キロワット)の解体作業に着手した。解体費用は九百二十七億円とされている。
 解体で十七万七千トンの廃棄物が発生するが、政府はすそ切りを行なって「放射能レベルがごく低い廃棄物」十五万九千トンを一般廃棄物として産廃処分場に持ち込むか、鋼材などは資源として再利用し、一万八千トンだけを放射性廃棄物として扱うという方針である。
 原発から出た廃棄物を産業廃棄物処分場に搬入することに対しては、強い抵抗が起こるだろう。一万八千トンの放射性廃棄物の処分先は、今後十年で決めるとされているが、受け入れて核のゴミ捨て場となることを希望する自治体はない。一度受け入れれば、次々に廃炉になる全国の原発の大量の放射性廃棄物を引き受け続けなければならなくなるからだ。これまで三十年以上も北海道や岡山や岐阜に押しつけようとして失敗し続けてきたように、あと十年経っても決まらない。そして処分しようのない核のゴミは、ますます膨大にたまり続けていく。
 原発が展望を失い、見捨てられ、終わりが近づけば近づくほど、政府・原発推進派はすでにそうなっているように、ますます無責任に、投げやりになっていく。労働者人民が闘いによって終わらせることができなければ、原発はそう遠くない将来、取り返しのつかない大事故によって自らを終わらせるだろう。六ケ所村再処理工場使用済み核燃料プールへの搬入を止めなければならない。浜岡原発1号・2号炉を廃炉にし、3号・4号炉を東海大地震の危険がなくなるまで停止させなければならない。一刻も早くすべての原発を止めよう。(4月8日 高島義一)

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