もどる

改憲・教基法改悪と一体のバッシング              かけはし2004.12.20号

ジェンダー・フリーはなぜ攻撃される


 十一月二十三日、新宿山吹町のラポール日教済で「ジェンダー平等社会をめざすネットワーク」主催の「ジェンダー・フリー、これほどまでに攻撃されるのはなぜ?」集会が行われ、百八十人が参加した。
 八月二十六日、これは台東区の中高一貫校での「つくる会」教科書採択と同日のことであったが、東京都教育委員会は「男女平等教育を進める上で「『ジェンダー・フリー』という用語は使用しない」、「『男らしさ』や『女らしさ』をすべて否定するような誤った考え方としての『ジェンダー・フリー』に基づく男女混合名簿を作成することがあってはならない」という通知を出した。同ネットワークはこの通知に対する抗議声明を九月二十二日に発表、七百人が賛同して東京都教育委員会へ渡した。このジェンダー・フリーへの攻撃を受けて、集会では四人の講演が行われた。
 はじめは船橋邦子さん(和光大学教授)からの「ジェンダー・フリーがなぜ必要なのか?」と題した講演であった。
 男らしさや女らしさから解放され、自分本来の姿になるということがジェンダー・フリーであり、社会的規範に束縛されること自体が人権侵害である。しかし、私たちが政策課題にしていくときにはそれだけでは不十分である。社会の中の女性差別を認識し、差別を撤廃していく運動が必要。それは男性の暴力性に価値を見出し、女性がそれを支えるものとされてきた近代社会の価値を問い直すことであり、オルタナティブな価値の創造が求められている。
 続いて鶴田敦子さん(子どもと教科書全国ネット21・代表委員)から「家庭科教育におけるジェンダー・フリー攻撃」についての講演が行われた。講演のはじめの「男女共修で家庭科を学んだ人は手をあげてください」という呼びかけにこたえて手をあげたのは、会場の一割程度、ほんの十数名であった。
 「家庭科教育は戦前は家父長制を支え、天皇制を支えるものであった。女子だけの家庭科は四十年間も続けられ、性別役割分業意識を刷り込んできた。今また家庭科を選択制にしようとする動きも出ている。ジェンダー・フリーは家族を解体するものだとされ、『ジェンダー・フリー』という用語を使用した教科書は採択されなくなっている。そのような教科書を教科書会社も作らなくなってきている。今後はメディアへの働きかけを強め、私たちもジェンダー・フリーに対する多くの人の理解を促進していこう」。
 続いて橋本ヒロ子さん(十文字学園女子大学教授)からは「男女平等の政策の実態」と題した講演が行われた。
 「国内的には、二〇〇一年の夫婦間暴力防止法および被害者の救済に関する法律(DV法)制定および二〇〇四年の改正などの成果があった。しかし、その一方で国会質問等でますますひどくなるジェンダー・フリーバッシングや、二〇〇四年六月十日に公表された自民党憲法改正プロジェクトチームの論点整理案による現憲法二四条改正の動きに対して、内閣府男女共同参画局も男女共同参画会議も適切な対策をとれなかったという問題点もある」。
 「宇部市男女参画推進条例のように『専業主婦を否定しない』という文言が入り、男女特性論を強化するような保守派にとってのモデル条例もつくられている。条例制定後の改悪の動きも見られる。メディアも行政も市民が声をあげることが力になり、変わっていく。私たちも声をあげていこう」。
 最後に俵義文さん(子どもと教科書ネット21・事務局長)から「ジェンダー・フリー攻撃をめぐる情勢」講演が行われた。
 「ジェンダーに関する問題を語ることのできる男性がいないということは非常に大きな問題だ。日本の運動は男が中心であった。男は外で活動をして、女はそれを支えるという構造があった。私も私生活では指摘をされる。正しい私生活を送っているわけではない。みなさんとともに学習をしていくという立場だ」。
 「ジェンダー・フリーへの攻撃は憲法、教育基本法『改正』や『つくる会』教科書問題、『日の丸・君が代』強制、性教育攻撃などと一体であり、『戦争をする国』をめざすものだ。民主党の中山義活議員は『戦争をして国を守るのが男。ジェンダー・フリー教育で男らしさ、女らしさが発揮できなくなっている』というような発言をくりかえしている」。
 「『つくる会』は二〇〇五年の教科書採択に向けて一〇%以上の目標を掲げて各地で策動をはじめている。このピンチをさまざまな課題に取り組んでいる人たち、市民組織、教職員組合、労働組合などと幅広いつながりをつくり反撃することで、日本社会の世論を大きく変えるチャンスにしていこう」。
 講演のあとには講演者に対する質疑応答。「『戦争をする国』とは実際に戦争をするのか、それとも経済的に戦争を支援する態勢をつくるということか」という質問に対して俵さんは次のように回答した。「日本の多国籍企業の進出先はアジアや中南米が中心であり、暴動が起きた際には自国の軍事力で防衛できるようにするという企業の要求がある。『戦争をする国』とは自衛隊がいつでもどこにでも出ていけるということ」。
 最後に各地からの力強い取り組み報告。「学校に自由の風を!」ネットワークからは一月十日の「変えよう!強制の教育」日比谷公会堂大集会へのよびかけが行われた。  (F・M)



ポルノ買春問題研5周年シンポ

インターネット時代の買春・暴力ポルノの今を問う


 十一月二十八日、ポルノ・買春問題研究会設立5周年シンポジウム「ポルノ・買春問題の現在(いま)」が東京の文京区民センターで開催された。ポルノ・買春問題研究会(APP)は、女性の人権の観点からポルノの問題に取り組む日本で唯一の団体としてポルノの社会問題化をめざして活動してきた。この五年間の活動を集約し、新しい課題に挑戦するためのステップとしてこのシンポジウムが準備され、四十人近い人びとが参加した。
 最初にこれまでのAPPの活動について中里見(なかさとみ)博さんが報告した。
 中里見さんは、性的リベラリズムの風潮への批判を意識して、両性の平等な人権という立場からポルノ批判に踏み込んでいったAPPが、まず事実の調査から、それを社会問題化していく努力を行ってきた、と語った。元AV(アダルトビデオ)の男優、スカウトマンへのインタビューを通じたポルノ作成現場の実態報告、インターネットを通じて普及している暴力AVの消費の実像、ポルノ被害についてのアンケート調査などである。今後は被害者支援ネットワークの形成、国会などへのロビー活動にも力を注ぐことが目指されている。
 その後、三人が報告を行った。藤野豊さん(大学教員)のテーマは、「観光政策としての売買春――渡鹿野島をめぐって」。渡鹿野島とは三重県磯部町(今年十月一日以後、志摩市)にある小島で、近世以後遊廓が作られ、近代においても「貸座敷」での売買春が行われた地域である。そして一九五八年の売春防止法の完全施行以後も、現在にいたるまで行政の隠蔽の下で管理売買春が行われ、週刊誌・月刊誌、新聞などでその情報が頻繁に紹介されている。行政側にとって、この事実上公然たる売買春はは「地域振興策」の軸に位置づけられているのである。
 藤野さんは、今年『近現代日本の買売春』(解放出版社)を著し、その中で渡鹿野島の事例についても記述したが、刊行直前に町(現志摩市)当局から著者の藤野さんと出版元の解放出版社に対して「廃版と謝罪」を求める圧力がかかった。町側は「地元住民の人権侵害」「女性の人権侵害」として藤野さんの著書を批判し、さらに三重県人権センター、三重県同和教育研究協議会など部落解放運動をも動員して圧力をかけた。解放出版社の側はあくまで同書を刊行する意向だが、同社の経営母体である部落解放同盟の態度はあいまいなままである。
 藤野さんは、「地域住民の人権」を理由に女性への性暴力(人身売買、強制売春)を隠蔽する行政当局や、「人権」といえば「同和」以外にないという認識を厳しく批判した。

 次に清末愛砂さんが「戦時性暴力とポルノ・売買春」というテーマで報告した。清末さんは、米軍がイラクのアブグレイブ刑務所などで行った人権侵害は、何を物語っていたのか、と切り出した。
 「あの事件で明らかになったことは戦時性暴力がポルノ化していくという問題ではなかったか。あの拷問・虐待写真の流出によって、占領者は意図した目的を達成したのではないかと思う。支配者の側は、女性兵士が『テロリスト』に暴力を加え、支配している現実を見せようとした。女性兵士の加害者化の中に、意図されていた事柄が垣間見える。ジェシカ・リンチさん救出報道の時には、テロリストから女性を救出するという構図だったのに対し、アブグレイブの写真では女性による虐待のシナリオが描かれた」。
 さらに清末さんは、女性の被収容者についてはどうだったのか、と問いかけた。
 「クリスチャン・ピースメーカー・チームのイラクでの調査では、女性への接触は少ない。しかし男性収容者以上の過酷な状況にさらされている。どういう女性が拘束されているのかと言えば、例えば家族がバース党の幹部だったり、武装勢力に連絡したり資金を提供したという嫌疑をかけられた人びとだ。イラク社会では、そうした女性への暴行の噂が流されている。そうした暴行を受けたとされる女性は、二重、三重の暴力にさらされる。暴力が国家機構によって行われているため、被害者が訴える機関はどこにもない」。
 質疑の中で清末さんは、「アブグレイブ刑務所での拷問・虐待写真が流出した時、同時に女性被収容者へのレイプ写真も流れた。しかし、それがポルノサイトからの合成写真だったということで、その問題は消えてしまった。しかしなぜ虐待がポルノ化したのか、ということを問わなければならなかったのではないか」と清末さんは注意を喚起した。
 最後に、山本有紀乃さんが「インターネット時代の暴力ポルノ」をテーマに報告した。山本さんは、暴力ポルノの主たる映像媒体がビデオからDVDに移行したことにより、制作面でも消費面でも急速な変化が起きていると指摘した。またインターネットによって制作側と消費側の垣根が低くなっている、とも述べた。例えば、ネット掲示板を利用して視聴者が煽り、暴行内容がいっそう過激になるとか、視聴者を組織して集団レイプ企画に参加させるという事象もある。
 またビデオがDVDに変わったことにより、ポルノへのアクセスがきわめて容易になり、「素人」による画像の提供、配信などが進んでいる現実も紹介した。
 こうした明確な犯罪行為に対して、社会の反応はきわめて鈍い。暴力ポルノや人身売買、強制売春という犯罪のまん延を社会問題化し、被害者を救援する取り組みがぜひとも必要である。        (K)


連帯の力で闘いぬくぞ!

山谷・新宿越年越冬闘争へのカンパを


十二月二十三日(木)越年闘争実行委員会結成集会/午後七時/山谷福祉労働者会館
十二月二十八日(火)越年闘争突入〜〇五年一月四日(火)早朝まで/午後一時/城北労働福祉センター
bカンパのお願い
コメ、野菜、調味料、その他食材、食物、毛布、衣類(なかでも防寒着、下着、靴下、ただし男物に限ります)、石けん、カミソリ、シャンプー、カイロなどの日用品
b送り先 山谷労働者福祉会館 一一一│〇〇二一東京都台東区日本堤一│二五│一一 電話&FAX〇三│三八七六│七〇七三
b振込先
山谷労働者福祉会館運営委員会 郵便振替口座 〇〇一九〇│三│五五〇一三二
b十二月二十日(火)新宿越年越冬支援連帯集会/午後七時/三栄町社会教育会館教養室
b十二月二十九日(水)〜〇五年一月四日(火)新宿越年集中闘争/新宿中央公園ポケットパーク
b越冬カンパ
現金(諸活動資金)、米券、米、レトルト食品、衣類(男女問わず冬物、多少汚れていても構いません)、毛布、ホカロン、テレホンカード(入院者の連絡用、使用済みでも可)、葉書、切手(入院者の連絡用)
b送り先(通常、日曜指定でお願いします) 山谷労働者福祉会館 一一一│〇〇二一東京都台東区日本堤一│二五│一一 電話&FAX〇三│三八七六│七〇七三
b送り先(十二月二十九日〜一月四日まで) 一六〇│〇〇二三 東京都新宿区西新宿二│一一 中央公園ポケットパーク新宿連絡会越年本部 電話〇九〇│三八一八│三四五〇(笠井)

b振込先
新宿連絡会 郵便振替口座 〇〇一七〇│一│七二三六八二


もどる

Back