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                                かけはし2004.11.08号

「国柄」は戦前の「国体」と同じ!

「憲法改悪を許さない、国民投票法案をどう考えるか」

 十月二十三日、東京の日本教育会館で「10・23憲法シンポジウム」が「憲法改悪を許さない 国民投票法案をどう考えるか」というテーマで開催された。主催は、日比谷で超党派的な憲法集会を開催してきた「5・3憲法集会実行委員会」。会場いっぱいの三百五十人が参加した。
 パネリストは江尻美穂子さん(日本YWCA理事長)、高橋哲哉さん(東京大学教授)、渡辺治さん(一橋大学教授)の三人。
 「9条改憲と平和の願い」と題して発言した江尻さんは、女学校二年の時に敗戦を迎え、生きる指針を求める思想的飢餓状況の中でキリスト教を受け入れたこと思い出を語った。江尻さんは、宗教の最大の問題は「自分の側に絶対的真理がある」と思い込むことであり、ブッシュの考え方にそれが端的に示されているが、同時に聖書には「武力で相手をねじふせてはならない」という言葉もあり、自分はその言葉を指針にして現在の戦争と暴力に立ち向かっていきたい、と訴えた。

「論点整理」は皇国史観


 高橋さんは、各党の改憲構想についてその特徴を分析した。
 「自民党改憲プロジェクトチームの『論点整理』は、『歴史、伝統、文化に裏打ちされたわが国固有の価値としての国柄』を憲法に書き込むことを主張している。この『国柄』という表現は、戦前の『修身』の解説書では『国体』と等値されている。さらに憲法24条の『両性の本質的平等』についても、家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきと主張されている」。
 「天皇制については、『わが国の歴史、文化、伝統と密接不可分』とされており、天皇の地位は『国柄』によって根拠づけられている。天皇制は『日本民族二千有余年の伝統』に根づいているというのだ。これは全くの皇国史観だ。その観点から政教分離規定も『国柄』を踏まえたものとするべきだとして、天皇の靖国参拝を公的なものとし、『代替わり祭祀』まで国家の公的行事とされることになる」。
 「こうした復古主義的国家主義の前面化は、自民党内のリベラル派傾向の退潮を表現したものだろう。さらに憲法とは国民が国家にしばりをかけるものだという本質的概念を否定し、憲法とは権力制限規定にとどまるものではなく国益のための国民と国家の役割分担だと主張している。ここから『国家と国民との共生』とか、『国民の憲法尊重・擁護義務』を明記する、という内容が導き出されている」。
 「民主党の仙石由人氏は、イラク戦争については国連憲章に違反しているから反対だと言う。しかし国連安保理が承認する武力行使には日本も積極的に参加すべきであり、その際、憲法改正の必要があれば改正すると述べている。その際、国連軍に参加させる自衛隊には『主権委譲』規定を盛り込んで、国連・多国籍軍の指揮に委ねる。そうすれば『国権の発動としての武力行使』ではなくなる、というのだ。いずれにせよ、世論が成熟していけばそうしたことも構わないのではないか、というのが民主党の主張だ」。
 渡辺治さんは、国民投票法案の問題点を中心に報告した。
 「『憲法調査推進議員連盟』がまとめた『憲法改正国民投票法案』では、賛否の投票方式に関して、改憲案を一括して賛否を問うのか、それとも改悪案の各条項ごとに賛否を問うのかがハッキリしていない。しかしこれまでの案はすべて一括的に賛否を問う方式だ。ここ一年間の各種世論調査によれば、全体としては改憲肯定論が多いが、改憲反対のパーセンテージも増えており、9条改憲に限れば読売新聞の調査ですら賛成四一%、反対四五%と、反対が上回っている。その他の調査では9条改憲が過半数だ」。
 「今井一さんは、『9条改憲』一本で国民に直接信を問うべきだ、と主張している。しかし国民投票法案を作るのは、改憲派が圧倒的な国会だ。国会のねらいは9条改憲をやりやすくする国民投票法案なのであって、今井さんの主張に乗るわけにはいかない。改憲発議を許さない闘いなくして国民投票では勝てない」。

改憲発議を許さない闘いを


 三人の報告の後、質疑に移った。高橋さんは民主党のまとまり方は、保守的な方向ではなく新自由主義を前面に出したものであり、自民党「改憲プロジェクトチーム」案ではまとまらないと語り、渡辺さんは「国柄的改憲論」は改憲多数派を結集するための一種の「見せ金」ではないか、と分析した。
 高橋さんは「憲法、教育基本法の最良の部分は、今日の政治状況に対するラディカルな対案である」と主張し、江尻さんは「理論武装できない場合でも感性の部分で語る必要もあるのではないか。感情的護憲論だと批判されて消極的になる必要はない」と訴えた。
          (K)


石原都政・都教委の暴走を止めよう
「日の丸・君が代」の強制許すな 処分の撤回を

 十月二十四日、石原・横山の暴走をとめよう!都教委包囲首都圏ネットワークは、東京・文京区民センターで「『日の丸・君が代』強制と処分を許さない10・24討論集会」を開催し、百五十人が集まった。
 東京都教育委員会は、九月、都立深川高校(江東区)と千早高校(豊島区)の創立記念行事に、校長が生徒の「君が代」起立斉唱の指導を内容とする職務命令を教職員に対して出すように通知した。二校の校長は、全教員に職務命令を出した。このような都教委の暴挙を許してはならない。都教委は、十・二三通達以降、卒業式・入学式時における不起立した教員に対する大量の処分を強行し、「再発防止研修」と称する思想転向の強要など教育破壊を繰り返している。他方、教育基本法改悪に向けた自民党と公明党の協議会は、「愛国心」と「宗教教育」について合意しないまま改悪法案化の作業を開始した。
 このような都教委に対してネットワークは、被処分者の闘いを軸にしながら「再発防止研修」反対行動(八・二、九)、都教委包囲デモ(八・三〇)など網の目の集会を取り組んできた。この集会は、この間の闘いを総括し、教育基本法改悪阻止、来年三月〜四月の「日の丸・君が代」反対!不起立闘争の拡大と闘う体制を構築していくために行われた。
 集会は、見城赳樹さん(教育基本法の改悪に反対する教職員と市民の会)の基調提起で始まり、「山場は、卒・入学式です。来る三月〜四月の東京の闘いは、極めて重要です。教育基本法改悪をめぐる情勢にも重大な影響を与えます。三月〜四月の卒入学式に向け、今から闘う体制を作り出していかなければならない」と強調した。
 次に、都立学校の闘いのコーナーとして、永井栄俊さん(「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会)は、「都教委は、周年行事に対して新たな職務命令を出した。転向強要のための校内研修が強行されている。『教育改革』と称して、都教委の上意下達権限強化と学校の企業化を目指している。そのために日常的に被処分者、抵抗する教員の発言からすべての対応について点検・記録し、人事異動と処分をつらつかせて屈服を迫っている。これ以上の人権侵害を許してはならない」と厳しく批判した。

記事の配布に不
当な刑事弾圧

 不当な刑事弾圧を受けている板橋高校元教員・藤田勝久さんの教え子が報告を行った。
 「都立板橋高校と都教委は、今年三月、藤田さんが卒業式で『日の丸・君が代』問題を取り上げた記事コピーを保護者に配布したことを理由に『威力業務妨害』『建造物侵入罪」だとして板橋警察に被害届けを出した。警察は、家宅捜索(五・二一)、不当な任意出頭攻撃を行ってきた。この不当弾圧に抗議し、起訴攻撃を阻止することをめざした『藤田先生を応援する会』を結成して闘っている。ご支援をよろしくお願いしたい」。 
 さらに「日の丸・君が代」不当解雇撤回を求める被解雇者の会、「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会、河原井純子さん(都障労組) 、秋山良一さん(東京教組)、根津公子さん(中学教員・被処分者)などから発言が行われた 
 また、小学校・高校の保護者、都教委OB 板橋から女性を都議会へ!の運動を取り組んでいる仲間などから現場報告と闘う決意表明が行われた。
 国労闘争団の酒井直昭さんは、「私たちには、一九八五年あたりから点呼強化が始まり、弾圧が強化された。国鉄は、選別排除しながら一九八七年に分割民営化を強行していった。拒否組は、隔離され、清算事業団に追い込まれた。今日の話を聞いていると、その時期と似ていると感じた。状況は今より厳しくなるかもしれない。私たちは、一〇四七人の不当解雇を許さず闘っている。共に闘おう」と力強く連帯発言をした。
 集会の最後に主催者は、11・6教育基本法改悪阻止・日比谷野音集会への参加、来年三月から四月の卒入学式時の不起立闘争に向けて闘う体制を構築していくことを確認し、そのための前段決起集会として、来年に「『日の丸・君が代』強制反対!不当処分・不当解雇撤回!2・6総決起集会(午後一時、日本教育会館一橋ホール)」を行うことを確認した。(Y)



「日の丸・君が代」を考える神奈川集会
教育長の懲戒処分発言、実施状況調査を許すな


 【神奈川】東京都教育委員会が「10・23通達」を出してから一年。あらためて「日の丸・君が代」を考える10・22神奈川集会が横浜市開港記念会館で開かれた。神奈川の教員と市民が呼びかけたもので参加者は約三十人。
 司会者が「『日の丸・君が代』に教師が立たなければ、県教委が処分する。東京都と同じになってしまった。『日の丸・君が代』の強制は許せない」と神奈川の教育現場の状況を紹介した。
 今年三月の卒業式での不起立を宣言し実行したことによって処分を受けた東京都立養護学校教員の渡辺厚子さんが報告した。
 「中国で日本の七三一部隊を見学した。『日の丸・君が代』は戦争につながるから不起立を貫いた。とくに養護学校の場合は、壇上に上がるのが大変だ。壇上での実施は子どもの人権を無視するもので、けっして許せない。東京の場合は二百五十人以上が処分を受け、裁判で闘っている」。
 来る十一月十八日、渡辺さんのブラウス裁判もいよいよ公判を迎える。〇二年四月九日、渡辺さんは白のブラウスの上から黒とグレーの短いボウロを羽織り、入学式に出席し、強制に反対して不起立をした。何の混乱もなく終わったが、渡辺さんはその後都教委から戒告処分をされた。渡辺さんは静かな語りの中にも闘いの余裕がうかがえ、こちらが元気をもらった。
 その後、神奈川から二つの報告があった。一つ目は横浜弁護士会が出した人権救済「勧告書」。二つ目は曽根教育長の発言撤回の要求である。

東京の仲間と
ともに闘おう

 勧告書は「日の丸・君が代」を闘う私たちへの支援である。県教委は二〇〇〇年三月の卒業式で「日の丸・君が代」実施状況調査を行った。校長が「過激な発言をする生徒がいる」との報告を県に出し、不当に報告された元生徒が、人権救済を求めたことに対して、去る九月十日、横浜弁護士会が「憲法に定める思想・良心の自由を侵害するもの」であると元校長と県教委に勧告書を出した。
 曽根教育長発言とは、さる九月二十八日、教育長が神奈川県議会で「不起立の場合」教職員に懲戒処分もあるという驚くべき発言をしたことだ。それは人間の内心の自由を奪うもので憲法違反であることは言うまでもない。早速十月十四日に市民ら十五人が、県議会各派と県教育委員会に緊急要請行動を取り組んだ。
 「日の丸・君が代」で東京都に追随する神奈川の教育委員会の実態を多くの人に伝えよう。教師と生徒、そして市民は教育長の発言を許してはならない。
 国が戦争を語り、愛国心を教育基本法に入れ、学校が「日の丸」の旗を振るようになってはその国は未来はない。こうした一連の動きは憲法改悪とセットだ。東京では大きな反対運動が始まっている。神奈川でも「日の丸・君が代」強制に反対しよう。   (M)


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