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                                かけはし2004.10.25号

イラク占領をやめ自衛隊の撤退を

「しないさせない戦争協力」関西ネット


アメリカの世界戦略と日米同盟のゆくえを問う

 【大阪】十月六日、エルおおさかで「しないさせない!戦争協力」関西ネットワーク主催の講演会が開かれた。代表の中北龍太郎さんのあいさつの後、「アメリカの世界戦略の再編と日米同盟の行方」と題して、纐纈厚さん(山口大学教授)が講演した。 安保防衛問題懇談会の報告が出たり、在日米軍再編の記事、沖縄基地の問題についての首相発言があった直後で、講演内容は時機を得たものであった(要旨別掲)。
 講演の後、質疑応答があった。質問は、@GPR(米軍の世界的再配置)はスピーディなものなのに、辺野古基地建設計画は一九六六年に立てられている。辺野古はGPRから切り離してとらえ、日本政府のごり押しとみることはできないかA韓国の核についての米国のリークは、北朝鮮が韓国を批判する余地を与えたのではないかB米国は国際的なヘゲモニーはもう考えてはいないのか。米国は凋落するのかC米軍が引いた場合の韓国・日本の役割D日米同盟を対等なものと考えるなら、地位協定は変える必要があるのではないかEテロとの戦いでGPRはどうなるのかF米国の目的は中国市場を手に入れることか。

米国と沖縄・朝鮮半島、そして中国

 纐纈さんは次のように回答した。
 @GPRを十年ぐらいのスパンで考えると、辺野古もGPRの枠にはいる。あるいは、岩国の沖縄化かもしれない。米国は沖縄についてはファジーなところがある。
 Aリークが北に有利かどうかだが、北の反応は予想よりとても弱かった。北は韓国とのレールをはずしたくないと考えている。あるいは核問題は外交カードとして残しておこうとしているかもしれない。
 B孤立していることは間違いない。凋落は米国自身が認めている。日本の最大の貿易相手国は米国から中国になった。歴史的に帝国は、没落の課程で大侵略をやっている。いずれ凋落するからといって、残虐行為を傍観はできない。これを止めるのが、反戦平和運動だ。
 C日本はこれまでとは違い、米国に代わって出て行く日本をめざしているだろう。
 D米独地位協定改定で、ドイツは主権を回復した。それはドイツ国防軍がドイツ憲法で担保されていたからだ。日本の地位協定についてもドイツ型の見直しが出てくる可能性がある。だだし、9条に(自衛隊を国防軍として認知する)第三項を追加することを条件に。
 E在日米軍基地だけでなく、自衛隊基地も侵略基地になる。
 F中国市場は米国にとって垂涎の的であるが、共産党政権である限り中国はライバルであり、打倒の対象だ。親米政権になってくれればいい。そのために、軍事的恫喝をかけながらやっていくだろう。
 この後、連日、若者が取り組んでいる辺野古に基地をつくらせない大阪行動の松本あきさんが辺野古現地の報告を行い、作業の遅れに焦る那覇防衛施設局の動きを報告し、カヌー、ボートへの資金カンパを訴えた。      (T・T)

纐纈厚さんの講演から

「武装した資本主義」と日米安保の再々定義


軍事技術革命と地
球規模の再配置

 アメリカはRMA(軍事技術革命)によって、GPR(全世界のアメリカ軍再配置)が可能になった。この再編は二、三年のスパンで見ていかないといけない。たとえば、在韓米軍三分の一の二〇〇五年撤退は、その後すぐ〇八年に延期と訂正された。RMAは、戦争への敷居を低くすることになった。つまり、簡単に戦争をやり、短期的に成果を得て、終了させるというものである。イラク戦争はそのような意味では、米国にとっては失敗であるが、マンパワーを抑制し、ハイテク兵器にシフトするという転換を行った。換言すれば、戦争の日常化である。
 冷戦の時期につくられた米国の軍事戦略が、米国が今直面している危機に対応するのには不適切になったという見解がある。不適切になったという見解には同感だが、危機がどう変わったと見るかが問題だ。私は、基本的には変わっていないと思う。もちろん今すぐというわけではないが、二十一世紀中盤はかつての対ソ連にかわり、対中国だと米国は見ている。アメリカ民主党に特にその傾向が強い。

海外基地の等級化
と自衛隊の役割

 GPR構想では、海外の基地を一級基地から四級基地までに再編する。一級基地はヨーロッパ(英)に一つ、アジアに一つ。アジアの一つが、日本だ。日本にある嘉手納・岩国・横田・座間の基地その他を維持ではなく恒久化する。日本列島を基地化するということだ。
 在韓米軍は、一級と二級の中間の基地として再編される。米軍指揮系統を大改編し、米国第一軍団を座間に移し、米軍と陸海空自衛隊の指揮を一元化し、司令部を横田基地におく。横田基地が、対中国・対北朝鮮だけでなく、全世界を射程にすえた一元的指揮センターになる。韓米同盟と日米同盟の機能的分業は廃止する。米軍と自衛隊の線引きは厳密な意味では不可能になっている。
 RMAを基礎に構想されているGPRは、軍事力の効率的配備と経済負担の軽減を可能にし、洗練された軍事力と資本力を結合させ、従来にもました米国資本の世界展開をつくりだしている。軍事のグローバリゼーションと経済のグローバリゼーションの結合だ。私は、これを「武装した資本主義 」と呼ぶ。この傾向は、ブッシュであろうとケリーであろうと変わらない。ブッシュが再選されれば、この方向でますます暴走するであろうし、ケリーならもっと洗練されたやり方をするだろう。資本主義が、兵士の服を着てテロをやっている。中東の石油・将来期待される中東の市場を支配したいための露骨な資本の要請である。
 在韓米軍第二師団が三十八度線から撤退し、平澤に大基地をつくろうとする計画は、第二次朝鮮戦争がありえなくなったからではなくて、むしろ必要とあれば本格的に戦争できる体制をつくるためだ。韓国現政権の要請で、第二師団の三十八度線からの全面的な撤退を止め、一部残留を決定したが、それは一時期のものだ。
 韓国の核開発をリークしたのは、米国だ。北を怒らせて、自主的な南北統一の動きに釘を刺したいからだ。南北統一時代に流れではあるが、それを米国主導でやるのだと考えている。

ビンのフタから
一蓮托生関係へ

 十一月には新防衛計画が出るが、それは米国の軍事戦略に対応したものになっているはずだ。陸上兵力の増強が盛り込まれている。陸上自衛隊は十三万人だが、それを一万から一万五千人増員する。つまり、それだけの兵力が海外派兵できることを意味する。
 文民統制は、国民にとっては安心材料ではあっても、実際統制できる実態にはない。しかし、自衛隊にとっては、そのような文民統制ですら目の上のたんこぶだ。
 日米同盟は、これから双務的関係が強化されていく。今までのビンのふた論(日本帝国主義の復活を封じる)から一蓮託生の関係にしていく、その方が米国にとってもいいという米国の判断がある。対米従属ではなく、米国が矛を収めても日本は収めないことがあるかもしれない。日本も「武装するであろう資本主義」だ。
 そのためには、国内に有事体制をつくるしかない。それは、反対する勢力、市民運動や労働運動を抑圧する体制でもある。これから、資本主義の展開のありようによっては、レーニンの帝国主義論を形を変えて考えなければいけなくなるかもしれない。


イラク世界民衆法廷広島公聴会
多面的な証言でアメリカの戦争犯罪が浮き彫りに

 【広島】十月十日、十一日、広島市内で、イラク世界民衆法廷(World Tribunal on Iraq -Hiroshima Session)広島公聴会が開催された。
 一日目はYMCA会館国際文化ホールで百五十人が参加した。
 主催者あいさつ(岡本三夫共同代表)、経過報告(日南田成志事務局長)、長崎からのあいさつ(森口貢よびかけ人)、連帯あいさつ(前田朗ICTI共同代表)を受けて証言に入った。
 証言の最初は、「イラク戦争・占領の違法性と民族自決権」と題して、家正治さん(姫路独協大学教授、同大学法学部長、国際法)。
 ブッシュ政権のイラクへの武力行使が自衛権の発動として全く正当化できない点。すなわち、自衛権発動のための四つの要件、違法性、必要性、緊急性、均衡性から具体的に検証した。さらに、国連安保理決議678、687、1441すらを根拠にしても、この武力行使は合法化できない点を論証した。
 そして国際法や国連憲章の見地から見ても、米英両国の武力行使は、イラク国家に対する重大な主権侵害であり、侵略戦争であることを論証した。
 次に占領や占領統治についても国連安保理決議1483で合法化できない点、すなわち、国際法上の義務を米英両国に遂行するよう求めたものであり、権限を付与したものではない点を論証した。また、武力行使の合法・違法にかかわりなく、戦争当事者には戦争法規の適用があり、人道的な諸規則があり、そのような国際人道法の見地からも占領国を厳しく監視しなければならないこと、さらに「主権移譲」に言及した国連安保理決議1546の問題点にも及び、イラク人民は、国際人道法を遵守するかぎり、自国領土を占領している外国軍隊に抵抗する国際法上の権利を有していることを論証した。
 続いて、証言が三本続いた。「自衛隊イラク派兵・多国籍軍参加の違法性」(自衛隊イラク派兵差止訴訟の会代表の池住義憲さん)。「占領に抗して―まやかしの『政権移譲』」(イラク市民レジスタンス戦線議長のサミール・アディルさん)。
 「イラク女性自由協会の闘い」(イラク女性自由協会のサマール・アジズさん)。
 質疑と討議をへて、一日目のまとめを共同代表の湯浅一郎さんが行い休会した。

劣化ウラン兵器
禁止をもとめる

 二日目は西区民文化センターで百五十人が参加した。
 関連証言として、長崎被爆者の森口貢さん、広島被爆者の豊永恵三郎さんの発言をはさみ、次の五本の証言が続いた。
 「イラク戦争の実相―ICTI起訴状から」(弁護士であり、ICTI検事の稲森幸一さん)。「現地報告―イラクで何が起きているのか」(ビデオジャーナリスト、アジアプレスの綿井健陽さん)。
 「戦争における劣化ウラン兵器使用」は、カナダ公衆衛生問題研究所前所長のロザリー・バーテルさんの予定だったが来日困難となり、代わって柳元和さん(ウラニウム兵器禁止条約実現キャンペーン、医学博士)が膨大な証言原稿論文のエッセンスを解説した。
 さらに「ウラン兵器使用の犯罪性及び違法性について」(埼玉大学名誉教授、遺伝学の市川定夫さん)。「湾岸戦争及びイラク戦争・劣化ウラン弾使用とその被害の実態〜現地調査と医師の証言をとおして〜」(NO DU《劣化ウラン弾禁止》ヒロシマ・プロジェクトの森瀧春子さん)。
 質疑と討議をへて、イラク世界民衆法廷(WTI)広島公聴会声明と[劣化]ウラン兵器禁止を求める緊急ヒロシマ・アピールを採択し、まとめと閉会挨拶を共同代表の横原由紀夫さんが行った。
 実行委員会では、公聴会会場でのすべての証言を日英両語の報告集としてまとめ、来春二〇〇五年三月二〇日、トルコ・イスタンブールで開催されるWTI最終法廷に間に合うよう報告する予定だ。   (N)


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