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10・13 イラク「復興支援国」会議に抗議行動    かけはし2004.10.25号

撤退なくして復興なし!「強盗の山分け会議」許すな


 十月十三日、WORLD PEACE NOW実行委員会は、米国など有志連合軍によるイラク軍事占領を強化し、利権分割のための第三回イラク復興信託基金ドナー委員会会合および拡大会合(東京会合)に対して「撤退なくして復興なし!強盗たちの『山分け会議』にNO!」を掲げ、会場である赤坂プリンスホテルに向けて抗議行動を行った。緊急行動には、百人の仲間たちが駆け付けた。
 社会文化会館前で、抗議行動出発前の前段集会が行われた。実行委を代表して高田健さんは、「政府は、安全の問題とか、様々な口実で会合の場所を一切発表しなかった。世界の人々から隠れて、コソコソとやっている『国際会議』だ。本当にイラクのための復興支援会議をやるなら逃げ隠れしてやる必要はない。アフガニスタン復興会議の時は、さまざまなNGOの参加や動きがあったが、今回はNGOを排除して行われている。会場付近は厳戒体制になっているが、抗議の申し入れをやりきろう」と行動提起した。
 さらに、「米国のイラク戦争の大義が破綻していることが、はっきりしているにもかかわらず、なりふりかまわず戦争を続けている。そして、小泉政府は、正しかったと開き直っている。復興会議は、各国の政府を後押ししている大企業などの利権や資源を山分けする会議だ。復興の前提は、占領軍の撤退、自衛隊の撤退だ」と強調した。
 参加者全体で「復興会議NO! 撤退なくして復興なし! STOPブッシュ、小泉!」とシュプレヒコールを行い、抗議行動に移った。赤坂プリンスホテル付近において警察権力は、不当な阻止線と規制を強いてきた。実行委の仲間たちは、権力の挑発を許さず、抗議行動を展開していった。第一幕は、抗議のパフォーマンスだ。ブッシュ、ブレア、小泉、特別ゲストのアラウィのお面を付けた四人による談合シーン。そして、石油、軍需産業、復興ビジネスなど甘いお菓子が並ぶイラク全土のミニュチュアケーキが登場し、それを四人が食べ始める。参加者たちから「毎日、殺されているイラクの人々がいるのに許せない」などと次々と抗議の声があがる。
 パフォーマンス後、外務省職員が要請文を受け取りに来た。実行委参加団体のATTACジャパンの秋本陽子さんは、実行委抗議文「イラク復興信託基金ドナー会議のあり方に抗議し、占領軍の即時撤退を求める」を読み上げ、職員に渡した。最後に抗議のシュプレヒコールを行った。
 五十三カ国と国際機関が参加したイラク復興信託基金拠出国委員会は、「治安を含む政治プロセス及び経済開発プロセス」(イラク副首相サレハの文書)をセットで支援していくことを確認した。つまり、来年一月にイラク暫定政府が実施する国民議会選挙の支援とイラク民衆の抵抗闘争を潰していくことである。利権分割のイニシアチブをとれないフランス、ドイツは、具体的に支援額を表明しなかった。
 この会議は、昨年十月、スペイン・マドリードでのイラク復興支援国会議でイラク復興信託基金の設立と拠出国委員会を組織することに合意し、今年二月にアラブ首長国連邦のアブダビ、五月にカタールのドーハで会議が開催され、第三回目として行った。
 マドリード会議では米英日など各国やIMF・世界銀行など合わせて三百三十億ドルの支援を表明していたが、「治安」情勢の悪化によって支出が滞っている状態が続いていた。米国は二百億ドル以上の支援額だが、数十億ドルの実施だ。日本は、イラク復興支援五十億ドルのうち三十五億ドルの円借款(実施が○五年以降)、無償資金十五億ドルのうち十三億ドル(二国間支援八億ドルなど)を電力、水・衛生・保健、教育などへの支出としてようやく決めたにすぎない。イラク復興信託基金は、現在の拠出総額が十億ドルで、議長国の日本が四・九億ドルを拠出している。
 日本は、「主権移譲」後、悪化する「治安」状態に対して、有志連合軍への参戦の継続とアラウィ「暫定政権」を支えぬき、復興利権を拡大するためのステップとして東京会合を位置づけていた。そして、当面する重要なイベントである国民議会選挙に四千万ドル(約四十四億円)を信託基金の拠出金から充てることにした。
 米国は、占領政策の破綻を補うために、これまで電力や水道などの援助金をイラク人治安部隊育成のために使うことを決め、「米国の援助で不足した部分を信託基金でまかなえ」と押しつけてきた。イラク・サレハ副首相、ハーフィズ計画相は、米国のシナリオ通りに「国家復興戦略」(@国営企業改革A民間の活用BWTO入りを目指す対外貿易の自由化)を提示しつつ、参加国に対して「支援の実施状況が遅れていることに満足していない」(サレハ)と強調し、民生分野への資金援助の早期実施を要求したのである。
 会議参加のために来日したアーミテージ米国務副長官は、十三日、米大使館で「来年のイラク国民議会選挙を予定通り実施するために各国は支援するべきだ。日本の自衛隊の駐留延長も含めて期待している」と迫った。東京会合と並行して小泉首相とサレハ副首相の会談が行われ、小泉は米の要求に答える形で「日本は人道支援と政府開発援助を車の両輪として取り組んでいる。十二月十四日に期限が切れる自衛隊の派遣期間延長も視野に、支援を継続していく」ことを明らかにした。このように日米の連係プレーによって東京会議が進められ、新たなイラク侵略政策へと踏み出したのである。米英日など諸大国の野望を許さず、イラク民衆の反占領抵抗運動と連帯し、占領支配の中止と全占領軍の撤退に向けて闘っていこう。十二月十四日、自衛隊イラク派兵延長を許さない取り組みを強化していこう。      (Y)


イラク復興信託基金ドナー会議のあり方に抗議し、占領軍の即時撤退を求める声明

             WORLD PEACE NOW実行委員会

 第三回イラク復興信託基金ドナー委員会会合および拡大会合(東京会合)が十月十三、十四日に東京で開催されます。今回の東京会合では、信託基金に資金を拠出しているドナー国、および基金の運営をする国連、および世界銀行だけでなくドイツ、フランス、ロシア、アラブ諸国など将来的に資金を提供し得る国ぐにを集めた拡大会合も同時に開かれます。
 イラクの暫定政権からは、マハディ・アル・ハーフィズ計画開発大臣が参加します。
 私たちは、現在のイラクの人びとの生命と生活を破壊し、イラク社会を混乱の中に陥れたのは、米国の率いる有志連合軍による国際法を踏みにじる侵略、軍事占領にあること、そして占領の失敗を糊塗するために米国によって作られた暫定政府の下で継続されているイラクの人達への戦争にあることは明らかだと考えます。イラク攻撃を正当化するための唯一の根拠とされた大量破壊兵器が見つからないことを米国政府が認め、国連事務総長が九月二十一日の国連総会で戦争の違法性を指摘したことを考えれば、この戦争には当初からいかなる正当性もなかったことは明らかです。この戦争の非合法性を不問に付したまま、そして米軍とそのかいらいである治安部隊によるイラク市民への殺戮が続けられるなかでの「イラク復興」は、イラクの人達を助けるどころか、「治安回復」の名目による米国とその同盟者による戦争と殺戮を、側面から援護することにしかならないことは明らかです。
 イラクの復興は、その破壊の原因をつくっている米英とその同盟国の軍隊が撤退することによって始めて可能となります。侵略者、占領者にたいしてイラクの人達が抵抗の権利を有していることは国際法上も明らかです。イラクの人々を殺し、その生活を破壊し続けている占領軍が撤退しないかぎり、占領軍に対する抵抗は止まないでしょう。外国軍隊の存在とその武力行使こそが、「治安」を悪化させ、NGOの緊急支援を必要としている人たちに届けるのを困難にしているのです。
 この東京会合は、総額で約三百二十億ドル(約三兆五千億円)に達する巨額なイラク復興資金を使って、侵略戦争を合法化し、米国をはじめとする占領国側の中東地域支配を固め、その利益を追求しようとするものです。国際社会は、国連による法の支配の回復を通じて、占領軍の即時撤退を実行させ、広範なイラクの人びとを真に代表しうる独立した民主主義的なイラク国家の形成というイラクの人達の願いへの障害を取り除き、その上でイラク人々との対話を通じて、イラク社会・経済の復興に貢献すべきです。
 この復興信託基金ドナー会議において日本が議長国をつとめていることは、日本が米国のイラク侵略へ一歩進んで加担することを表すばかりでなく、米国を始めとする外国によるイラクの人達への支配に、経済的、人的側面でさらに積極的に一体化する姿勢の表明に他なりません。日本政府は、まず米国のイラク侵略への支持を撤回し、「多国籍軍」の一部となった自衛隊をイラクから即時撤退させなければなりません。
 さらに日本政府は、イラクを破壊し、夥しいイラクの一般の人達を殺戮してきた占領軍の一員として、イラクの戦争被害者と物的被害にたいして賠償する責任をとらなければなりません。復興支援はそこから始まると考えます。
 二〇〇四年一〇月八日


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