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米共和党大会                     かけはし2004.09.27号

「対テロ」戦争の破綻とブッシュの空虚な強がり

揺らぐ「戦時大統領」の足元


フォー・モア・イ
ヤーズの大合唱

 八月三十日から九月二日まで、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで米共和党の大会が開かれ、十一月の大統領選挙に向けた共和党の政策綱領を決定するとともに、ブッシュ、チェイニーの正副大統領候補を指名した。
 ニューヨークとしては空前の、五十万人を結集した反ブッシュデモが大会前日の八月二十九日に街頭を埋めつくした。警備費用に六千万ドル(六十六億円)をかけ、三万七千人の警察官と一万人の治安部隊が動員され、デモ参加者千七百人以上が逮捕されるという厳戒体制の中で行われた共和党大会は、ブッシュのアフガン・イラク侵略戦争の「成果」を誇示し、国際法を踏みにじった先制攻撃戦略=「対テロ」グローバル戦争を、さらに継続・強化することを宣言する場となった。まさにブッシュを「戦時の指導者」として押し立てた覇権主義的アメリカニズムと「フォー・モア・イヤーズ」(あと四年、ブッシュにまかせよう)大合唱が行われたのである。

先制攻撃戦略と
「アメリカ的価値」

 共和党の政策綱領は、アメリカ帝国主義の終わりなき「対テロ戦争」と、アメリカ大資本の支配のためのグローバリゼーションの一層の推進、富者優先・伝統的家族主義の価値に塗り固められた保守主義的性格がきわだっている。
 「対テロ戦争勝利」への「総合戦略」では、「9・11」以後のブッシュが行ったアフガン・イラク戦争を「世界の安全促進に貢献」したものとして評価し、さらに「脅威が現実になる前の先制行動」を今後も続ける必要性を提起した。こうしたアメリカの単独行動主義への国際的批判に対しては、真っ向から切り捨てている。「国際機関に米国の指導力への拒否権はない。米軍は国連の指揮下には入らない。米国人に対する国際刑事裁判所(ICC)の司法権は認めない」と。そして「アジア・太平洋」に関する項目では中国の軍事的脅威を指摘するとともに、「日本が米国との防衛・外交協力に基づき主導的役割を果たすよう期待する」と特記している。
 「自由貿易協定(FTA)や世界貿易機関(WTO)新ラウンド(多角的貿易交渉)を押し進め、米国産品の輸出を拡大する。不公正な貿易慣行は強力な米通商法で是正する。中国に対してはセーフガードの発動やWTOへの提訴で成果を収めたが、さらに人民元の米ドル相場への固定による為替操作の断念を迫る」。これが「革新的で国際競争力のある経済」という項目で打ち出された路線だ。米主導のグローバリゼーションによって、第三世界の抵抗を排除し、貧困と飢餓、不正に満ちた新自由主義的市場支配をさらに推進していくことがうたわれている。
 さらに国内政策の面では、「減税や規制緩和で住宅取得や起業を促し、自由に健康管理や退職後の生活設計を行うことを奨励する」と「オーナーシップの拡大」を主張している。これが貧困対策や社会保障を切り捨てる「自助努力」「弱肉強食」の競争社会をいっそう促進するものであることは言うまでもない。
 また地球温暖化防止の京都議定書が「経済成長と雇用を損なう」と非難し、同性間の結婚を禁じるブッシュの連邦憲法修正要求や、中絶禁止を支持して「家族を守る」ことを強調している。これらは社会の「リベラル」的色合いと対決し、「強いアメリカ」のための国家主義的・権威主義的統合を強化し、民主主義のスペースを制限するものとなる。共和党の政策綱領は、まさに「9・11」以後、急速に進展した「対テロ」弾圧体制と監視社会化をさらにレベルアップするものにならざるをえない。

ブッシュ政権下で
進む貧困の深刻化


 今回の共和党大会では、もっぱら「対テロ戦争」の成果が前面に押し出され、「戦時大統領」ブッシュの下に団結して、この戦争に勝ち抜くキャンペーンが前面に押し出された。それはブッシュ政権の四年間で、アメリカ社会の抱える貧困・雇用破壊がさらに進展したことに意識的に目をそむけさせる効果を持っている。
 八月二十六日の米国勢調査局の発表によれば、二〇〇三年のアメリカの貧困人口(四人家族で年収一万八千八百十ドル〔約二百六万円〕以下、二人家族で一万二千十五ドル〔約百三十二万円〕以下)が、前年度比百三十万人増加し三千五百九十万人(全人口の一二・五%)、健康保険未加入者も百四十万人増加して四千五百万人(全人口の一六・七%)となった。とりわけ十八歳未満の貧困者は前年比で八十万人増えて千二百九十万人(一七・六%)に達している。
 ブッシュの金持ち優遇減税策によって、減税の恩恵の三分の一が所得階層上位一%の富裕層に集中し、納税額全体に占める富裕層の負担率が低下したのに対し、中間層では増加したために中間層の不満が高まっていることも指摘されている(八月に発表された米議会予算局の分析)。
 また「対テロ戦争」戦費などを通じて肥大化した四千五百億ドルにのぼる空前の財政赤字、石油価格の高騰がアメリカ経済にもたらす影響も予測されている。
 党大会最終日の九月二日に行われたブッシュの大統領候補指名受諾演説は、まさにこうした国内的な社会・経済問題の深刻化を、「対テロ戦争」での「攻勢」を強調することによって乗り切ろうとするものにほかならなかった。

現実を正視せず
「勝利」と強弁


 ブッシュは大統領候補指名受諾演説で述べている。
 「今回の大統領選挙はテロの危険に米国がどう対応するかを問うものだ」。「戦略は明白だ。米本土の安全保障に使う費用を三倍にし、対テロ戦の一線で従事する初動要員五十万人を訓練した。さらに軍の再編と情報機関の強化を進めている。われわれは攻勢をかけ続ける。国内で直面しなくてもいいように、海外でテロリストをたたく」。
 「われわれは米同時多発テロで従来とは異なる考え方を求められている。手遅れになる前に米国の脅威に立ち向かわなければならず、米国は立ち向かう」。「われわれは祖国を守るために行動し、フセインとタリバンの人殺し政権は過去のものとなった。五千万人以上の人びとが解放され、拡大中東地域に民主主義が訪れようとしている」。
 これが空虚な強がりにすぎないことは、明らかだ。アフガニスタンのカルザイ政権は、首都カブール周辺を米軍やNATO軍によって防衛されて支配しているだけであり、国土の大部分は、北部同盟の軍閥勢力が支配している。そしてこの軍閥勢力は二十三億ドルと言われる麻薬取り引きによって富を蓄え、タリバンに匹敵する人権侵害や虐殺を民衆に強制している圧政者である。
 イラクでは六月二十八日の「主権移譲」後も、アラウィかいらい政権下で反米武装勢力による戦闘が全土で激化し、米軍の死者は千人、負傷者は七千人を超えた。恐怖にかられた米占領軍による市民への無差別攻撃が頻発し、それはいっそう民衆の反米意識をかりたてている。来年一月に予定されている選挙が平穏に実施されると考えている人は少ない。

「大義」のウソが
最終的に確定した

 こうした「大義」なき戦争と占領は、帰還した米軍兵士に多くのPTSD(心的外傷後ストレス傷害)を発生させ、米軍医療健康諮問チームの調査では、二〇〇三年のイラク戦争従軍兵士の自殺率は十万人あたり十七・三人に達している。この数値はベトナム戦争従軍兵の十五・六人、湾岸戦争従軍兵の三・六人に比してきわめて高くなっている。
 アメリカの「対テロ戦争」は、なんの展望も見いだせないままぬけだせない泥沼に入り込み、無秩序とともに民衆のアメリカ帝国主義に対する怨嗟を増幅させるだけである。
 九月十三日、パウエル米国務長官は、上院政府活動委員会での証言で、アメリカがイラク開戦の口実とした「フセイン政権による大量破壊兵器」について「なんらかの備蓄をわれわれが発見するということは将来にわたってありそうにない」「われわれは過去にさかのぼり、なぜ現実と異なる判断をしたのかを突き止めなければならない」と語った。パウエル自ら、「大量破壊兵器の脅威」がまったくの虚偽だったことを最終的に認めたのである。
 九月十五日、アナン国連事務総長は英BBCとの会見で、米英のイラク戦争は「国連憲章に合致していない。違法な戦争だ」と明言した。
 AP通信が九月十六日に報じたことによれば、イラク「大量破壊兵器」を捜索してきた米CIA主導の調査チームが近日まとめる最終報告書では「イラクに大量破壊兵器の備蓄はなかった」とする結論が書かれている、ということである。
 ブッシュ米政権は、「大量破壊兵器はなかったかもしれないが、フセイン政権が脅威だったことは間違いない」と居直ろうとするだろう。今年六月のサミット前の日米首脳会談で「米国の大義の勝利」とブッシュにおべんちゃらを述べた小泉首相も、「大量破壊兵器などなかった」という明確な現実を直視せず、逃げ回るだけだろう。
 占領に反対し、民主主義と主権を求めるイラク民衆の闘いを支援し、反戦・反グローバリゼーション運動の国際的な連携で、ブッシュならびにその追随者たちを追い詰めることが今こそ求められている。
 最近の世論調査では、「戦時大統領」ブッシュへの米国内での支持は、民主党のケリーを大きく上回っていると報じられている。他方、アメリカの反戦・平和運動勢力は、ブッシュと対決するとともにケリーからも独立した行動を、十一月の大統領選挙を前にして再構築するという困難な闘いに直面している。アメリカの反戦運動との連帯を意識しながら、イラク占領の即時中止、全占領軍の撤退を求める訴えを持続的に作りだそう。
 (9月19日 平井純一) 



田んぼくらぶが稲刈り--収穫は今年も5俵

来月は秋起こしの予定

 九月十二日、横堀部落の旧二期工区内にある熱田さんの田んぼで、田んぼくらぶの稲刈りが行われた。
 当初、四日に予定されていた稲刈りだが、あいにくの空模様のために作業が出来ず、翌五日まで多くの仲間が残って天気の回復を待ったが翌週に延期となった。
 四日の夜には横堀部落の下山政江さんを迎えての交流会。下山さんは「看護士になることと生まれ故郷の横堀で暮らすという希望がかなった」「これからもずっと横堀で暮らしていきたい」と語った。下山さんの作った「横堀音頭」の歌詞が配られ、その場で曲を付けた。来年の盆踊りでは振り付けをして踊る予定。
 十二日には朝九時頃より作業開始。前日夜横堀農業研修センターに泊まり込んだ仲間と朝早く来た仲間合わせて十人。延期になったため参加者はかなり少なくなってしまった。
 まずは鳥よけのネットを取り外す作業を行い、例年のようにコンバインと鎌をつかっての手刈りに分かれて稲刈り開始。
 丁度稲刈りが始まる頃、東峰部落の石井恒司さんが様子を見に来てアドバイスしてくれる。コンバインも石井さんにお借りしたものだ。
 雨が多かったため、田んぼの中はかなりぬかるんでおり、例年よりもコンバインが入るところが少なく、手刈りでしかも人数が少ないため、かなり時間が掛かった。持ってきたおにぎりの昼食をはさんで午後までかかって作業を終えた。
 収量は昨年と同じ五俵。来月には秋起こしを行う予定。       (板)


コラム
「生産年齢人口」と「従属人口」

 十五裁から六十四歳までを「生産年齢人口」と呼ぶそうだ。いうまでもなく、社会の担い手という意味だ。男女とも区別な<六十五歳を定年としているようであるから、比較的新しい概念なのだろうが、何時からなのか、私は知らない。
 これに対して、十四歳以下と六十五歳以上は「従属人口」と言うらしい。「生産」に対して「従属」が対置されているのであるから、「従属」とは「社会のお荷物」という意味なのであろう。それ以外に理解のしようがない。
 政府の側の意識がこの有様であるから、社会福祉(特に高齢者に対する)がますます貧困なものになり、少子化対策もほとんど充実しないのは当然だろう。
 「生産年齢人口」と「従属人口」の比率は現在では2:1の割合だが、五十年後にはほぼ1:1になるという。
 十五歳以上を「生産年齢人口」と位置付けるのであれば、当然にも十五歳から参政権が保障されるべきだ。
 十四歳以下の子どもたちは、社会の未来をその手に握っている存在に他ならないる六十五歳以上の人々は、十分に社会に貢献してきたのであるから、それぞれの第二の人生を楽しんでもらわなけれはならない存在だ。そのような意味で、社会は「従属人口」などとお荷物扱いをせずに「希望と感謝を捧げる人口」として処遇しなければならないのではないか。
 では、「生産年齢人口」はその名にふさわしい尊厳が与えられているであろうか。
 NEET(Not in Education. Employment or Training の頭文字をとった略語)。学校に行かず、仕事もせず、職業訓練も受けていない若者を指す。一九九九年に英内閣府が出した報告書がきっかけで広まった。
 フリーターとは区別される。日本でも知られるようになってきたのは最近だ。独立法人「労働政策研究・研修機構」の調査によれば「十五歳から三十四歳に占めるニートの割合は二%<らい。人数にして六十数万人」とし、ここ三年で四割以上増えたという。玄田有史(東大助教授・労働経済学)は百四十万人に上る可能性を指摘する。他方、労働経済白書(〇四年版)によれば、フリーターは過去最高の二百十七万人、無業者は五十二万としている。実に、この世代の約八%に当る。
 日本社会の病巣に深く根差したニートの出現は、フリーターと並んで深刻な社会問題であるにもかかわらず、社会保険庁は「無業者」と切って捨てる。あたかも無法者の集団であるかのように。ブッシュの「ならずもの国家」と同じ意識構造である。
 すでに多<を語る必要もないことだが、青年労働者たちは、入社直後から激しい競争にさらされ、三年以内に三割が転職を余儀なくされ、フリーター予備軍を強制されている。さらに、中高年労働者は、資本の悪辣で、生存権さえ無視した首切り・倒産攻撃の中で、その多<が心を病み、生きる希望を奪われ、自死するものさえ後を断たない。
 これが「生産年齢人口」の現実である。ひとかけらの尊厳も与えられてはいない。
 この「生産年齢人口」「従属人口」の現実を転換させることなしには、日本の政治、経済、社会総体の再生はないと言わなければならないだろう。      (灘)


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