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プロ野球選手会のストライキ支持!                かけはし2004.09.27号

問われているのは2リーグ制の維持ではない



スト突入は当然経営者側が悪い

 日本プロ野球史上初めてのストライキが選手によって行われた。閉鎖的で「高慢」な経営者側を支持するものは誰もいない。九月二十日の六試合はどの球場も満員となった。スト支援の現われであろう。しかし問題はなに一つ解決していない。

 プロ野球の再編をめぐる日本プロ野球組織と労働組合・日本プロ野球選手会の代表者による協議・交渉委員会が九月十七日、四時間延長の十時間にも及ぶ協議が決裂し、選手会は十八日、十九日のストライキに突入した。この二日間で一、二軍の十七試合が中止となった。
 ここに至ってもプロ野球組織は「選手会が労働組合であっても、球団統合は経営事項、義務的団体交渉事項ではない。これを理由にストライキを行う違法かつ不法」とコメントしている。
 この選手会のストライキに対して読売新聞と報知新聞以外のマスコミは今回のストライキに対する調査を一切に発表している。それによると「スト突入を率直にどう思いますか」という問いに対して「これまでの流れから当然」という回答が七九%を占め、「スト突入を招いた原因はどちらにあるか」という質問に対しても「機構側が悪い」が八五%を占めた。
 UIゼンセン同盟、自動車総連、私鉄総連、連合までもスト支持を打ち出し、経団連の一部からも「ストを打つのは分からないでもない」と意見が出ている。唯一、読売新聞だけが連日社説まで使って「スト反対」を主張していただけである。

最初から一リーグ制構想を画策


 今回の出発点となったのは、パリーグの近鉄が赤字経営を理由にオリックスとの合併に踏み切ったことによるものであった。さらに九月八日、二十数年振りにオーナー会議に出席した西武の堤より、近鉄・オリックスの合併以外、二チームの合併計画が報告された。つまり来年以降パリーグは五ないし四チームとなる計画が明らかにされたことによるものである。
 以前からパリーグはセリーグとの交流戦を提案してきたが、収入減につながるとしてセリーグ球団の反対によって実現しなかった。
 だが今回は西武の堤、オリックスの宮内が巨人の渡辺前オーナーを巻き込んで、球団の減少、一リーグ制をちらつかせて交流戦をセリーグに認めさせ、できれば一リーグ制に移行させようとするねらいが背景にある。協議・交渉の場でも強行派はこの三球団に近鉄を加えた四球団である。つまり「人気球団巨人」との試合を実現することによって集客アップを計り、さらに対巨人戦一試合一億円を超すという「放映権」によって生き延びようというねらいである。巨人人気によってのみ支えられているセリーグの黒字分を、交流試合ないし一リーグ制によってパリーグの赤字の相殺をはかろうとしているのである。さらにこの機会に高騰傾向にあった選手の年俸についても、選手の側から自粛する雰囲気をつくり出そうというねらいもある。
 オーナー会議の結論は、二〇〇五年セリーグ六球団、パリーグ五球団、〇六年以降は親会社が経営危機にあるダイエーをロッテに吸収させ、セ・パ十球団にして一挙に一リーグ制を実現しようとしているのである。このオーナー会議、とくに三球団の意向が変わらない限り、プロ野球組織は選手会の意向に耳をかたむけないし、ライブドアや楽天が新規参入球団をつくろうとしても認めないであろう。根来コミッショナーがなにもせず辞任しようとする根拠もここにある。他のセリーグ球団も巨人のパリーグの移籍というどう喝の前に動けないのが現在の状況を反映している。

巨人の「球界の盟主」構造の限界


 バブルがはじけて以降、日本社会では銀行をはじめとする金融機関や大手企業の合併、再編が相次ぎ、中小・零細では倒産が連続してきた。この結果史上空前の失業率が続いた。しかもこの間、資本の攻撃に対して労働者は全く反撃を組織しえてこなかった。逆に資本側は「企業再建」のためにはなにをやってもいい気分をつくり出してきた。巨人の渡辺前オーナーの「経営路線に対して、……たかが選手会が」という発言は、この現実を如実に物語っている。ストライキに対する支持と好感は、多くの人がオーナー会議の「あり方」「傲慢さ」にこの十数年間の日本社会の歴史と推移をかい間見るからであろう。
 一九四九年に「太平洋野球連盟=パリーグ」が結成されて以降、当時百七十万人の観客動員であったものが、七〇年代後半には五百万人、九〇年代後半には一千万人を超え、セリーグに匹敵する動員力を持ち、プロ野球は「国民的スポーツ」として成長した。しかしプロ野球球団の親会社は一貫してプロ野球を「国民的スポーツ財産」として位置づけるどころか広告宣伝体としてしか扱ってこなかった。球団が黒字のうちはいいが、球団が赤字に転落すると、親会社の「広告費」として処理されてきた。ここにオーナー会議が「絶対的権威」を持つ構造が完成し、「閉鎖性」が確立したのである。さらに黒字をもたらすのが、「人気球団巨人」との対戦であったが故に、巨人が「球界の盟主」という位置がつくられたのである。今日、各球団の経営は公開されてはおらず、球団によっては観客動員数さえあいまいなのである。

私企業の「オモチャ」にメスを


 プロ野球は「国民的スポーツ財産」ではなく、「私企業のオモチャ」となり、オーナー会議は私企業の利益追求のための密室の調整機関になっているのである。日本においては私企業がプロ野球球団を持とうと社会人の実業団チームを持とうと同じ構造である。親企業が「広告費」の枠の中で維持できなくなればプロ球団では「売却」され、実業団では「解散」である。しかし巨人を盟主としてきたプロ野球は個々の「売却」では構造的赤字を解決できなくなった結果、チームを減らし一リーグ制に向かって進み始めたのである。それも人気下降気味の巨人にぶらさがる構造は本質的に全くかわっていない。こうしたあり方はVリーグをつくってかろうじて生き延びている「人気スポーツ」であったバレーボールにも共通している。
 逆に後発であるがJリーグをつくり、企業も巻き込みながら、地域フランチャイズ制を取り、一部と二部の入れ替え戦を取り入れながらチーム数を広げているサッカーと比較するとその差は歴然である。私はJリーグのあり方を全面的に支持するものではないが、野球人口が減り、テレビの視聴率が下がるのとは反対にサッカーの裾野が広がり、視聴率が上がるのはわかるような気がする。縮小する「巨人のパイ」を分けるだけのビジョンではプロ野球に明日があるわけはない。
 「一チーム」の閉鎖・縮小は選手八十人の問題にとどまらず、関連企業千人の雇用問題を必然化し、球団がある地域の商店街などを巻き込んで進む。したがって近鉄とオリックスが合併し一球団がなくなり、新規参入球団を認めないいまのプロ野球組織の意見をだれも支持しないのはあたり前である。
 あたかも「来年もセ・パ六球団での二リーグ制」だけが焦点化されているが、今日プロ野球の労使が問われているのは、「プロ野球」の再編をどう考え、どう変えていくかということである。

新しい時代に対応したスポーツへ


 スポーツへの関心は多様化し、すでに小・中学校でのスポーツ人口はサッカーにその座を奪われ、同じプロ野球でもアメリカのメジャーリーグの人気がどんどん拡大している。現在マスコミでは日本のプロ野球より「イチロー・松井」の登場の方が多くなっている。野球というスポーツで旧来通りの人気を維持しているのは「春・夏の甲子園」だけといっても過言ではない。巨人の年俸総額は五十億円に近づき、これに対抗しようと阪神、中日も三十億円の後半まで拡大している。唯一広島だけが二十七億円でこの流れに「抗して」いる。巨人の渡辺前オーナーの辞任問題に発展したドラフトの裏金問題は、巨人以外の球団でも広く行われていることはいまや公然の秘密となっている。
 FA権の短縮とドラフトの完全ウェーバー制の移行なしには、戦力が巨人にかたより、年俸高騰の一因となると多方面から言われながら、巨人の反対によって棚上げされるつづけている。メジャーリーグでは放映権や黒字分を各球団で分配しているが、日本では巨人が独占している。あらゆることが巨人の都合のいいように決定されきている。これが日本のプロ野球が衰退してきた一因でもある。
 ダイエーが福岡に球団を移し、日本ハムが札幌にフランチャイズを移して、一気に観客動員を増やしているが、プロ野球組織としてフランチャイズ問題を本気で取り上げようとはしていない。オリックスに至っては、神戸と大阪の「二つ」を持ち出す始末である。ファンの獲得、フランチャイズ制、会員制などによるすそ野の拡大を中心課題とするサッカーとは根本的な差がある。
 一九七九年西武が西武線の開発のために球団を持った時の「熱情」と西武線の再開発が終ったいまでは、その「熱」の入れようは明らかに違ってきている。西武が長野オリンピックに便乗して各地のプリンスホテルにつながる「オリンピック道路」を延ばしたのと、西武にとって球団経営は全く同じものなのである。
 私は選手会のストライキを支持するが、「盟主巨人」に主導され、西武のように球団を運営するプロ野球界のあり方に根本的なメスを入れない限りプロ野球の「地盤沈下」は続くだろうと断言する。(松原雄二)




立川反戦ビラ入れ裁判弁護側立証へ
無罪判決へ向けて全国で支援強化を
12月16日判決公判が決定



 九月九日、立川反戦ビラ入れ裁判第五回裁判が八王子地裁で行われた。
 自衛隊のイラク派兵下、戦時治安弾圧体制の強化にむけた攻撃の一環として警視庁公安二課は、二月二十七日、立川自衛隊監視テント村メンバー三人による立川自衛隊官舎に住む自衛官へのイラク派兵に反対しようと呼びかけるビラ入れ(一月十七日)が住居侵入罪だとして不当逮捕した。自衛隊は、反戦ビラ入れがあった場合、積極的に警察に通報するように指導していた。この弾圧は、権力と自衛隊の連係プレーによって強行されたのだ。
 三人の仲間は、権力の不当な人権侵害、転向強要をはねのけ、完全黙秘ではねかえしていった。その闘いの報復として、三月十九日に起訴を行い、さらに二月二十二日のビラ入れに対しても住居侵入罪だとして二人を追起訴した。
 このような権力と自衛隊が一体となった立川テント村の仲間たちに対する弾圧に対して、ただちに救援会が地元の立川、三多摩地域の仲間たちによって組織された。そして、この弾圧が単なるテント村の仲間だけの攻撃ではなく、全国の反戦運動やメディアなど表現活動に対する見せしめとして、突出した弾圧であり、初戦から徹底した反撃を作っていこうと瞬く間に全国にスクラムが拡大し、支援する取り組みとなった。

奥平・箕輪両弁護側証人が法廷へ

 裁判は、第二回、第三回、第四回裁判で検事側立証が終了し、第五回裁判から弁護側立証段階に入った。立川反戦ビラ入れ裁判の不当性が暴かれ、支援の輪が広がるのを恐れる裁判所は、不当にも第六回公判(九月三十日)、第七回公判(十一月四日)検察側論告求刑・弁護人最終弁論・被告人最終意見陳述、第八回公判(十二月十六日)判決という超スピードスケジュールを設定してきた。今回から検事側立証に対する反論であり、これまで以上に集中した公判闘争への支援、連帯が求められている。
 第五回公判の弁護側証人は、奥平康弘さん(東大名誉教授、憲法学)、箕輪登さん(イラク派兵違憲訴訟原告・元防衛政務次官)だ。
 表現の自由に関する意見証人として出廷した奥平さんは、@ビラ入れ弾圧が自由なコミュニケーションの妨害行使であることA政治的表現の自由活動に対して住居侵入罪を適用することの不当性を論証した。また、アメリカ大使館抗議行動に対する暴行罪、厚生労働省職員の休日の政治活動に対する不当逮捕などを取り上げ、「このような表現の自由活動に対して、これまで適応しなかった法律を使って侵害してきている」と厳しく批判した。
 箕輪さんは、イラク派兵反対の違憲訴訟の取り組みの経過、主張を紹介し、テント村の仲間たちの反戦ビラ入れの取り組みも、同様の主張であることを力強く証言した。さらにテント村の反戦ビラが一部の意見ではなく、広範な反戦運動の取り組みの一つであり、正当な行為であることを強調した。
 続いて、大洞俊之さん(立川自衛隊監視テント村)に対しては、被告人本人質問が行われ、テント村の歴史、活動、自衛隊官舎反戦ビラ入れ行為に関する事実関係などに関して証言した。

10月30日、無罪判決を求める集会へ


 公判後、八王子労政会館で報告集会が立川・反戦ビラ弾圧救援会の主催で行われた。救援会の開催あいさつに続いて、弁護側証人の箕輪さんが弁護団の一人である内田雅敏弁護士とともに裁判の感想などを発言した。箕輪さんは、「自衛隊のイラク派兵は、憲法九条違反だ。少年時代、戦争体験をした。あの当時の権力は、国民の声を一切聞かなかった。無駄な戦争をしてしまった。また、同じようなことをしようとしている。立川反戦ビラのような声を聞いていれば、間違った道に進まない。しかし、再び危険な道に入ってしまった。ともに頑張っていこう」と激励した。
 次に、弁護団の栗山れい子弁護士、山本志都弁護士から第五回公判の解説と今後の方針について提起が行われた。
 さらに発言は、九・一四反弾圧集会実行委、テント村から九・一二立川市防災訓練情宣、救援会から「立川・反戦ビラ弾圧裁判での無罪判決を求める署名」の取り組みが呼びかけられた。最後に、大沢ゆたか(立川市議)救援会代表からアピールがあった。十月三十日、立川・反戦ビラ入れ裁判の無罪判決を求める集会(国分寺労政会館、午後一時)が開催される。無罪署名の取り組みを行おう。十・三○集会へ!(Y)

【訂正】 本紙前号の6面記事中、「野口孝行さんの帰国報告会を行った」とあるのは誤りで、この集いはアムネスティ川崎グループが北朝鮮難民救援基金を招いた報告会であり、野口さんの発言はその報告の一部です。以上、訂正します。


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