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スペイン                       かけはし2002.4.8号より

欧州サミットに対決してバルセロナで50万人デモ

予防弾圧と反テロキャンペーン打ち破る        クリストフ・アギトン

 三月十六日、バルセロナで運動は大きな前進を遂げた。
 カタロニアの警察はデモ参加者を二十五万人と推定し、主催者は五十万人と発表し、メディアは三十万人と報道した。いずれにせよ、バルセロナでEUサミットに対して行われたデモは、少なくとも昨年七月にジェノバでG7に対して行われたデモに匹敵する規模だった。この規模は主催者の予想をはるかに上回るものだった-主催者の予想は五万人だったが、二日前に欧州労連(ETUC)が約十万人を動員してデモを行ったことによって、バルセロナでの動員のエネルギーが分散されるという危惧もあった。
 警察とメディアによる圧力がジェノバの時と同様に強力だったことは、バルセロナにおける成功をいっそう際立たせている。数十人が予防的に拘束された。国境は閉鎖され、フランスとベルギーからデモに参加しようとした千五百人ないし二千人が入国を妨げられた。反テロリスト、反バスクの恐怖感情が煽られ、それによって戦闘機の動員さえ正当化された。
 今回の成功のもう一つの重要な指標は、地元における動員のレベルが、これまでのすべての反グローバリゼーションのデモを上回っていたという点である。バスクからの数万人の戦闘的な隊列がとくに目立っていたが、そのほかはほとんどのスローガンがカタロニア語で書かれていた。スペインのこのほかの地方からの参加者はそれほど目立たなかった。ヨーロッパ各国からの参加者も、いくつかの国からのシンボリックな参加を除けば、フランスからの数百人ぐらいだった。他の参加者たちはスペインの当局によって入国を阻止された。
 この成功の理由を注意深く分析するべきである。もちろん、バルセロナで開催されるEUサミットは重要であった。このサミットで最も注目されていた議題はエネルギー市場の自由化だが、このほかにも貨物輸送における競争促進、労働市場の柔軟化、国連「開発と金融会議」(メキシコ・モントレーで開催)に対するEUの立場などの問題が論議されようとしていた。また、米国のGPS(衛星を利用した全地球規模の位置測定システム)のヨーロッパ版であるガリレオ計画などの技術的問題も議題に上がっていた。
 したがって、こうした問題が議論されるサミットに対して、公共サービスの切り捨てや労働条件の引き下げに反対し、社会的権利や環境を尊重し、南の諸国との関係を変えていくことを要求するためにデモをするのは十分な理由のあることだった。
 しかし、今回のサミットはスペインが議長国にあたっている期間の中間点にすぎない。一般的に、動員はもっとも重要な決定が行われる最終サミットに集中する。また、WTOやG7サミットの方がEUサミットよりも焦点化しやすいことも事実である。
 したがって、バルセロナにおけるすばらしい成功について理解するためには、それを新自由主義的グローバリゼーションに対する運動の現在の波の中で見ておく必要がある。ケベック、ジェノバ、ポルトアレグレを経て、運動は全面的な拡大と「大衆化」の局面に入っている。
 バルセロナはこの運動の拠点の一つである。二〇〇〇年六月にジュネーブで開催された世界社会サミットと、同年にプラハで行われたデモを通じて確立された交流を基礎にして、「グローバル・レジスタンス運動」(スペイン語の頭文字を取って、MRGと呼ばれている)が設立され、大衆的な動員が組織されてきた。それ以降、バルセロナの活動家たちはニースへ、ジェノバへ、ブリュッセルへと駆けめぐった。
 また、当のバルセロナにおいても、世界銀行が昨年六月に当地で総会を開くことを予定していたが、これに対する大衆的なキャンペーンが組織された結果、世界銀行は総会の中止を決定した。しかし、デモは計画通りに行われ、二万人が参加して総会の中止を祝った。バルセロナの活動家にとって、今回のEUサミットは大衆的なデモを組織する初めての「本番」だった。
 三月十六日のデモの構成はカタロニアにおける運動の特徴を示している。つまり、ダイナミックでエネルギーにあふれた若者たち、広範な社会運動団体、そして非集権的な草の根の組織構造である。
 三つのグループがデモを呼びかけた。「資本家のヨーロッパに反対するキャンペーン」は、世界銀行総会に反対する運動を直接に継承する運動体で、その中心メンバーの大半は非常に若く、MRGを出発点としている。このキャンペーンは百以上の団体を結集している。二番目のグループはカタロニアとバスクの民族主義グループである。三番目は「バルセロナ社会フォーラム」と、それに結集する議会内左翼(社会労働党と統一左翼)、労働組合(労働者委員会、労働総同盟)である。
 デモは真に大衆的な動員のすべての特徴を表していた。大きな組織が動員するデモでは、規模を大きく見せるために参加者は散漫に広がるが、今回のデモは参加者が密集していた。女性グループの千人の隊列、ATTACの三千人の隊列、パレスチナ人の権利を掲げる人たちや環境運動、急進的な労働組合などの数千人の隊列がデモに参加した。しかし、すべてのグループが多様な構成を示していた。若者が大多数だったが、あらゆる世代、あらゆる職業の人々が参加していた。さまざまなグループの中にカタロニア社会党のバッジも目立っていた。
 三つのブロックの間の勢力比は一目瞭然だった。カラフルで元気一杯の五千人―一万人の民族主義者のグループは主要にはカタロニアの人たちだった。バスクの人たちは、一部の団体代表を除いて、MRG系の社会運動のグループに加わった。バルセロナ社会フォーラムは同じぐらいの数だったが、その参加者たちは待ちくたびれて、デモに出発する前に解散してしまった。圧倒的多数は「資本家のヨーロッパに反対するキャンペーン」に結集していた。
 カタロニア、そしてスペイン全国(バスクを除く)の活動家は、多くの世代にわたって、ヨーロッパのどの地域よりも深刻な運動の崩壊を経験してきた。一九七〇年代に、フランコ体制の崩壊の中で、社会運動を基盤とする急進的左翼が台頭した。この当時、ポルトガル革命は、独裁政権の崩壊につづく反資本主義革命という希望を与えた。しかし、民主主義体制への移行とモンクロア協定はこの希望を封じ、長期にわたって活動家を意気消沈させた。
 一九九〇年代後半に大衆運動が発展した時、新しい世代の活動家たちは、既成の運動に束縛されることなく、新しい形態の行動を試し、自分たちの運動を組織することができた。海の向こうの米国の経験が、バルセロナの多くの人々を鼓舞し、さまざまな影響を与えた。非暴力直接行動や急速な組織の拡大にそれが反映されている。したがってMRGの中で現在起こっている分裂は、二〇〇〇年四月のワシントンでの行動の後にニューヨークのダイレクト・アクションが解体したのと似ている。カタロニアではそれが一層急速に進んでいる。なぜなら、それがカタロニアの伝統的な自由主義の文化に対応しているからである。
 しかし、カタロニアでは社会的な絆は米国よりもはるかに緊密であり、運動は今では新しい形態の戦闘的行動によって特徴付けられる。たとえば、三月十六日のデモでは、「有名人」を作り出すことを避けるために、最前列にはあまり名前が知られていない活動家が配置された。しかし、運動はあらゆる要素、世代、社会階層をまとめることができた。
 第一に、このデモはグローバリゼーションをめぐる論争と、論争の方法に影響を及ぼすだろう。たとえば、マドリードの有力紙「エル・パイス」は「カタロニアの州都はさまざまなタイプの反グローバリゼーションを支持する最大のデモの場となった」という見出しを掲げた。もはやすべてを「反グローバリゼーション運動」とひとくくりにしなくなったのである。
 第二に、バルセロナでは暴力が第二義的な問題になった。ゴミ箱への放火や投石など、いくつかの暴力的な行動はあった。しかし、大きな暴力的衝突は起こらなかった。実際に起こらなかったし、メディアでも報道されなかった。イエーテボリとジェノバでの暴力的衝突の後、バルセロナは運動の成熟を示した。
 その一方で、ヨーロッパ内の自由な移動が大きな問題になっている。市民の移動やヨーロッパ規模のデモへの参加に対する政府の規制は見過ごせない。こうした攻撃に対する抵抗、とくにATTACによる反撃は一定の影響をもたらしているが、このキャンペーンはさらに拡大されなければならない。
 最後に、このデモが活動家のネットワークに与えた影響について検討する必要がある。これはスペインでは非常に重要である。六月にセビリアで開催されるEUサミットに対する動員が試金石となる。より一般的に、スペインでも他のヨーロッパ諸国でも、主要な問題の一つは、限られたごく小さな組織構造をベースにして運動をどこまで組織していけるかである。運動の非集権的で民主的な形態が実現してきた成果をもう一度積極的に駆使するようにしないと、今述べた運動の構造上の弱さのために、カタロニアとスペインの他の地方の間で、また、ヨーロッパの全世界の運動の間で、経験を共有し、一体化していくことがより困難になるだろう。
 これは今年十一月に開催されるヨーロッパ社会フォーラムの核心となる大きな課題である。ポルトアレグレの主要な目標を追求する運動をどのようにして世界的に発展させ、地域に根づかせ、全国および大陸規模で定着させ、それを通じて要求と効果的な行動の戦略を体現する機関をどのように形成していくのかが問われている。(ATTAC英文ニュースレター「サンドインザホイール」3月20日号より)

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