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ブラジル                       かけはし2004.0405号

ルラ政権の新自由主義への屈服に対しPT内の革命派はどう闘うか

ラウル・ポント前ポルトアレグレ市長に聞く


 発足から一年以上を経過したブラジルのルラ政権が進めている新自由主義政策をめぐって与党であるPT(労働者党)内部で激しい論争が続いている。昨年十二月、PT全国指導部がDS(社会主義的民主主義潮流・第四インターブラジル支部)に属するエロイザ・エレナをはじめ三人の左派上院議員を除名したことで、この闘争は新たな局面に入った。DS内部でもPT主流派への立場の取り方をめぐって論争が始まっている。

 以下のインタビューは、二〇〇三年十一月、ブラジルの労働者党(PT)社会主義的民主主義潮流(DS、PT内の第四インターナショナルの支持者を組織した潮流)の第七回全国大会期間中に行われたものである。ラウル・ポントはPTならびにDSの創設メンバーの一人である。彼は一九九七年から二〇〇〇年までポルトアレグレの市長をつとめ、同市の参加型予算を築き上げた一人だった。彼は二〇〇一年のPT委員長選で左派の候補だった。現在、彼はリオグランデドスル州の州議会議員であり、今年十月の地方選挙で再びPTのポルトアレグレ市長候補となる。

「移行期」の妥協なのか


――この大会の討論では、多かれ少なかれ誰もがルラ政権の一年間に否定的見解を持っていることは明らかです。それでは「政府が採用している路線との論争」とは何を意味するのでしょうか。

 われわれの潮流が政権の最初の第一年目に対して全般的に否定的な評価を加えているこのは確かです。それは政府が継続している経済政策のためです。また政府を指導している同志たちが、現在の局面が過ぎ去ったら異なった政策を導入することができるように、政府がメカニズムを掌握するための必要な移行局面として、それを説明しているためです。彼らは、それにタイムリミットを付けていませんが、PT多数派の同志たちは、それは変えなければならないだろうと認識しています。

――いったいだれが、それを変えなければならないと認めているのですか。

 PT指導部会議の中で彼らは、これは困難だがわれわれが通り抜けなければならない必要な段階なのであり、われわれの統治能力を示し、ルラ政権が経済運営と対外関係を維持することができることを示すために、この安定を保証することが必要なのだと繰り返しています。多数派によれば、そうすることで、政府はわれわれの綱領にもとづいた措置を実施しはじめ、所得の再分配や農業改革を伴う成長を確保することができる、というのです。

――しかし、あなたは、それが依然として政権の中枢にいる小グループの目的だと考えているのですか。彼らは、それをたんなる移行局面だと依然として考えているのでしょうか。

 私はそれを矛盾だと考えています。私は、そこにはさまざまな度合いの関わり方があると私は考えます。政府の中枢には、このことを信じている人がいると私は思います。パロッチ財政相のような別の人びとは、別の種類の政策は来年には不可能だし、政府の任期中は不可能だとさえ言っています。そこで論争が行われているのです。
 なぜなら多数派は指導部の中でなんとかして多数派にとどまろうとつとめているからであり、ルラ自身、PT指導部会議に来たとき、この移行期という考え方にもとづいた民衆の信頼を要求しました。つまり行政機構を掌握し、議会で多数派を確立するか、少なくとも議会の反対派を中立化させ、それから他の措置を始めるには時間が必要だということへの民衆の信頼を求めたのです。
 われわれはもちろん、そんなことを信じてはいません。しかしわれわれは、そのようなことを言う人が不誠実に行動しており、故意に党全体を欺こうとしているのだとは思いません。したがって党内で論争が起きているのであり、それは終わったとか、解決したというには程遠いものがあります。

自分たちの舞台で闘うべき


――するとDSにとっては、この論争を発展させるには何が一番重要なのでしょうか。どの課題で、どの部分で論争すべきなのでしようか。

 われわれは第一に、政府が議会で中間派の政党からの支持を獲得することを根拠としてその構想をたてることを止める必要があると思います。それは単純で、十分に論理的であるように見えるかもしれませんが、実際には、それはわれわれ自身の政治的・社会的力を拡大する上で障害となります。それは民衆運動、労働組合とのわれわれの関係を弱め、それと同時に、われわれ自身のものではない舞台での闘争に特権的地位を与えることになります。
 われわれは、公的行政の中での直接の民衆参加のメカニズムを構築することに、政府はエネルギーを注ぐ必要があると考えています。同志ミゲル・ロセット(訳注:DSのメンバーであるミゲル・ロセット〔リオグランデドスル州前副知事〕はルラ政権の農業改革相として入閣した)とともにわれわれが農業改革省で行っているような領域もあります。そうした方向に重点を置くのです。政府と土地のない人びとの運動、農業労働者の組合やその連合であるCONTAGがいっしょになって、彼らとともに農村部門、小農農業、そして土地で働く権利のために闘っている巨大な土地のない人びとの運動のための政策を発展させるのです。
 それは一つの例です。つまりわれわれは、政府が社会との関係で取るべき新しい方向の中では、民主主義が決定的に重要な要素になるべきだと思います。
 われわれはそこから始めて、新たな課題のために闘わなければなりません。マスメディアやIMFが設定したものではなく、われわれ自身の課題なのです。政府は自らの優先順位を設定するためのイニシアティブを取る必要があります。われわれには取り組まなければならないはるかに重要なことがあるのです。
 税制改革が議会を通ったやり方は、その明快な一例です。政府には憲法の枠内で、議会を通さずに直接の一連の財政的・税制的措置を取る権限があります。たとえば予算や、他の多くの本当に重要な課題でイニシアティブを取ることは、政府の特権なのです。
 討論が議会を通らなければならないということをわれわれが受け入れるやいなや、われわれは右派や中間派の保守主義者が多数を占める地雷原を歩くことになり、彼らが改革のペースを設定することになります。したがってわれわれは、それほどひどいというわけではない形で法案を出しますが、それにはどのPT党員も防衛することができる側面が含まれています。しかしそれは下院で、作成された時の積極的側面がすべてはぎとられます。そして上院では、当初の提案とは似ても似つかない最終案を手にすることになるのです。
 政府は、民衆的諸階級と国民的主権の利害にかなったすべての点を、不定の未来にまで後退させ、延期することを強制されました。政府にとって交渉するために残されているのは、その信頼を掘り崩すために全力をつくすようなことだけです。つまり、以前は教育や保健のための支出として拘束性をもっていた予算財源の規制の緩和や、すべてのクレジットカードや小切手取引への課税というような。それはきわめて逆行的なものであり、ほとんどの勤労人民にとっては、白昼公然たる盗みとして感じられます。
 われわれは、大規模所有への進歩的課税のための提案を可決するための票数を議会で持っていないのですが、政府が実行を望んでいた改革は、大企業や資産所有者な金持ちがもっと多く払う進歩的税制にもとづくものであり、現在のブラジルのようにほとんどすべての税金が、労働者や賃金取得者や貧しい人びとが支払う消費への間接税であるような状況とは違うのだということを示してアジテーションを行い、民衆運動を構築することもしなかったのです。
 われわれが、非常に異なった課題のためのスペースは存在していると述べたのは、そういう意味です。
――しかしPT政権がこの異なった課題を遂行する上で、議会での保守的同盟者のワナから抜け出すだけで十分ではないのでしょうか。市場の「信頼」という問題と対決しなければならないのではないでしょうか。

 私は、同盟から抜け出すというような問題ではないと思います。そうした問題をもぐり込ませるべきではありません。われわれには経験があり……

「市場の支配」との対決

――しかし市場が経済を不安定化させるだろうという、この恒常的な脅威についてはどうなのですか。

 そうまさにその点です。そうではありませんか? 脅威のことです。われわれはわれわれの上にのしかかってくる問題をつねに持つでしょう。われわれがしなければならないことは、市場によるいわゆる経済の不安定化を生み出すような衝突を作りだすことなく、前進できるような一定の領域を手に入れることです。
 結局のところ、ブラジルの資本家でさえも、恒常的な不安定の情勢を回避することに利益を持っています。そうした不安定はビジネスにとって良いことではありません。資本家たちもまた、彼らの経済的計算のために、今後の計画のために、一定の安定を必要としているのです。
 私が言おうとしてきたことは、われわれは自治体政府の中で、すでに政策の適用、統治の方法についての経験を持ってきたのであり、それは議会的同盟関係に完全に依存するものではなく、多くは住民との直接的関係に依存するものでした。

――参加型予算のことですか。

 そのとおり。参加型予算であり、部門別政策を作成するだけではなく住民の最も基本的な関心に向けた政策を持つ自治体評議会です。その政策とは、雇用の不安定と闘うことによる所得の改善、最低賃金の引き上げ、労働時間の短縮、ブラジルにおいて公共サービス価格のひどい上昇をもたらした民営化の遺産への攻撃です。
 たとえば、電力、電話、料理用ガス、燃料の価格が米ドルと連動しはじめたことにより、労働者や貧しい人びとの生活を完全な地獄にしてしまいました。彼らは、賃金の多くの部分を少なくとも大都市においては絶対必需品となったものに費やさなければならなかったからです。

PT左派議員の役割とは

――ルラ政権によって現在追求されている保守的方式を考えれば、連邦議会や州議会レベルでのPT左派議員の役割はどうあるべきでしょうか。

 私は、同時にわれわれはPT政権を防衛し、積極的性格を持った政府の政策を促進すべきだと思います。たとえば弾圧に関しては、労働組合との関係は根本的に変化しました。土地なき人びとの運動との間で政府が打ち立てた関係もまた、以前に存在していたものとは全く異なったものであり、一部の閣僚は、民衆参加と諮問に向けたメカニズムを創出し、民衆運動を政策決定プロセスに組み込む方向で重要なステップを踏み出しました。こうしたことをわれわれは認識しなければなりません。
 政府は、ブッシュの米州自由貿易地帯(FTAA)に対して屈服せず、以前の政権の下ではアメリカに対して完全に従属的だった外交政策を受け入れませんでした。今や、ブラジルのイタマラティ外相は異なったアプローチを取っており、南米南部共同市場(MERCOSUR)を打ち固め、ラテンアメリカ諸国間の関係を強化しようとしています。ルラのベネズエラ危機への介入、南アメリカ内部のより大きな統合の模索は、きわめて重要です。
 五百年間にわたって、こうした諸国は全く異なった方向を向いてきたのであり、欧州にもアメリカ合衆国にも完全に従属してきました。したがって多くの歴史、文化を共有し、経済的類似性を持つ諸国間の統合のための現実的政策を持つことは、きわめて重要です。われわれはそのことを確認します。
 われわれは政府との関係での大きな問題は、IMFが設定した諸課題に政府が従うことを選択したということだと思います。われわれは、政府が現存する契約をすべて破棄し、債務支払いを止めることを要求したりするものではありません。われわれは、これまで連邦レベルでの政府に入ったことがない党が、状況に適応し、八百万平方キロの国土と二億人の人口を持つ国の中で官僚機構がどのように作用しているかを知るようになるには、若干の時間が必要なことを認める、と言っています。それは小さな問題ではありません。
 しかしわれわれは、予算を民主化し、社会的優先順位を逆転させる公共的政策のためのスペースは、はっきりと存在すると思います。それはわれわれがすでに統治にたずさわってきた自治体や、リオグランデドスル州のようにわれわれがかつて統治した州政府の中でやってきたことです。
 政府は自らが動かすことのできる強力な手段を持っています。たとえばブラジル銀行や連邦貯蓄銀行は、経済成長を回復し、衛生や低価格住宅、保健など、住民の多くが真の関心を持つ領域に重点的な投資を行う経済政策を確立するための強力な手段です。こうした領域すべてで、ふさわしいサービスが欠けているのです。それは銀行家のポケットに入るカネの話なのではなく、住民の大多数のために生活条件を改善するのに支出されるカネの話なのです。
 政府は、地方自治体に資金を提供するためにブラジル銀行、連邦貯蓄銀行、全国開発銀行(BNDES)を利用する決定ができたはずでした。それはこうした銀行が設立された目的でした。それはこれらの銀行がやるべきことです。しかし世界銀行の政策「ガイドライン」や、それに続くIMFとの協定の線に沿って、連邦政府は小規模、中規模、そして大規模自治体への信用供与を閉ざしてきたのです。

自治体レベルからの闘い


――しかし、州議会議員としてのあなた、あるいはブラジリアの上下院議員であるあなたの同志たちは、IMFや企業から直接指示された政府のテーマのこうした部分に、どのように反対すべきなのでしょうか。

 われわれは政府に圧力をかけるために議会メンバーを組織し、ふさわしい他の政党との議員との共同行動を組織したり、市長を動員しています。たとえばPTの党員市長をふくむ市長たちは、こうしたことを要求しています。なぜならそれは、われわれの綱領の一部だったからです。PTは野党だった当時、闘争の政綱の一部として、ブラジルの自治体は全税収の二〇%を手元にとどめておくべきだという方針を採択しました。
 したがって、この分権化のための闘争、自治体の財政的自治をめざす闘争は、不可避的に教育、保健、衛生、水、民衆の住居にもっと多く支出させることになります。市長がかりに望まなくてもそうなるのです。なぜなら住民からの圧力、社会的勢力の強さが、自治体政府にそうした方向を取らせるようになるからです。
 地方レベルでの圧力は、はるかに即効性があり、下から上に押し上げるものです。そしてそれは、均衡予算や基本収支の黒字といった連邦政府のあらゆる関与を変化させます。基本収支の黒字は、資源・資金を全国レベルで集中させ、それらを銀行家や信用供与者に移転させるだけであり、あるいは債務の水準を増加させ、より多くの短期資本を引きつけるために金利を上昇させるだけです。
 そして、これがわれわれの議員の一部が闘っているものであり、PTの綱領の一部なのです。われわれはこの問題をめぐって他党の市長を動員し、労働組合とともに活動することができるのです。自治体がもっと多くの財源を使えるようにすることの重要性を示すためです。なぜなら自治体においてこそ、資源の使用の方法を変化させるために住民がより多くの直接的影響力を持つことができるからです。
 労働者の即時の利害にかかわるこの領域は、巨大なものです。ここでは、ほとんどの経営者は、すでに存在している社会立法に同意していません。経営者たちは支払うべき賃金を払っていません。彼らは労働者の持つ権利を尊重しません。われわれの政府は、この点のチェックと実施を改善すべきであり、労働者たちが従わされている不安定な契約や、猛烈にはびこっている「柔軟化」に終止符を打つべきです。
 そうすることによってのみ、大きな前進がすでにしるされてきました。それには政治的支持を築き上げることです。政府が自分たちの側にあると考え、自らの利益のために闘い、現存する法律を尊重しない経営者に対決して自らを防衛する労働者や賃金取得者こそが……。
 二〇〇二年の選挙期間中に、ポルトアレグレ――そこは州都で労働組合の闘争や基本的人権をめざす闘いの伝統があるところなのですが――の工場や店舗や他の大きな職場でしばしば聞いたこと、とりわけ女性労働者たちから私が聞いたのは、自分たちは法で定められた賃金を受け取っておらず、経営者たちは法を尊重せず、それでも自分たちは解雇を恐れておおっぴらに要求できない、という声でした。
 そして失業率がこのように高いと、労働者は職を失うまいと絶望的な気分になるのはもちろんです。労働組合自身が、そのことを理解しない場合もあります。いまやわれわれのものである政府は、この闘争で労働者の側に立つべきでした。ルラを選んだのは労働者であり、彼を選んだのは民衆の多数派だからです。
 したがって民衆が支払うことのできる安い価格での公共サービスの防衛、適切な賃金の防衛、労働時間の短縮といった課題は、政府が取ることのできたイニシアティブでした。こうしたことのどれもIMFや国際的資金供与者との決裂を意味しませんが、ブラジルが社会的不平等のあらゆる記録を破っている一つの問題との闘いを決定することを意味します。
 そしてこうした諸措置は、今後のより大きな対決において、もっと大きな力、もっと大きな支援と正統性を政府に与えることになるのは確信できます。それは同一の目的のための異なった道です。いま政府にいる同志たちも、公共財源がわが国の住民の大多数のニーズに向けられるようになるよう望んでいるということを、われわれが誠実に受け入れるならばですが。

ポルトアレグレ市長選挙

――ポルトアレグレの市長選に立候補するために、どのようなキャンペーンを計画していますか。

 私は、ポルトアレグレの選挙戦はもっとローカルな闘いになるだろうと考えています。それは部分的には、ポルトアレグレの競争相手の一部はすでにブラジリアの政権に参加していたり、参加しようとしているからです。
 主要な中道右派政党であるPMDB(ブラジル民主運動党)は、われわれがポルトアレグレで直面する主要な対決相手ではないとしても、その一つにはなるでしょう。しかし彼らはルラ政権に参加しようとしています。したがって彼らが、政権に参加しようとしている時に連邦政府に反対するキャンペーンを展開するのは困難でしょう。

――しかしあなたのキャンペーンはどうなるのですか。

 はい分かっています。私が言いたかったのは、選挙戦はよりローカルな性格を持つことになるだろう、ということです。そう考えれば、私のキャンペーンはポルトアレグレでのPT政府の十五、六年の経験を擁護するものになるでしょう。私は、ポルトアレグレで「世界社会フォーラムのPT」を維持したいと思います。私はポルトアレグレで、「参加型予算のPT」、「自治評議会のPT」、「女性と黒人へのクォータ制を導入したPT」、「二十三年間の闘争の真の成果であるPT」を維持したいのです。
 住民が公共予算を決定すべきだ、住民が社会サービスや、子どもや青年のための政策を作成すべきだ、という政策、すなわち民衆の主権は、われわれの最大の業績です。それがわれわれの最も強力な主張です。われわれは、それが正しい政策だということに自信を持っています。
 それはつねに、あらかじめの勝利を保証するものではありません。敵も強いのです。彼らは経済的パワーを持っており、ラジオとテレビを支配しています。すべての大企業団体はわれわれに反対するでしょう。他政党の圧倒的多数もわれわれに反対するでしょう。右派と中道派のすべての政党は、われわれの政府と候補者としての私に反対するでしょう。しかしわれわれは、民衆の支持、ポルトアレグルの民衆の十六年間の参加民主主義の経験からもたらされるわれわれの力を信頼しています。
(「インターナショナルビューポイント」04年2月号)


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