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立川・反戦ビラ入れ不当逮捕を許さない!        かけはし2004.03.22号

「戦時下の言論弾圧」を打ち破ろう

「イラク戦争反対の運動をさらに広げて反撃しよう」


 三月十五日、東京の立川中央公民館で「反戦ビラ入れへの弾圧を許さない 三・一五立川集会」が開催された。主催は逮捕された仲間たちを守るために急きょ結成された「立川・反戦ビラ弾圧救援会」。集会には地元立川や三多摩各地からだけではなく、都内や神奈川県からもふくめて百五十人の労働者・市民・学生が結集し、会場は床に座ったり、立ったままの人が出るほどあふれかえった。
 立川自衛隊監視テント村の三人が、一月十七日に立川市内の自衛隊官舎の郵便受けに自衛隊イラク派兵について「自衛官、ご家族の皆さんへ いっしょに考え、反対の声をあげよう」と題したビラを入れたことが「住居侵入」に問われ、一カ月以上たった二月二十七日に令状逮捕された事件は、反戦の言論を見せしめ的に封じ込める露骨な弾圧である。それは「戦争国家・派兵国家」体制が、憲法を破壊し、言論の自由などの基本的人権を奪う監視・弾圧体制とセットであることを示すものだ。
 警視庁公安と立川署が自衛隊上層部の意思を受けて強行したこの弾圧に対して、大きな批判が巻き起こっている。各地の反戦市民団体はただちに不当逮捕と事務所・個人宅への捜索、パソコンや電子手帳の押収に抗議する訴えを発した。法学者や弁護士などからの抗議声明も発表された。最初は沈黙していたマスコミも、ようやく重い腰を上げはじめた。三月五日の朝日新聞は社説で「ビラ配りでなぜ逮捕」と、警察の弾圧に疑問を投げかけた。
 集会では、最初に救援会の活動報告。三人が逮捕された翌日の二月二十八日には朝から自衛隊基地に対する「反軍放送」が行われ、二十九日には立川駅でのビラまきや立川基地申し入れ行動などの素早い反撃が開始された。三月三日には大沢豊立川市議と重松朋宏国立市議が呼びかけた記者会見が行われ、三月五日には九十三人が結集して立川署抗議行動も取り組まれた。またこの日、三月十五日には今回の弾圧事件に対して東京弁護士会に人権救済申立書を提出したことも報告された。
 次に立川自衛隊監視テント村の加藤克子さんが報告。
 「自衛隊イラク派兵の中で、ビラ入れや反軍放送などいつものような活動を行っていたが、なかば危惧していたような弾圧が行われた。しかし権力が私たちをつぶしにかかっている時に負けるわけにはいかない。反軍放送も懸案だった自衛隊基地への一人一人のアピール活動もただちに行った。戦争になると銃後が形成され、銃後は時として戦地よりも好戦的になる。私たちのイラク反戦運動は、民衆の中に形成されるそうした気分を見すえ、克服するものでなければならない」。
 こう語った加藤さんは、長年の友人から寄せられた連帯のメッセージを紹介し、感謝の言葉でしめくくった。
 立川市議の大沢豊さんは、逮捕の報を聞いてただちに連絡できる限りの人びとにメールやファックスを送って警察への抗議と逮捕された仲間への支援を要請し、自分のホームページにも掲載したこと、抗議の共同声明には三日間で七百通にのぼる賛同のメールが寄せられ、自分のホームページには六千ものアクセスがあったことを報告し、「自由にものが言えなくなる社会が作られはじめている。これを絶対にみんなの力ではねかえそう」と訴えた。
 五十六人の法学者の声明を三十六時間で集めた石埼学さん(亜細亜大教員)は、郵便ポストは私生活と外の社会をつなぐもので、ポストにビラ入れをすることは「住居侵入」にはあたらない、と強調した。そして、昨年、公園のトイレに「反戦」の落書きをした若者が「懲役一年二ヵ月、執行猶予三年」という重い判決を受けたこと、共産党の「赤旗」のビラをまいた労働者が「国家公務員法違反」で逮捕されたことなどを例に挙げ、戦時下の弾圧が始まっていると警鐘を鳴らした。石埼さんは「派兵は私たちの自由を押しつぶしながら強行されていく。これに対する最大の反撃は、イラク戦争反対の運動をさらに広げていくことだ。自由の剥奪に、自由と権利を行使することで対決しよう」と呼びかけた。

 次に、逮捕された三人の接見活動を続けている栗山弁護士が、完全黙秘で闘っている三人に対して警察・検察は一日六時間から八時間に上る不当な取り調べを行っている、と報告した。内田雅敏弁護士は、三月十九日の勾留期限に向けて起訴をさせない社会的圧力をかけることが必要だ、と述べた。
 「イラクに自衛隊を送るな!立川共同行動」の仲間は、勾留理由開示公判で三人に手錠と腰縄が付けられているのを見て、自分自身に手錠がかけられているように感じたと語り、彼が勤めている三多摩法律事務所の十八人の弁護士全員の連名で不当弾圧への抗議声明を出した、と語った。
 討論の中では、社会科学者有志の弾圧抗議声明を三月十三日から始めて、三日間で八十九人の賛同を集めた東浩一郎さんが発言した。また米大使館前で個人として抗議の活動を続けてきたという女性からの弾圧体験なども語られた。
 休憩をはさんだ第二部では、ともに自衛隊基地の抗議の行動や自衛官への働きかけを行ってきたグループが発言した。東立川駐屯地へのデモを行っている国立の仲間、戦争協力はいやだの声を!南西部実行委員会の山本英夫さん、米兵・自衛官人権ホットラインの片岡顕二さん(元反戦兵士)、非核市民宣言運動ヨコスカの新倉裕史さん、戦争に協力しないさせない練馬アクションの池田五律さんが報告。その中で横須賀の新倉さんは、横須賀ではこの間、自衛隊官舎への投げ入れやダイレクトメールを五千通出してきたこと、北海道の自衛官ホットラインには百七十件の問い合わせが自衛官やその家族からあったこと、有事法やイラク特措法の法案作成にあたって自衛官のことが考えられていたと思うか、というアンケートに対して、回答を寄せた自衛官のうち横須賀では七五%、北海道では八二%が「考えられていない」という批判を持っていたことが紹介された。
 自ら立川に比べて横須賀の運動は「軟弱」という新倉さんは、「立川テント村と横須賀では自衛隊への働きかけのスタンスが異なっているが、働きかけが重要であるという点では一致している。スタンスの違いについてはじっくり時間をかけて討論するとともに、自衛隊への働きかけを今後も継続していくことで、弾圧された立川の仲間に連帯したい」と語った。
 最後に、勾留中の三人からの元気なメッセージが紹介され、「あらゆる力を集めて3人のなかまをとりもどすとともに、反戦平和の声をさらに大きく広げていく」という集会宣言と行動提起を確認した。
 自衛隊官舎にビラ入れした立川の三人の仲間の令状逮捕や共産党のビラを配ったとして「国家公務員法違反」で逮捕された事件は、自衛隊イラク派兵と有事国家体制下での批判的言論への弾圧が強まっていることを示している。労働者・市民の全体の力で反撃しよう。逮捕された仲間を支援する運動を大きく作りだそう。       (K)


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