| 3・1独立運動85周年―― かけはし2004.03.08号 |
「ドンドコドンドコ、ゴーン」……韓国伝統楽器(チャンゴ)から発せられた音が上野公園野外ステージに響き渡る。三・一朝鮮独立運動八五周年、イラクにも朝鮮半島にも平和を!行動実行委員会の主催による集会のオープニング、「ウリト」の音楽隊が会場をねり歩く。
集会は主催者を代表して、日韓民衆連帯全国ネットの渡辺健樹さんの発言から始まった。渡辺さんは、アメリカのイラク攻撃や小泉政権による有事法制と自衛隊のイラク派兵を批判した上で「次は北朝鮮をたたいて当然!というような雰囲気がつくりだされている。しかし、ピョンヤン宣言の内容を実行するのが当然であり、日朝国交正常化に向かうべきだ。この日の集会を3・20反戦集会への第一歩にしていこう」と訴えた。
3・20反戦行動への第一歩として
音楽ライブとして、ヨッシーとジュゴンの家の演奏の後、続々と行われたリレートークのT部では、五団体から発言が行われた。沖縄・一坪反戦地主関東ブロックの飯田さんは、沖縄での米軍訓練が強化されていることや名護基地―米軍基地移転問題に関連した沖縄現地の状況を報告。反天皇制運動連絡会の新孝一さんは、この間の反天皇制集会の右翼の介入と妨害が続いていることを糾弾し、「日の丸・君が代」の強制が進められる一方で、皇族による派兵される自衛隊へのエールを送る発言などを許してはならないと訴えた。
ワールド・ピース・ナウからは大量破壊兵器は見つからない、米軍らの死傷者は拡大し、一方で多国籍企業が石油利権のためにうごめいていることを指摘し「戦争に反対した私たちが正しかった。しかし、正しいだけでは足りない。3・20集会を昨年を上回る力で作りだして、ブッシュと対抗する世界の人々によるスーパーパワーを」と訴えた。
戦争と女性の暴力・日本ネットのキム・クジャさんは、草の根的な反北朝鮮意識の浸透と経済制裁、日米軍事力の動向に心配していることを発言した上で「過去の植民地支配のことを解決せずして本当の意味での日朝交渉はありえない」と、韓国で行われている軍隊慰安婦の毎水曜日デモへの連帯を訴えた。北朝鮮人道支援ネットからは、育児院(孤児院)に粉ミルクを送る運動と活動の状況が報告された。
音楽ライブUとして、琉球ネシアンズ+宮川バンドの演奏の後、各地からのメッセージが紹介された。在日韓国民主統一連合、沖縄満月祭り実行委、ピースリンク広島・呉・岩国、名古屋の有事法制反対ピースアクション・不戦へのネットワークから、それぞれの闘いの報告と連帯の熱い思いが届けられた。
リレートークのUでは、四団体から発言があった。許すな憲法改悪・市民連絡会の土井登美恵さんは「イラク派兵の一方で、戦争をする国として人権が脅かされている。有事関連法、国民投票法、改憲反対の大きなうねりを」と訴えた。自衛隊の海外派兵と戦争協力に反対する実行委からは山本英夫さんが「政府は人道復興支援といっているが、本質は米英軍支援であり、絶対に許すことはできない」と訴えた。在日朝鮮人の権利のために弁護士のキム・スンシンさんは、東京都による江東区の枝川の朝鮮学校の「土地不法使用」のキャンペーンの不当性を訴え、市民運動からの支援を要請した。ウーマンインブラックの本山央子さんは「女性解放」が武力行使のひとつの理由にされ、いま「イスラム法のもとでの国家」が論じられているなかで、女性の権利をめぐる闘いと連帯しようと訴えた。
チャンゴの音もにぎやかに上野デモ
音楽ライブVとして、ノレの会の歌の後、韓国からのゲストであるキム・ソンランさん(統一連帯・対外協力委員会)が発言を行った。キムさんは、米軍のもとへ日本と韓国の軍隊が派兵されるのは悲劇的であり、日米同盟の強化と一体のものとして日本が北朝鮮圧迫の先頭に立っていることを指摘した上で、「日本のみなさんの闘いが重要だ。日本の軍国主義を許してはならない。平和のための真の友人として日韓民衆連帯を強めていこう」と訴えた。
日本側からは、井上澄夫さん(意見広告運動)が発言。井上さんは「イラクは危険だから派兵反対という人もいると思うが、私たちはイラクへの侵略に反対するから戦争に反対するのだ。国連での支援をという声もあるが、小泉は国連抜きで米軍の侵略戦争を無条件支持したはずだ」と主張した。
集会後のデモ行進は、チャンゴ隊を先頭に不忍池沿いから始まった。三百五十人の力強いシュプレヒコールとチャンゴの音に驚いて、池からは数十羽のカモが飛び回る。休日でごった返す通りの人々はデモ隊を注視する。シュプレヒコールと歌でイラク派兵反対と有事法反対、朝鮮半島に平和をとアピールして、この日の行動を終えた。各地域、各戦線での闘いの蓄積を総結集して、3・20反戦集会の大結集で全世界の反戦行動に合流していこう。(R)
イラク民衆の側から自衛隊を見る
日弁連などが自衛隊派遣に反対し緊急報告集会開く
二月二十五日、東京の弁護士会館で「イラク民衆の目から自衛隊を見る」――自衛隊のイラクへの派遣に反対する緊急報告集会が開かれ、百六十一人が参加した。主催は日本弁護士連合会、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会。
最初に、日弁連会長の本林徹さんは日弁連として自衛隊の派遣に反対する立場を明らかにした(別掲)。
映画「HIBAKU SHAヒバクシャ―世界の終わりに―」の監督の鎌仲ひとみさんが「イラクの普通の人々から見たアメリカと自衛隊」について次のように報告した。
九八年十一月から四十日間イラクに入った。イラクでは医療は無料で受けられた。しかし、国連が経済制裁を課したことにより、抗がん剤が大量破壊兵器の原材料になるとして薬がイラクに入ってこなくなった。バクダッドの病院に行ったが専用病床で毎日のように子どもたちが死んでいっていた。下痢止め、消毒液がなく、単純な病気で死んでいっていた。WHOはこの制裁によって、イラクの人々六十万人が死んだと発表した。〇二年までには百万人にのぼったという。
劣化ウランが湾岸戦争の時は三百トン、今度の戦争では二千トンが使用された。十年以内に、百万人が死ぬのではないかと言われている。
広島でヒバクシャを診ている飛田医師は「イラクで起こっていることは被爆だ。DNAが傷つけられていて、いまの医学では直せない」と語った。
続いて、イラクの小児病院に医薬品を送る活動をしている「セイブ・イラクチルドレン・名古屋」の小野万里子さん(弁護士)が活動内容を報告した(別掲)。
質疑応答の後、箕輪登さん(「イラク派兵違憲訴訟」原告・元郵政相)が自衛隊の派遣差し止め訴訟を札幌で起こしたことについて渡辺たつお弁護士が報告をした。最後に、日弁連有事法制問題対策本部の児玉公男弁護士が今後も自衛隊の派遣反対の行動を起こしていくことを提起した。
二月十三日、内田雅敏弁護士らは一万二千人が集まった明治公園(20労組呼びかけ)で、イラク派兵反対の日弁連ののぼりを持ち、2・25日弁連集会のチラシを配っていた。弁護士会による派兵反対の活動は、憲法改悪が急速に進められていく時期、極めて重要な取り組みであった。 (M)
本林徹さん(日弁連会長)の発言から
イラク派遣は憲法違反
日弁連は二万人の弁護士が登録している。会員にはさまざまの思想心情を持った人がいる。では、なぜこうした日弁連が自衛隊のイラク派遣に反対しているのか。
第一に、イラク特措法はイラクにおける自衛隊の武力行使を容認することにつながるものであり、国際紛争を解決するための武力行使および他国領土における武力行使を禁じた憲法に違反するおそれが極めて大きいものであるからだ。政府は憲法を守らなければならないはずだ。政府の今回の決定は立憲主義にもとるものだ。
第二に、特措法の基本原理は、戦闘行為の地域のない所への派遣であり、かつそこで戦闘行為を行わないことだ。しかし、米軍の司令官も認めているように、いまやイラク全土が戦闘地域だ。自衛隊の派遣されたサマワも戦闘地域だ。これは特措法にも違反している行為だ。
第三に、戦争は人の命を奪うものでであり最大の人権侵害だ。憲法は平和のうちに生きる権利をうたっている。イラクとの友好関係を深めることが重要だ。日弁連は、自衛隊のイラク派遣に強く反対し、政府に対し、既に派遣された自衛隊の即時撤退と今後の派遣中止を求める。(発言要旨、文責編集部)
小野万里子さん(弁護士)の発言から
イラク現地は何を願うか
昨年二月、イラクを訪れた。病院を訪れ、苦しむ子どもたちの姿を見た。薬を持っていこうと決めた。三回医薬品を届けた。最初は薬を送ればいいと思ったが、それだけではダメなことがわかった。イラクの病院から、「イラクの病院では子どもたちが毎日死んでいっている。なんとか、日本に招いて治療してほしい。日本でイラクの医者を勉強させたい」と依頼された。一人の子どもと二人の医師の受け入れに千五百万円必要であったが、普通の女性たちが中心になってカンパを呼びかけた。一月に、イラクの子どもと医師が名古屋にやってきた。
自衛隊の四十人の衛生隊がサマワに行ったが、治療行為をするのではなく、症例研究会をやりたいと病院に持ちかけた。病院側は「いま必要なのは医薬品と医療器具、そして患者の治療だ」と答えている。イラクにいま必要なのは兵隊や戦う道具ではなく医療支援だ。
昨年の二月に行ったときは日本が好きだという人がほとんどだった。十一月には、それがかなり変わっていた。足元に爆竹を投げられたり、石を投げられたという日本人ジャーナリストもいた。日本人に対するイメージが落ちている。「日本人で自衛隊の派遣に反対しているのは半分くらいだ」と言うとイラク人はがっかりしていた。
私たちの始めたことは全国に広がりつつある。今度、広島で一人イラク人医師を受け入れることになった。非軍事での支援ができるという実感を持っている。(発言要旨、文責編集部)
b映画「HIBAKU SHAヒバクシャ―世界の終わりに―」
03年釜山国際映画祭正式招待作品/第9回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞/
イラク攻撃から1年……。
3月20日(土)より公開
b上映館:ユーロスペース(JR渋谷駅南口下車2分/JTB前さくら通り上がる)
自衛隊官舎へのイラク反戦ビラ配布に対する不当弾圧を糾弾する!
立川自衛隊監視テント村
二月二十七日、警視庁公安二課と立川警察は、立川自衛隊監視テント村の仲間がこの一月に基地の東側の公務員住宅区画にある自衛隊官舎ポストに反戦ビラを入れたことを理由にして、三人を逮捕し六カ所を家宅捜索するという不当弾圧を行った。ピザ屋も寿司屋も日常的にビラを入れるポストに反戦ビラを入れることが「犯罪」になるのか! 立川自衛隊監視テント村の抗議声明を掲載する。
二月二十七日早朝、私たち立川自衛隊監視テント村は「イラク反戦」を理由に全面的な弾圧を受けた。逮捕者三名、事務所・個人住宅の家宅捜索六ヵ所。これは小さな反戦市民団体としては大きな打撃である。令状には、一月十七日に自衛隊官舎に反戦ビラを配ったことが住居侵入にあたる、とあった。団地のポストにチラシ広告を投函する全ての行為がこの弾圧の対象になりうる。
かつてオウム真理教信者によるポスティングが同様の弾圧を受けたことがあるが、日本という国が、民衆の反対の声を封殺し、派兵国家としてその暴力性をあらわにしたのである。
問題の一月十七日、私たちが自衛隊官舎に配ったビラは「自衛官・ご家族の皆さんへ 自衛隊のイラク派兵反対!いっしょに考え、反対の声をあげよう!」と題するものである。大義なきイラク戦争、そしてこの泥沼化の中で、「計算機を片手に命令を下す者はいつでも安全で、命令を下されるものや、さらにその標的になるものは、いつでも身の危険におびえ、激しいストレスにさらされ、時には金で横っ面をたたかれる」と、自衛隊派兵の背景を批判している。そして自衛官とその家族に「自分で考え、一緒に声をあげよう!」とよびかけている。
派遣隊員たちは「仕事だから」「国のためになるなら」「上官の命令だから」……と自分の気持ちを整理するのに必死だ。そして「この戦争は正しいのだろうか?」「イラクの人を殺してしまったら、トラウマに一生苦しむのではないか」……と悩んでもいる。
かつて日本はすべての反対の声を抹殺し、子どもたちを皇国の神話で染め上げ、破滅的な侵略戦争へと突き進んでいった。
自衛官が自分がどう行動するべきか悩むことのできる社会こそ健全な社会である。私たちが派兵反対の声をあげ、自衛官たちと議論できる社会こそ、誤った政策からの復元力を持つ社会である。人権も言論の自由もない「銃後」の社会づくりを私たちは拒否する。
政府は、憲法も国際法も無視した派兵を詭弁によって糊塗し、既成事実を積み上げて、「イラクに行った自衛隊を応援するしかない」と世論を誘導する。イラク反戦運動が直面しているのは、こうした巨大な権力なのである。私たちは、詭弁を論破し、歴史と現状から既成事実の誤りを一つ一つ訂正する闘いを続ける必要がある。そのとき大切なのは、言葉の力であり、言論の自由であり、自衛官とその家族との対話の回路である。
私たちテント村は、権力の予防弾圧をはねのけて逮捕された仲間をとりもどし、全国・全世界の人々とともにイラク反戦を闘いぬきたいと思う。私たちは自衛隊員とその家族へのよびかけを決して止めはしない。
抗議と奪還の闘いへの結集とともに、広範な救援カンパへの協力をお願いする次第である。
二〇〇四年二月二十八日
立川自衛隊監視テント村
立川市富士見町2―12―10―504 電話/FAX 042-525-9036/524-9863
Eメール tachikawa227q@yahoo.co.jp カンパ送り先 郵便振替番号00190―2―560928 「立川自衛隊監視テント村」
派兵反対!自衛隊即時撤退を求め静岡でデモ
雨のなか百八十人が意気高く
【静岡】自衛隊陸自本隊派兵を目の前にして、今回の集会とデモは計画された。小泉の「人道復興支援」というデマ宣伝をマスコミがタレ流し、派兵反対の世論に変化が起きつつある状況は静岡でも同じだが、これをはね返す闘いを作り出す努力の結果、二月二十二日の集会は大きく成功した。参加者は総数で百八十人。
雨になりそうな日曜日、午前十時から静岡市内中心街の公園、青葉公園で集会場の設営に取りかかり、雨に備えてステージ上に大テントを乗せて仕上がったころ、雨が降りだした。集まり始めた市民は「大丈夫だろうか」と心配顔で言っている間に大降りの雨。
午後一時集会開始。ごとうさん、山田さん、女性二人が司会。オープニングは浜松NO!AWACSが誇る「NoNoバンド」が替え歌で有事法制と派兵反対を訴え、戦争体験を女性の立場から証言した村松さんは「いまの時代が当時と重なってきている」と指摘した。労働運動の現場からの発言では、特に教育現場から「がくろう静岡」の山村さんが「君が代・日の丸」の強制以降、教育基本法改悪に手をつけてきた今日の教育の統制が強化され、これに生徒・児童を巻きこみつつある事例が報告され、戦争を肯定する世代づくりが進行しつつあると指摘し、会場を緊張した雰囲気にさせた。これはいまの時代の核心問題の一つだからだ。
集会は詩の朗読や会津さんによる歌の練習などをはさみ、発言に立ったキリスト者の中川さんは「一人ひとりの意思と責任で派兵を止める、派兵を認めない行動として、違憲訴訟を静岡で起こそう」と訴えた。
断続的に降っていた雨も集会終了時には止み、二時間三十分もの長い間、公園で立ったまま集会に参加した市民のピースウォークが始まった。今回の大きな特徴はリズミカルで分かりやすいコールでのピースウォークだったこと。「×××反対」とか「×××阻止」ではなく、だれもが口にして、意思表示できる市民への訴えと歌の練習で覚えたての「私は戦争に協力しない」という「たまじまん」のグループが作った歌を合唱しながらというものだった。一月十一日の行動、サウンドアクションにならって、二時二十二分二十二秒、一斉に「音にも聞け!」と打ち鳴らした。
集会を主催した「戦争に反対する市民ネットワーク・静岡」は一月五日から〇四年の行動に取り組み、この先も継続して闘い、地域に定着した力を結集していくことにしている。(S)
陸自本隊派兵に抗議して池袋で反戦デモ
有事立法・治安弾圧反対かかげ
【東京北部】陸自主力第一陣が千歳からイラクに出発した翌二十二日、池袋で、自衛隊のイラク派兵を許すな!2・22池袋デモが行われ、東京北部地域の労働者市民が参加した。主催は有事立法・治安弾圧を許すな!北部集会実行委員会。
午後三時より東池袋公園で行われた集会では実行委員会を代表して反安保・反自衛隊・反基地を闘う東京北部実行委員会の仲間が、昨年のイラク戦争開戦の日にも池袋でデモを行ったことを振り返りながら、「自衛隊派兵という状況の中で治安弾圧も強まっているが、最後まで闘っていこう」と発言した。
続いて、戦争に協力しない!させない!練馬アクションの仲間が日米共同演習ヤマサクラへの反対闘争などを報告、板橋・歩こう会の仲間はアナン事務総長の来日に触れ、国連の下での自衛隊派兵という問題に注意を喚起した。
さらに北部労働者共闘、連帯・労働者組合、戦争に反対する中野共同行動などの仲間が次々に発言し、吹きすさぶ強風の中、南池袋公園までのデモを行った。解散地ではワールドピース・ナウ実行委員会の仲間が3・20の日比谷野音での集会への参加を呼びかけた。 (板)
小泉の靖国参拝は憲法違反だ!
参拝違憲アジア訴訟――大阪地裁で一部勝利判決
アジアの声をさらに響かせよう
【大阪】二〇〇一年八月十三日に小泉首相が靖国に参拝したのは憲法に違反するとして、同年十一月に起こされた訴訟の判決が、二月二十七日大阪地裁であった。
判決は、「参拝は内閣総理大臣の資格で行ったと認めるのが相当」と、参拝の公的性を認めたが、憲法判断はせず、また「原告らの具体的権利が侵害されたとはいえない」として、原告一人あたり一万円の損害賠償の請求は退けた。また、参拝差し止め請求については、訴えそのものを認めなかった。
靖国神社を被告にした意義は大きい
判決報告集会が二十七日夕刻からエル大阪で開かれた。菅原龍憲原告団長のあいさつの後、弁護団一人ひとりから判決についてそれぞれ簡単な評価が述べられ、続いてジャーナリストの田中伸尚さんと、公判で証言した平野武龍谷大教授(憲法)が講演した。田中さんは、アジア訴訟が靖国神社を被告にしたことの意義は非常に大きいと語った。
「靖国は遺族の承諾なしに勝手に合祀しているため、公判でもそのことを原告側証人の反対尋問で質問している。国家の祭壇への公的復帰・新たな戦死者の確保をねらっている靖国にとって、無断合祀は重大問題だ。今後イラク派兵された自衛官が不幸にして死亡した場合、『戦死』ではないから靖国の基準では合祀できないはずだ。合祀するとなると、警官の死はどうなるかなど問題が広がっていく。勝手に合祀することを認めない遺族も出てくる可能性も大いにある。百二年前の八甲田山での冬の行軍で死亡した陸軍兵士を靖国に合祀してほしいという請願に対し、一九八七年靖国神社は正式に回答し断っている。合祀が難しいとなると、国立墓苑の問題が出てくる。国家は追悼すべきなのかどうかの問題も浮上してきて、新しい段階に入った」と語った。
平野さんは、「今回の判決は、以前の岩手靖国訴訟(靖国公式参拝をすすめる県議会決議の違憲訴訟)の判決や以前の大阪高裁判決、福岡地裁判決での『繰り返されれば違憲である、違憲の疑いがある』から後退している。判決は二十五点ぐらいだ。エホバの証人の神戸高専生に対する退学処分事件での最高裁判決は、強制・制止はなかったが信教の自由の侵害であることを認めている。また、東大医科研病院のエホバの証人の患者に対する無断の輸血の件の判決でもインフォームドコンセントがなかったことを指摘している。このような判例の流れにつなげていくことが一つの展望だ」と述べた。
韓国から参加した原告から訴え
講演の後、韓国から参加した原告の李煕子(イ・ヒジャ)さんが登壇。「父の過去を調べていて、靖国に合祀されていることがわかったときは、驚愕のあまり死んだようになった、戦死者が神になるなど全く理解できない」と語った。
続いて、同じ靖国訴訟を闘っている沖縄・九州山口・四国・東京の仲間が簡単に感想を述べた。沖縄原告団長の金城実さんは、沖縄での訴訟は、沖縄県民に沖縄戦の意味を問う闘いと位置づけ、裁判官によるガマの現場検証を実現したいと語った。九州原告団長群藤さんは四月七日の判決ではきっと憲法判断に踏み込んだ判決が出るとの期待をのべた。四国原告団長の釈氏さんは、公務員(である総理大臣)も個人責任を問われるべきだ、四国では、宗教法人(浄土真宗の寺院)が靖国神社を訴えていると語った。東京訴訟の弁護人大山弁護士は、次の公判は五月十八日だ、これは裁判所が大阪の判決を分析し今後の態度を見極めるためだろう、東京訴訟では石原都知事も被告になっている、立法不作為による慰謝料請求を国会に対して出している、と語った。
最後に、アジア訴訟原告団事務局長の菱木さんから、「違憲である」と認定したに等しい判断が司法によってなされたのだから、今後小泉首相が靖国参拝をしないことを要求する旨の声明文案の提案と控訴をする旨の提起があり、全体で確認した。 (T・T)
解説
靖国アジア訴訟の争点と大阪地裁判決の意味
二〇〇一年の小泉首相靖国参拝をめぐっては、大阪をはじめ東京、松山、九州・山口、沖縄で同じ時期に訴訟が提起されて、裁判闘争が闘われてきたが、その先陣を切って大阪地裁で判決があった。大阪訴訟の原告は六百三十一人だが、その中には百十七人の在韓の韓国人遺族が含まれており、アジア訴訟と言われてきた。
翌日の新聞は、「公的行為と初認定」「崩れた政府の主張」「政教分離問題再燃も」という見出しでこの判決を報じ、福田康夫官房長官の私的懇談会が〇二年十二月に提言した戦没者らの国立追悼施設の設置論議は現在凍結されているが、今後、係争中の他判決の展開次第では、検討再開を促す声が強まるかもしれないと述べている。
アジア訴訟では、被告を「内閣総理大臣」としての小泉純一郎、「個人としての」小泉純一郎、その使用者である国、宗教法人靖国神社の四者とした。また請求内容は参拝の違憲確認、原告一人当たり一万円の損害賠償、内閣総理大臣小泉純一郎の靖国神社参拝の差し止め、内閣総理大臣が行う靖国神社参拝の靖国神社による受け入れの差し止めである。
公判の途中から、民事訴訟から原告が行政訴訟として請求する部分(違憲確認のうち、内閣総理大臣小泉純一郎と国に対する抗告訴訟、靖国神社参拝差し止め請求の抗告訴訟)は分離され、この部分については原告を五名だけ残した。従って、その他の原告は違憲確認と差し止め請求を取り下げた(損害賠償請求については全員原告)。
このアジア訴訟によって、靖国神社が歴史上初めて被告席にあがった。裁判では、@参拝は私的か公的か(小泉自身は「私的参拝」と述べたが)A参拝は国の宗教的活動を禁じている憲法二十条三項に違反しているかB被告靖国神社は国から特権を受けたかC参拝によって、戦没者の回顧・祭祀について自ら決定する権利(憲法十三条、個人の尊重・生命・自由・幸福追求の権利の尊重)が侵害されたか、などが争点となった。
靖国神社が被告になったために、靖国神社の応援団が登場し、六次にわたって補助参加の申し立てを行い、準備書面を提出したり参加理由の口頭陳述をしたが、申し立ては却下された。
判決は、原告の請求をいずれも棄却したが、参拝は憲法二十条の三項の「国及びその機関の活動にも当たる」ことを認めた。一方、憲法二十条の三項は国家と宗教との分離の制度的保障であって、「国民個人に対する具体的権利」を保障しているものではないから、原告の被侵害利益の保障にはならない、とした。
その理由については次のように言う。「思想及び良心の自由」「信教の自由」を侵害されたと言いうるためには、国家による強制・制止の存在が必要であり、不快感や憤りを抱いたとしても、それは強制・制止には当たらない。戦没者をどのように回顧し祭祀するか、しないかに関して自ら決定し行うことまで、「思想及び良心の自由」「信教の自由」は保障しているものではない。
原告の被侵害利益はいまだ法律上保護された利益とはいえないし、参拝によって侵害を受けたともいえない。内閣総理大臣の参拝は単なる事実行為にすぎず、「公権力の行使」にあたらないから、抗告訴訟の要件を備えていないので、行政訴訟は不適当な訴えである、などと述べている。
原告団はこの判決に控訴することを決定した。(T・T)
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