| 年金大改悪を打ち破ろう! かけはし2004.03.08号 |
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全額国庫・事業者負担で生存権保障の基礎年金を(上) |
二月十日、小泉政権は年金大改悪案を閣議決定した。今国会での成立をねらっている。それは、労働者人民が長い歴史の中で闘いとってきた、老後の最低限の生活を維持する権利としての年金制度を、全面的に堀り崩そうとするものである。資本主義が改良の余地がなくなったことを表現するこの大改悪案に、「年金の合理的な制度設計」を対置しても意味はない。問われているのは階級闘争の復権である。
どんな大改悪案が提出されたのか
二月十日、小泉政権は国民年金と厚生年金の保険料負担を大幅に引き上げ、給付を大幅に減らすなどの大改悪案を閣議決定し、国会に提出した。
改悪案の大要は、厚生年金保険料については現行の一三・五八%から毎年〇・三五四%ずつ引き上げ、二〇一七年度以降は一八・三〇%(労使折半で負担)で固定される。坂口厚生労働相の国会答弁では、労働者の負担は一人平均一年で一万円ぐらいずつ毎年増え、最終的には年間十二万円もの負担増ということになる。
国民年金保険料負担は、現行の月額一万三千三百円(年間十五万九千六百円)が毎月二百八十円(年間三千三百六十円)ずつ引き上げられ、二〇一七年には月額一万六千九百円(年間二十万二千八百円)に引き上げられる。負担増は年間四万三千二百円にもなる。
これに対して給付の方は「マクロ経済スライド」なる方式の導入によって大幅減少となる。「少子化」とリストラで公的年金の加入者が減少すれば自動的に給付額を引き下げ、「高齢化」で年金受給期間が伸びると自動的に給付額を引き下げるのである。厚生労働省の試算では、二〇二三年度にはマクロ経済スライドを導入しない場合と比べて実質一五%の給付減となる。デフレで物価が下がり、賃下げが押しつけられて賃金水準が下がった場合も自動的に給付額が引き下げられる。
厚生年金では、「モデル世帯」(夫は四十年間サラリーマンで可処分所得月額四十万一千円、ボーナス込み。妻は専業主婦)の場合、給付水準は現役平均所得の五九・四%(二十三万八千円)の現行水準から、五〇・二%への引き下げとなる。現行の給付水準からの削減額は、夫婦で四万五千円程度という。
あらゆるところで指摘されているように、年功賃金の夫と専業主婦で二人とも四十年間加入したことになるような所帯は、むしろ少数派である。四十年間厚生年金に加入する人は、全体の二割程度に過ぎない。政府が強調する現役世代の「五〇%」水準の年金を受け取れる人は、ごく一部に過ぎないのだ。そして四十年間加入していても、夫婦共働きや男性単身者所帯では、厚労省の試算でも給付水準は現役世代の三〇%台に落ち込む。
女性の厚生年金は、差別的低賃金や出産・育児・介護などの家事労働の負担による加入期間の短さなどによって、男性労働者に比べて極めて低い。平均で月十二万五千円で、二七・四%が月十万円以下という低い水準である。この女性の極めて低い厚生年金も、「マクロ経済スライド」で自動的に切り下げられ続けることになる。
国民年金は、現在でも毎月一万三千三百円を四十年間払い終えて、ようやく満額の月六万六千四百円(たったの!)を受け取ることができる。しかも、保険料を払い続けてきた期間が二十五年間に一カ月でも足りなければ、「受給資格」を得られず一円も年金を受け取れないという、世界でもほとんど例がないほど受給資格が厳しく受け取れる額も少ない、基礎年金というには極めて不十分な制度である。平均の受給額は月にわずかに四万六千円である。
収入が年金だけという所帯は、年金を受給している高齢者所帯の五九・六%を占めている。国民年金だけしか受給していない人は〇一年末で約八百九十万人、そのうち四六%もの人々の受給額が月三万円台の極度に低い水準にとどまっている。
この、最低限度の生活もとうてい維持できない国民年金の給付水準からも、「マクロ経済スライド」で自動的に実質一五%もカットされる。しかも、国民の基礎年金に対する政府の責任を強化するために国庫負担の比率を現在の「三分の一」から「二分の一」に引き上げるという、十年前に国会で決まってとっくに実行されていなければならないはずの約束を、〇九年度までさらに先送りしてしまった。
そしてその実行の前提として、必要とされる二兆七千億円の財源を確保するために、消費税大増税を意味する「抜本的税制改革の実現」がうたわれている。年金収入だけに頼る貧困な高齢者所帯の生計に最も大きな打撃を与える消費税大増税による「年金基盤の強化」! 高齢者は「タコ足食い」を強制されるのである。その上、介護保険の負担増、高齢者医療の負担増など、「小泉構造改革」にもとづくあらゆる大衆収奪政策がのしかかっている。
「女性の年金権確立」?
今回の年金改悪にあたって、「女性の年金権確立」をうたい文句にした、パート労働者への厚生年金適用も焦点の一つになっていた。
厚生労働省で検討されていた案では、現在のパートなど短時間労働者の厚生年金加入基準を、現行の「通常労働者の労働時間・日数の四分の三以上」から、「労働時間が週二十時間以上、または年収六十五万円以上」に変更するというものだった。厚生労働省はこれで厚生年金加入者(保険料負担者)を四百万人増やせると見込んでいた。
この案にもとづく厚生労働省の試算では、月七万円のパート収入で保険料労働者負担は月六千五百円ということになる。そして二〇一七年まで毎年上がり続ける年金保険料を、今後四十年間も支払い続けて、受け取れるのは月額一万五千円。加入期間が十年間だと月額五千円程度にしかならない。
現在、夫の扶養家族の範囲でパート労働に従事している中高年女性に適用されれば、当然にも加入期間は短くならざるを得ない。そのため、毎月支払った保険料よりはるかに少ない年金しか受け取れず、しかも被扶養者からはずれるために健康保険の保険料もとられ、四十歳以上なら介護保険料もとられ、夫の家族手当や税の控除もなくなってしまうのだ。それは、四百万人から各種保険料を取り立てついでに増税もしてしまおうという、とんでもない改悪案だった。
このパート労働への厚生年金適用は、低賃金のパート労働搾取に依拠する流通業界などが、新たに発生する保険料負担を恐れて猛烈に抵抗したために、週労働時間が二十時間以上の労働者も加入対象とするなどの適用拡大の「五年後実施を検討する」ところにとどまった。しかし、あらゆる低賃金労働からも保険料を取り立てようとする姿勢は堅持されている。これが小泉政権の年金大改悪なのだ。
「構造改革」、グローバル化と年金制度の危機
〇一年から〇二年の一年間だけで、社員五百人以上の大企業の雇用総数は百十八万人も減少した。あらゆる業種で大リストラが進行している。正規雇用をパートや派遣などの無権利・低賃金雇用に替える動きが進行し、グローバル化で生産の海外移転が雪崩を打って進んでいる。
多数の労働者が職場から放り出され、残った労働者は違法な「サービス残業」と過労死労働を強制されている。小泉政権が押し進めた各種の企業法制改悪や労働法制改悪が、大リストラを支援し促進した。当然のことながら、厚生年金の加入者は大幅に減り続ける。
厚生労働省は九九年の年金改悪の際、〇一年度の厚生年金被保険者の数は三千四百四十万人、保険料収入は二十三兆四千億円になると予測していた。ところが実績は、被保険者数はわずか二年で予測より二百八十二万人も少ない三千百五十八万人となり、保険料収入も一兆八千億円も少ない二十一兆六千億円になって、財政収支も赤字に転落した。
国家公務員、地方公務員を問わず、公務員のリストラもすさまじい。埼玉県志木市は今後二十年間、原則として正職員の新規採用を一切せず、毎年退職者の一・五倍の「行政パートナー」を時給七百円で雇うことで代替していき、いずれは市民病院の医師などの専門職と管理職以外のすべての市職員を「パートナー」にしてしまう計画である。
群馬県大田市では、時給五百八十円(県の最低賃金六百四十四円以下!)の「行政サポーターズ」が、すでに市役所や福祉・文化施設で百六十二人働いている(朝日新聞03年5月13日)。全国で続くこのような公務員大リストラは、共済年金加入者を大幅に減らし続けている。
その一方で国民年金加入者(一号被保険者)数は、〇一年には九九年に厚労省が予測した千八百万人を四百万人も上回る大幅な増加となり、二千二百七万人に膨れ上がっていた。このうち自営業者は九百七十三万人で全体の四四%に過ぎず、残り千二百三十四万人は無業者やフリーター、学生など自営業者以外の人々である。加入義務があるにもかかわらず、保険料負担を嫌って厚生年金から脱退する企業が増加しているため、国民年金に移る労働者も増えている。
そしてこのように激増した国民年金加入者のなかで、〇二年度に保険料を払わなかった人の率(未納率)は三七・二%に達している。この「未納率」は免除者などが除かれており、実際には四割以上の人が保険料を納めていないのである。沖縄の未納率はなんと六一・三%、三分の二もの人々が国民年金保険料を納めていない。。二十〜二十四歳の青年層の未納率は全国で五二・六%という状態になっている。
内閣府が発表した「国民生活白書」(〇三年度版)では、働く意思があっても正社員としての職を得られない三十四歳までの若年フリーターが、〇一年には四百十七万人に達したと報告されていた。このような若年フリーターの六割余りが年収五十万〜二百万円とされている。年収五十万では、年額十五万九千六百円の国民年金保険料を払うのは困難である。
先の社会保険庁の調査では、未納者に理由をたずねたところ、「保険料が高く経済的に支払うのが困難」が最多で六四・五%、「国民年金をあてにしていない、あてにできない」が一五・〇%、「支払う保険料に比べて受け取る年金額が少ない」が四・五%と続いた。広がり続ける貧困と年金制度への不信が、国民年金を空洞化させているのである。
「年金危機」はなぜ激化したか
「年金制度の危機」が激化した理由ははっきりしている。
第一に前項で詳しく述べたように、資本のグローバル化に対応する小泉「構造改革」が促進した大企業と公務員の大リストラによる失業者の増大と不安定雇用化の進行、小泉の「不良債権処理加速」政策が「加速」した「貸しはがし」で激増した中小企業の倒産が、厚生年金の加入者を減らし、共済年金の加入者を減らし、国民年金の保険料も払えない低所得者層を大幅に増大させたからである。
第二に、改悪につぐ制度改悪のなかで「年金不信」が激化しているからである。六十歳だった支給開始年齢は、すでに六十五歳に先送りされている。昨年九月の自民党総裁選直後、小泉は坂口厚労相に支給開始年齢を六十七歳にすることを検討するよう指示している。理由はなんと、「平均寿命が延びたから」だという。小泉政権にとって、「長生きは罪」なのだ。
まさに「逃げ水」である。「年金を受け取れるまで自分は生きていられるのだろうか。たとえ受け取れても、それで生活できるはずがない」。若い世代ほど、このような不安と不信は強い。小泉政権とブルジョアマスコミが、年金改悪促進のために「世代間対立」をあおり、高齢者ほど得をして若い世代ほどますます損をさせられるかのようにキャンペーンしたことによって、若い世代の「年金不信」はさらに徹底的に増幅された。
第三に、政府が行ってきた年金積立金を投入する株価操作(PKO)や、年金資金を投入して全国十三カ所に建設した大規模保養施設グリーンピアに象徴される乱脈なゼネコン政治が、年金財政に打撃を与え続けてきたからである。
政府が行った株式などによる年金積立金の運用は、〇二年度だけで三兆円もの赤字を出した。三十兆円も投入した株式の運用などによる損失は累積で六兆円を超えている。しかし株式運用を委託されている金融機関には、年金資金にいくら損失を出させても巨額の手数料収入がガッポリ入るのだ。そして政府は、〇八年までに百何十兆円もの積立金すべてを「自主運用」とし、金融機関に投機資金として提供しようとしているのである。たとえ投機に失敗して年金資金に取り返しのつかない大穴を開けてしまっても、金融機関には何百億円から一千億円を超えるという手数料収入が転がり込む。
グリーンピアの建設と運営をはじめとする「副業」には、累積で三兆三千億円もの年金積立金が注ぎ込まれた。そしてこれらの「副業」施設や機関には、多数の厚生官僚が天下ってきた。社会保険庁によれば、〇二年には施設の九七%が事実上、赤字だという。政府与党はこれら二百六十五の施設の大半を二束三文で処分する方針である。最悪の場合、二兆九千億円が焦げつくという試算もされている。
このように年金制度は、小泉政権と財界によって掘り崩され、食い物にされたことによって危機を深めてきた。小泉と財界は自ら激化させた口実に、より一層の大改悪を押しつけ、労働者人民の老後の最低限の生活を保障する制度としての年金を、根本から破壊しようとしているのである。(つづく)(高島義一)
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