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原発労働で多発性骨髄腫を発症             かけはし2004.02.23号

長尾光明さんに労災認定

画期的な勝利を受けて報告集会

 二月十四日、東京・総評会館で「長尾さんの労災認定報告討論全国集会」が開催された。全国署名の提出行動と合わせ、当初「かちとる全国集会」として、一連の行動の山場として設定されていたが、一月に早々と休業補償給付支給決定をかちとり、討論集会となった。参加者は主催者の発表で百名、署名集めは支給決定後に停止したが、約三万四千人の署名が集まり、十三日に厚生労働省へ提出された。

福島第一原発の定期点検で被曝

 大阪市在住の長尾光明さんは現在七十八歳、集会ではビデオによる勝利の報告を行った。義務教育終了後、日立造船の養成工から出発し、後に石川島プラント建設の社員として、各地の発電所工事の現場所長なども勤め、八六年に定年退職を迎えた。七七年から八二年にかけての四年三カ月で七〇ミリシーベルトを被ばくし、そのうちの五九ミリシーベルトの被ばくは福島第一原発の2・3号機の定期点検による。
 長尾さんは九四年頃から首が痛み始め、九八年に前歯が折れ、続けて第三頚椎が圧迫骨折。兵庫医大病院で手術し、詳しい検査の結果、「多発性骨髄腫」という血液のガンと診断され、放射線治療や抗ガン剤投与を続けてきた。長尾さんはチェルノブイリ・ヒバクシャ救援・関西の活動を紹介する新聞記事などで、これまで被ばく労働者の支援を行ってきた阪南中央病院の内科医師・村田三郎さんを知り、〇二年六月、兵庫医大を通じ村田さんに連絡、村田さんから関西労働者安全センターに連絡があり、本格的な労災認定にむけた取り組みがはじまった。
 集会では、フォトジャーナリストの樋口健二さん、関西労働者安全センターの片岡明彦さん、村田三郎さん、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)の小山英之さん、福島県・双葉地方原発反対同盟の石丸小四郎さんによる報告と提起が行われた。

長尾さん以上の被曝労働者も多数

 小山さんは美浜の会への内部告発で送られてきた資料などを元に、長尾さんの被ばくの背景を報告した。内部告発資料は東京電力が八一年に作成した「スタックからの放出放射能の低減に関する検討結果(松葉作戦)」と題するもので、福島第一原発一号機の建屋内にプルトニウムなどのアルファ線核種によるすさまじい汚染があり、その対策についてのもの。
 この汚染の原因は、七八年の同機の燃料棒破損事故によるものと考えられ、「松葉作戦」には長尾さんが働いていた2号機も汚染されていたと書かれているという。小山さんは、「長尾さんは原発内では監督的な立場だったので、長尾さん以上に被ばくした労働者が多数いる。そうした労働者のためにも東電に情報公開を求め、支援を強めていきたい」と訴えた。
 七五年三月の故・岩佐嘉寿幸さんの労災申請以来、原発被ばく労働による申請はJCO臨界事故を含め十四件、うち認定はJCOの急性放射線症の三件と白血病の五件にとどまっていた。長尾さんの今回の認定は「多発性骨髄腫」によるもので、今後、白血病以外での認定に道を開くことになるのではないかと注目される。

団交を拒否する石播など三社

 今回、かちとった休業補償と療養補償は、時効により二〇〇〇年十一月八日からの分に限られる。そのため、企業責任を明確にさせるため、長尾さんはよこはまシティユニオンに加入し、石川島プラント建設、親会社の石川島播磨重工、工事元請会社の東芝の三社に団体交渉を要求している。東芝とIHIは「直接雇用主でないから」、IPCは「十七年前に退職したから」という理由で団交を拒否している。
 長尾さんはこれまで「労働組合とは縁がなかった」と言う。「長尾光明さんの労災認定をかちとる会」は、原水禁国民会議と原子力資料情報室、そして関西労働者安全センターとよこはまシティユニオンが責任団体となり、福島現地を含めた反原発運動や脱原発の市民運動が共同で闘いを進めてきた。
 「私の後に続いてほしい、そのためにも勝たなくては」「この労災申請を勝ち取って、この経験を多くの原発労働者に伝えたい」「なんと言っても、原発は止めなければ。あんな所では、若い人を働かせるわけにはいかない」と長尾さんは決意を語ってきた。長尾さんのまさに命がけの闘いを実らせていこう。(S)



日韓自由貿易協定(FTA)反対
新自由主義による労働・人権・環境・生活の破壊に抗して


 一月三十日、東京・文京区民センターで「多くの問題あり!日韓FTA学習集会」が開かれた。主催は脱WTO草の根キャンペーン実行委員会と「異議あり!日韓自由貿易協定」キャンペーン。
 司会のATTACジャパンの秋本陽子さんのあいさつに続き、脱WTOキャンペーンの大野和興事務局長から、同キャンペーン発足の経緯が紹介され、今後はWTOとともに各国の運動の中で焦点となる自由貿易協定(FTA)も焦点化していくことが提起された。
 大野さんは運動側の課題として、「FTAをしっかり学び、資本が取り結ぶ関係性とは違う経済の仕組みを提起しつつ現状の攻勢に反対する、地域や職場を越えた運動のネットワークの構築、そしてそのネットワークのアジアへの拡大である」と提起した。

FTAと東アジ
ア市場統合戦略

 「異議あり!日韓FTA」キャンペーンの土松克典さんは、二〇〇一年に経団連が公表した意見書の中で、FTAを利用した東アジア規模の市場統合戦略を提案していたことをあげ、現在進められている日韓FTAが、単にWTO交渉の行き詰まりだけでなく、早くから財界がそれを視野に入れていたことを明らかにした。
 またWTOなどの多国間交渉では調整が困難な分野においても、二国間であればひそかに交渉を進めることが容易であり、また交渉内容もWTOを上回る危険性を持つと指摘した。日韓FTA交渉においては、日本側が主張する「非関税障壁」として日本に比べ労働者に有利な韓国の労働・雇用慣行をあげ、韓国政府に「改善」をせまっている、と日本資本の強引な要求を厳しく批判した。

巨大アグリビジ
ネスと農業破壊

 続いてATTACジャパンの清水政夫さんから、インド・ムンバイで開催された第四回世界社会フォーラムにおける農業・WTO関連の課題を中心に報告があった。
 各地から巨大アグリビジネスと闘う民衆の報告がなされる一方で、独立したばかりの東チモールからの参加者が、オーストラリア企業が独占しようとしている農作物市場にたいしてどのように地域の農産物を守れるのか、と何度も参加者に聞いていたことが印象的だったと感想を述べた。

日韓生コン労働
者の連帯の試み

 全日本建設運輸連帯労働組合(連帯ユニオン)書記次長の中塚大介さんは、二〇〇二年から始まった日韓生コン労働者の共同の取り組みを紹介した。
 九七年の通貨危機を経た韓国では、建設業界のリストラとして、生コン運転手を自営業者として、ミキサー車をはじめ一切の必要経費を労働者に押しつけることが強行されてきた。現在ではミキサー車運転手の九〇%が一人親方となり、労基法の適用もされなくなっている。二〇〇一年には二カ月間のストライキを打ち三百人が逮捕されるという大弾圧を受けた。
 このような厳しい状況の中で、国際メジャーのアジア進出に危機感を抱いた日本の業界最大手の一つである太平洋セメントが、二〇〇一年に韓国最大手の双龍セメントを買収合併した。全日建も厳しい状況にある韓国の生コン労働者と連帯し、国境を超えた活動を展開している。韓国に進出している日本企業の業界団体であるソウル・ジャパンクラブに対する申し入れや株主運動による太平洋セメント本社への抗議行動などが紹介された。

小泉政権の農業
政策とFTA

 平和フォーラムの市村忠文さんからはFTAと農業問題として、日本の農業問題が提起された。
 〇三年十月のAPECでの小泉首相による「農業鎖国」発言をとりあげ、日本は世界最大の農産物純輸入国であり、平均関税も一二%と決して高くないことをあげ、小泉発言が日本の財界をバックにした農業改革を意図したものだと指摘した。FTAによる農産物の自由化をおこない、プロ農家に生産を集積し、効率的なプロ農家だけに限定した価格補填を行うというのが小泉政権の農業政策であると批判した。

環境規準強化と
対立するFTA

 関西からこの集会に駆けつけた特定非営利活動法人AMネットの川上豊幸さんは、FTAと環境問題に焦点をしぼり問題点を提起した。
 FTAや投資協定などに環境条項が盛り込まれるかどうかは、交渉担当者の関心度合いで決まるケースが多いという事実を指摘し、現在きわめて不十分ではあるがアメリカやEUなどが実施している環境アセスメントを強調することも必要だと提起した。
 また環境基準を引き上げることが投資受入国による「収用」にあたるとし天文学的な損害賠償額を請求されるケースも紹介した。「FTAは関税をゼロにする。関税をゼロにした次にねらわれるのは環境や労働などを含めた各種の規制基準だ。そういう意味からも環境基準の遵守を訴えていく必要がある」と今後の運動の方向を提示した。

グローバル化が
破壊する食の安全

 食政策センターVision21の安田節子さんは、BSE、鳥インフルエンザ、遺伝子組み換え食物からグローバル化の問題点を指摘した。
 安田さんは「本来発症国からの輸入は七年間経過した後でないとできない。BSEが発症したばかりのアメリカとは『交渉』の余地などないはずだ」と厳しく批判した。米国は現在年間約三千万頭の牛を食肉処理しているが、「全頭検査には科学的根拠がない」として二万頭のみの検査を実施しているが、それを倍にしたところで四万頭にしかならない、危険性はまったく変わらない、とアメリカの姿勢を批判した。
 渡り鳥だけが持っていた鳥インフルエンザが何らかの原因で家禽の体内に入り強力なウィルスに変化した、人への感染力も排除できないと指摘した。また、一部の調査によるともし人に感染したら約五億人が志望するだろうという結果も出ていることを紹介した。

「安ければいい」
では命は守れない

 討論では、反グローバリゼーションの運動が課題を超えて広がりを見せる中で、世界的な反戦運動との連携も考えていくべきではないかなどの提起があった。
 また日韓FTAでは労働問題を抜きに考えれば、日本の消費者もやすいキムチや焼酎を堪能できるのではないかという会場からの発言に対し、大野和興さんは「パネラーの発言を通じて、そして最後の安田さんの話がそのような主張に対する明確な回答だとおもう。安ければいい、という考えでは人々の命を守ることができなくなっている。グローバリゼーションとはそういうものだ。私たちが考えなければならないことは、いまある経済ではない、べつな経済を国境を超えた民衆の連帯のなかで考えていかなければならないのではないか」と提起した。(H・H)


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