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みせしめと嫌がらせの不当配転を取り消せ!       かけはし2004.01.01号

NTT11万人リストラを許さない!

電通労組不当配転取り消し訴訟原告団に聞く


 NTTの十一万人リストラと対決し、五十歳での不法な「退職」と子会社への「再雇用」を拒否したために、みせしめと嫌がらせのための配転を受けた電通労組の労働者九人が、東京地裁に不当配転取り消し訴訟を提訴した。原告団長の横沢仁志さんと古館義雄さんに、裁判闘争に取り組む思いを語ってもらった。


配転の違法性を暴く闘いだ

││裁判闘争の目的の一つは、NTTリストラと配転の違法性を明らかにすることだとされていますが、「違法性」とはひとことで言うとどういうことでしょうか。

 NTTは私たちを含む五十歳以上の労働者すべてに、地元で同じ仕事を続けたいなら五十歳で退職し、三〇%の賃下げなどの労働条件切り下げを受け入れてアウトソーシング会社(子会社)への再雇用の道を選べ、「退職・再雇用」を受け入れないなら全国どこへ配転されるかわからないぞ、と脅迫しているわけです。
 〇三年も十一月四日から、五十歳になった労働者に「雇用選択」を強要するための社員説明を開始し、十二月十二日に「雇用選択通知書」を提出させ、〇四年二月十六日に「辞職承認通知書」交付というスケジュールになっています。
 そもそも私たち一人一人の労働者は、会社との労働契約のもとに六十歳までの雇用関係を結んでいます。社員就業規則にも「六十歳定年」が制度として定められています。法的にも、「高年者の雇用の安定等に関する法律」があります。私たちには、五十歳になったからといって「退職するかしないか」を会社に迫られる理由はありません。NTTのやっていることは、法的にも確立している「六十歳定年制」を踏みにじって、実質的な「五十歳定年制」を強要する違法行為です。
 したがってNTTは、この「五十歳退職・再雇用」を就業規則に明示することができない。毎年、単年度施策ということで、社長達を出すという形でやっている。現実的には労働者に強要しているにもかかわらず、「本人の選択だ」と言い、それを隠れみのにしようとしている。しかしそれが違法行為をすり抜けようとする脱法行為であることははっきりしています。電通労組のように「どちらも選択しない」という労働者は「六十歳定年までの『満了型』を選択したと『みなす』」として、NTTは不当配転そのものを「労働者が選択した」と主張しているわけです。
 また、われわれが受けた配転には、どのような業務上の必要性も合理性もないということも、配転の不法性をはっきり示すものです。私には神奈川で工事の仕事がありました。首都圏では工事部門は人減らしでますます忙しくなっています。私はいま、配転で二時間以上かけて通っている職場で、光ファイバー商品「Bフレッツ」の、いわゆる「飛び込み営業」をやっています。ところがBフレッツはインターネットなどを通じた受注がほとんどで、およそ飛びこみ営業にはなじまないものです。私の成績は、半年でたった五件でした。単なる嫌がらせといじめ、抵抗すればこうなるぞという「みせしめ」のための、違法で不当な配転だということです。

配転で生活はどうなったか


││原告九人のうち、七人は宮城と山形からの単身赴任を余儀なくされ、これまでの生活基盤から切り離されているわけですが、そのなかでさまざまな不都合が起きていると思いますが。

 私にとって一番最初に起きたことは、隣の奥さんが突然亡くなって、その葬式に駆けつけることができなかったことです。その人は、私たち家族が引っ越してきた時からずっと世話になってきた人だったので、これはきつかった。もう一つ、私の子どもはちょっとトラブルを抱えていて、私がいなくなったことで精神的に不安定になってしまった。それと連動して連れ合いも少し不安定になっている。月に一度は律儀に帰るようにしているが、家庭生活がおかしくなるというのはありますね。
 一緒に東京に配転させられた仲間の連れ合いの両親ががんになって、半年あまりの闘病の末にこの九月と十一月に相次いで亡くなった。その看病に連れ合いはかかりきりになって、こっちに来ている彼ももちろん知らんぷりできず、毎週帰って連れ合いと交代するんだが、帰省費は月に一度分ぐらいしか出ない。土曜日に帰って日曜日の夜に戻るわけにもいかず、金曜日に帰って連れ合いと看病を交代し、月曜日に東京に戻るということで有休もなくなってしまう。親にとっても病気になった時に息子がいなくなってショックだったようだということだった。

 私は朝六時十分に家を出て、通勤に往復四時間以上とられ、残業なんかすると帰るのは九時過ぎ、十時過ぎになる。会社は昼間だと亭主がいないから夜に営業をやれという。単身赴任で土日に家に帰らなければならない労働者に、土曜日曜に営業をやれという。いじめ以外の何物でもない。

退職再雇用者も配転される


││職場でのリストラはどんな状況ですか。

 番号案内や電報などの歴史の長い部分や、IT電話の普及で交換機がスクラップ化され、合理化がとことん押し進められてきました。直営でやってきた工事もどんどん下請け化、外部委託され、残っているのはメンテナンスだけという状態になって、機械関係の補修も東京への一元化が進んで、地方には人がいなくなる。
 私たちは退職を拒否して配転されたわけですが、退職して賃下げを受け入れ、アウトソーシング(OS)会社に「再雇用」された連中もひどい状態になっています。たとえば114の東京の番号案内の仕事を沖縄に持っていく。千葉のBフレッツのインターネットによる受付を北海道や山形に持っていく。集約されれば元の局では人手が余る。その人員に営業をやらせ、さらには転勤もさせられる。OS会社に行った労働者も配転させられているわけです。
 労働者は、いまの会社でいまの仕事がしたければ退職とOS会社への再雇用の道を選べと迫られ、育児や介護を必要とする家族があるなどそれぞれの事情を抱え、遠隔地に配転されれば生活が成り立たなくなるために、泣く泣く三割もの賃下げを受け入れ、OS会社に行ったわけです。
 退職してOS会社に行けば元の職場でもとの仕事をさせるという約束は、一年で反古になってしまった。「転勤しなくていいはずだ。おかしいじゃないか」と言うと、NTTの側は最初からうまくすり抜けることができるようになっている。どういうことかと言えば、労働者に提出させる「雇用選択通知書」には、「同一県内」と書いてある。だからたとえば、千葉では銚子で働いていた人が幕張へ、神奈川では小田原で働いていた人が川崎へ配転されている。
 五十歳過ぎて二時間以上かけて通勤し、いままでと全く違う仕事をさせられるのはつらい。「そんな遠くへは通えない」と訴えると、「通えないなら単身赴任すればいい」という答えが返ってくる。OS会社に行かされた労働者も、完全にいじめの対象になっている。

生活も公共サービスも破壊


 今度の年末手当で、私たちの職場では「成果主義」の五段階評価制度(SA、A、B、C、D)で一割のD評価が出ました。SAとDでは四十万円、CとDでも十五万円ぐらいの差が出る。賃金でも成果主義で査定が行われ、AとDでは二万円、CとDでは九千円ぐらいの差が出る。これまではCが大部分だったのですが、Dが一割出た。
 人件費の原資は同じだから、CやDの分を減らしてAやSAに回すことになる。今年八月、NTT東日本は労働基準監督署から四〜六月の三カ月で五百人分、二千五百万円の残業代未払い(サービス残業)を指摘され、是正勧告を受けています。もちろん、この指摘と勧告は氷山の一角です。どんどん人減らしをし、労働者に過大な業務を負わせて成果主義賃金で追い立て、低い評価にされたくなければサービス残業=ただ働きをせざるを得ない状況が作られているからです。
 このD評価からは、電通労組や通信労組をはずし、NTT労組の比較的給料の等級の高い者に焦点を当てているのも特徴です。そこから全体に波及させる突破口にしようというのでしょう。
 リストラとの関係で、NTTが企業年金制度の改悪を労働者に押しつけようとしていることについても触れておきたいと思います。NTTは、資産運用環境の悪化、加入者の減少と退職者の増加で現在の給付利率は維持できないので、将来受け取る年金額を固定している現在の制度を、市場金利の変動によって給付利率が変わる市場連動型年金制度(キャッシュバランス)に移行すると言っています。マスコミの報道によれば、現在受給している人の年間受給額が、二十七万円も減額されるといいます。NTT労組もこの年金改悪を推進しています。
 「加入者の減少と退職者の増加」をもたらしたのは、NTTがNTT労組と一体となって労働者に強要してきたリストラそのものではないのか。自分たちが労働者に押しつけたリストラを口実に使って、退職後の生活まで奪い取ろうとしている。

NTT「構造改革」に歯止めを

││NTTが営利第一主義で公共サービスを切り捨てていることも批判していますね。

 やはりその代表は公衆電話の撤去でしょう。現在、公衆電話はピーク時の八四年の約三分の二の六十万台に減っていますが、「月額四千円に満たない収入の公衆電話は撤去」という方針で、それをさらに大幅に減らしています。
 公衆電話は110番、119番などの緊急電話と同様の「優先接続」で、災害時などに大量の呼び出しが集中した時にも優先して接続されます。だから地震などの災害の時には極めて大きな意味を持つ。それを「もうからないから」ということで、村や町など地方の公民館からも撤去している。離島にたった一台の公衆電話まで撤去しようとして問題になったこともあります。病院では携帯電話は使えません。その病院からも公衆電話を撤去している。
 どうしても電話機を設置しておきたければ、代わりにピンク電話を買えという。ピンク電話は一台十万円、契約金が七万円、もちろんそれに基本料金と通話料がかかります。
 NTTはこの間ずっと赤字に転落したことはありません。持ち株会社の利益は倍々ゲームで増加してきた。〇二年だけ赤字になりましたが、持ち株会社が吸い上げた資金を二兆四千五百億円もオランダのKPモバイルやアメリカのAT&Tワイヤレス、ペリオなど海外の通信企業の買収や投資に注ぎ込み、ITバブルの崩壊で損失になったものです。
 それ以外は超黒字が続いていて、02年三月期には一兆四千五十億円の黒字、03年の三月決算はトヨタとほぼ同額で二位、九月期は八千五百億の黒字でトヨタを抜いて日本一になった。一人当たりの経常利益は九三年からの十年間で十倍になっている。
 これほど大もうけしている会社に、リストラは全く必要ないはずです。にもかかわらずこういう超黒字企業がリストラをやる。リストラには波及効果があって、競合企業がリストラをやれば自分のところもやらなければ負けてしまうということになる。NTTのような超黒字企業がリストラをやるんだから当然、すべての企業がリストラをやるということになってしまう。その効果は絶大なものだ。小泉「構造改革」と連動して押し進められているこのようなNTT「構造改革」に、何とかして歯止めをかけたいと思っています。
 NTT労組が会社と一体になっていることもあって、労働者にあきらめの気分があることは確かです。九七%の人が結局、退職再雇用を選ばされてしまっている。しかし「やっぱりおかしい」と電通労組や通信労組、全国一般N関労などの闘う部分に言ってくる労働者は少なくない。また、NTT労組をやめる人もかなりの数に上っているようです。かつてNTT労組は、組合を脱退した者を「除名」という形でNTT労組新聞に発表していましたが、最近その発表をやめています。この間、二千人以上がやめたとも言われています。
 私は横浜のもとの職場でのビラ入れをやっていますが、昔は全電通(いまのNTT労組)が強くて、ビラの受け取りはせいぜい一割ぐらいだった。ところがそれが逆転し、いまでは九割が受け取るようになっています。微々たる変化と言えばそれまでですが、希望を持って闘いたい。東京の電通労組もかつて三人だったのが、配転で九人になった。いままでより活動の範囲はずっと広がった。配転という攻撃をわれわれの武器に転化して頑張りたいと思っています。 (文責編集部)


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