郵政公社は、一万七千人の人減らしを軸に「アクションプラン」なる大リストラを押し進めている。そのもとで、四日連続の深夜勤を四週に二回行わせるという服務大改悪を労働者に押しつけようとしている。差別的労働条件を強いられている非常勤の「ゆうメイト」からは、休息時間まで奪い去ろうとしているのだ。
アクションプランの大減員計画
日本郵政公社発足から八カ月が経過した。公社は発足に先立って、企業性の追求を第一義とした中期経営目標(四カ年計画)を打ち出していたが、公社発足からわずか二カ月にも満たない五月二十一日、郵便物数の減少や簡保保有契約数の大幅な減少傾向を見すえ、公社の経営危機を露呈した形での大リストラとして「アクションプラン」と称する中期経営目標を二年前倒した経営ビジョンを発表した。
「アクションプラン」は、その柱を「健全な経営基盤」の確立にすえ、徹底したコスト削減を掲げ、中期経営目標で示された〇五年までに一万一千人の減員を上回る一万七千人の人減らしを打ち出した。郵政民営化論議が渦巻く中で、郵便作業効率化の切り札として新型区分機(7桁化)が導入された九八年の減員数が四千七百六十人であったことを考えれば、「アクションプラン」の減員計画がいかに無暴なものであるのかは明らかだ。
7桁区分機導入は大失敗だった
ところで、この7桁区分機を導入することによって経費削減を含めた効率化が図られたのだろうか。郵政省(当時)は「機械処理によって郵便物の九〇%を配達区分し、郵便外務員は午前九時半にすべての局内作業を終了する」と述べていたのだが、この計画はみごとに崩れた。池田実さんの『郵政民営化』(現代書館)で記されているように、機械処理率は八〇%にも満たず、当初は必要なくなると言われたパート職員も引き続き雇用せざるを得なくなった。
また、五千人にも及ぶ職員の減による職員一人当たりの配達区域の拡大と、目算のはずれた機械の低処理率のために道順組立作業に費やさねばならない時間を含め、逆に労働時間が今日に至ってさえ増えているという笑うに笑えぬ状況にある。従って、職員の人件費総体でも職員の減、ボーナス支給削減・ベースアップ率を抑えたにもかかわらず、前年度比で増加している。一方、物件費に関しても巨額の設備投資をしたが、その効果は全く出ていないという結果を生んでいる。
こうしたことがあったためか、郵政省から看板を代えた郵政事業庁は〇一年、公社化に向けた郵便事業の合理化である「新生ビジョン」を発表し、〇二年には、郵政職場にその柱である新集配システムを試行実施してきた。〇二年度の実施局は全国で百二十八局、〇三年度が九十八局と拡大され、千七百人が減員されることとなった。
この施策は五カ年計画とされているが、試行実施後の実態は混乱を極めていると言っても過言ではない。「失敗は許されない施策」として導入された新集配システムは、`高付加価値郵便aという書留・速達などを職員が配達し、一般郵便をゆうメイト(非常勤)が配達するというものである。
本来、郵便配達作業は大区分―道順組立―配達というサイクルによって地域習熟度が高められ、転居・転入・不明のチェックを確認し、情報が確保される。しかし、新集配システムがこの一連の作業を輪切りにしてしまったために、利用者からの誤配・誤還付・付着の苦情が飛躍的に増大した。
郵政当局は利用者からの苦情申告のあまりの多さに、ゆうメイトに対する指導・注意を日常的に喚起している。毎日六時間の目一杯の外務作業をこなしているゆうメイトなのだが、こうした上司からの行き過ぎた言辞も含めて、退職があとを断たない。「施策の最大の課題はゆうメイトの安定確保」とこぼすほど、定着率の悪さは深刻な事態となっている。
この一方で、職員には書留・速達などの対面配達の途上で各種商品(ゆうパック・年賀はがきなど)の営業活動を行わせるはずだった。しかし、ゆうメイトが配達しきれない郵便物の配達や職員の人減らしによる配達区域の拡大などによって「営業チャンスが広がる」ことも見込めなくなってしまったのだ。人件費削減と営業実績アップとサービス向上という一石三鳥の画期的な施策であったはずの新集配システムは、試行実施後一年を経過した時点で、全国展開のメドすら全くたっていないのである。
郵便作業効率化の切り札として導入された7桁区分機が、つまるところ赤字を大幅に増やすこととなり、次いで「失敗は許されない施策」として試行実施された新集配システムもまた、行方がわからないという状況の中にある。しかし、郵政官僚はだれもこの責任をとろうとしないばかりか、失敗策でもあったことすら公言はしない。しかし、こうした悪施策が実施されるごとに、確実に職員の減員だけは待ったなしに行われているのだ。
効率化計画のあいつぐ破綻
民営化に向けて事業の赤字体質からの脱却をめざして、これまでさまざまな効率化計画が実施されてきた。これら効率化計画の実施に併行して、〇二年、コスト削減・品質向上・経営管理の高度化・非常勤労働者の活用を柱にすえ、埼玉・越谷局にトヨタかんばん方式(JPS方式)が試行実施され、生田新総裁や小泉首相が視察に訪れマスコミにも大きく報道されたことは記憶に新しい。
「ムダ、ムラ、ムリ」の排除を掲げて、越谷局に“トヨタプロジェクト推進室”が設置され、これまでの調査によれば改善項目は一千点を超え、三百七十点ほどに整理できたという。枝葉末節の改善項目についてはここでは置いておくが、これによって集配課での内務作業が激変したのだ。
まず、六月から集配課では区分台の丸型簡易椅子(背もたれが十五センチ程度)がすべて撤去された。このため道順組立、事故処理(転送・還付)、事務レポートの作成作業などすべてが、これまでよりはるかにきつい立ち作業となった。さらには、十月からは現行の五十口あった区分函を百口に増やし、縦型区分方式に変えると同時に道順組立台も撤去された。代わりに移動式組立作業台兼台車とでも言うべきマシーンが開発製造され、上部が組立用に、二段目は機械区分ケース置きに、下段には大型郵便を入れるファイバーを置けるようにしつらえてある。この作業台は職員・ゆうメイト一人一台配備されている。
椅子の撤去から半年、区分函と区分台の変更から一カ月余でもあり、当局は「なれれば早くなる」と取りつくろっていたが配達の午後七時の帰局が常態化した。昼食時間も満足に取らない「サービス労働」を差し引いても、十月・十一月期の三六協定六十時間に達する勢いとなり、急きょ前代未聞の七十一時間で再締結するという混乱を引き起こしている。
「ムリ、ムダ、ムラ」を徹底的に排除し、生産性の向上をめざすトヨタ方式(JPS方式)もまた、人減らしと徹底した労働強化を強制しても、設備投資に人件費の削減が追いつかず、赤字を再生産する結果となっている。この試行錯誤は〇四年三月までだが、〇四年度以降、逐次、全国に導入ということになれば、集配部門の大混乱を避けることはできないだろうし、「非効率化」によってますます赤字を増大させることになるだろう。
もっともこのトヨタ方式は、郵政民営化論を推進する勢力に対して、その導入試行で枝葉末節のいくつかの改善成果を上げ、ガス抜きをさせる目論見だったのではないかという見方があることも事実なのだが。いずれにしても、こうした「効率化」に向けた諸施策によって現場で働く労働者は職場環境や労働条件の悪化の中で、悲惨な状況に追い込まれているのである。
服務大改悪で職場はどうなるか
「健全な経営基盤」の確立に向けた郵政公社の効率化計画とその実施は、集配部門が主軸であることは自明だが、郵政内務部門でも7桁区分機の導入によって職員と非常勤労働者の雇用者数が逆転した状況に、さらに追い討ちをかけるように、服務の大改悪が進められている(本紙12月8日号既報)。
公社案では、@深夜勤の復活A特例休息の廃止B新夜勤回数制限の撤廃、というものである。「新夜勤」導入から十年、この間の夜勤は仮眠時間を含む十四時間勤務で、勤務明けの翌日は通常、週休か非番となっていた。公社はこれを非効率として四日連続の十時間深夜勤を四週に二回行わせるというのが服務大改悪の内容だ。
かつて深夜労働の軽減を求め、そして回数の減や深夜休憩の確保を求めて長年闘ってきた成果を全逓本部はあっさりと捨て切り、〇四年二月の導入実施に応じてしまったのである。権利は獲得するまでは多くの歳月と闘いの労力を要するが、まさに失う時は一気である。
この大改悪では、特例休息が廃止され、それに代って新たな休息が付与されることを唱っている。しかしこの新たな休息は、特別に深夜の八時間・十時間・十四時間の勤務だけに付与されるという代物なのだ。さらには、新設された「加算額(六千円)」も十時間・十四時間勤務を限定した手当と規定されている。従って、深夜労働の大半を担っている十三時間や七時間労働のゆうメイトは、休息も手当も対象外ということになる。
さらに労働時間でも、例えば十四時間勤務の職員は、「新たな休息」六十分プラス「一般休息」五十三分で、実働は十二時間七分。これに対して、勤務時間がそれより一時間短いはずの十三時間勤務のゆうメイトは、「一般休息」四十九分のみの実働十二時間十一分となり、何と実働時間が逆転してしまうのである。
ゆうメイトへの差別はこれだけに止まらない。来年四月に導入されようとしているゆうメイトの基本賃金は、一率に地域別の最低賃金制の水準近くまで引き下げ、新たに勤務態度の評価項目に沿った加算給を組み込もうとしているのである。
このような、郵政省が実施してきた大量の人減らしと服務大合理化の一方で、特定局制度や膨張する関連企業と天下り構造の改革には何ひとつ手を加えようとはしてはいない。既得権益は温存されたままなのである。
実施されてきた近年の数々の施策は、サービスダウンを顕在化させたばかりか、あまつさえ赤字を増幅させ、労働者を苦しめただけだった。そしてこの施策を通じて、郵政官僚は郵便事業を食い物にしてきたのである。この腐敗し切った構造を告発し、労働者の雇用と労働条件を守る闘いを推し進めていかなければならない。
失敗策を省みることなく、利用者に犠牲を強いる郵便料金値上げに踏み切りかねない郵政公社に対して、郵政全労協は利用者としての労働者市民と連帯し、労働者の権利と事業の真の公共性を守ろうとする闘いを展開してきた。郵政全労協とともに、職場で、地域でこの闘いを組織し、「小泉改革」を打ち破ろう。(中村哲也)
団結権・争議権を踏みにじるな!
「誰の番人? 裁判所!」
反動司法に抗議し裁判所包囲行動
十二月十一日、「誰の番人?裁判所!」裁判所包囲デモが行われた。この間、労働裁判では、あろうことか政府や企業の都合を憲法や労組法よりも上に置き、団結権や争議権を否定するような不当極まりない判決が相次いでいる。この裁判所包囲デモは、新自由主義グローバル化を司法の側から支えようとする違憲・違法な判決を乱発する裁判所に、裁判闘争を闘う多くの争議団や労組、戦後補償裁判を闘う諸団体が集まり、「団子になって」司法反動をはね返すために取り組まれた。
昨年秋から今年の春にかけて、東京高裁ではヒルトンホテル分会事件(奥山裁判長)、カジマリノベイト事件(新村裁判長)、反リストラ産経労事件(村上裁判長)、横須賀基地塵肺訴訟(鬼頭裁判長)、横須賀市従・保育士労災事件(石川裁判長)と、地裁で勝利した労働者側をろくな審理もせずに敗訴させる不当判決が五件も連続した。
ヒルトンホテル事件で奥山裁判長は、賃下げに反対するような意思表示をする労働者を雇用するのは「会社にとって酷である」として不当解雇を肯定し、村上敬一裁判長は、全動労事件で「国是(分割・民営化)に反対する組合員が採用されなくても不当労働行為には当たらない」という驚くべき不当判決を出した。
政府の方針に反対したり労働条件の引き下げに反対するような労働者は解雇されて当然ということは、憲法で保障された争議権・団結権そのものを否定するということであり、憲法や労組法にもとづいて積み重ねられてきた判例法理をすべて踏みにじるものだ。村上にとって「国是」とは最高法規としての憲法ではなく、単なる政府の政策なのである。
高裁だけではなく、最高裁も新日鉄事件でこれまでの判例を無視し、「著しい不利益がなければ、会社は労働者の同意なしに出向を命令できる」という不当判決を出し、戦後補償裁判でも何の審議もなく高裁の「時効」「国家無答責」という判断を追認して連続六件を上告不受理とした。
この裁判所包囲デモの実行委員会事務局は国労闘争団、全動労争議団、関西航業争議団、けんり総行動、東京争議団の五団体。賛同団体には、多数の争議団、争議組合に加え、中国人戦争被害者の要求を支える会、日本製鉄元徴用工裁判を支える会、在韓軍人軍属裁判を支援する会なども戦後補償運動団体も名を連ねた。
正午、地裁と高裁の前の日比谷公園・霞門は八百人を超える労働者が集まった。♪「さあ弱きを守るが裁判所、いまじゃ強きを救うか裁判所、最高裁、そりゃ首切り自由は犯罪よ〜」「さあ国鉄改革世紀の大失敗、見抜けぬあんたは世紀の大失態、最高裁、そりゃ首切り自由は犯罪よ〜」。沖縄民謡あさどやゆんたの替え歌で「最高裁音頭」が響く。
「首切りを!認めるな!」「人権を!無視するな!」「公正な!判決を!」「憲法が!国是だぞ!」と元気にコールを上げながら、たくさんの旗やのぼりを林立させて冷たい雨のなかを国会へ。
国会では衆議院と参議院の議員面会所で共産党と社民党の議員団とエールを交歓、デモ隊はさらに進んで最高裁を「人間の鎖」で包囲した。「裁判所は団結権を守れ!」「争議権を蹂躙するな!」「裁判所は憲法を守れ!」「首切り自由を認めるな!」「国際労働基準を守れ!」「戦後補償裁判で公正判決を出せ!」「裁判費用の敗訴者負担反対!」。シュプレヒコールとウェーブが繰り返された。 (I)
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