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                          かけはし2003.9.8号より

コンゴ-多国籍企業の支配と戦争と独裁者

カレン・オトール



 「コンゴの戦争は、その火を消すには複雑すぎる:もう一つの長期で不可避のアフリカの戦争」。
 この四十年以上にわたって、コンゴやアフリカの他の諸国で続いてきた戦争に西側が直面しなければならなくなった時はいつでも、われわれはこうした類のジャーナリズムの評論を読むことに慣れ親しんできた。
 「ガーディアン」紙の最近の文章からのこの冒頭の引用は、実際のところ最悪のものというわけではない。しかしそれは、われわれが毎日見聞きしているような言葉の典型である。これはあたかもアフリカ人だけが相互の戦争を止められるということを提示する、罪悪感にとらわれた同情の一種である。そうであるならAIDS、債務、飢餓に対しても本当に取り組むことができるだろう。あたかも彼らだけが、西側に彼らを助けさせるように仕向けられるというようなものだ。
 われわれは、この種の言説を再び別の文脈――イラク――の中に置いて読みはじめようと思う。もしイラク人だけが自らを解放できるということが認められるのならば、米英軍ができることは緊急の(そして利益をもたらす)国家「再建」の課題を続けるだけ、ということになる。
 われわれがもはやアフリカで、西側の略奪や強奪についていつも聞くということはないにしても、アフリカでの新植民地主義は、実際には中東と同様の古さを持っている。「影響圏」に関して言えば、ヨーロッパが最初にそこを手に入れたのである。
 アフリカ諸国については、一九五〇年代、六〇年代の民族解放運動が、ヨーロッパ大国にアフリカの莫大な資源にすがりつくために別の方法を取ることを強制した以前は、「ベルギー領コンゴ」とか「旧ドイツ領東アフリカ」といった名称で呼ばれることが多かった。
 ベルギーにとってコンゴのこうした運動への解決策は(国連軍、CIA、イギリスのエドワード・ヒースの支援の下に)、アフリカの解放運動が生み出した最も強力な民族主義指導者であるパトリス・ルムンバを一九六一年に誘拐し、暗殺することであった。
 帝国の共通政策によって、最も鉱物資源に富んだカタンガ州の分離と、友好的な独裁者モブツの擁立が指示された。それによって、西側の多国籍企業に多くの利益をもたらす銅、コバルト、ダイヤモンドなどの鉱物資源の採掘の継続が保証された。
 ヨーロッパとアメリカの帝国主義間ライバル関係は、コンゴのような諸国に新たな意味をもたらしている。
 坑夫のマーチン・ンキバテレサは自らのシャベルに寄りかかりながら、「われわれはコル・タンの重要性を知らない」と述べた。「つまり、それがどういう役に立つのか」と。「コル・タン」として知られている「コルンブ石・タンタル石」は、加工されれば、携帯電話、ジェットエンジン、エアーバッグ、夜間透視ゴーグル、ファイバー光学機器、蓄電器の生産にとって、そしてコンピューターチップの電力チャージを維持する部品の生産にとって決定的である。コル・タン一トンの価格は百ドルから二十万ドルまでの範囲に及ぶ。
 マーチンは、きわめて危険な鉱山で長時間労働をしている多くの坑夫の一人である。その鉱山は企業が所有しているわけではなく、日々の労働を多くの反乱集団に販売している労働者によって機能している。「ワシントンポスト」紙によれば、多国籍鉱山企業は、鉱山を支配している反乱グループが誰であるかにかかわらず、彼らから鉱石を直接に購入している。こうした鉱山をめぐる多くの戦闘の直接的原因はここにある。最近、ゴマ市の五十キロ北にある鉱山で丘陵が崩れ、少なくとも五十人の労働者が生き埋めになった。
 アメリカはコンゴの平和を説教し、その目的のためのすべての国連決議を支持してきたが、米製兵器の流入と軍事訓練は止まっていない。ルワンダ、ウガンダ、ナミビア、ジンバブエはいずれもアメリカの武器や軍事訓練を受け入れ続けている。
 世界政策研究所(WPI)は、一九九九年にアフリカ諸国に引き渡された千九百五十万ドルのアメリカの武器と軍事訓練費用のうち、四百八十万ドルがコンゴ戦争に直接・間接にかかわっている諸国に向けられている、と記録している。つまり西側は眉をひそめて、紛争を地方軍閥のせいだとしているのだが、その力学は完全に巨額の利益によって駆り立てられているのである。
 アメリカ資本の企業ベクテル(同社は、経営陣に元米国務長官ジョージ・シュルツを含み、現在イラクを収奪している)は、コンゴがこれまで集積したほとんど完全な鉱石と地理学的財産目録を引き出すためにローラン・カビラと密接に協力して活動した。
 一つの情報源によれば、ベクテルから来た一人の責任者はカビラの密接な顧問となり、彼といっしょに全国を回り、彼の戦争戦略を決定する情報を提供して彼を援助したということである。アメリカに本社がある「アメリカン・ミネラル・フィールズ」はモブツ政権打倒の直後に、勝利したカビラと最初の鉱山採掘交渉を行い、コバルトと銅の採掘で十億ドルの取引を確保した。
 二年前にコンゴ産のコル・タンを購入しはじめたアメリカ企業のイーグルス・ウインズ・リソーシズの社長ロバート・L・ローンは「これこそ最も純粋な形態の資本主義だ」と語った。コンゴに利害関係を持っている企業は「国際資本登録簿」などで調べられる。その中には、イギリスのアングロ・アメリカン、バークレーズ銀行、デビアス、ドイツのA・G・バイエル、アメリカのアメリカン・ミネラル・フィールズ、カボット・コーポレーションなどの名が含まれている。
 多国籍企業の安全を確保するために、欧州連合は、すでに派遣されている国連PKOとならんでコンゴへの最初の軍隊を派遣することになっている。
 昨年十月、独立調査団の専門家は国連安保理に対して、ヨーロッパ、アメリカ、南アフリカの八十五の多国籍企業が、倫理ガイドラインを侵犯して犯罪ネットワークと取引を行い、戦争で引き裂かれた中部アフリカ諸国から天然資源を収奪してきた、と報告した。
 この調査団によれば、軍の将校、政府高官、企業家によるコンゴと近隣アフリカ諸国からの金、ダイヤモンド、コバルト、銅の争奪は、数十億ドルをもたらし、それは鉱山企業や金融機関に向かうことになる。
 国連はアフリカを多国籍企業から解放するためには何事もなさないだろうということを、歴史が示してきた。世界の報道機関の目が中東をめぐる帝国の遠征に向けられている中で、アフリカは依然として忘れられた大陸である。
 パトリス・ルムンバが暗殺の前に書いた最後の文章は、四十年以上過ぎた今も反響している。
 「いつか歴史は自らの言葉を持つだろう。しかしそれは、国連やワシントン、パリ、ブリュッセルで教えられる歴史ではなく、植民地主義やそのカイライから解放された諸国で教えられる歴史であろう。アフリカは自らの歴史を書くだろう」。
(英「ソーシャリスト・レジスタンス」03年夏号)
            

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